映画館だからこそ楽しめる! “岩浪音響チーム”が作るガルパン最終章の極爆サウンド

多くの“ガルパンおじさん”が待ちに待った新作「ガールズ&パンツァー 最終章 第1話」の劇場上映がスタートした。「ガールズ&パンツァー」といえば、テンポのよいストーリーや個性的かつ魅力的なキャラクターたち、ディテールにこだわった戦車の動きなど、その魅力がつきることはないが、立川シネマシティの「極爆上映」が注目となったことはもとより、“さまざまな映画館で音を聴き比べる楽しさ”を与えてくれた、迫力満点のサウンドも欠かせない重要なファクターのひとつ。そこで、今回は、本作の岩浪美和・音響監督をはじめ、音響効果の小山恭正氏、音響調整の山口貴之氏の通称“岩浪音響チーム”の3人に、「ガールズ&パンツァー 最終章 第1話」の音作りについて、さまざまなお話をお聞かせいただいた。その1時間余りのインタビューの様子を、(作品のネタバレ以外)包み隠さず紹介させていただこう。


数年後に見ても見劣りしないサウンドを作り上げる


──さっそくですが「ガールズ&パンツァー 最終章 第1話」の音作りについて、コンセプトやテーマ、こだわった点などありましたら教えて下さい。

岩浪 「ガールズ&パンツァー 劇場版」(以下、劇場版)から2年、そのヒットを受けて、満を持しての「ガールズ&パンツァー 最終章 第1話」となりましたが、タイトルに“第1話”とある通り、まだまだ数年は続くだろう作品となっていますので、数年後に見ても見劣りしないサウンドを作り上げるにはどうすればよいか、考えさせられましたし、プレッシャーにも感じました。

山口 前作の劇場版の時には、映画館からスマートフォンまで、どんな視聴スタイルにもマッチできるサウンドを作り上げることに配慮しておりましたが、加えて今回は、立川シネマシティの極爆上映をはじめとするさまざまな映画館での特別な音響上映も意識したサウンドを作り上げています。ダイナミックレンジのプランニングなどは、ずいぶんとこだわりました。


小山 正直な話をすると、劇場版が最後のつもりで、やれることをやりきった感があったんです。なので、最終章の話を聞いたときは、どうすればいいのか非常にプレッシャーでしたし、とても悩みました。そこで、水島努監督に第1話の内容を聞いてみたら「全然戦っていない(戦闘シーンが少ない)ですよ~」なんて話もあったので、ホッとしていたら(笑)。

岩浪 あの人、いつもそうじゃないですか(笑)。確かに、次の戦いに至るまでの日常シーンがそれなりの尺ありますし、戦闘シーンも劇場版に比べれば少ないし、まあ何とかなるだろうと慢心していたところは全員にあったんです。しかし、ふたを開けてみると(実際に作業が始まってみると)、これヤベッって(笑)。各シーンの情報密度がとんでもなく濃いんで、(ダビング作業を)やり終わった後はみんなグッタリでした。


小山 実は、制作途中の早い段階から4DX上映の話が決定していて、水島監督が「戦車があまり出てこないのだけど、4DX映えする方法」を悩んでいたようなんです。そこで、主観映像(戦車のスコープ越しにシーンが進むなど「ガールズ&パンツァー」の戦闘場面に使われる手法のひとつ)じゃないですかねぇ、と気軽に言ったら、日常シーンのあちこちでも主観映像が多用されていて。ほんともう、大変でした。

山口 とある現場で水島監督に会ったのですが、ずっと4DX映えで悩まれていて。

小山 そんなにやらなくてもいいんですよ、とも言ったんですが「いやいや、もう(4DX)決まっちゃったから」って。音を相当考えた映像といいますか、音を含めた演出になっているんですよ。


山口 「セリフをパンニングしたいのですがどうすればいいですか?」と聞かれたので、キャラクターをオフにしてセリフを言わせればよいのでは?と助言させてもらったら、オフ台詞が本当に増えまして(笑)。

岩浪 劇場版では上映開始から3か月後に4DX上映が追加されるなど、皆さんにサウンド面で大きく評価していただけたこともあり、じゃあ最終章ではそういった上映も意識した作品に作り上げようと、水島監督自身がこだわりを持って作り上げてくれました。そこまで音を追求してくれる監督って、そうそういませんよね。うれしい限りです。

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