4Dアニメ屏風「トキノ交差」によって、四宮義俊監督は何を“乗り越えよう”としているのか?【アニメ業界ウォッチング第46回】

渋谷スクランブル交差点に行かないと、見られないアニメがある。60秒の短編アニメーション「トキノ交差」は、クラウドファンディングを実施中であるため、一応はYouTubeで鑑賞できるが、それは暫定的なものだ。完成状態の作品は渋谷駅前のスクランブル交差点で四面のモニターによって突発的に同時上映されているため、たまたま居合わせた人でないと完成したものを見ることはできない。4つのモニターに映る映像は、それぞれ微妙に異なる。
「トキノ交差」は一部が実写で撮影され、「ヘソフェチを悶絶させる美人」と話題になった“やね”が出演しているなど、いくつものトピックがある。監督を務めるのは、「君の名は。」「この世界の片隅に」などの話題作に参加しながらも、アニメ業界とは微妙な距離を保ちつづけてきた日本画家・四宮義俊。芸術と商業、個人とチームなど、四宮監督はいくつかの課題をかかえて「トキノ交差」の制作に取り組んだという。

新海誠監督作への参加と、「新海監督風」というジレンマ


──東京藝術大学絵画科で日本画を専攻されていたと聞きます。商業アニメとは、どこで接点を持ったのでしょうか?

四宮 もともと自分の作品としてアニメーションをつくりたかったのですが、つくり方をよく知らなかったんです。ある時期、商業アニメの現場ではどうやってアニメをつくっているのか知りたくて、マッドハウスに履歴書を送りました。結局、会社に入ることはなかったのですが、「トキノ交差」のプロデューサーである松尾亮一郎さんにお会いできました。その後、2009年ごろ、別のルートで新海誠さんの監督作の美術を外注で受けるようになりました。

──その時期ですと、「星を追う子ども」(2011年)ですね。

四宮 そうです。大学時代から、絵画や立体作品を個展やグループ展で発表していました。しかし、作品だけではお金になりませんでしたので、お金を得る手段としてアニメの背景画を始めるようになりました。先ほども言ったように、アニメーションには興味があったので、自主制作で短編をつくったりはしていたんです。ですから、アニメの美術スタジオに入社しようとは考えませんでした。

──「水槽の虎」(2012年)という自主制作アニメをつくってらっしゃいますね。

四宮 文化庁メディア芸術祭の助成金をもらっているので、自主制作と言うと語弊があるかも知れません。日本画の延長線上でアニメーションをやりたいという気持ちが強くて、自分でできることは一通りやりたいと思いました。背景は、当時描いていた自分の日本画を写真に撮って、デジタル上でレタッチして使ってみたりもしています。


──「言の葉の庭」(2013年)では、ポスターを手がけたそうですが?

四宮 ポスターの前に、「言の葉の庭」の企画立ち上げ時に、イメージボードを描きました。そのうち1枚がティザービジュアルに採用され、本編の美術も手伝っています。制作が佳境に入ってからポスターを頼まれました。

──NHK-ACジャパン共同キャンペーンCM「『もったいない』であしたは変わる」(2015年)は、とても新海誠監督っぽい作風ですね。

四宮 お仕事をいただいたのがコミックス・ウェーブ・フィルムさんで、さらに新海作品に携わられているスタッフさんにも手伝ってもらっています。そのせいで、新海監督っぽく見えてしまったのかも知れません。ですが、自分でキャラクターをデザインしたり、何よりもアニメ作品の監督ができるのはうれしかったです。

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