キャラクターの存在を感じる2.5次元ライブ!「少女☆歌劇 レヴュースタァライト」1stスタァライブ “Starry Sky”レポート

「少女☆歌劇 レヴュースタァライト」スタァライト九九組初の単独ライブ「1stスタァライブ “Starry Sky”」が2018年6月23日、東京・オリンパスホール八王子にて開催された。


「少女☆歌劇 レヴュースタァライト」は“ミュージカル×アニメーションで紡ぐ二層展開式少女歌劇”をコンセプトとした作品で、舞台のスタァを目指す少女たちの物語を「ミュージカル」と「アニメーション」の2つの軸、同一メインキャストで描く。2017年9月と2018年1月(再演)にはミュージカル第1弾を上演。2018年7月12日からはTVアニメ放送がスタートし、ついに二層展開の両輪が揃うことになる。

ライブには愛城華恋役の小山百代さん、神楽ひかり役の三森すずこさん、天堂真矢役の富田麻帆さん、星見純那役の佐藤日向さん、露崎まひる役の岩田陽葵さん、大場なな役の小泉萌香さん、西條クロディーヌ役の相羽あいなさん、石動双葉役の生田輝さん、花柳香子役の伊藤彩沙さんが出演。「スタァライト九九組」は彼女たち9人のアーティスト(ユニット)としての名義で、作中の彼女たちが聖翔音楽学園の俳優育成科99期生であることに由来している。

「レヴュースタァライト」の舞台は第一部がミュージカル、第二部は客席がサイリウムを振って応援できるライブという構成が特徴だが、ユニットとしての単独ライブではどんな演出、表現を見せてくれるのかに注目して、昼の部を取材した。

会場のオリンパスホール八王子は、ビルの5階より上が吹き抜け構造の劇場になっている面白い作り。2階席、3階席と縦に高く、左右の壁面にも客席が張り出していて、ステージが近く、全体の作りに高級感がある。開演前のステージは真っ赤な緞帳に覆われており、ゴージャスな劇場感をさらに高めていた。開演が近づくとレトロなアレンジのサウンドが流れるとともに、赤い緞帳に緑のレーザーでキャストロールとライブタイトルを映し出す粋な演出がされていた。

レーザー演出が終わると、緞帳が上がってライブが「開幕」。ステージは上下2段の構成で、上段は舞台上手、センター、下手のミニステージに分かれている。各ステージ間は階段で自由に移動が可能で、まるで舞台のような作りだ。それぞれのステージに散らばったメンバーは、歌いながら階段を上り下りしてスムーズにフォーメーションや組み合わせを入れ替えていく。上段センターで華恋とひかり(小山さんと三森さん)が並び立つ時、前列0番のセンターがまひる(岩田さん)だったのが、キャラクターの関係性的に嬉しい。


オープニングナンバーは「よろしく九九組」。舞台やアイドルでは定番のキュートな自己紹介を、レヴューテイストの楽曲に乗せた新曲だ。繰り返される「くっく組」の響きがリズミカルで楽しい。歌い終えた9人はひと言挨拶。双葉役の生田さんは短い髪にオレンジっぽいカラーを入れて、ビジュアルでも双葉の再現度が高い。

新曲構成の2曲目は「ディスカバリー!」。前向きで明るい曲調で、冒険に旅立つ少女たちの浮き立つ心を感じる。上階から見ていて非常に印象的だったのがフォーメーションチェンジのなめらかさ。移動のためだけの間がほとんどなく、軽やかにダンスのステップを踏みながら、自然に横1列→前後2列にシフトしていく流れが美しい。曲中には生田さんと小山さんが「あっちむいてほい」をしたり、両膝を広げてかくかくっと動かすコミカルな動きがあったりと、振り付けは楽しさ重視。かと思えばリズムに合わせて点灯していくピンスポットの中でメンバーが次々と鮮やかなポーズをキメたり、富田さん、岩田さん、生田さんが舞台奥から手前に向けたダイナミックなロンダートを見せたりと、かっこよさも随所に見られた。


「ロマンティッククルージン」は今までありそうでなかったダンスナンバー。ちょっと雰囲気の違った物語の世界を描きながらも、歌詞にはスピカ、アルタイルといった星々の名前が散りばめられている。曲中の演出で、メンバーが客席の通路に躍り出たのには驚いた。観客の至近を楽しそうに歩いていったメンバーは、星型のステッキを受け取って再びステージへ。この会場との距離感は舞台そのものだ。メンバーがスモークたちこめる中で見せたステッキさばきにも、どこか舞台での殺陣(たて)に通じるテイストを感じた。


「Circle of the Revue」はV字の陣形になってのパフォーマンスがかっこいい。この曲にはアンサンブルのダンサーが登場。ダンサーと背中合わせに立って、ダンサーの背中に体重を預けて身体をのけぞらせるような振り付けは斬新で面白かった。ラスト、マントをバッと翻した9人が背中を見せてキメたバックショットがすごく鮮やかだった。

新曲を中心とした新鮮な楽曲が続いたが、舞台のテーマソング的楽曲として定着した「Star Divine」は、やはり盛り上がりが違う。手拍子に包まれた会場で、メンバーが左右から順番に中央に向けて右手を掲げていき、センターに立つ相羽さんが最後に正面にズバッと右手を掲げるアクションが印象的だった。この曲は真矢とクロディーヌ、双葉と香子などのコンビ感を大事にした組み合わせが目立つ。また舞台的演出がかなり多く、9人がそれぞれの武器を取ってコロスたちとの激しい殺陣を披露していた(コロス=学園での激しい特訓や試練そのものを視覚化したダンサーたち)。


ここで、メンバー同士の絆の深さを試すコーナーが。目隠しした1人と残りのメンバーが握手をしたり、頭をなでたり、後ろからハグしたりして、お題のメンバーが何番目だったかを当てる趣向だ。佐藤さんの握手は妙に力が入っていたり、生田さんの握手は優雅でドキッとするニュアンスがあったりとそれぞれの動きに個性があるのがヒント。頭をなでられた三森さんが、伊藤さんや小泉さんのなで方を一瞬で見抜いたのには驚かされた。一番ダイナミックだったのが後ろからハグしている人を当てるお題で、タックルするように全身でぶつかっていく富田さん、恋人っぽく抱きしめる相羽さん、投げっぱなしジャーマンのように持ち上げる佐藤さんなど表現はさまざま。順番当ては大体2回目ぐらいで当たる感じだったが、正解とは関係なくメンバーの仲のよさが感じられたのは、企画の勝利と言えるだろう。


ここからはユニットソングコーナー。「情熱の目覚めるとき」は岩田さん、佐藤さん、小泉さんの組み合わせ。あくまでも押さえたテンションで、ゆっくりと感情の熱量を高めていく。エモーショナルな歌唱での佐藤さんの歌力と表現力には特に引き込まれるものがあった。

「GANG☆STAR」は伊藤さん、生田さんの京コンビと富田さん相羽さんのライバルコンビの4人。階段に腰かけた伊藤さんは表情と歌声で、生田さんは仕草やダンスで挑発的なニュアンスを表現。特に際立っていたのが生田さんの妖艶さを漂わせるダンスで、生田さん本人でも双葉本人でもなく「石動双葉がステージで演じ、表現しているもの」を見せようとしているように感じた。楽曲の中で舞台上に表現されるギャングたちの姿と、それを演じるキャラクターと観客の関係の二重性が描かれているのは、舞台をテーマにした作品の醍醐味だ。

富田さんと相羽さんの真矢クロコンビもすごかった。九九組の9人の中で、舞台キャリアという意味では突出しているのが富田さん。単にダンスがうまいだけではなく、衣裳をまとった身体をどのように動かし、翻し、さばけば舞台で映えて、キャラクターらしさが伝わるのかを知り尽くしたような、身体制御の完璧さだ。そんな富田さんが演じる真矢に真っ向から食らいつくのが相羽さんの表現で、動きのキレと迫力を出すことに全身全霊を賭けているようだ。相羽さんのがんばりが、天堂真矢という天才に挑み続けるクロディーヌと重なって見えるのは、「スタァライト」という作品ならではだと思う。

ユニットトリの「Fancy You」は、小山さんと三森さんのコンビ。作中のひかりはツンとして、華恋はそんなひかりの様子に少し悲しそうな顔をしていることも多いため、はしゃぎあうように楽しそうに歌う2人の姿を見られること自体が特別で嬉しい。ソロダンスで見せるパントマイムっぽい振り付けのなめらかさに、小山さんのダンスの基礎力の高さを感じた。全員曲での華恋が強く明るい太陽のような存在だとすれば、この曲での華恋は大好きな人と一緒にいる喜びにあふれた姿。「砂利道つまずいても」からのソロパートでの小山さんの透き通るようなキュートな歌声と、そのあとを少しビターにやさしく追いかける三森さんの歌声の響き合いがとても美しい。最後は、2人がともに高見の星を指さして締めくくった。


ステージに残った三森さんと小山さんは、2018年7月12日からスタートするTVアニメを改めて告知。その流れで、TVアニメ「少女☆歌劇 レヴュースタァライト」オープニングテーマ「星のダイアローグ」を初披露することに。初披露、それもひと足先にフルサイズバージョンを聴けるのはとてもレアで嬉しい体験だ。輝かしい歌い出しを三森さんと小山さんが担当。2人だけ?と思っていると、ステージのさまざまな場所からおなじみのコンビたちが次々と登場。階段に座った伊藤さんと生田さん、富田さんと相羽さんの4人が肩を寄せあうようにじゃれあう姿が眩しい。2番では佐藤さん、小泉さん、岩田さんがトリオで階段で仲良く身を寄せ合った。

「星のダイアローグ」は転調を重ねながらさまざまな曲調と要素を詰めこんでいるのが特徴で、楽しく明るいターンでは2人ずつ、両肩に手をおいた電車ごっこのような姿でステージを行進。後半、ゆったりした高音を響かせあうパートではスクリーンにメンバーたちの練習風景が映し出された。2次元と3次元の境界があいまいな作品ではあるが、こういう「中の人」を前面に出した演出ができるのはユニット名義のライブならではだろう。円を描く陣形をキープしたまま、全員が同時に決めるターンが見惚れるほど鮮やか。さまざまな経歴を通ってきた9人が動きのキレの均質さで見せるのはすごいことで、特に声優出身メンバーの努力の積み重ねを感じた。これだけ輝かしく多彩な楽曲のラストを、ちょっと不穏な予兆の響きで締めるのは「歌劇」を冠する作品の主題歌ならではだと思う。

ここでステージでは新発表として、「少女☆歌劇 レヴュースタァライト」のスマホゲームアプリ始動と、事前登録開始を発表した。タイトルは「少女☆歌劇 レヴュースタァライト -Re LIVE-」(略称は「スタリラ」)で、開発はエイチームが手がける。この日のライブの2曲目「ディスカバリー!」は、「スタリラ」のテーマソングになるとのことだ。

ラストスパートは「願いは光になって」から。この曲は弾むようなステップが楽しい。印象的だったのが三森さんと小山さんが手を取り合って歩きながら見つめ合って(客席を見るのではなく)歌っていた振り付けで、本当に関係性の表現を重視していることを感じる。「いつまでも守られていては つまらない人生でしょう」のフレーズで伊藤さんが、生田さんにとんとんとふれて、自分から手を引いて階段を下りていくシーンは、振り付けが詞を汲み取ろうとしていることを感じた。終盤になるにつれて、歌声に込められた感情がより強く、強くなっていったのはライブならではの感覚。「キラめきのありか」では9人のやさしい歌声が、ライブの楽しい時間の終わりが近づいた、一抹の寂しさがある時間帯の空気ととてもマッチしていた。この曲では今度は生田さんが伊藤さんの手を引く姿が見られた(座席の角度的にほとんど見えないコンビの組み合わせがあったのはご容赦いただきたい)。


ここのMCコーナーではアニメのアフレコについてのトークが展開されたのだが、三森さんが声優初挑戦組に本当に頼りにされている様子が伝わってきた。

そして、もちろんこの曲がなければ終われないのが「舞台少女心得」だ。この曲ではスカートや衣裳のひらめきといった、舞台衣裳を前提とした動きの美しさが際立つ。キビキビと華やかに歌う9人からは、ステージに立つ喜びと、舞台少女としての誇りが瑞々しく感じられる。パート分けの細かいところまでは正確に把握しきれなかったのだが、「ただ無駄に泣いたりはしない」では、佐藤さん(純那)の歌声を強く感じたり、キャラクター性の濃いいくつかのフレーズではこの人が主役、というポイントがいくつかあったように思う。「さあ飛び立とう」からの三森さんと小山さんのソロのたたみかけは華恋とひかりの2人の世界。舞台少女たちの未完成さや純粋さを小山さんが、三森さんがしなやかな強さを体現しているようだった。

本編ラストナンバーは「スタァライトシアター」。きらめきに満ちた「キラリラ!」の声とともに、舞台の楽しさと輝きを詰めこんだパフォーマンスを披露した。劇場に向かい入れるウェルカムソングを、この作品の世界へと誘うライブの終わりに持ってくるのが心憎い。バランス的に佐藤さんと小泉さんとのトリオになることが多い岩田さんだが、この曲では小山さん、三森さんと一緒に歌うシーンが多め。まひるもまた華恋とのつながりを大切にしていることが伝わってくる。後半、ステージの0番(センター)でバレエのようなイメージの美しいソロダンスを見せた岩田さんが階段を上がると、そこで小山さんと三森さんが待っており、そこに物語を感じた。歌声のエモーションが最高潮を迎えたのは、終盤に独唱を歌い継いでいくくだりで、特にラストの三森さんの「宝物だった」の美しく伸びやかなファルセットは圧巻の響きだった。

アンコールでは、メンバーがライブTシャツに着替えて「Glittering Stars」と「Star Divine」を披露。「Glittering Stars」はステージのフィナーレにふさわしい壮大できらびやかなステージだ。本日2度目の「Star Divine」はライブ仕様で、1日の中で舞台演出マシマシバージョンと、ライブならではのバージョンを見られたのはとてもぜいたくな経験だった。


ちょっと発見があったのがアンコール、ライブTシャツを着てのパフォーマンスで、きらびやかな舞台衣裳を着てのステージングとは印象がかなり変わる。小山さんの体重移動のなめらかさだったり、個々の動きの癖がよりわかりやすい。その中でも興味深かったのが、佐藤日向さん。舞台や今日のライブの本編、舞台衣裳とキャラクターをまとってのダンスでは富田さんや三森さんの動きや表現のすごさに目が行きがちだったのだが、シンプルなTシャツ姿でパフォーマンスを見せる生身のダンスでは、佐藤さんの存在感が一気に増したように感じた。そのあたりは、アイドルとしてのダンスにルーツを持つ人と、舞台畑で磨いたダンスの質の違いなのかもしれない。


ラストのあいさつでは、それぞれの言葉で今日のライブの楽しさ、観客や関係者の愛情への感謝、そしてもうすぐ始まるアニメへの期待が語られた。

舞台の9人と、客席に座る「舞台創造科」(本作のファンの総称)の仲間たちの充実した、幸せな表情と空気感が印象に残った。最後は9人全員が肉声で、声の限りに感謝を伝えて、九九組初めての単独ライブは幕を下ろした。

(取材・文/中里キリ)

【セットリスト】

M01:よろしく九九組

M02:ディスカバリー!

M03:ロマンティッククルージン

M04:Circle of the Revue

M05:Star Divine

M06:情熱の目覚めるとき

M07:GANG☆STAR

M08:Fancy You

M09:星のダイアローグ

M10:願いは光になって

M11:キラめきのありか

M12:舞台少女心得

M13:スタァライトシアター

-Encore-

EN01:Glittering Stars

EN02:Star Divine

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