「ひそねとまそたん」第11話感想:くぎゅの演技は絶品……! そしてラストに向けて怒濤の急展開!

役者の名前を見て犯人がわかるサスペンスドラマみたいなもので、ジョアおばあさんといい、柿保飛行班長といい、だからこの人なのねという納得感がものすごい。そういえば「とらドラ!」で岡田麿里さんと釘宮理恵さんは一緒に仕事してましたね。あの作品で、釘宮さんの演技はすごいと、それまでの認識を改めた筆者ですが(と言ってしまうとすごく何様的な雰囲気満載ですが……)、だからこそ、11話の柿保の切れっぷりにも、特に驚きはなかったわけだが……。


さて、怪獣映画らしい描写が挟まり、樋口フィルム感が漂ったアバンは、「貞さんが乗るんかい!」という衝撃に包まれた。なんだか口にしたくなるスーツが役立ったという説明だけで納得してしまうのは、いかにもこの作品らしい。要するに2クールでやってもいいようなところを1クールでやっているようなスピード感の作品なので、細かいことは想像で補うべし。

巨大な積乱雲の中にいるミタツ様。「父さんは帰ってきたよ!」とか思わず言いたくなるようなラ○ュタ感。これからは積乱雲を見たら、あの雲の峰の向こうにミタツ様がいるんだ!と思おうと思えるほどの作画とデザインのすごさ。これは自宅のテレビで見ていいものではなく、絶対に大きなスクリーンで見るべきものでしょう!

先週放送分ラストの衝撃発言から約6分間出番がなかった甘粕ひそねは実家にいた。両親がとてもいい人そうだったが、アニメで家族が出てくると一気にリアルな感じが出ると思っている。その家庭の雰囲気で育ってきたから、今こうなっているんだなというのがわかるからだが、ひそねも愛されて育った感が出ていた。そして、あの清々しい辞める宣言のあとが語られる。

大切なものを大切だと言っていたいから辞める。ひそねとしては単純な答えだったかもしれないが、柿保飛行班長にとっては受け入れられるものではなかった。これまで同僚に皮肉を言われても、顔をピクッとさせるだけで堪えてきた柿保がキレるという迫力はものすごい。しかも偉いはずの曽々田団司令も何も言えないというのが面白い。というか、団司令はこれまでもずっと面白いのだが、それは中田譲治さんの声が最高すぎるからとも言えるだろう。そのあとのシーンだが「キミは男もDパイに取られたからね」って言えちゃうキャラクター性も最高だった。

で、柿保にクズと言われて自衛隊を辞めたひそねは実家で、卒業アルバムに何の気なしに書いた自分の言葉を見て、心を動かされる。

つまり、子どもなら「大切なもの」を大切だと言っていたいと思うだけでもいいが、大人なら、いや社会人なら「大切なもの」に対してどう責任を取るか。そこまで考え、行動すべきではないのか。それを高校生の頃に書いた自分の言葉で気付かされるというのが素晴らしい流れというか。わからないで言っていたことのほうが実は核心をついている的なことは、実はよくあるのかなと思った。

そして巫女の八重ちゃんと貞の思い出シーン。パリに行きたいと言った八重ちゃんとの思い出。モンパルナスという名前含め、秘め事のような描かれ方が何とも、いろんな人に刺さる作品だなと思った。そして八重ちゃんを思い出しただけで吻合(ふんごう)が起こる。自分の自由を捧げる代わりにすべてを捧げないといけない。OTFの性質は本当に厄介だ。

吻合、そして、ひそねの成長。いろんな条件が重なったところで、再びひそねがまそたんに乗るという展開は王道と言えるが、それにしたって1話の中でそれが起きていることがすごい。さっきも書いたがそれがこの作品のテンポ感ということなのだろう。ひそねのスライディング土下座からの独り語り。なおも怒りをぶつける柿保だったが、そんな柿保に対しても言いたいことをいうひそねはやはりカッコいい。ひそねには「嘘がない」とこの感想でも言ってきたが、それが人の心を動かしたシーンだった。

そこでのひそねの理論からすると、OTFが一番であれば乗れるはず!と。すべてを捧げなくてもいいということなのだが、どうやらそれは正解だったらしく再搭乗に成功。そしてミタツ様の胎内に入り、巫女の歌によって眠らせ、尾のしめ縄を断つことで体の上下を逆転させる“お寝返り”で安定させるというマツリゴトへ突入。ひそねたちは、そこで初めてマツリゴトには生贄が必要だと貞によって知らされる。

その事実を知って、ひそねはどうするのか。ひそねと棗(なつめ)との間にも確かな縁は生まれていると思うので、彼女がどんな判断をするのかが楽しみだ。

さて、EDがフランスの曲だった意味がよくわかった11話のエンディングはまさかのカラオケ(笑)。歌えるなら歌っていいよ的な感じだったが、一文字たりとも歌えなかった。これを練習してきて歌えちゃう声優さんって本当にプロだなと感心し切ったところで、第11話も面白かった! 

(文/塚越淳一)

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