スタッフの中で、僕だけが「新人」でした……「ルパン三世 PART5」シリーズ構成・大河内一楼インタビュー

2018年4月よりいよいよオンエアスタートとなる「ルパン三世 PART5」。言わずと知れた国民的アニメ作品の正当なナンバリング作品だ。

2015~16年に放送された「PART4」以来となる「PART 5」でシリーズ構成と脚本を担当するのは「コードギアス 反逆のルルーシュ」「甲鉄城のカバネリ」などで知られる大河内一楼さん。元々シリーズのファンだったという同氏が「ルパン」という作品への思いや制作において大事にしていることを赤裸々に語ってくれた。


「ルパン」シリーズに携わる怖さが後々になってわかってきました


――今回、シリーズ構成と脚本を担当されるに至った経緯を教えて下さい。

大河内 2014年に劇場公開された「伏 鉄砲娘の捕物帳」という作品でご一緒したトムスの鈴木さんという方がいらっしゃるのですが、諸事情で途中で担当から外れてしまったんです。自分はそのことが残念だったので、今回、あらためて鈴木さんから一緒にやりませんかと言ってもらって嬉しかったですね。その声をかけてもらった仕事が「ルパン」でした。

――「ルパン」ありき、というわけではなかったんですね。

大河内 「ルパン」は見ていたし、好きな作品だったのですが、引き受けてみると、これはかなり怖いことで。昔からの熱心なファンがいるというのもそうなのですが、スタッフ陣が僕だけ「新人」だったんです。矢野雄一郎監督も、キャラクターデザインを担当した横堀久雄さんも、80年代からずっと「ルパン」をやられてきた方ですし、ほかのみなさんも僕が大好きで見ていた「ルパン」をずっと作っている人たちだった。

――そこに飛び込んでいくのは確かに怖いですね。

大河内 最初は、警戒されていたみたいです。俺たちが守ってきた「ルパン」に、この脚本家はとんでもないことをするんじゃないか? って。実際、初期の打ち合わせでは「どういうルパンを作るつもりなのか?」「なぜ、この変更が必要なのか?」と問いただされました。それから、何度かやりとりを繰り返し、今ではスタジオの中で脚本を書いていて、ようやく仲間に入れてもらえた気がしています。ルパン村の新入りとして(笑)。

――ちなみに大河内さんが最初に触れられた「ルパン」シリーズはどの作品ですか?

大河内 1977~80年に放送された「第2シリーズ」です。確か夕方に放送されていたと思うのですが、内容的にも特に「子どもが観てはいけないもの」という認識は当時はなかったように思えます。「タイムボカン」シリーズなどのアニメやバラエティ番組でも女性の裸が普通に出ているような時代でしたから。いまやったら大変なことになるでしょうけどね(笑)。

――それはわかります(笑)。大河内少年は「ルパン」のどのあたりに惹かれたのでしょう?

大河内 シリアスな話があったかと思えば、翌週はギャグだったり、大人っぽい恋愛を描いたり、見たこともないような外国が出てきたり。毎週、どんなことが起こるかわからない、すごいバラエティに満ちた作品という印象ですね。



今回のルパンはデジタルアイテムを駆使!

――今作の舞台は「現代のデジタル社会」ということですが。

大河内 ルパンって、オイルライターやガソリン車など、ビンテージな品を愛してるイメージがあると思うんですけど、そのいっぽうで、盗みに関してはいつも最先端の泥棒なんです。自分で発明した機械を使って警備を突破したり、国際的で、時には宇宙にも行ってしまう。ほっかむりに黒いヒゲ、のような当時の泥棒像を根底から覆すような、スタイリッシュなキャラクターだった。なので、自分としては、今、普通にルパンを書いたら、自然と「最新式のデジタルアイテムやギミックがたくさん出てくる」シリーズになったんです

――詳しくはネタバレになってしまうので書けませんが、世の中で実際に起こった、とある「事件」も描かれていますね。

大河内 シナリオを書いたのは、その「事件」が起こる前だったので、驚きましたね。設定制作の白土晴一さんと、いずれこういう事件が起こってくるだろうと話してはいたのですが、まさか放映前に起こってしまうとは。現実はいつも早いですね。でも、結果的に現代的な犯罪を取り扱ったシリーズになれたんじゃないかとは思います。

――我々が生きている時代を舞台にしているのに、往年の「ルパン」らしさが失われないのはすごいですよね。

大河内 そこは「ルパン」の先輩たちのおかげですね。先に話したテレコム・アニメーションのスタッフさんたちと、ルパン役の栗田貫一さん、次元役の小林清志さんをはじめとしたキャストさんたち……さすがです。そこに、僕をはじめとした新人が多少なりとも加わってるのが、いいバランスになっていると思います。

――今作では何話かにわたって描かれるエピソードと1話で完結するエピソードが章立てて描かれています。

大河内 今回のPART5では、「ルパン」を守りつつ、でも、半分は「今」にするというのがテーマでした。では、何を変えたら「今」になるだろう? まず、キャラクターを変えるのはありえないと思いました。僕もそうだし、視聴者も、ルパンたちが好きで「ルパン三世」を見ているのだから。そこで自分が考えたのは「物語の形」をアップデートすることでした。近年の海外ドラマって、物語の最後に強烈なヒキがあって、次が見たくなる連続ものの構成になっていることが多いんです。この形は「ルパン三世」に適用しても、映えると思ったんです。とはいえ、最初から最後まで続き物にしてしまうと見る方も疲れるし、「ルパン」には1話完結の魅力もあるので、4~5話の連続モノと、1話完結モノを並べる形にしました。これなら、途中から見ても、置いてけぼりになりずらいし、「ルパン」が新しくなった感じにできるかな、と。

――大河内さんはシリアスなエピソードとギャグ寄りのエピソード、どちらが書きやすいですか?

大河内 実は今回、シリーズ構成という立場もあり、いわゆる「ギャグ回」と言われるようなお話は書けなかったんです。本当はラブコメのようなエピソードもやりたかったんですけどね。もし「PART6」があればぜひ各話で入りたいです(笑)。

――最近のファンは「この話はあの脚本家が手がけたのか」とか「やっぱりこの人が書いたんだな」とか、各話ごとのスタッフ構成をすごく気にしながら観ていますよね。

大河内 「ルパン」はそういう楽しみ方のできる作品だと思いますね。とくに、1話完結の話はスタッフの個性が出やすいし、その個性を受けとめられるだけの幅が「ルパン」という作品にはありますし。今回のPART5でも、次元、五ェ門、銭形などキャラクターの話、ギャグにミステリなど、バラエティに富んだ話を用意しています。往年のファンが、思わずニヤリとしてしまうようなシーンや人物もたくさん出てきますし、そういう意味では、昔から「ルパン」シリーズの制作に携わっているテレコムさんじゃないと、このPART5は成立しなかったんじゃないかと思います

――ちなみに大河内さんはSNSは駆使されるほうですか?

大河内 ほどほど、くらいですかね。自作の告知をしたり、感想を見て回ったり。今は一緒にやってない過去作のスタッフと話せるのはいいですね。わざわざ連絡を取るほどでもないけど、ほんのり繋がっていたいって気持ちをかなえてくれる。怖いこともあるけど、いいですよねSNSって。自分がもっと若かったら、ベッタリやっていただろうなと思います。

――ファンからの反応もSNS等を通じてダイレクトに返ってくる時代になりました。

大河内 今年1月から配信された「DEVILMAN crybaby」で脚本を書かせていただいた際、海外ファンからいろいろな言語でリツイートや観た感想をいただいたことがとても印象に残っています。今回の「ルパン三世 PART5」も、日本だけでなく、海外のアニメファンにも受け入れてもらえるとうれしいですね。


(取材・文・写真/佐伯敦史)

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モンキー・パンチ

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