ヒーローが目覚める瞬間は、こうして生まれる!「西遊記 ヒーロー・イズ・バック」日本語吹替版主演・咲野俊介、独占インタビュー!【アニメ業界ウォッチング第45回】

今年2018年1月に公開された中国製のCGアニメ映画「西遊記 ヒーロー・イズ・バック」のBlu-ray&DVDが、5月9日(水)にリリースされる。「西遊記って、天竺に旅する話でしょ?」と早合点している人にこそ見てもらいたいのだが、この映画は我々の知る西遊記ではない。まったく別の話だ。天界の暴れ猿・斉天大聖(俗に言う孫悟空)が中年になり、たまたま知り合った少年に助けを求められるが、若かったころのパワーが出せずに苦悩する……という、人間臭くて渋みのあるドラマに仕上がっている。
日本語吹替版では、TVアニメ「山賊の娘ローニャ」の監督、宮崎吾朗さんが吹替監修「RWBY」の打越領一さんが演出という理想的な布陣が敷かれた。そして「本当は強いくせに最盛期の力を出せない中年ヒーロー」、斉天大聖を演じたのは洋画・ドラマなどの吹き替えを多数こなしてきたベテラン声優、咲野俊介さんだ。一部の熱狂的ファンから“咲野大聖”とまで呼ばれて愛された孤高のヒーロー像は、いかにして演じられたのだろう?


斉天大聖は、監督の熱意を背負う役


──「西遊記 ヒーロー・イズ・バック」は、最初はもちろん原語版をご覧になったと思うのですが、どんな感想を持ちましたか?

咲野 最初に見たときは、とにかくまず、田暁鵬(ティエン・シャオポン)監督やスタッフのすさまじい情熱を感じました。ネットの記事を調べてみると、監督たちは制作に何年も費やして、体制側とも戦いながら映画をつくり続けたと書かれていて、そのスタンスが映画に力を与えていたんだなと納得しました。この映画の熱量に、どれだけ僕は応えられるんだろうか……という気持ちでした。

──では、原語版をご覧になった時点で、もう主役の斉天大聖を演じることは決まっていたんですね?

咲野 そうです。オーディションがあったわけではありません。(吹替監修の)宮崎吾朗さんからイメージを聞かされた(演出の)打越領一さんが何人かのボイスサンプルを提出して、その中から吾朗さんが僕を選んでくれたと後から聞かされました。

──演じるにあたって、どこにいちばん苦労しましたか?

咲野 やはり、叫び声ですね。斉天大聖は叫んでばかりいるので、喉に負担がかかるんです。上手い声優さんなら、家での練習はほどほどにして本番に臨むことができるんでしょうけど、僕は家でリハーサルするときも本番のつもりで声を出します。だから近所迷惑ではあったかも知れないけど、収録の前日、大声でリハーサルして……朝起きたとき、すでに喉に違和感があったんです。
冒頭、天界で斉天大聖が神々と戦うシーンでは、まだ大聖は若いし、元気もある。だから、いちばん声を張らなくちゃいけなくて、大変なんです。昼食休憩をはさむと、喉が冷えますから、もう午後からは声が出なくなってしまって……。収録初日はほかのキャストがみんな揃っているので、「最後までやらせてほしい」とお願いしました。ラストにすごい叫びがあるんですけど、それでもう喉がボロボロになってしまったので、不満の残ったシーンは2日目に録り直しました。


──そんなに大変だったんですか?

咲野 原語版の声優さんは3日間もかけて収録したそうなんですけど……つまり、斉天大聖という役は、監督の熱意を背負う役なんでしょうね。映画の叫び声というのは、やはりセリフですから、音として成立するように、きれいに響くように叫ぶんです。だけど、斉天大聖という役はそれを許してくれない。高いところから落ちたり、岩に叩きつけられたりするシーンでは、本気で命の危険を感じるような声を出さないと、自分の中で納得がいきませんでした。

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