“山崎はるか”として歌うこととは? デビューシングル「ゼンゼントモダチ」発売記念、山崎はるかインタビュー

声優として多くの作品やイベント、ライブに出演している山崎はるかさんが、2018年5月23日(水)に1stシングル「ゼンゼントモダチ」で待望のソロデビュー。


表題曲は好評放送中のTVアニメ「魔法少女サイト」のエンディングテーマ。少女たちの思いを力強さと切なさのある歌声で紡ぐ。カップリング曲「金曜日のBambi」は表題曲とはまた違ったやさしい歌声が印象的な応援歌だ。

今回、ソロデビューを目前に控えた山崎さんにインタビュー。アーティストデビューに対する率直な思いや、楽曲に込めた思い、レコーディングやMV収録の裏話などたっぷり語っていただいた。

私がアーティストデビューするとは考えたこともなかった

――ソロデビューおめでとうございます。まずは、ソロデビューの話を最初に聞いた時の率直な気持ちから教えてください。

山崎 本当にビックリしました。驚き100%というか、その日はあまり実感がなかったです。楽曲をいただいて、アーティスト写真やMVも撮影するんだって……とやっていくうちにだんだん実感が湧いてきて。そこで初めて嬉しいという気持ちや、こうしたいといったものが出てきました。それまでは、どこか他人事みたいな感じだったんですよね。

――声優デビュー作の「劇場版ハヤテのごとく!HEAVEN IS A PLACE ON EARTH」では水蓮寺ルカとしてCDを出されていますが、その頃に山崎はるかとして歌いたいという気持ちは?

山崎 なかったです。


――その後、周りの声優仲間たちがアーティストデビューしていく中で、自分もいつかはと思ったことは?

山崎 考えたこともなかったです。

私は「アーティストと声優さんは別物」という感覚で育ってきたんです。自分がオタク活動を盛んにやっていた学生の頃は、顔を出さない声優さんが多かったので「声優は声優、アーティストはアーティスト」だと思っていて。声優を目指した段階からずっと、自分とアーティストを重ねることはなかったですね。私の先生である坂本千夏さんも、テレビに何回か出たことはありましたが基本的には顔を出さない方でしたし。

――そうすると、驚きだけでなくとまどいもあったと思います。その気持ちはどのように変わっていったのですか?

山崎 大きかったのは「NBCフェス」(NBCUniversal ANIME×MUSIC FESTIVAL)ですね。お客さんがいるところで「ソロデビューさせていただきます」と言った時にいただいた声援が嬉しくて。そこが一番の変わり目でした。

それまでは、嬉しさはあれど、どうしても「受け入れてもらえるかな?」「私がやることに需要はないんじゃないかな」という考えが主だったんです。でも、(シークレット出演である)私のために来てくれた人がいない中で、「がんばって!」という声援をいただいたのは勇気に繋がりました。

――ご自身のアーティストとしてのルーツといいますか、もともとはどういう曲を聞いて育ったのか教えてください。

山崎 私はディズニーソングに囲まれて育ちました。歌入りの曲で元気づけられたのは、DREAMS COME TRUEさんの曲とかですね。特に「何度でも」は何度聴いたかわからないぐらいです。10代の頃って気持ちの浮き沈みが激しいじゃないですか。沈んでどうしようもない時に「何度でも」から元気をもらっていました。ほかにはAcid Black Cherryさんのようなロックも聴いていましたし、MISIAさんや伊藤由奈さんなどの歌い上げる曲をカラオケで歌っていました。

オタクなのでアニメソングも好きで、特にジャンプ作品が好きだったので男性ボーカルで疾走感のある、いわゆる“友情・努力・勝利”のような曲もプレイリストに入っていて。あとは、ボーカロイドも聴いていましたね。

――普段から声のモノマネが上手ですけど、カラオケでも真似して歌うタイプでしたか?

山崎 はい。100%そうです。ディズニーソングであればそのキャラになりきって歌いますし、中島みゆきさんのようなクセの強い方をモノマネしたり、誰の曲を歌ってもモノマネしていましたね。(ボーカロイドの)鏡音レンとか、機械音的なものでも全部モノマネしていました(笑)。



山崎はるかとしての歌い方を追求

――デビューシングルについてお聞きします。まずは表題曲「ゼンゼントモダチ」について教えてください。

山崎 「ゼンゼントモダチ」は歌詞が「魔法少女サイト」に沿っていて、1番は主人公の親友である露乃の気持ち、2番が主人公・彩の気持ちを描いているんだなと感じました。なので、主人公たちの気持ちになって感情を込めて歌っています。ただ、アニメ本編はダークなイメージがありますけど、エンディングはやっぱり救いや希望も欲しいなと思って。サビは光に向かっていけるような歌い方にしたんです。

――メロディの印象はいかがでしたか?

山崎 すごく好きな曲調で、サビは1回聴いただけで歌えちゃうぐらい体にすぐ入ってきました。

――今まではキャラクターソングとして特定のキャラクターの気持ちを歌ってきましたが、作品全体のことを歌うのは難しかったですか?

山崎 キャラクターソングか作品全体の曲か、という意味では難しくなかったんですけど、“山崎はるかとして”歌うのが難しくて……。自分の歌がどういうものなのかわからなかったんです。(普段は)モノマネで歌うし、お仕事ではキャラクターで歌っていたし、山崎はるかで歌うことってプライベート含めてもなくて。「山崎はるかで自由に歌ってください」と言われた時に、どのテンションでどの音を使えばいいのか全然わからなくて苦労しました。

――では、山崎はるかとしての歌い方はレコーディングしながら探っていったと?

山崎 そうですね。考えてもわからなかったので、どのようにディレクションされても大丈夫なようにしようと思って。もともと私はあまり作りこまずに、勘でやるタイプですし(笑)。

もちろん、歌としては練習していきました。そのうえで、とりあえず歌ってみて「こういう歌い方もできます」「こうもできます」「どれが私なんでしょう?」と。「魔法少女サイト」らしさもそうですし、“第三者が見た山崎はるか”と相違がなさすぎないかも相談しました。あまりに違和感があると説得力がなくなりますから。そうやって自分の性に合っているなと思うところと、「山崎はるかってこうだよね」と思える、いいバランスを探っていった感じです。

――その中で、改めて自分はこうなんだと気づいた部分はありますか?

山崎 引っ張っていくのが好きだと、改めて思いました。学生の頃は班長や生徒会などをやっていましたし、「守ってあげたい」と言われるよりも「ついていくぜ」と言われたいなって。だから、一緒に山崎はるかと楽しもうという気持ちで「ついていくぜ」「応援するよ」と言ってもらえたら、私も「いえーい!いくぞー!」となりますね。

――歌詞で特に好きなフレーズがあれば教えてください。

山崎 う〜ん……1曲を通して繋がるものだと感じているので、どこかのフレーズを抜き出して“ここ”というのはないんですよ。しいて言うなら、2番のサビは比喩表現ではなく素直な生の気持ちだなと思いましたが、やっぱり全部通して聴いてもらいたいです。

例えば、1番の最後は「生きたい」ですよね。アニメは生きるか死ぬか先がわからないのでいいと思うんですが、やっぱり2番の最後のように「生きてく」と言わないと希望が見えないじゃないですか。「生きたい」と「生きてく」は違いますから。

――確かにそうですね。メロディも構成がストレートではないですし、全体を通して聴いてもらいたい感じですね。

山崎 そうなんですよ。1番と2番が全然違うので、フルで聴いてもらいたいです。



初のMV撮影はとにかく緊張

――MV撮影は初めてだったそうですね。やってみてどうでしたか?

山崎 漠然と「時間かかるんだろうなぁ」とは思っていましたけど、こんなに時間がかかるんだ、大変だなと思いました。撮影が1日で終わるのはいいほうだよと言われて。

ただ、それ以上に……緊張しすぎてずっとテンパっていました(苦笑)。

――いろいろな現場を体験していても、緊張したのですね。

山崎 何万人の前で歌うよりも100倍ぐらい緊張しました。すんごい差があります。

――それは何が違うのでしょうか? カメラを向けられること自体は慣れているわけですし。

山崎 お客さんが(目の前に)いるかいないかですね。ライブではライブビューイングのカメラもありますが、それって映画館で今見ている人がいるのを想像できるんです。でも、MV撮影って今これを見ている人がいるわけじゃないし。ラジオの収録とも違うし、なんかこう……お客さんが、え〜っと……となってしまって。気持ちの作り方がわからなかったんです。

スタッフさんが見守る中で何台もカメラが回っていて、緊張しすぎて踊りもできないし。オーディションとも違うし。緊張の種類としては、授業参観に近いですかね(笑)。普段は緊張しないたちなんですけど、初めてすごく緊張しました。

――引きでの撮影も、リップシンクなどの寄りの撮影も全部?

山崎 全部緊張しました。プロジェクションマッピングの前での撮影ということもあって。

――あのプロジェクトマッピングの映像は、後から合成したのではなく実際にやっていたのですね。

山崎 そうです。MVのあの状態が撮影現場にできていたんです。光も全部MVの世界観のまんまができていて、そこにポツンとバミリがあって(笑)。「私が行くのって、あそこですよね?」「あそこで踊らなきゃいけないんですか?」という感じで。その場所に取り残されるみたいな気がしてすごく怖かったです。

――ダンサーがいたじゃないですか(笑)。

山崎 ダンサーさんが唯一の救いでした(笑)。でも、1人ショットで緊張しすぎちゃって、スカートを踏んで破れてしまったこともあったんですよ。

――そんなエピソードが。

山崎 撮影場所は広くてがらんとしていて、控室から出るのが怖いぐらい緊張しました。途中ダメすぎて、温かいものを飲みながら監督と話をしてだんだんと落ち着けたというか、空間に慣れてきた感じでしたね。

――MVはダンスショットバージョンも収録されます。ダンスはほかの作品でも経験していますが、今回のダンスはいかがでしたか?

山崎 実は両手を使ってフルで踊るのは初めてなんですよ。マイクを持ちながらだと左手は動かさないので、全部踊るのはこんなに難しいんだと改めて思いました。あと、やっぱり緊張がじゃましすぎて全然踊れていなかったですね。「いいところだけ使うよ」と言われてはいたんですけど、それでも「さっきは顔(表情)はうまくできたけどダンスめっちゃ間違えた……」などとなって大変でした。

――完成した映像はもう見ましたか?

山崎 見ました。こんな風になるんだと思いました。撮影の時は何に使われるかわからないのも撮ったんですよ。プロジェクションマッピングだけとか、歌が流れているのに私は歌わないとか、5秒ぐらい使ってゆっくり振り返るとか。完成した映像を見て「スローになってる!」「こういうことか!」と、答え合わせみたいな感じでしたね(笑)。

――その経験は次に繋がりますね。

山崎 そうですね。「次にやるならこうしたい」というのが生まれましたし。このために撮っていたのなら目線だけ残して振り返ればよかったとか、ひたすら歌うんじゃなくてちょっと力を抜いたシーンも作ればよかったとか。いろいろやれたなという思いはあります。

――お客さんがいなくて緊張したということでは、先日開催された「AnimeJapan 2018」のステージなどはまた違うわけですね?

山崎 お客さんがいると本当に歌いやすいです。MVだと「いま私はどういう気持ちで歌ったらいいんだろう?」ってなっちゃうんですよ。ライブはお客さんがどんな気持ちで来てくれているか見ればわかるので、それに合わせた気持ちで歌えるんですけど、そればかりやってきたから逆にMV撮影は難しかったというのもあります。

「AnimeJapan」のステージは、「初めて(アーティストとしての)山崎はるかを見るけどどんなものだろう?」というのがすごく伝わってきて。「はい、山崎はるかです!こういう曲になりました。聴いてね~!」という気持ちで歌いやすかったですし、間違えてもMV撮影ほどズーンとなりませんでした(笑)。でも、MV撮影で間違えた時には、「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい。間違えました、すみません!!!」って(笑)。

――いや、MV撮影のほうがむしろ間違えても大丈夫ですけどね。

山崎 そう言われました(笑)。自分の性分なんでしょうね。お客さんがいたほうが、単純にテンションが上がるんです。

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