「信長の忍び~姉川・石山篇~」第60~62話感想:姉川の戦いから石山合戦までの間をつなぐ、伏線張りまくりの回!

「信長の忍び」は、ヤングアニマル(白泉社)にて連載中の同名4コママンガ(作:重野なおき)を原作としたショートアニメなのだが、とにかく、戦国ギャグアニメとしての出来が秀逸で、隠れファンも多いはず。2016年10月にスタートし今期が3期ということになる。3期は、いよいよ、信長の天下統一への道の中でも重要となる「姉川の戦い」そして「石山合戦」が描かれる。歴史ファンなら、もう絶対にマストで見とかないとダメ!なヤツなのだ。


前回の感想からやや日が空いてしまったが、今回一気にレビューする60話、61話、62話は、その前までハードに続いてきた「姉川の戦い」の後日譚となる。よって、基本的には、前回59話で、姉川の戦い自体は終了と考えてよい。なお、この後は、今期アニメで語られるもうひとつ大きな戦である「石山合戦」へと向かうので、この3話はいわば、2つの大きな戦の間の「日常回」ととらえることもできるだろう。

第60話「それぞれの姉川」

前回まで、とても4コマギャグアニメとは思えないハードな戦いが続いた「姉川の戦い」も、浅井・朝倉両軍の敗走によって、織田・徳川連合軍の勝利に終わった。前回、命の恩人でもある遠藤直経をみずから手にかけて殺した千鳥は、呆然とその場にへたり込んでしまう。そんな千鳥を慰めようとする助蔵。たまにはいいこと言うよね。


いっぽう、小谷城に舞い戻った浅井長政は、愛する市の前で敗戦を悔しがる。しかし、あまりの強力に床を叩いて落ちてしまう長政。「穴があったら入りたい」って、もう入ってますよ、あなた。しかし、市はついに兄・信長を敵に回してしまったわけで、それなりの覚悟を決めた様子。これでまたお市ちゃんファンが増えるのは間違いない。


その頃、織田軍では、長政が逃げ込んだ小谷城を攻めるかどうかで意見が分かれるが、織田軍側も長い攻城戦を戦うほどの余裕はないとみて、信長は美濃への撤退を決意する。ただ、この戦いで落とした小谷城の支城・横山城は、軍事上大事な拠点であり、長政の動向を探るためにも、しっかりと守っておく必要がある。そこで、この大任を信長は秀吉に命ずるのだが、当の秀吉は早く美濃に帰って、愛するねねに会いたかった様子。思わず訪れた単身赴任にがっくり……。

その美濃では、帰蝶が戦勝の知らせを聞いてひと安心。しかし、きょうだいで敵味方同士になってしまった信長とお市の身を思いやる。帰蝶も元はといえば、美濃の戦国大名・斎藤道三の娘であり、隣国・尾張の信長とは政略結婚した仲。しかも、その後、信長は、兄・斎藤義龍と美濃を巡って戦を繰り広げた。まさに、帰蝶と同じようなことが、ついにお市の身にも起こってしまった。ああ、何という戦国の不条理よ。


さらに、越前に戻った朝倉軍の武将・山崎吉家は、戦友であった真柄直隆を失ったこともあり、主君・朝倉義景に「なぜ出陣しなかったのか」と問い詰める。義景は、国内の一向一揆を収めるために国元を離れるわけにはいかなかったと言い逃れするが、吉家は、今回の戦の敗北は、当主である義景が出陣しなかったことが兵の士気に大きく影響したと考えており、不信感を募らせる。ちなみに、この一向一揆の一向宗(浄土真宗)が、この後の石山合戦、ひいては、信長の人生に大きな影響を及ぼすのであるが、そんなことは、このときの信長は知るよしもない……。

・第60話「それぞれの姉川」 あらすじ

姉川の戦いは、浅井・朝倉軍が数千の死者を出し敗走。織田・徳川軍の大勝利に終わり、浅井の支城・横山城は織田家のものとなった。横山城は浅井攻略の足がかりとなる城で、任されたのはあの人物であった!



第61話「本当の覚悟」

舞台は変わって京。将軍・足利義昭に、姉川の戦いに勝利したことを報告する信長。しかし義昭は、本心では信長のことを疎み始めており、負ければよかったのにと言わんばかりの態度を示す。隣にいた義昭の側近である細川藤孝は、なんとかその場を取り繕おうといろいろごまかすが、すでに両者の関係は誰が見ても冷え切っている様子。あー、この後、ろくでもないことになるんだよなー。結末知っているだけに、この義昭の態度には許せないものを感じてしまう。まあ、信長も義昭を利用して、ここまでのし上がってきたのだから、お互い様といえばそうなんだけども。


いっぽう、浅井家に睨みをきかせるためにその目の前にある支城・横山城を任された秀吉たち。守りを固める城壁工事を行っているが、愛するねねに会えなくて寂しがっているかと思いきや、目の前の小谷城にお市がいることで、むしろ「お市様と同じ空気を吸っている」と喜んでいる様子。アホだねー。そんな秀吉は、どうせすぐに帰れるだろうと思っているが、実はこの後3年間もこの城で耐えなくてはいけないことを知らない。ああ、あわれ、サル!


そんな横山城を訪れる千鳥と助蔵。遠藤の件で落ち込んでいるかと思い、千鳥を笑わそうとする秀吉は、信長が以前に言ったダジャレネタを披露するが、その話を信長が聞いており、痛い目に遭わされる。あくまでも3枚目な秀吉。いい味出し過ぎ!


で、横山城を訪れた信長は、千鳥に改めて問う。


「親しき者が敵に回っても斬る覚悟はあるな?」


「はい!できました!」と答える千鳥。わーん、もう惚れるわー、千鳥ちゃん!


それを受けて言う信長の台詞が秀逸。


「例えば、そこの光秀が謀反を起こしてもか?」


歴史を知っている後世の我々だから、何ということを言うのだ! まさにフラグ!と思うわけだが、ここまで本作を見てきた方であれば、いい味出してる好キャラの光秀が、このとき、信長に謀反を起こすとは全く思えないはずで……。いやー深いなあ、このアニメ。

・第61話「本当の覚悟」 あらすじ

信長は京の将軍・足利義昭の元を訪れ、浅井家との戦に勝利したことを報告する。しかし義昭は信長に不満を募らせており、水面下で関係は悪化していた。一方、遠藤の死から立ち直った千鳥は、信長の問いに覚悟を決める!

第62話「ちょっと森家まで」

前回からさらに時間が経ち、季節は夏。


岐阜に戻った信長は、妻・帰蝶とつかの間の休息を楽しんでいた。しかし、信長の頭の中では、次の戦はもう動き始めている。京より西、摂津国あたりで、悪名高き三好三人衆がなにやら画策し始めており、その策謀をつぶす必要があると帰蝶に話す。しかし、問題なのは、その近隣に位置する石山本願寺の存在。当時、日本中で信者を獲得していた一向宗(浄土真宗)の総本山であり、相当な財力も軍事力も持っていたため、うかつに手出しはできない相手である。


そんなおり、信長の命を受け、臣下の森可成の家を訪ねる千鳥と助蔵。そこで、可成の息子、長可(ながよし)と蘭丸に出会う。長可はその後、戦国屈指の狂戦士(バーサーカー)と言われるようになるのだが、この頃からすでに相当狂っており、いきなり千鳥に決闘を挑んでくるが、弟の蘭丸に後ろからボコッと木で殴られ気絶。もちろんこの蘭丸は、後に信長のお抱えになるあの森蘭丸なのだが、しかしこの兄弟、なかなかに面白い。


翌日、岐阜城の信長を訪ねる森可成と妻のえい。信長が可成を呼んだのは、ほかでもなく、これから摂津攻めに向かうにあたり、京の入り口である宇佐山城の守りを任せるため。琵琶湖を挟んで、東側の要所が秀吉の守る横山城なら、西側の要所が可成の守る宇佐山城というわけ。この2か所で、いつか再び攻めてくるであろう浅井・朝倉軍への押さえとしたい考えだ。可成はもちろんこの大任をよろこんで受けるが、この後、大変なことになるんだよなあ。ああ、この後の展開を知ってるからこそ、つらいぜ、可成!


さらに、信長は妻のえいにも質問する。実はえいは一向宗を信奉しており、その総本山である石山本願寺にも詣でたことがあるという。そんなえいに信長が尋ねたのは、本願寺の総住職である本願寺蓮如がどういう人物であるかということ。実はこれも、この後訪れる石山合戦の過酷な戦いの導入ともいえるエピソードだったり。いやー、伏線張りまくりじゃないですか! ほんと、「信長の忍び」って、これだからやめられない!!


次回に続くっ!!

・第62話「ちょっと森家まで」 あらすじ

岐阜城に戻った信長は、次の戦の準備をはじめる。西では再び三好三人衆が動き出していた。一方、千鳥と助蔵は信長のおつかいで森可成の屋敷へ。そこで突然、千鳥は可成の息子・長可に決闘を挑まれる!

(編集部・鎌田)

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