「人って作詞するとき悩むんだ」発言の真意も明らかに! TVアニメ「LOST SONG」畑亜貴(作詞)&白戸佑輔(音楽)インタビュー!

Netflix、TOKYO MXほかにて好評配信・放送されているオリジナルTVアニメ「LOST SONG」。鈴木このみさんと田村ゆかりさんがW主演を務め、2人の歌姫が織りなす幻想叙事詩(ファンタジーオペラ)と銘打たれた本作は、その楽曲の数々も注目されるところだ。


作品を彩る楽曲は、2018年5月23日に発売となったオープニング主題歌「歌えばそこに君がいるから」(歌:鈴木このみ)、エンディング主題歌「TEARS ECHO」(歌:フィーニス[CV.田村ゆかり])をはじめ、劇中歌もすべて作詞を畑亜貴さん、作曲を白戸佑輔さん(Dream Monster)が担当している。そこで、今回はこの2人を直撃。主題歌を中心に楽曲制作のことをたっぷりとうかがった。

リテイク6回にもおよんだオープニング

――まずは、オープニング主題歌についてお聞きします。曲先(=メロディを先に作られた)とのことですが、白戸さんは今まで鈴木このみさんの曲は何度も作られています。今回はどのようなことを意識して作られたのでしょうか。

白戸佑輔(以下、白戸) 最初、森田と監督からは「エモいやつ」「いいやつ」といったざっくりとしたリクエストがあり、いっぽうで委員会からは「とにかくキャッチーに」「神曲にして」などいろいろリクエストがあり、悩みました(笑)。

そこから、歌唱を担当する鈴木このみさんからもリクエストがあって、チャレンジを重ねて、6リテイクやりました。「OP6」ってファイルまでありましたからね。


――そして完成した楽曲は、特にどのあたりにポイントを置いているのか教えてください。

白戸 いろいろチャレンジを重ねたのですが、アップテンポは何となく嫌だったんです。でも、切なさを入れるのであれば(アップテンポも)アリかなと思って。かっこいい路線に寄せるよりも、“切ない要素を多めにしたアップテンポ”ということをポイントにして作りました。

――作詞は鈴木さんと畑さんの共作となります。どのような形で作られたのか教えて下さい。

 このみちゃんに最初からいろいろ言っても混乱しちゃうだろうなと思って、まずは自分が思っていることを好きなように書いてもらったんです。調整は後で(私が)やるからと。

――実際に鈴木さんが作詞しているところを見に行かれたそうですね。

 書いている現場に陣中見舞いのような感じで行ったんですけど、このみちゃんは部屋に閉じ込められてパソコンを開いて「う~ん、う~ん」と悩んでいるんですよ。私は人が作詞をしているのを見たことがなかったので、ある意味感動しちゃって。

「人って作詞するとき悩むんだ」って(笑)。

畑亜貴さん


――以前「LOST SONG」のイベントでも畑さんがこの言葉をおっしゃって、お客さんも登壇者のみなさんも衝撃でどよめいてましたね。というか、畑さんは作詞する時に悩まないのですか?

 その言葉だけだと誤解を招きそうです(笑)。もちろん悩みますよ。私は“歌詞を書く前に”悩むんですよ。「この曲は、このアニメのどの位置にいるんだろう?」って。今回だったら、このみちゃんがヒロインでもあり、作詞に挑戦してアーティストとしても新たな扉を開く曲になるじゃないですか。それをどう融合させたらいいんだろう、という立ち位置を考えるのにすごく悩むんです。

おぼろげにこの曲の役割がわかってきたら、今度は曲を聴きこんでいきます。この曲は何を表現したいんだろうなって。絶対に“曲が呼んでいる言葉”ってあるから、曲を理解しようと思ってすごく集中するんですね。

そうすると“書きたい映像”と“その曲がもっている映像”が自分の中で一致してくるんですよ。それは実際のアニメとは違う映像なんですけど、実際の映像と違うことで聴く人には多角的に見せられるんじゃないかなと。

なので、書こうと思った時には曲のテーマも立ち位置も決まっているから、がーーーっと書くだけなんです(笑)。

――書くのは頭の中にできあがったものをアウトプットしているだけの作業なのですね。

 そうなんです。

白戸 それって曲を作る時も一緒ですね。たとえば、サビを作る時にパソコンを立ち上げて「う〜ん……サビができない」と悩むよりも、そうじゃないときに「あ、こういうサビにしよう」と思いますから。

 まず頭の中で立体的なものを考えるじゃないですか。「この曲とは?」ということを。

白戸 考えます、考えます。

 その時点では悩むけど出力には悩まないんです。なので、出力で悩んでいるこのみちゃんが新鮮だなって(笑)。

――単純に書き慣れていない、という技術的な部分もありますからね。この曲はキャラクター(リン)名義ではなく鈴木このみさん名義なので、やはり先ほど言われたように本人のことも含めてのイメージなのですね。

 そうですね。アーティストとしての曲の立ち位置をすごく考えました。彼女にとってどんな転機になる曲なのか、この曲でどんなドアを開けてあげたらいいんだろうと。

――同時に、鈴木さんにとってはキャラクターを演じることも挑戦となります。劇中歌は“リンとして”歌うわけですが、そちらは苦労していましたか?

白戸 苦労していましたね。本人のアーティスト性がありますから、この世界観に寄せてくれと言われても最初はとまどっていたみたいです。やさしめに歌ってみるんだけど、本人の技術が押し出される部分が強すぎちゃって。

「ちょっと抑えてみて」「それってこういうこと?」「そう、その路線」「この路線かぁ」などと、こちらの言葉と彼女の引き出しを一致させていったんです。彼女は引き出しをすごく持っているので、こちらが伝えたことを具現化してくれるんですけど、(キャラクターとして)そこに辿り着くことに慣れていないというのは感じましたね。

 今までの引き出しは全部“鈴木このみとしての引き出し”だと思うので、新しい引き出しを作らなきゃいけない時だったと思うんですよ。

白戸 この作品を通してそれはできたのかなと思います。

白戸佑輔さん



すべてを包み込んでくれるエンディング

――対照的に、エンディング主題歌は田村ゆかりさん名義ではなくフィーニス名義です。よりキャラクターを意識したかと思いますが、作る際はいかがでしたか?

白戸 エンディングも曲が先だったんですけど、「バラードだけど、あまり壮大にはしないでほしい。でも、こじんまりするのではなく、物語が終わった後の読了感もプラスして」という感じに言われました。「ちょっと開けた丘の感じ」と言って丘の写真も見せてくれて(笑)。

 私は見てない(笑)。

白戸 でも、その丘に悩まされて、エンディングもED3(3リテイク)ぐらいまでかかりました……。

 見なくてよかったかも(笑)。

白戸 結局は、読了感を重視しましたね。本編後にイントロからAメロを聴いて「今回も終わったな」という感じを与えられるように。そして、サビは切なくありつつも、ぬるくし過ぎないことを意識して作りました。

――歌詞についてはいかがですか?

 “キャラクターが歌う”ということをすごく意識して、フィーニスが歌って違和感のある言葉は絶対に入れたくないと思いました。キャラクターに感情を重ねた人が歌にも感情を重ねられるようにと。悲しいことも多いストーリーですが、時の流れの中ですべてを許して抱きしめるような感じに、エンディングで1話1話を締められたらいいなと思って。

――歌詞を読むと、フィーニスの心の声がストレートに書かれている印象を受けます。

 オープニングもそうなんですが、「難しい言葉を使うのはやめよう」「誰がどこで聴いても単語の意味がわかるようなものにしよう」と思ったんです。この作品は歌が大事じゃないですか。なので、歌詞カードを見なくてもわかるような言葉で作ろうと思いました。それは劇中歌も同じですね。

――畑さんはこれまでも田村さんの曲を何度も書いていますが、白戸さんは、今回はキャラクターソングではあるものの、田村さんが歌われる曲を書くのは初めてですよね。レコーディングでの印象はどうでしたか?

白戸 僕は「うめー!」しか言ってなかったです(笑)。いろんな方のレコーディングでディレクションをしてきましたが、田村さんは表現の仕方も自分で合うようにやってくれるので、僕が言うことは「音を伸ばし過ぎ」ぐらいしかなくて(笑)。世界観をわかっているし、監督がこうしてほしいということをしっかりイメージして出せているなと思いました。

 プロフェッショナルですからね。

白戸 「(ディレクションを)どうしようかな」と考えていたのに、何もいりませんでした(笑)。

 たぶん彼女は、アーティストとして歌う時と役として歌う時とでは全然違っていて。今回は役として歌っているので、“歌が力強い”ということ以上に“世界観を把握する力が強い”のだと思います。



歌詞の言語も気を使いました

――歌がキーワードの作品ということで、劇中歌や劇伴なども重要だと思います。特に意識した点などはありますか?

 歌詞で言うと、“言語”にすごく気を使いましたね。私たちは日本語でしゃべっていますけど、はたしてこの世界は日本語の世界なのか。お茶を飲むことをティータイムと言ったりするように、外来語を歌詞に使っていいものなのかとすごく悩みました。

基本的には日本語でわかりやすく、外来語を使うとしても素朴な言葉というか、もとになるような言葉にしたいなと。そうなると、英語ではなくラテン語ならいいのかな……しかも、なるべくみんなが知っているような「きっとあの言葉の語源なのね」とわかるような言葉を使おうと思ったんです。言葉って曲と合わさって力を持つものだから、その定義付けを自分の中でしっかり作らなきゃいけないなって。

――曲のほうはいかがですか?

白戸 最初に3曲、ホールレコーディング用の曲を作り、そこからトータルで10か月ぐらいずっと作っていたと思います。結構リテイクもあって大変でした。

――ホールでレコーディングしたということは、壮大さも重視されたと?

白戸 そうですね。壮大さは結構重視しているんですけど……デモをあげると監督から「そういうハリウッド感はいらない」「壮大だけど、キラキラした魔法感ではなくて」「○○っぽいのはやめてくれ」「△△を意識してみて」などと言われて(笑)。どうしようか悩んだ結果、クラシックの重めな感じにしようと思いました。

――イメージをつかむのが大変そうです。

白戸 監督は「こうじゃない」というサウンドイメージが固まっていたので、それをもとにして詰めていった感じですね。でも、脚本が改訂されていくに従ってニュアンスもじわじわ変わり、作った曲にすごくマッチしてきて。後半に出てくる曲は、サウンドが見えていたのですごく作りやすかったですね。イメージと一致するまでの手探り期間が一番大変でした。

――最後に、お2人から見た「LOST SONG」の魅力をお聞かせください。

白戸 「すごくシリアスなんだけど、いきなりギャグが飛び込んでくる」とか「シリアスは消えていないけど、急におバカポイントが出てくる」といった監督の色がちょこちょこ出てくるのは、楽しみのひとつかなと思います。単純には終わらない作品なので、ぜひいろいろ楽しんでもらいたいです。

 この作品は世界観やストーリーも面白いんですけど、すごく考えさせられる悲しいことが起こったりもします。その嘆きに本気で向き合うと、私もずっと悲しみに浸ってしまい、「人の嘆きとは?」みたいに考えてしまうんですよ。何かを守るために戦うのもわかるけど、やっぱり戦うことによって悲劇が起こってしまう。でも、それは誰かの幸せを守るためであって……とぐるぐる考えさせられるモードに入ってしまって。そういう考えさせられるところも素敵な作品だなと思いました。

(取材・文/千葉研一)

【オリジナルTVアニメーション「LOST SONG」】

─ この歌は星の運命すら変える 2大歌姫による幻奏叙事詩(ファンタジーオペラ)

<主題歌CD、本日5月23日(水)発売!>

オープニング主題歌:「歌えばそこに君がいるから」

作詞:鈴木このみ・畑 亜貴/作曲・編曲:白戸佑輔/歌:鈴木このみ

アーティスト盤:CD+DVD USSW-0094 1,800円(税別)

アニメ盤:CD USSW-0095 1,300円(税別)

エンディグ主題歌:「TEARS ECHO」歌:フィーニス(cv 田村ゆかり)

作詞 :畑 亜貴/作曲・編曲 :白戸佑輔/歌:フィーニス(cv. 田村ゆかり)

USSW-0097 1,200円(税別)

★カップリング曲として、劇中歌「終滅の歌」も収録!

<配信>

Netflix先行配信 :2018年3月31日(土)より毎週土曜

Netflix全世界配信:2018年夏

<TV放送>

TOKYO MX:2018年4月7日(土)より毎週土曜25:30~26:00

サンテレビ :2018年4月7日(土)より毎週土曜25:30~26:00

KBS京都 :2018年4月8日(日)より毎週日曜23:30~24:00

テレビ愛知 :2018年4月8日(日)より毎週日曜25:35~26:05

BSフジ :2018年4月11日(水)より毎週水曜24:00~24:30

<キャスト>

リン:鈴木このみ

フィーニス:田村ゆかり

アル:久野美咲

ポニー・グッドライト:たかはし智秋

ヘンリー・レオボルト:山下誠一郎

アリュー・ルックス:瀬戸麻沙美

モニカ・ルックス:芹澤優

コルテ/メル:茅野愛衣

バズラ・ベアモルス:小山剛志

ルード・ベルンシュタイン4世:鈴木裕斗

ドクター・ヴァイゼン:小形満

タルジア・ホークレイ:糸博

オープニング主題歌:「歌えばそこに君がいるから」歌:鈴木このみ

エンディグ主題歌:「 TEARS ECHO」歌:フィーニス(cv 田村ゆかり)

©MAGES./LOST SONG製作委員

このみちゃんに最初からいろいろ言っても混乱しちゃうだろうなと思って、

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