今回のハニーは、愛がテーマ!「Cutie Honey Universe」シリーズ構成・高橋ナツコインタビュー!

もともと永井先生の大ファンであるという高橋ナツコさんが、春アニメ「Cutie Honey Universe(キューティーハニー ユニバース)」のシリーズ構成を務める。

「Cutie Honey Universe」は、原点回帰をテーマに掲げているのだが、永井作品を知り尽くしている高橋さんだからこそ、作品の核となる部分がすごくていねいに描かれている。さらに今回のハニーは、愛がテーマとしてあると強く語る彼女に、改めて本作の魅力、見どころなどをうかがった。
レトロさと新しさの融合! そして普段は聞けない真綾ハニーのセクシー演技に注目! 「Cutie Honey Universe」秋夏子役・堀江由衣インタビュー


ハニーは、死ぬまでに関わらせていただけたらな…と思っていたんです

――高橋さんにとって、「キューティーハニー」はどんな作品ですか?

高橋 昔から永井先生の作品を読んだり見たりしていましたけど、その中でもハニーって、私の中では特別な女の子のキャラクターで。カッコよくてかわいくて、涙もろくて。なんて素敵なスーパーキャラクターなんだろうと思っていたんです。その原作のハニーの鮮烈な印象を、今回の「Cutie Honey Universe」で描いていけたらなと思いました。

――子供の頃から作品を読まれていたのですか?

高橋 先生の作品は全部読んでいました。もともとファンで、「キューティーハニー」と「UFOロボ グレンダイザー」が特に好きなんです(笑)。当時からの漫画を全部持っているんですけど、永井先生の親戚の方が、私のコレクションを見て驚かれていました。

――今回、シリーズ構成として参加することになった経緯を教えてください。

高橋 もともとアニメーション制作会社のプロダクションリードさんとはお付き合いがあって、親しくさせていただいていたんです。それにアニメ「鋼鉄神ジーグ」(2007年放送。「鋼鉄ジーグ」(1975年)の続編に当たる作品)で各話ライターとして参加させていただいていたときに、ダイナミックプロさんも打ち合わせに来られていたので、その打ち合わせの休憩時間に、「キューティーハニー」とか「ハレンチ学園」、「UFOロボ グレンダイザー」の話をしていたんです。そのような関係があった中で、永井先生の画業50周年で作品をやるというタイミングがあって、シリーズ構成をやらせていただくことになりました。

――そこまで好きな作品となると、受けるときもそれなりの覚悟が必要だったのではないですか?

高橋 覚悟はいりました。しかも何度もリメイクされていて、素晴らしい過去作があるので緊張もしますし、リメイクって本当に難しい仕事だと思うので緊張もプレッシャーもありました。でも、ハニーは死ぬまでに関わらせていただけたらな…と思っていたので。

――強い思いがあったんですね。おっしゃる通り、これまでいろいろなハニーがありましたが、振り幅が広いんですよね。でも今回は“カッコかわいいハニー”がテーマということで、このコンセプトはどう決まっていったのですか?

高橋 監督とプロデューサー陣、ダイナミックプロさん含めて打ち合わせをしたんですけど、最初から一致していたのが「原点回帰したい」っていうことだったんです。私の息子が高校生なんですけど、ものすごくアニメや漫画に詳しいんです。それでもハニーはちゃんと読んだことがないと言っていて。となると、もしかすると中高生の子たちはもっと知らないのでは…と思い、永井先生の原点のハニーを見て、知って、楽しんでいただきたいなっていう気持ちを強く持ったんです。

あの……空中元素固定装置って究極じゃないですか、なんでも可能ですよね(笑)。それもそのまま使っていこうとなったのは、永井先生の原作の強烈で究極なインパクトとエンターテインメント性を若い世代の方々に見てもらえたらな…と。映像的には、監督が設定を素晴らしく作ってくださっているので、すごくSF的だし、バイオレンスの部分もしっかり描かれているんですけど、ハニーが持っているハートの部分は、やっぱり「空中元素固定装置」という(笑)、ストレートな名前のまんまなんです。

――原点回帰したとしても、今の時代に通用するんだという思いは、強くありましたか?

高橋 ありました。ハニーっていうキャラクターは絶対的に魅力的なキャラクターで、普遍的であると言い切ってもいいと思うので、この時代でもみんなに愛してもらえるだろうなと思いました。それに横山彰利監督は、ハニーのかわいさやセクシーさやカッコよさと、シスタージルなどパンサークロー側のバイオレンスなバトルのカッコよさを、すごく情熱的に愛している方なんです。私は私で、原作の中の女子校/女子寮の百合めいた雰囲気が好きだったので、今回はそういうところも余すところなく盛り込んでいます。だから、百合とバイオレンスが融合した作品になっていると思います。

――女子の憧れや崇拝が描かれているとは、堀江由衣さんもおっしゃっていました。

高橋 原作がわりとそうなんですよ。キューティハニーに、セクシーな印象を持たれている方は多いと思いますし、戦うハニーとか変身するハニーが鮮烈だけど、実は彼女たちにも日常生活があって、そこがちょっぴり百合っぽくて、私はそういうシーンが大好きだったんです。それと今回は、原作の中に、バラにまつわる素敵なセリフがあるんですが、今回のシリーズでは、その台詞とバラが重要なアイテムになっています。

――原作にはない要素も多くありますよね?

高橋 シスタージルとハニーの関係を掘り下げていくために、ジルが対パンサークロー組織・PCISのジュネ捜査官としてハニーの側にいるという設定を新たに作りました。これまでのリメイクでは早見青児にいろんな設定があったりしたんですけど、今回はジルや夏子など女子に重要な役割を担ってもらっています。ジルの中にある人間的な部分を、ジュネ捜査官として描いているのですが、そのオリジナル要素を楽しんでいただけたらありがたいです。



――先ほど「中高生にも見てもらいたい」ということをおっしゃっていましたが、そういう要素もありますか?

高橋 あります。起こる事件が若い子たちにとって遠すぎないようにしたかったんです。怪人が襲ってきたから戦うというだけではなく、若い子たちの身近な暮らしの中に、そういう脅威がひそんでいるんだという意味で、そこは現代風になっています。だから、去年流行ったインスタグラム映えするナイトプールが出てきたり(笑)。そういうところはちょっと今風ですね。いっぽうでシスタージルが、なぜハニーに執着しているのかというところを、ドラマの軸として掘りさげていきました。

――今回、ジルがジュネ捜査官としてハニーの側にいるというのは、すでにネタバラシをしているわけですが、なぜそうしているのかというドラマを描きたかったので。それが徐々にわかっていく仕掛けも楽しんでいただければ幸いです。

高橋 今回のストーリーでは秋夏子がものすごく重要なんです。やっぱり夏子とハニーは親友で、そこでの信頼関係というのは、シスタージルとして持ち合わせていない感覚なんですね。そこのところがクライマックスになっていくんですけど、そのクライマックスにつながっていくように、ハニー、ジル、ジュネ、夏子の関係を紡いでいきました。

――キャラクターの造形についてですが、原作から変えたところはありますか? 今回のハニーは七変化しますが。

高橋 如月ハニーがキューティーハニーになり、ハリケーンハニーになり、ミスティハニーになり、また各ハニーで声優さんが全員違うということもあるので、それぞれのハニーの個性は大事に描きたいなと思いました。声優さんを変えるというのはプロデュースチームからの提案だったんですけど、それはやったことがないし素晴らしいなと思って、ストーリーに取り入れていきました。

――ちなみにハニーの声に関してはいかがでしたか?

高橋 とても素晴らしかったです! それと堀江さんは、以前ハニーだったのに(※「Re:キューティーハニー」でハニー役を演じている)、今は完全に夏子になっていて素晴らしいなと。如月ハニーに関しては、テープで聞いたときより、アフレコでの印象がすごくて。これは如月ハニーであり、キューティーハニーだなと思いました。


「セクシーさもバイオレンスさも惜しまない!」と監督が断言されていたので

――話が少し戻りますが、リメイクの難しさというのはどこにあるのでしょうか?

高橋 「キューティーハニー」の原作は、アニメーションシリーズの1クールでやるとなると少しエピソードが足りないこともあります。なので、原作にあった印象的なシーンを盛り込みながら、オリジナルの部分と違和感なく融合させていかないといけない。それがリメイクの難しさで…。今回のリメイクでは、ここだけをフィーチャーしましょうと明確にコンセプトが決まっているリメイクもありますが、今回のように原点回帰をして、そのテーマを崩さず今の人たちにも身近に感じてもらえるような事件や映像を作るのは、やりがいがあると同時に、本当に難しくプレッシャーでした。

今回のキャラクターデザインは本当にポップでカッコかわいくて、今風のデザインになっていて素敵だなって思いました。ジルとジュネはカッコいいし、ナっちゃん(秋夏子)はかわいいし。それに、変えてはいけない直子や早見団兵衛と順平はものすごく昔のままだし。そのバランスがすばらしかったです。

――キャラクターの話が出たので、さきほど秋夏子が重要だとおっしゃっていましたが、早見青児はいかがですか?

高橋 早見青児はとても重要なハニーの理解者なのですが、やっと(この取材で)青児の話になりましたね(笑)。でも本当に、青児はハニーのお父さんが亡くなるときも一緒にいたり、ものすごくハニーのことを理解しているんです。理解しているから何も押し付けないし、彼女のピュアさを信じて、心の底では守り抜く、ハニーの幸せを願っている。彼のそういう信念というのはちゃんと見せたいなと思いました。それに彼がハニーや、さまざまなキャラクターの思いを代弁するシーンがすごくいいんです。情熱を内に秘めながら、かつお茶目なのに、物事をしっかり俯瞰で見ているキャラクターだと思います。ハニーの理解者であるからこそ、ハニーがこう思っているんじゃないかって代弁してくれるんです。だから彼の代弁は的を射ているようにシナリオ上でも作っていきました。

――アキバ総研では、堀江由衣さんのインタビューも掲載しているのですが、そのインタビューでキーワードとしてあがったことを、うかがっていきたいと思います。まず「昭和感」を感じるという話があったのですが。

高橋 昭和感(笑)! そうですねぇ……、団兵衛と順平はだいぶ昭和感があると思います。でも昭和過ぎる部分は、ある意味今風に描いた部分もあります。もちろん、そうすると変わってしまうキャラクターもいるので、キャラクター性を重視して、原作のままの台詞の言い回しなどが、昭和感として匂ったのでしょうか。シスタージルとか、怪人たちは先生の作品にすごく近いんですけど……たとえばどういうところですかね?

――「ひい、ふう、みい」っていう数え方が、もう昭和だなって話でした。

高橋 あぁ~そうですね。それも原作のキャラクター性を崩さずにシナリオを作成していったからなのかもしれません(笑)。ものすごく緊迫したシーンで団兵衛と順平が突然現れたりするところもあるし、原作にあるスケ番グループが出てきたり、ちょっとイっちゃってる「ヒストラー」(常似ミハル)っていう先生がいるんですけど、お仕置きをムチでするんですよ。ああいうのもまた永井先生の「キューティーハニー」ならではだと思いますので。

――それと、セクシーさやバイオレンスさは飛び抜けているという話でした。

高橋 イメージとしてはキュートにセクシーな感じでしたね。監督は「セクシーさもバイオレンスさも惜しまない!」と断言されていたので、そこは全力を注がれているのではないかと思います。監督は永井先生の大ファンなので。もちろん脚本のほうでもセクシーさは惜しんでないですし、コンテでさらにセクシーになっています。原作が持っている百合っぽさも、原点回帰のテーマのもとに、永井先生の「キューティーハニー」の持っている百合っぽさは大事に描いています。ナっちゃんはハニーが大好きだし、ジュネも素敵な人だと思っている。ハニーもジュネを素敵な先輩だと思っていたりする。ジュネからするとそれが愛憎に変わったりするんですけど、女子たちのちょっと濃い友愛みたいなものは、ふんだんに盛り込まれていると思います。


――お話を聞いていると、原作もあわせて読んでみたくなりますね。

高橋 ぜひ若い方々にも読んでほしいですね、原作の漫画を。すごくインパクトを感じるのではないかと。ハニーは唯一無二のキャラクターなので、楽しんでいただけると思います。

――では最後に、アニメを楽しみにしているファンにメッセージをお願いします。

高橋 さまざまなハニーを愛していただけたらなというのと、ジルとハニーと夏子の関係を、今回は丹念に紡いでいったので、その3人の心情を追っていただけたらありがたいです。あとタランチュラパンサーがとても独特で、ちょっと予想外な動きをしたりするので、原点回帰をテーマに掲げてはいますけど、そういったオリジナル要素も楽しんでいただけたらありがたいなと思います。



(取材・文・写真/塚越淳一)

おすすめ記事