【アニメガタリズ特集】森井監督ら主要スタッフが制作秘話をネタバレ満載で語る!「アニメガタリズ」座談会(前編)

2017年10月にスタートし、さまざまなアニメのオマージュのみならず斬新な演出でも話題になったTVアニメ「アニメガタリズ」。先日、無事に全話放送終了したことを記念して、「アニメガタリズ」を作った男たち――森井ケンシロウ監督、久保博志助監督、広田光毅さん(シリーズ構成)、田沢大典さん(脚本)、竹内宏彰さん(プロデューサー)に、今だから語れるネタバレありの内容で全12話を振り返ってもらった。


アニメ本編に劣らず楽しさ満載のやり取りが繰り広げられた今回の座談会。ぜひトークイベントに参加しているようなノリでお楽しみいただければ幸いだ。そして、気になった部分はBlu-ray BOXなどで見返してもらえれば、新たな発見が待っているだろう。


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■第1話「ミノア、アニメルーキー!」

脚本:広田光毅 絵コンテ:久保博志

演出:久保博志 作画監督:佐々木敏子

――第1話は脚本を広田さん、絵コンテと演出を久保さんが担当しています。

広田 3話以降の弾けっぷりからすると、1話、2話はかなりまともだと思います。キャラクターを見せる役割は果たせましたし、アニメを語るシーンは久保さんのコンテや演出のおかげでものすごいテンポと絵の破壊力があって、つかみの役割も果たせました。まさか「4話からが面白い」と言われるとは夢にも思わなかったですけど(笑)。

森井 ティザーPVの「4話からが面白い」は特に深い意図があったわけじゃなく「そう言ったら4話まで見てくれるんじゃない?」っていう意図でして、本当に飛び道具なんです。結構Twitterなどでは叩かれましたが。そりゃ怒られますよね(笑)。

――改めて見てみると、1話には謎がいろいろ盛り込まれていますね。

広田 ベレー帽やドアなど、11話と12話に関わることは全部盛り込まれています。でも、それについては3話以降、9話もしくは11話まで一切触れずに突き進もうと決めていました。1話で振るだけ振ってあとは日常のアニメをやろうと。

久保 気づいた人もいましたが、11話でドアに挟まっていた銀色のブレスレットは1話で出てきているんですよ。未乃愛が駅前でベレー帽を取り出して操られた感じになるシーン、あそこでドンとぶつかる人間の手にブレスレットがついているんです。コマ送りで見てもらうとわかります。

――挟まっていたものは何だろう、誰のものだろうと気になっていました。

久保 ぶつかったのはオーロラ(中野先輩)です。実は1話からオーロラが黒幕だと示唆しているシーンなんですよ。

広田 見方によっては、缶バッジの裏だと思うかもしれないですよね(笑)。

久保 あと、ドアの存在意義についてのネタばらしをしちゃうと、「ドア」があって「境界線」があって「ネコ」ですから……SFに詳しい人はわかると思います。

広田 「シュレーディンガーの猫」をやろうとしているんですね。ネコがいた時点で気づいた人がいて、さすがだなと思いました。

森井 どの謎も誰かしら言っていましたよね。考察する人は本当にすごい!


■第2話「ツドエ、アニメガタリズ」

脚本:広田光毅 絵コンテ:久保博志

演出:久保博志 作画監督:三浦貴弘

――そして、2話からは日常が始まります。

広田 「アニ研を立ち上げて仲間が集まる青春群像」という意味では、ここまでが正味1話なわけですね。言うなれば、2話から10話までが学園を舞台にした青春モノで、(謎については)1話から一気に11話まで飛ぶ感じになります。2話以降は「こいつら謎を回収する気ないだろ」というぐらい触れないですから(笑)。

久保 1話の引きを2話に引きずらないというね(笑)。

広田 「ネコ先輩がしゃべった!」と驚いていたのに、翌週(2話)は普通にしゃべっていますからね。直後から謎の回収をやるべきかとも考えたんですけど……面倒くさいし(笑)。12話を見てもらえばわかるので、もうバッサリ行きましょうと。その叫びを12話の頭で出していますからね。「クソアニメ」と言われるだろうなと。

久保 謎の回収としては、たぶん史上一番ひどいアニメですね(笑)。

広田 12話の話をしちゃうと、冒頭の「ナレーションでぶちかます」という案は僕が出しましたけど、「いいっすよ、ナレ死で」と言ったのは監督です(笑)。「監督がいいとおっしゃるならやりますけど、いいんですか?」と。

森井 最初は12話の冒頭で僕がもうちょっと活躍する話だったんですが、「ちょっと監督の出番長すぎじゃない?」ということになって。じゃあナレ死でいいかって(笑)。

田沢 ちょうどその作業していたのは「真田丸」が終わった直後で、「ナレ死」がトレンドだったんですよ(笑)。

久保 細かいことを言うと、11話ラストの新世界爆誕のシーンで監督がきれいに爆死しているんです(笑)。監督の“背後で”爆発しているのなら、爆発の“前に”シルエットがないといけないんですよ。でも、爆発の前ではなくちゃんと爆炎の中にいますから。

森井 2話の話に戻すと、カイカイ(武蔵境塊)が「オーロラ」と呼ぶんですけど、そこから9話の「謀ったな!オーロラ!」まで「オーロラ」という名前は出てこないんですね。最終的に「中野先輩がオーロラという名前が嫌でいろいろやる」という話なので、ずっと溜めておこうかと思って。

久保 公式サイトなどでもオーロラというふりがなは伏せようという話をしていたんです。

森井 キャラデザのところでふりがなをふらないのはダメと言われたのと、誕生日のケーキを出した時にオーロラと書かれちゃったので、ま、いいかと(笑)。

※公式サイトの「CHARACTER(登場人物)」のページでは、中野光輝以降のキャラクターにはふりがなはふられていない。しかも、URLは中野先輩だけ苗字だけである。


■第3話「エリカ、レイヤー×レイヤー」

脚本:田沢大典 絵コンテ:清水 聡

演出:星野 真 作画監督:門 智昭

――3話はアニメ研究部のメンバーが秋葉原に行く回です。

田沢 キャラクター紹介がひと通り終わり、3話からそれぞれを粒立てていくタームに入りました。それと、「アニメガタリズ」はこういうフォーマットのお話だとわかってもらうために、「アニメあるあるネタ」を入れたり、秋葉原に行くという定番の動きを入れるなどを心がけました。

久保 「秋葉原を1回入れておこう」という軽いノリですね(笑)。

――そういうところは森井監督がベースを作ったわけではなく?

森井 そうですね。僕がノーアイデアだったので、各話ライターさんはものすごく困っていました(笑)。やってみて思ったのは、そういうのは先に決めておかなきゃダメだよねということです。

久保 最初に「アニメあるある」はどんなものがあるか列挙して、それらをどの話数に組み込もうかと考えました。

――いきなりコスプレショップに連れていったのは、絵里香先輩のキャラクター性をハッキリ見せるためでしょうか?

久保 そうです。絵里香はいろんなアニメに興味があるオールマイティーキャラ+コスプレ担当ということで。

田沢 メイド喫茶はやめておこうという話になったんです。ベタだからというのと、メイド喫茶に行くお金があるならアニメグッズを買うだろうなと。有栖は有栖で、本物のメイドが常にいるから楽しさをわからないはずだし。

森井 あと、初めての人を秋葉原に連れていくのに、普通はいきなりコスプレショップには行かないじゃないですか。でも、オタクってそういうところがありますよね。自分の趣味が出ちゃって(笑)。

久保 この時点の絵里香は「部活がなくても楽しければいいじゃん」というスタンスなので、それを「秋葉原に行ってわーっと楽しむ」ということで表現しています。

――後半の演説も印象的でした。

田沢 塊くんがみんなに熱く語るなら何かと考えたら、「自分はアニメでこういう生き様の人になれた。お前らはなりたくないのか!」となるだろうなと。ここは言い回しを多少直したぐらいで、ほとんど悩まずスルッと出ました。

久保 内容に関してはほぼ一発OKでしたね。

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