【犬も歩けばアニメに当たる。第37回】「KUBO クボ 二本の弦の秘密」和の映像美に目を見張る圧倒的な冒険活劇
心がワクワクするアニメ、明日元気になれるアニメ、ずっと好きと思えるアニメに、もっともっと出会いたい! 新作・長期人気作を問わず、その時々に話題のあるアニメを、アニメライターが紹介していきます。
今回は、公開中の「KUBO クボ 二本の弦の秘密」を取り上げます。
アメリカのアニメーション制作会社、ライカが制作した、人形を動かして1コマずつ撮影して制作する「ストップモーションアニメーション」。日本が舞台の日本の少年、クボの冒険ファンタジーで、大人も子どもも楽しめる、完成度の高いエンターテインメントです。
昨年公開の映画の中で見逃せない作品として、日本語吹替版を見た筆者が紹介します。
和の映像美がすごい! めくるめく折り紙ファンタジー
「KUBO クボ 二本の弦の秘密」を製作したのは、アメリカのアニメーション制作会社、ライカだが、ちょっと信じられず、なんども確かめてしまう。「日本」が秘めた独自の美と魅力が、ここまで表現されているとは!
時代劇のリアリティ、歴史としての正確さなどとは違う。描かれているのは、製作者から見た「異世界」としての日本だ。だからこそ純粋で美しい。
全編を貫くのは、日本の芸術・文化への理解とリスペクトだ。その裏には、子どものように素朴な感嘆と憧憬、そしてそれを形にする高度な技術がある。
それらを象徴するのが、重要なモチーフである「折り紙」だ。
主人公の少年クボは、三味線をひいて折り紙をあやつる不思議な力を持ち、冒頭で村人を前に大道芸を披露し、戦いにも使う。舞い散る紙が自由自在に踊るのは、それだけでおもしろい。
そして、1枚の紙がただ「折る」だけでさまざまな形をとり、命が宿ったかのように見える鮮やかな変化に、観客は村人と一緒に感嘆する。
海外では折り紙が人気と聞く。だが、日本で育った私たちにとって、折り紙は子どもの遊びだ。多くの人が子どもの頃に体験し、大人になると忘れてしまう。
小さな正方形の角を、折り目にぴったりと合わせて折る。袋になった部分をふくらませて折りたたむ。几帳面で精密な小さな作業の積み重ねが、直線と曲線で構成された、かっちりしたひとつの形になって、小さなおもちゃや飾り、プレゼントになる。
主人公の側によりそう本作での「マスコット」は、手のひらサイズの、折り紙で折った武者「ハンゾウ」だ。言葉をしゃべらず、表情はないが、動きは何より雄弁で、つまようじのような小さな刀を雄々しく進むべき道へ向かって振りかざす。
そのかわいらしさは、モフモフして黒目がつぶらな動物キャラに、まったく劣るものではない。
ハンゾウが生き生きと動き回る様子を見ていると、見るものすべてに想像力が命を吹き込んだ子どもの頃のことを思い出す。最後に「つる」を折ったのはいつだっけ? 思わずひとつ折ってみたくなる。
まるで初めて見る国のように美しい
このほか、「浮世絵」的な背景や、象徴的に登場する「富士山」、クボが背負い、不思議な力のキーアイテムともなる「三味線」、クボが探し求める「三種の神器」と、これでもかと日本的なものが描写される。
メインキャラクターのひとり「サル」は、姿形も仕草も「ニホンザル」だ。悪役の「月の帝」は、おそらくかぐや姫伝説から着想を得たのではないか。
アイテムやモチーフだけではない。「わびさび」を重視した演出は、作品に独特の奥行きを与えている。
しばしば起こることだが、日本の人気コミックやアニメがハリウッド映画に翻案されて、重要な個性と魅力を失う。あるいは、洋画に登場する「日本」が、コミカルにカリアチュアライズされていて、あるいは意図的にどこかズレていて、ネタとして話題にされる。
本作はそうした表現とは遠くへだたっている。この作品を通して、観客は日本という国にある「美」と「個性」を、まるで初めて見る国のように、海外側からの目で見て再発見することになる。
正直、くやしいような気もする。なぜこんなに美しく、こんなにワクワクする、日本を舞台とした冒険譚を、日本で作れないのだろうか? と。
たぶん、同じような作品を作ろうとしても、日本で作る自分たちの作品は、こんなふうに純粋にはなれないのだろう。それぐらい、この作品はいぶし銀のきれいな輝きを放っていて、観客の心をつかむ。
公開から1か月経った新宿の平日夕方の映画館は、席の7割近くが埋まっていて、大人の観客の関心の高さを示していた。
動きがすごい! 「まばたきすらしてはならぬ」大迫力のアクション
この作品は、人形を少しずつコマ録りして動きをつくる「ストップモーション・アニメーション」という手法で作られている。完成度の高さは圧巻だ。
なめらかに動き、眉根の動きで寂しげな感情を出せる、細やかな表情。口はセリフとともに動く。サルの毛は嵐にたなびき、ガイコツの鎧武者は大迫力で迫りくる。
技術がどうとかの考えは、画面に引き込まれてあっという間にどこかへ飛んでいき、観客は目をまじまじと見開いて画面にくぎづけになる。
大胆にして精密な動きは、3Dプリンターが可能にしたという。小さな口のパーツを製作して、それを人形の顔につけかえることによって、「しゃべる」表情の動きをコマ撮りしていくメイキングを、エンディングで一部見ることができる。
CGでなくストップモーションアニメで製作したことの意味のひとつが、陰影が作り出す「質感」だ。ゴツゴツとした立体感、確かにそこにある「もの」の存在感がいい。
「絵」ではなく「人形」が動く。その楽しさは、懐かしくて新しい。
キャストがすごい! バランスのいい実力派声優陣
キャラクターたちは個性的でとても魅力的だ。子どもが見てもわかりやすく心踊る、少年の冒険譚だ。
母親を失った主人公のクボは、自分をねらってくる母の一族から身を守るために、「三種の神器」を集める冒険に旅立つ。旅の目的は、やむにやまれぬ事情からで、世界を守るなどといった大義名分はない。
クボとともに旅することになったサルは、厳しく強くクボを叱咤する。孤独なクボは、さびしがり、すねて、文句をいう。その姿が子どもらしい。けれどサルは、クボを甘やかさない。弱音を吐いていては、生きのびられないからだ。
吹雪の雪山の描写は真に迫り、恐ろしいが美しい。野生動物のように、クボはもがきながら前進する。
クボに厳しいサルと好対照をなすのが、陽気でちょっと抜けたところのあるサムライ「クワガタ」だ。甲冑姿のサムライのデザインがクワガタになっているセンスは、大人の子ども心もワクワクさせる。
タイトルになっている「二本の弦の秘密」の意味がわかるのは終盤だ。クボが持つ三味線の弦は3本あるのに、なぜタイトルは「二本の弦」なのか。その意味がわかるシーンでは胸が熱くなる。
また、エンディングテロップの最後に、監督からのメッセージがあるが、それがまたしみじみとくるので、最後まで見てほしい。
日本語吹替版はおすすめ!
字幕版を見るか、吹替版を見るかは、人によりけりだ。オリジナルの雰囲気を楽しむために字幕版を選ぶ人も多いだろうが、この作品に関しては日本語吹替版をおすすめする。
クボの声を担当するのは、外画で子役の吹替を多く担当している矢島晶子。クボを守り導くサルの声は、田中敦子。ラスボスの月の帝を、羽佐間道夫が演じている。いずれも、アニメファンなら知らぬ人はないベテラン揃いで、キャラクターのイメージにもぴったりだ。
また、話題性のあるところでは、俳優のピエール瀧がクワガタを、「AKB48」の元メンバーの川栄李奈が、クボを狙う刺客の闇の姉妹を演じる。この2人がまた、ハマっているのだ。ピエール瀧の声はあたたかくコミカルで、川栄李奈はほとんどホラーである敵の恐ろしさをよく出している(結構耳に残って怖い!)。
バランスのいい配役のおかげで、吹替にありがちな「演技に違和感があって本編が楽しめない」ということがない。むしろ、まばたきもする暇がないほどスピーディーで密度の濃い大活劇の中では、字幕を読んでいる間に見落とすことが多すぎるため、画面に集中できる吹替はおすすめだ。
もし、これから見るという人は、日本語吹替版を選んで損はない。「でもやっぱり、原語の雰囲気を感じてみたい」と思うなら、さらにそのあとで字幕版を見ればいい。きっと、切々とした物語とすばらしい映像美を、もう一度体験してみたいと思うだろうから。
(文・やまゆー)
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