荒牧伸志×神山健治 2人の監督がつくりあげる“楽しいアニメ制作の現場”【アニメ業界ウォッチング第42回】

「Appleseed Alpha」などの3DCGアニメを監督してきた荒牧伸志監督が、「ひるね姫 ~知らないワタシの物語~」の神山健治監督とタッグを組んで「攻殻機動隊」の新作をつくる、と報道されたのが昨年4月。アキバ総研では、過去に、荒牧監督神山監督にそれぞれ単独インタビューをお願いしているが、今回は「攻殻機動隊」に先行して制作真っ最中の3DCGアニメ「ULTRAMAN」のモーションキャプチャー現場を見学させていただき、その余熱が冷めないまま、2人の監督にお話を聞くことができた。


新たな「攻殻機動隊」をつくるには、新たなパートナーが必要


──荒牧監督と神山監督の2人体制でつくられる作品は「ULTRAMAN」、そして「攻殻機動隊」(以下、攻殻)の2本が発表されていますね。まず、「攻殻」の話から聞かせていただけますか?

荒牧 うちのスタジオ(SOLA DIGITAL ARTS Inc. 以下、SOLA)には、「攻殻」を好きなスタッフがいっぱいいるんです。もし「攻殻」をSOLAでつくることになったら、僕もスタッフも盛り上がってモチベーションが上がるぞ、というのが僕の下心なんです(笑)。

神山 なるほど(笑)。

荒牧 だけど、「攻殻機動隊 ARISE」の製作が発表されていて、実写映画「ゴースト・イン・ザ・シェル」の話題も出始めていた時期だったので、僕から「攻殻」をやりたいと提案するのは難しいタイミングでした。だけど、何年か前の「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭」で、Production I.Gの石川光久社長と同席する機会がありました。そのとき、「『攻殻』を3DCGでやりたいんです」と直接ぶつけてみました。すると意外にも感触がよくて、「いくらかかるの?」「監督は荒牧さんがやるの?」と聞かれました。その場で「神山さんと一緒にやりたいです」と答えました。

──とっさに神山監督の名前が出たのでしょうか?

荒牧 神山さんとは以前から知り合いではあったけど、常に話し込んだりする関係ではなかったんです。だけど、「攻殻」をやるなら、やっぱり神山さんが監督するのがいちばんいいんじゃないかと思いました。


──神山さんには、石川社長から話があったのでしょうか?

神山 荒牧さんから「頼みたいことがあるんだけど」と言われたような気がするけど、はっきりとは覚えていません。「ひるね姫 ~知らないワタシの物語~」の制作真っただ中ではあったけど、「えっ、なんでCGで『攻殻』?」と違和感をおぼえることもなく、すんなり「面白い話だな」と受け止められたので、それでよく覚えてないんでしょうね。

荒牧 自然な流れと思ってもらえたんなら、それはうれしいです。

神山 何度か荒牧さんと食事しながら話したあとに、一緒にアメリカへ行ったんですよ。

──それはロケハンという意味ではなく?

神山 ロケハンではないですね。日本よりアメリカで話したほうが、気分が変わってアイデアが出やすいだろうという意図のツアーでした。参考になりそうな映画を現地で見たりとか。

荒牧 SOLAのCEOであるジョセフ・チョウや石川社長も同行して、ブレストしながら神山さんとアメリカをぶらぶらしてきたんです。

──神山さんは、再び「攻殻」を監督することについて、どう思いましたか?

神山 周囲は、勝手に「もう神山は『攻殻』をやりたがってない」と噂していたらしいんですけど(笑)、たまたまタイミングが合わなかっただけなんです。


荒牧 僕は、絶対にやったほうがいいと思ってました。

──3DCGでつくることに抵抗はありませんでしたか?

神山 「ひるね姫」で2Dの作画をガッチリやりながらも、3Dの面白さや可能性も感じていましたから、いい機会だと受け取りました。それと、「攻殻」はテレビシリーズを2本やらせてもらったけど、監督ひとりで処理するには、あまりに作業量が膨大でした。当時は脚本家チームをシンクタンクとして組織していたけど、ああいうチームを再び組むことは難しい。そういう点からも、経験豊富な荒牧さんと組むことは、新たに「攻殻」をつくるうえで必須だろうと思いました。

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