女子高生を1/35でキット化! 「35ガチャーネン -横山 宏ワールド- JKフレンズ」に秘められた “理想のプラ模型像”を、海洋堂・宮脇修一センムが語る!【ホビー業界インサイド第31回】

昨年秋、ハリウッドでの映画化が発表された、イラストレーター・横山宏氏のSF作品「マシーネンクリーガー」。原作は漫画でも小説でもなく、横山氏がオリジナルで手作りした1/20スケールの立体造形作品である。模型誌を中心にメディア展開され、かつては日東科学、現在はハセガワとWAVEからプラキット化されている。
そして昨年、海洋堂がカプセルトイとして「マシーネンクリーガー」のプラキット化に参入した。主役のパワードスーツたちが1/35スケールでラインアップされるのは当然のことだが、シリーズ第2弾では「JKフレンズ」として、女子高生のフィギュアが加わった。硬派なミリタリーSFの世界に、なぜ女子高生が!? 海洋堂の代表である宮脇修一氏から、意外な真相を聞くことができた。

絵画的要素のある模型、原型の味を出せる模型が海洋堂の理想


──「35ガチャーネン」は、原作の横山宏さんから提案された企画なのですか?

宮脇 ワンフェスで会うたび、横山さんからは「専務、マシーネンクリーガーやってよ」「谷(明)くんに原型作ってもらってよ」と言われていました。僕らは「マシーネンクリーガー」の前身である連載「S.F.3.D」の頃から応援していて、横山さんがホビージャパンと裁判している間ですら、あえてホビージャパンの広告ページに「がんばれ、マシーネンクリーガー」と1ページ広告を出していたぐらい、横山さんの作家性をリスペクトしていました。だから、僕らは身のほどもわきまえているつもりです。日東科学さんはもちろん、ハセガワさん、WAVEさんからきれいにパーツ分割されたプラ模型が出ているのに、それ以上によいものを海洋堂が開発できないのであれば、僕らが出す意味はないんです。もうひとつ、僕自身がプラ模型の愛好家として4万点ほどジャンルを問わずコレクションしていて、普段からプラ模型に対してはうるさい人間なんです。わざわざ海洋堂からプラ模型でマシーネンクリーガーを出すのであれば、何か違うものを出したい。「何か違う」とは何なのか、ずっと考えていました。
海洋堂は私の独裁主義政権で、造形原理主義国家であって、私は穏健派の大統領といった感じです。海洋堂は“ARTPLA”をキャッチフレーズにしているとおり、絵画的要素のある模型、原型の味を出せる模型を理想としています。昔、タイガー戦車や宇宙戦艦ヤマトのプラ模型がフィギュアを名のって大手メーカーから出たとき、「おかしいだろ!」と思いました。だけど、谷明くんが造形したゼロ戦やキングタイガーは本人の意志とは関係なくアレンジが入っている。松本零士がゼロ戦を描いても宮崎駿がゼロ戦を描いても、必ず作家のタッチが出ますよね。それと同じことです。食玩の時代は塗装済み完成品として、谷くんの作ったIV号戦車のフィギュア、タイガー戦車のフィギュアを作っていました。その時はベリリウム合金で型をとって竹串で磨くような方法、ようするに1960~70年代のテクノロジーで成形していました。ベトコンが竹やりでアメリカ軍に立ち向かうような局地戦の戦法で、原型至上主義の味わいのある戦車や飛行機を作れましたから、2000~2010年ぐらいまでの食玩ブームの頃には、僕らにアドバンテージがあると思っていました。
しかし、プラ模型を開発するとしたら、デジタルでスキャンする工程で原型の味わいを残せるのか、組み立て模型としての精度を保てるのか、いろいろと問題を抱えていました。それと、個人としても横道にそれてはいけない、中途半端な模型を出したくない気持ちが強くありました。だから、なかなか横山さんからのラブコールに応えられなかったのです。

──どこで、転機が訪れたのでしょう?

宮脇 マシーネンクリーガーのプラ模型はどのメーカーが出しても、3千人の濃いファンが買ってくれている世界だと思っています。タミヤの新製品でも5千個を超える売り上げは難しいだろうし、我々の出している塗装済みフィギュアでも1万個をこえれば万々歳。そういう状況の中で、カプセルトイという市場であれば多くの方にマシーネンクリーガーのプラ模型を届けられると気がついたんです。

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