【アニメコラム】キーワードで斬る!見るべきアニメ100 第25回「ポプテピピック」ほか
アニメファンの飲み会というのは得てして、大喜利というか連想ゲーム的なものになりがちだ。「○○には××なシーンが出てくるよな」と誰かが一言いえば、ほかの誰かが「××なシーンといえば△△を忘れちゃいけない」と返してくる。アニメとアニメはそんなふうに見えない糸で繋がれている。キーワードを手がかりに、「見るべきアニメ」をたどっていこう。
「ポプテピピック」はおもしろいか、おもしろくないか、みたいな議論があるそうだ。ギャグ作品の場合「おもしろい」と「おもしろがらせようとしている意図がしゃらくさい」は紙一重なので、「おもしろい/おもしろくない」の議論はコインの裏表であり、つまりそこにあまり意味はない。逆にいうと、そういう議論が出る状況に持ち込んだ時点で、「ポプテピピック」はギャグ作品としては十分成功したといえるのだ。
「ポプテピピック」は大川ぶくぶの同名4コマ漫画をアニメ化したもの。原作をひとことで説明するのは難しいが、ポプ子とピピ美の2人が繰り広げる、パロディ成分多めの不条理4コマ――といった内容だ。これがアニメ化されたのだが、原作が持っていたネタに対する姿勢をパワーアップして引き継いだ結果、まったく素直でないアニメ化となった。
たとえば放送前にアナウンスされていたキャストではポプ子役が小松未可子、ピピ美役が上坂すみれだった。ところが第1話Aパートでポプ子をあてていたのは江原正士でピピ美が大塚芳忠だった(これは原作のネタをアニメ化にあたって実現したもの)。そして、これがBパートになると三ツ矢雄二と日髙のり子という「タッチ」のコンビになる。さらに第2話では悠木碧と竹達彩奈、古川登志夫と千葉繁という2コンビがポプ子とピピ美を演じている。
キャストがコロコロ変わるのはネタの一例にしか過ぎない。アニメ「ポプテピピック」は、このような調子で、TVアニメのルールを逆手にとってさまざまなギャグを仕掛けてくるのである。そのネタの数の多さとやり逃げ感は実に見事だ。
というわけで今回は「ポプテピピック」がしばしば作中でネタにしている「サブカルクソ女」が好きそうなギャグアニメという方向性でセレクトした。
「チョコレートパニック」は、ニューウェーブを代表する漫画家、藤原カムイの描いたシュールなギャグ漫画。今、読み返すと主役の3人が、肌の黒い原住民風で名前もマンボ、チョンボそしてチンボと、今の時代のイロイロにそぐわない感じはアリアリなのだが(現在の単行本では3人の名前は改名されている模様)、'80年代には本作がチョコレートを模したものすごくシャレた装丁の単行本で売っていたのである。
OVAのリリースは'85年。音楽グループ「オープンセサミ」のプロモーションビデオに3人のキャラクターを起用したというしつらえで作られたイメージビデオで、原作者もかなりコミットして制作されたという。笑えるというよりは、不条理さを残しつつよりおしゃれな方向性に振った映像が印象に残る。
そういえば渋谷のTSU●YAが「キリクと魔女」のリリース時に、特集コーナーにVHSビデオの本作をさりげなく関連作として並べていて「オイオイ」と突っ込みたくなったのも懐かしい話である。
2番目は、江口寿史の「なんとかなるでショ!」。これは江口寿史が月刊ASUKAに1986年から連載したギャグ漫画のアニメ化で、やはりOVAとして1990年にリリースされている。
トレーナーをジャミラのように着こなしたジャミラおじさんが、少女の夢の中に現れてダジャレを言うという「ジャミラおじさんの悪夢」といった原作のエピソードが、りんたろう、兼森義則、もりやまゆうじらの手でアニメ化されている。
ちなみに美少女が登場する「章のある漫画」ネタでは実写だったり、怪獣が出てくる「圧縮」では特撮風マペットを使ったり、表現方法もアニメ以外にイロイロ入っていたりするのも特徴だ(河崎実監督がクレジットされているので、実写パートはおそらく河崎監督が担当したのだろう)。
「チョコレートパニック」も「なんとかなるでショ!」も現在に至るもDVD化されておらず、なかなか視聴するのが難しいタイトルになってしまっているのは残念だ。
そして最後は「OH!スーパーミルクチャン」。謎の少女ミルクチャンが、大統領の指令を受けてさまざまな事件に立ち向かっていく、という設定の本作。グラフィカルでおしゃれな画面づくりに加え、パロディも多く、有名人をネタにしたブラックなギャグも多い。そういう意味では「ポプテピピック」の視聴者層と一番親和性の高そうな1作品ではある……「なーんつってな!」。
というわけで全25回、合計100作の見るべきアニメを取り上げたところで、予定通り本連載は最終回となります。では、これからも楽しいアニメ・ライフを!
(文/藤津亮太)
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