アニメーション監督・尾崎隆晴 ロングインタビュー!(アニメ・ゲームの“中の人” 第24回)

プロフェッショナルたちの創作の原点や流儀を紹介する、インタビューシリーズ「アニメ・ゲームの“中の人”」。第24回は、アニメーション監督の尾崎隆晴さん。尾崎さんは撮影監督から演出家に転向した、異色のキャリアの持ち主だ。初演出作品「NECRO DRAGON」も大変個性的。当時は珍しいフル3DCGアニメで、しかも尾崎さん自身が企画・監督したオリジナル作品。その後は「TERRAFORMARS」で助監督、「ファイ・ブレイン 神のパズル」、「灰と幻想のグリムガル」、「逆転裁判 その『真実』、異議あり!」、「Re:ゼロから始める異世界生活」、「装神少女まとい」などで各話の絵コンテ・演出を務め、監督作品の「PERSONA5 THE ANIMATION THE DAY BREAKERS」や「少女終末旅行」では非常に高い評価を得た。現在は新作「ゴブリンスレイヤー」の監督として、ファンから期待の声が上がっている。当記事ではそんな尾崎さんの生の声を余すところなくお届けしよう。

アニメの総合芸術性に魅力

─このたびはアキバ総研インタビューに応じてくださり、まことにありがとうございます。早速ですが、尾崎さんはどんな時にアニメーション監督・演出のやりがいを感じますか?


尾崎隆晴(以下、尾崎) アニメーションの監督・演出というのは、各セクションのパイプになったりとか、いろいろな作業の方針を決めるという意味で、総合芸術的な要素があるのが、自分の中ではやっていて楽しいですね。


たとえば、絵画なら絵、曲なら音楽自体を楽しむのですが、アニメーションは絵、音、流れなど、決められた時間の中でどうそれらをまとめて見せていくかというところがあり、総合的な芸術とも言えます。


─過去のインタビューによりますと、学校の美術の成績はいつも最高評価だったとか。昔から絵はお好きだったのですね。


尾崎 絵も好きなんですけど、それ以上に粘土造形やプラモデルがすごく好きでした。周りの人たちがガンダムとかロボットものとかに走っているころ、僕はそっちじゃなくて、風景とか城とか、あとは人体模型とか怪物とか、そっち系のマニアックな、海外のものが好きでした。当時は商品があまりなかったので、最終的にはフルスクラッチ、自分でゼロから作っていました。今でいうフィギュア造形ですね。


大人になってからも彫像がすごく好きで、ヨーロッパに旅行した時には彫像ばかり見ています(笑)。美術館に行かなくても、街の中にいろいろ置かれているので、探してカメラに収めるのが楽しいんです。


自分の手で粘土を触ったり、針金を組んで張り子の骨格を作ったりした経験は、3Dの仕事にも役立っていますよ。子どものころから造形をやっているおかげで、パソコンを取り上げられても、面の裏にどういう空間があるかが自然と想像できるんですよ。

ダリオ・アルジェント監督の影響


─影響を受けた作品は?


尾崎 映画で言うと、1970~1980年代にホラーブームというのがありまして、その影響は受けていると思います。その中でも、ダリオ・アルジェント監督の作品が一番好きですね。映像もきれいだし、カット割りも主観をメインにした目線アングルだったり、ハリウッドとは違う、ヨーロッパ独特のセンスがあっていいんですよ。


さっきの造形ともからむんですけれども、1970~1980年代はCGではなくて、手で作った特殊メイクだったりとか、生身の造形にスポットを当てた過激なホラー映画がいっぱい出た時代で、映像的にもチャレンジ的だったりとか、乱暴な作りなんだけれども、何か力強い努力が感じられるようなところがあるんです。


僕のカット割りはアルジェント監督作品からヒントを得ている部分があって、僕が3Dでハンディの主観をよく使うのは3Dが得意で使いたいからじゃなくて、アルジェント監督のように目線の臨場感を出したいからなんですよ。ほかにもフェードイン、オーバーラップより、カットインや中なし切り替えを好むのも、その影響ですね。


─目標とする方は?


尾崎 アルジェント監督的なことを、アニメの中でできればいいなと思っています。あとは、独特の映像美学を感じさせる作品。アルジェント監督と作風は全く違いますが、映像美学という意味で日本のアニメ監督をあげれば、りんたろう監督と川尻善昭監督です。僕はマッドハウスに所属していたことがありまして、お仕事もご一緒させていただきました。お2人とも違ったタイプなんですけど、作風だけじゃなくて人物像も含めて、尊敬しています。


─「TERRAFORMARS」(2014、OVAと第1期)の助監督をされていますが、浜崎博嗣監督とはどういったご関係で?


尾崎 浜崎さんの初監督作品「TEXHNOLYZE」(2003)で撮影監督(編注:クレジット上は「コンポジット・ディレクター」)をやらせていただいたのが、最初になります。相性がよかったんでしょうか、観ている作品や好みも結構近いものがありまして、その後も何度かお声がけをいただいています。大変お世話になり、いろいろ学んだことも多々ありますが、「デヴィッド・リンチの感じ」と言ってイメージがお互いに通じるのは、浜崎さんくらいでしたね(笑)。

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