【インタビュー】SawanoHiroyuki[nZk]の新曲「Binary Star」は、Uruのボーカルによる雄大なバラード

作曲家・澤野弘之のボーカルプロジェクト、SawanoHiroyuki[nZk]がニューシングルをリリース。TVアニメ「銀河英雄伝説 Die Neue These」のオープニングテーマ「Binary Star」と、お台場・ダイバーシティ東京の「実物大ユニコーンガンダム立像」のテーマソング「Cage」の両A面シングルだ。「Binary Star」には、ボーカリストとして、TVアニメ「機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ」のエンディングテーマ「フリージア」を歌ったUruが参加。「銀河英雄伝説」の世界観にマッチした雄大なバラードになった。


Uruさんの歌声には、物語を感じました


──「Binary Star」は、TVアニメ「銀河英雄伝説 Die Neue These」のオープニングテーマです。楽曲制作にあたって、どのようなリクエストがあったのでしょうか?

澤野 日本語詞ではなく英語詞でいきたいというのと、バラードでストリングスをフィーチャーした楽曲にしたいというオーダーがありました。TVアニメーションのオープニングテーマはアップテンポなものが多いですが、今回は違ったアプローチをしていきたいと。そもそも「銀河英雄伝説」の過去のテーマ曲がミュージカル調だったりしたので、その流れを意識してのことだったのかなと思いました。

──英語詞、バラード、ストリングスが、まずは柱になったということですね。

澤野 それを踏まえてイメージしたのは、映画「アルマゲドン」でエアロスミスが歌った「I Don't Want To Miss A Thing」のような壮大なバラードでした。ああいう曲を[nZk]プロジェクトとして作って、それが作品とマッチしたら面白いかなと。

──SawanoHiroyuki[nZk]としても、新しいチャレンジだったということでしょうか?

澤野 バイオリンからチェロまでいる編成でストリングスを録った曲は、[nZk]ではなかったと思います。もちろん劇伴ではやっているんですけど。

──ストリングスの編成は、どんな形だったのでしょうか?

澤野 1stバイオリン6人、2ndバイオリン4人、ヴィオラ4人、チェロ2人ですね。歌ものとしては多い編成だと思います。

──そもそも「銀河英雄伝説」という作品には、どのような印象をお持ちでしたか?

澤野 もちろん存在は知っていましたが、そこまで深く作品に触れたことはありませんでした。なので、今回の作品の資料をいただいて、それを元に曲のイメージを固めていきました。まずは1回作ってみて、それをアニメ制作サイドにどう受け止めてもらえるか、反応を見てみようと。長い歴史を持つ作品ですが、自分にとってはまったく新たに作られる作品と同じような感覚でしたね。

──世界観をある程度理解したうえで、澤野さんならではのイメージで楽曲を作り上げていったと?

澤野 そうですね。[nZk]がやるなら、やはりバンドサウンドを意識したいなと思いました。ストリングスはマストですが、あくまでバンドサウンドとして作り上げていきましたね。

──壮大なロックになっていたと思います。

澤野 ロック・オーケストラ・バラードをうまい形で出せたらいいなと。ストリングスを使った曲をアレンジするときに重要視するのは、意外と間奏だったりするんです。そこに入った瞬間、サウンドトラック的なアプローチになるので、弦にどういう演奏をしてもらうかがポイントだなと。久しぶりにストリングスをがっつり録れたので、間奏にはエネルギーを注ぎました。

──TVサイズでは聴けない部分ですね。

澤野 そうですね。そこはCDでぜひ注目していただきたいです(笑)。

──ボーカルを担当するのは、Uruさんです。彼女を選んだ理由はなんだったのでしょうか?

澤野 TielleさんやGemieさんといった今まで組んできたボーカリストもいたんですけど、今回は新しい人と組んでみようかなと。曲を作り上げたうえで、それに合うボーカリストを探していったなかで、Uruさんの声が一番ハマるんじゃないかなと思いました。

──Uruさんのボーカルの魅力を、どう感じていますか?

澤野 ビジュアルイメージも含めて、ミステリアスな雰囲気のある方だなと思いました。彼女の資料映像を見る限りでは強く歌う曲がなかったので、逆に僕の曲で強い歌い方をしてもらったらどんなボーカルになるのか、興味もあったんです。楽曲とどんな混じり方をするのかなと。実際に「Binary Star」を歌っていただいた時に感じたのは、物語を感じる歌声だなということでした。

──ということは、Uruさんがそれまでに歌ってきた曲とは、違うベクトルで行ってみたかったと?

澤野 そうですね。今まで組んできたボーカリストの方々にも、そういうお願いをすることが多くて。わざとやっているわけじゃないんですけど、楽曲に合わせると、今までと違うアプローチを求めたくなるんです。今回も、AメロBメロの静かな部分は今まで通りのUruさんの歌い方がベストだなと思ったんですが、サビは強く歌ってもらって、果たしてどうなるのかなと。

──ボーカリストとしての新たな魅力を引き出してみたかったということですか?

澤野 いやいや、引き出すなんておこがましくて(笑)。今までの方もみんなそうだったんですけど、スキルのある方とご一緒させていただいているので、僕が救われているというか。こちらがお願いする新たなアプローチにも、柔軟に対応していただけているということなんだと思います。

──ボーカルのレコーディングはいかがでしたか?

澤野 英語詞の曲だったので、作詞のmpiさんとBenjaminさんにも同席してもらって進めていきました。発音に関する部分は彼らにアドバイスしてもらったんですけど、僕自身はいつも通りに進めていったというか、彼女から出てくる歌を重視しました。特にこちらからお願いしたのは、サビを強く歌ってもらうということだけでした。最初は大変そうに見えましたが、どんどん強いボーカルが出てきましたね。

──作詞のお2人には、どのような歌詞をお願いしたのでしょうか?

澤野 いつもそうなんですけど、作品の世界観を意識しつつ、あまり寄りすぎないようにと。それから、前向きな歌詞にしてほしいとお願いしました。僕が英語詞で重視するのは、詞の内容よりもむしろ、サウンドにどういう響きが乗るか、どういうハマり方をするかなんです。

──「Binary Star」というタイトルは、やはりラインハルトとヤン・ウェンリーのことなのでしょうね?

澤野 作詞のお2人は、それを意識して名付けたはずですが、僕 自身は言葉として発したときの響きが、楽曲のサウンド感と合っていていいなと思いました。歌詞もサウンドも「銀河英雄伝説」らしさを強く意識したというよりは、こういうアプローチも「銀河英雄伝説」には合うかもしれないと、ファンの方に感じていただければいいかなと。オープニングの映像と重ね合わせて、楽曲を楽しんでほしいと思います。

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