見どころは、アニメならではの空気感。4月放送アニメ「鹿楓堂よついろ日和」原作者・清水ユウ先生にインタビュー

「月刊コミックバンチ」で大人気連載中、清水ユウさん原作の「鹿楓堂よついろ日和」(ろくほうどうよついろびより)。和風喫茶・鹿楓堂を舞台に、店主でお茶担当のスイ、ラテアート担当のぐれ、スイーツ担当の椿、料理担当のときたかがお客様を「おもてなし」する、喫茶店を舞台にした1話完結型ハートフルストーリーが人気の作品だ。今回、ついにTVアニメが放送開始となった本作の原作者・清水ユウ先生にインタビューを実施。本作がいかにして生まれたのか、そして原作者ならではの視点で語る、アニメへの期待など、たっぷりお話をうかがった。


編集と2人3脚で歩んできた初連載作品

──アニメ化で初めて本作を知るという方もいらっしゃると思います。まずは本作についてどんな作品か、教えていただけますか。

清水 「鹿楓堂」という、個性の違った4人の店員がいる喫茶店が舞台になっていて、そこを訪れるお客さんのちょっとしたお悩みを4人が解決してあげるという、お悩み解決形式のお話になっています。それ以外にも、店員同士のほのぼのした日常の話とか、ちょっと泣ける話とか、いろんなテイストの話を入れるようにしています。シリアスな話もあるんですが、根底に「読んでくれた方に楽しい気持ちになってほしい、癒されてほしい」という気持ちがあるので、あまり重過ぎる話や、つらい展開、悪役キャラは意識的に出さないようにしています。

──本作が連載初作品とおうかがいしたのですが、これまではどんな活動をされていらしたのでしょうか。

清水 シナリオつきの読み切り作品を描いたりしていたのですが、本格的な連載は本作が初めてでした。

──先生も、カフェやお茶が好きでカフェが舞台の作品にしようと思われたのですか?

清水 元々企画を考えている時に、編集部の方から「カフェものはどうか」という提案があり、自分も食べることは好きなので、グルメ系の作品を考え始めました。最初は洋風の喫茶店をイメージしていて、キャラクターを起こしたときにもワイシャツに黒ベストでギャルソンエプロンというイメージで考えていたんですが、途中で着流しもいいんじゃないかと思いついて、そこから和風テイストに変えていきました。

──もともと「和」のものはお好きだったのでしょうか。「和」の魅力はどんなところにあると思いますか?

清水 着物や和のモチーフは好きでした。着物でも、季節によって柄の合わせ方が違ったり、和食や和菓子でもそうなんですが、四季をすごく大切にしているところが、和の魅力なのかなと思います。作品の中でも、季節はなんとなく意識して描くようにしています。


──初連載ということで、ネタ出しはやはり苦労されることも多いかと思います。ストーリーはどのように考えられているのでしょうか。

清水 ネタ出しはやはり大変ですね。今度は姉妹を出そうとか、OLさんを出そうとか、毎回担当さんと相談させていただいています。

──作品のキーアイテムとなる食べ物は、先に決められるのでしょうか。

清水 食べ物は一番後に決まることが多いです。先にキャラクターが決まって、その人の悩みが決まって、そこからその悩みを解決するための食べ物が決まるという感じですね。

──作品に出てくる料理類は、先生が考えられているのでしょうか。

清水 担当さんと次のテーマにするお菓子や料理を話し合って、大体の形が決まったら、そのストーリーにあわせたものの具体的なレシピや監修はフードコーディネーターさんの方に相談して、そちらから資料をいただいています。写真もそれを参考にしていつも作画しています。

──実際にカフェ巡りをされて、作品の参考にされたりするのでしょうか。

清水 地方在住なので、なかなか巡れていないですが、近くにあったら嬉しいと思う理想の喫茶店を描いている、という感じですね。和菓子も好きなんですが、練りきりとかの和菓子って、気軽に食べられるところがあまりない気がするので、それが気軽に食べられたらいいなというのもあって、作中で扱っています。

──お悩みを解決してくれるメインの4キャラクターができ上がった経緯というのを教えていただけますか。

清水 ずいぶん前のことなので細かくは覚えていないんですが、最初に4人にしようというのを決めて、そこでバランスを考えてキャラ配置をしました。そこから、リーダーと元気系、ツンデレっぽい子とおっとりしたキャラ・・・といった風に肉付けをしていったのだと思います。

──お気に入りのキャラクターや思い入れの強いキャラクターというのはいますか?

清水 メインの4人に関しては気に入っていると言うのは特になくて、みんな平等で、みんな大事なキャラクターですね。一応スイが話の軸にはなっているんですが、特に主人公というふうには決めていないので、バランスよく描いていこうと思っています。サブキャラでは角崎が、お話を引っ張ってくれるので動かしやすくて好きなキャラクターですね。



連載当初から思い描いていた、憧れのアニメ化

──それでは、そんな本作がアニメ化されることになったと聞いたときの、率直なお気持ちを教えてください。

清水 漫画家になった時から、アニメ化したいという夢がずっとありましたので、まずはすごく嬉しいという気持ちでした。ただ、私は心配性なところがあるので、この作品で大丈夫なのかなという心配もありました。

──「大丈夫」というのは、どんな部分についてでしょうか?

清水 まだ原作の話が途中なので、物語として、アニメとして、視聴者の方に楽しんでいただけるのかというところですね。それでも、やはり夢がかなったという喜びはありました。

──その不安を抱えていた中で、監督さんやスタッフさんとお話されて解消された、ということはありましたか?

清水 スタッフさんと顔合わせをした際に、スタッフの皆さんが作品を読み込んでくださっていて、すごく愛してくださっているのを感じました。この作品のテーマ性やキャラクター性も的確に理解してくださっていて、これならきっと原作を超えるような素晴らしい作品になるんじゃないかという安心感がありました。

──安心感を得たということですが、顔合わせや打ち合わせなどで、「ここだけは変えないでほしい」という要望を出した点などはありましたか?

清水 スイ(東極 京水)の話は、物語の軸というところもあってどうしてもシリアスな要素があるんですが、そこがあまり重くならないといいなと。アニメ化のお話をいただいたときから心配していました。ですが、実際に監督さんたちとお話させていただいて、こちらから言わなくても皆さんそこはよくわかってくださっていてあまり重くなりすぎず、癒されてもらえるような作品にするということは皆さん理解してくださっていたので、そこは言わなくても大丈夫だなと思いました。本当にとてもていねいに作ってくださっています。


──今回音響監督を担当される佐藤卓哉さんは、セリフの直しを入れたりされる方ですが、その指示を聞いていて感じたことはありましたか?

清水 最初にテストで演技するのを聞いて、こっちがちょっと「ニュアンス強すぎるかな」とか「このキャラにしては強すぎるかな」と感じたところを、こちらが言うまでもなく、音響監督さんが「そこはもう少し抑えたほうがいい」など、的確に指導なさっていて、その感覚ってすごいなと思いました。キャラクターのことをよく分かっていないとできないことだと思うので。

──佐藤卓哉さんは、「STEINS;GATE」や「好きっていいなよ。」など、アニメの監督をされている方で、今回、神谷監督が長編アニメを作るのが初めてということもあり、アドバイザーとしても入っていただいているとのことですが、「シナリオ会議にも全部出ていて、一緒にシナリオを作っている人物が音響監督をしていることもあり、ファイナルの絵まで見えているので、安心感も大きいのかもしれないですね。

清水 本当に、文句のつけようがないアニメ化ですね。私は、アニメはアニメとしての色を出していただいたほうがいいんじゃないかなと思っているので、完全に原作に寄せなくてもいいと思っているのですが、キャラクターのことを正確に把握してくださっていると思います。

──アフレコ現場に何度か足を運ばれたとのことですが、漫画家という目線で見ると、現場はどのように見えるのでしょうか。

清水 マンガは、基本担当さんとしかやりとりしないくらい孤独な作業なんですが、アニメというのは思っていた以上に多くの方が関わっているんだなと感じましたね。そして、スタッフやキャストの皆さんが本当に作品のことを考えてくださっているんだなと嬉しかったですね。

──アフレコの現場の雰囲気はいかがでしたか?

清水 「すごいな」と圧倒されるばかりですね。ていねいな会話が多いのですが、聞いていると実際お店にいて、自分がお客さんとしておもてなしをされているようで、耳から癒されました。

──そんな耳に癒しを与えてくれるキャストには豪華メンバーがそろっていますね。

清水 恐れ多いキャストの方ばかりで、最初聞いたときは震え上がりました(笑)。キャラクターのとらえ方がすごく的確で、こっちが逆に「こういう話し方するんだ」とキャラクターの解釈が深まるような、勉強させていただく部分がすごくありました。


──さらに今回は、アニメスタッフに料理デザインの方がいらっしゃいますが、アニメにこういった方がいるというのは珍しい気がしますが、お話しされたりしましたか?

清水 時間がなくてなかなかお話しできずにいるんですが、どれもすごくしっかり描かれているので、これはグルメ面でもかなり期待できる、観た方がお腹の空くアニメになっていると思います(笑)。

──アニメではその料理が、さらにカラーになるということもありますよね。

清水 マンガはどうしてもモノクロなので、アニメになってカラーになるアニメならではのよさだと感じますね。イクラとかつやつやしていて。

──楽しみな料理はありますか?

清水 ナポリタンがやっぱり、読者さんの反響が大きかったので、これはアニメ映えするんじゃないかなと思いますね。

──原作者視点としてのアニメの見どころはどんな点でしょうか。

清水 キャラクター同士のちょっとしたかけ合いとか、関係性が出ているような会話の出し方がすごくいいんです。ぐれ役の小野さんと椿役の山下さんのぽんぽんとテンポのいいセリフのかけあいなど、コンビ感があって聞いていてとても楽しいです。その和気藹々としたテンポ感や、ゆったりとした場面での穏やかな会話の空気は、アニメならではのよさだと思います。4人の会話をずっと見ていたい、聞いていたいという気持ちになりますね。

──アニメならではの会話が入ってきたりもしますよね。

清水 どうしてもマンガだと尺の関係でカットしてしまうような舞台裏のお話もちょこちょこっと入ってきたりするので、それはマンガを読んでくださっている方にも楽しんでもらえるんじゃないかと思います。

──アフレコ収録で聞いた猫の「きなこ」について、ネタバレにならない程度に感想を教えていただけますか?

清水 「きなこ」は女性声優さんがやるとかわいくなりすぎてしまうと思うんですが、そこを天﨑滉平さんが演じてくださることで、「きなこ」のちょっとポヤッとした部分や目つきの悪さなど、「きなこ」らしい部分がとてもよく表現されていたと思います。本当にイメージぴったりです!

──本作ではぐれのラテアートがとても気になるところなのですが、先生から観た感想をぜひ教えていただけますか。

清水 自分でも「アレはどうなるんだろう・・・」と気になっていた点ではあったのですが、物凄く再現度が高くて驚いています(笑)。そこもアニメのひとつの見どころだと思いますので、ぜひ楽しみにしていてください。

──改めて、今アニメという形になった感想を教えていただけますか。

清水 普段、ネタ出しやストーリー展開などで悩むことも多いのですが、いろんな人の支えがあるからこそ描けている作品なので、ここまで来られたのは支えてくれている方々のおかげだと思っています。アニメも本当に素晴らしいスタッフさんたちに恵まれて、とにかく全てにおいて、ありがたいという感謝の気持ちでいっぱいです。

──では最後に、アニメをご覧になる方にメッセージをお願いできますか。

清水 監督をはじめ、アニメスタッフさんたちが本当に丁寧に作ってくださっている作品です。

キャラクターの描写だけでなく、おいしそうな料理やお菓子などのグルメシーン、雰囲気のある背景美術やリアルな効果音など、色々な見所があると思います。基本的に原作に忠実に作ってくださっていますが、アニメオリジナルの演出や掛け合い、エピソードなどもたくさんあるので、原作の読者さんにも楽しんでいただけるんじゃないかなと思います。甘いものをつまむような、ゆったりした気持ちで楽しんで観ていただけましたら嬉しいです!

──ありがとうございました!



【作品情報】

■鹿楓堂よついろ日和

<放送情報>

AT-X、TOKYO MX、KBS京都にて放送中!

<イントロダクション>

ここは和風喫茶「鹿楓堂」。

店主でお茶担当のスイ、ラテアート担当のぐれ、料理担当のときたか、スイーツ担当の椿。

それぞれのスペシャリスト4人が働く隠れた人気店。

彼らはお客さまを「おもてなし」しながら、時にはお客さまの「悩み」を解決することも。

喫茶店を舞台に、素敵な4人が織り成すハートフルストーリー。

さて本日のお客様は…?

<キャスト>

スイ(東極 京水):諏訪部 順一

ときたか(永江 ときたか):中村 悠一

ぐれ(グレゴーリオ・ヴァレンティーノ):小野 大輔

椿(中尾 椿):山下 大輝

八京:前野 智昭

角崎役:鳥海 浩輔

きなこ役:天﨑 滉平

<スタッフ>

原作:清水ユウ(新潮社「月刊コミックバンチ」連載)

監督:神谷 友美

シリーズ構成:赤尾 でこ

アドバイザー・音響監督:佐藤 卓哉

キャラクターデザイン:安食 圭

料理デザイン:伊藤 憲子

美術監督:小倉 宏昌

プロデュース:GENCO

アニメーション制作:ZEXCS

製作:鹿楓堂よついろ日和製作委員会

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(C)清水ユウ・新潮社/鹿楓堂よついろ日和製作委員会

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