「ひそねとまそたん」第1話感想:今後が気になる、とにかく完璧な第1話!
樋口真嗣総監督、シリーズ構成が岡田麿里さん、制作がボンズ。さらにスタッフにそうそうたる顔ぶれが並ぶ本作。
ただ最初に公開されたキービジュアルを見ると、どこかほのぼのとした空気が流れている。それは青木俊直さん原案のキャラクターによるところが大きかったのだが、コヤマシゲトさんデザインによるドラゴンもかなりかわいらしい。え? これに自衛隊? しかも河森正治さんの戦闘機のデザインがどう結びつくの? と、多くのハテナが頭に浮かんだ人は、おそらく多かったと思う。
だが、そんな頭に浮かんだハテナを、すっ飛ばしてくれたのが1話だった。進路希望調査票に「私にしかできないもの」をと考え、“航空自衛隊”と記入した甘粕ひそねが、自衛隊で働き始めるところから物語は始まる。
果たして自衛隊で事務をしているひそねが、第8格納庫──通称「8格」に書類を届けに行くことになる。途中謎のヤクルトおばさんに会ったりしつつ、8格にたどり着くと、そこで自衛隊が秘匿しているOTF(変態飛翔生体)=ドラゴンに出会い、丸飲みにされてしまう。
かねてよりドラゴンに乗れる飛行要員を探していた自衛隊。ドラゴンに丸飲みされるほどドラゴンに気に入られた(=ドラゴンに選ばれた)“素質”のあるひそねを放っておく理由はなく、半ば強制的にDパイ(=ドラゴンパイロット)にしようとする。ひそねはひそねで、一度は拒否するものの、ドラゴンと通じ合い、ついにはドラゴンに呑み込まれて飛翔することになる、というまでが1話。ちなみに途中、ドラゴンは戦闘機に擬態(変形)する。
世界観やキャラクターの説明など、どうしたって詰め込みがちになる1話。しかもドラゴンに乗るまでを見せないといけない1話を、ここまで自然に、無理なく展開させる脚本がまず素晴らしい。たとえば冒頭で「私にしかできないもの」を探す少女が、選ばれた存在になるという流れも全然説明臭くないし、視聴者にいろいろなことを感じさせる余白まで残してくれている。あのヤクルトおばさんが言いたいことは何なんだろうとか……そんなことまで考えたくなるのが面白い。しかも脇役などでも、ちょっとしたセリフで、ここまでキャラを立たせることができる岡田麿里さんの脚本のすごさをまざまざと見せつけられた感じだった。
また青木俊直さんのキャラクターが動いているというのも感動的だった。キービジュアルだけでは伝わらない「動くキャラクター」の魅力。表情がどこかコミカルでマンガ的。ヤンキーの貝崎名緒がガンを付けてる表情とか、泣いてるときに目の線自体が波打ってるひそねとか、すごく愛着がわくし、ずっと見ていたくなる。そんな作画の味も際立っていた。
最後に声優さんのお芝居について。脇を固めるキャストの素晴らしさはもちろんだが、思ったことを全部口に出してしまう、性格に難有りな主人公・甘粕ひそねのボソボソしゃべりを、久野美咲さんが見事なまでに表現していて、ひそねはこの声しか考えられないというくらいのマッチ具合だった。名緒役・黒沢ともよさんのヤンキー演技も最高だったし、この先登場するであろう、ほかのDパイたちもどんなお芝居を見せてくれるのかも楽しみになってしまった。
あらゆる面で完璧だと感じた1話。ただ、これから何が起こるのか、ドラゴンに乗って何をするのかなどはほぼ語られていなかったと思うので、今後へのワクワク感もかなりある。また、OPとEDも2話以降に付くので、それも含め、早く2話が見たい。
(塚越淳一)
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