「そらのおとしもの」「プリキュア」「ルパパト」……名曲がずらり並んだ吉田仁美、歌手活動10周年記念ベストアルバム「10rder」インタビュー!
歌のお姉さん、声優、歌手など多彩な活動を展開する吉田仁美さんが、2018年6月27日、歌手活動10周年を記念して初のベストアルバム「10rder」をリリースした。
デビュー曲から幅広い層に愛された思い出の楽曲、人気声優・早見沙織さんと結成したユニット・blue dropsの楽曲、最新の代表曲。そして今回のアルバムのために用意された新曲まで、たっぷり17 曲が収録された聴き応え満点の1枚となっている。
今回は、本作のリリースを記念して歌手活動に対する思いや収録曲についてのエピソードをたっぷり語ってもらった!
――歌手デビュー10周年記念アルバムリリースおめでとうございます。歌手デビューされた時のことは覚えていますか?
吉田仁美(以下、吉田) すごく印象に残っています。もともと「ひとみ」という名前で、「うたっておどろんぱ!」という子ども向け番組の歌のお姉さんをやっていたんですけど、歌のお姉さんに決まった当初は歌がすごく苦手でしたし、それまで歌を習ったこともなかったので、自分が歌手として歌を歌うようになるとは思っていませんでした。子どもの頃はむしろ音痴だって言われていたので、自分は歌がうまくないって認識でした。
――そうだったんですね! すごく意外です。ちなみに音楽の原体験は何ですか?
吉田 私、「ちびまるこちゃん」がすごく好きで、初めてねだって買ってもらったCDが「おどるポンポコリン」だったんです。それをいつも歌って踊ってました。でもその時は人前で歌いたいとかは特になくて。だからまさか自分が歌を歌うようになるなんて……。しかも歌を好きになるとも思っていませんでした。歌のお姉さんを始めたばかりの時はプレッシャーだったし、ほぼ毎週のように新しい歌をレコーディングするという日々で、その1曲1曲をただ歌うということだけに一生懸命で、最初は楽しいとかは思っていませんでしたね。それから6年くらいやらせていただいた頃にやっと自分で自由に歌えるようになってくるというか、歌で表現することの楽しさを何となくつかみかけてきたんですが、その時に番組が終わって。
――その後、改めて歌手デビューをすることになるわけですが、どういう経緯で決まったのでしょうか。
吉田 ずっと歌を歌い続ける環境にいたので、歌を歌わなくなる生活を送っていると、今度はだんだんとすごく歌いたくなってきたんです。でも歌を歌いたいから、と言って歌手デビューできるわけではないですし、そういうお仕事ばかりをいただけるというわけでもなく、どうしたらいいんだろうなとぼんやりと考えているときに、たまたま日本コロムビアの植村プロデューサーから、「今度新しいアニメが始まるんですが、OPテーマを歌ってみませんか」とお声がけいただいたんです。そのアニメが「我が家のお稲荷さま。」でした。
――植村さんは歌のお姉さん時代からのつながりで?
吉田 いえ。歌のお姉さんを卒業した後、サンリオさんの「シュガーバニーズ」というアニメのEDテーマを歌わせてもらうことがあって、その曲をたまたま植村さんが聴いてくださってのお声がけでした。その曲を聴いて声をかけてくださったのでかわいい曲を歌わせていただけるのかなと思ったら、まさかのかっこいい曲をいただいて(笑)。こんなにかっこいい曲歌ったことないです! 歌えるかな? って(笑)。
――その歌手デビューの前に、声優としてデビューされてるんですよね。
吉田 自分でも意外ですね。歌のほうが、ずっとやってきたような気がしてるんですけど。
――そんな吉田さんにとって歌とはどんな存在ですか?
吉田 たぶん息をしているのと同じ感覚なんだと思います。家で何かする時も常に歌っていますし。たぶん歌がないと生きていけないと思いますね。
――苦手な歌が、そんな存在になる転換点はどこでしたか?
吉田 どこなんだろう。もう本当に最初は苦痛で(笑)、レコーディングが怖くて仕方ありませんでしたし、ちゃんと歌えるかどうかもわからないし、できあがったものも本当にこれでいいのか正解がわからなくて。ただ、ずっとお芝居をしていたので、歌はお芝居に近いものという感覚はあって、だからこそニュアンスをすごくつけて歌うというお芝居のほうに逃げるような歌い方をずっとしていて、それは得意だったんです。でも、それゆえに音程がとれなかったり、ピッチも取れずにリズムがガタガタな歌になりがちだったのを、日本コロムビアのプロデューサー・原さんや、今回新曲を書いてくださった作曲家の大森俊之さんらに、すごくていねいに導いていただきました。とは言えやっぱり一朝一夕で身につくモノではなく、それを自分のものにしていけたというのはたぶん20代になってからだと思いますね。だんだん身にしみてくると言うか。
――歌手デビューまでの時期というのは、まさに修行の時期だったわけですね。
吉田 そうですね。そして「うたっておどろんぱ!」が歌と踊りの番組なので、先にレコーディングした曲を流しながらリップシンクしながら踊りを踊るんですけど、声を出しながらでないと嘘くさくなるので、いつも声を出しながらダンスをしていたんです。その時に歌を歌いながら踊るという基礎をすごくたたき込まれました。そのおかげで、後に「プリキュア」などで歌って踊ることがすごく自然にできたと思います。
――今回のベストアルバムのラインアップを見ると、「KI-ZU-NA ~遙かなる者へ」のようなかっこいい曲から「プリキュア」曲のようにダンスつきの曲。そしてキャラクターソングまで、集大成的な1枚になりましたね。
吉田 アーティストとしてのベストアルバムというと、なかなかキャラクターソングは入れないものだと思うんですが、今回はちょっとわがままを言って入れさせていただきました。特にテレビアニメ「いとしのムーコ」主題歌の「SUKI! SUKI! SUKI!」は、当時は音楽配信しかされていなかったので、個人的にいつかCDになったらいいなと言う思いがあったんです。今回、ベストアルバムに収録するという形で願いをかなえていただけて嬉しいです。
今回はベストアルバムなので、まず「吉田仁美と言えば」という曲をラインアップして、その後「ほかにどういう曲を入れたいですか?」みたいな話をディレクターやマネージャーと話している時に、最後のほうに「毛色が違うんですが、キャラクターソングとかどうですか?」って提案させていただきました。
中でも「魚心くんソング」は、かなりのわがままで入れてもらいました。実は今までは自分が歌っているということはあまり発表されてなくて、今回改めて私の名前入りで出させていただきました。
――そういう意味では代表曲プラスレア曲な1枚になりましたね。
吉田 そうですね。これは聴いていただく方にはまったく関係のないことなんですけど、レーベルが4社さんもまたがっていまして、本当に各レーベルの皆さんにご尽力いただきました。それぞれの作品において大事な曲ばかりなので、関係者の皆さんに力添えをいただき完成した奇跡の1枚になりました。
デビュー曲「KI-ZU-NA ~遙かなる者へ」の思い出
――ここからは収録曲についてうかがっていきたいと思います。アルバムは「KI-ZU-NA ~遙かなる者へ」からスタートします。
吉田 それまで歌のお姉さんとして活動したり、「シュガーバニーズ」などでかわいい曲、元気な曲を歌うことが多かったので、まさかデビュー曲にこんなにかっこいい曲をいただけると思わなかったので、当時はただただ驚きでした。
それまでは慣れ親しんだ方とずっとやっていたので、初めての方と初めての場所で録るということですごく緊張したのを覚えています。確か新橋のスタジオでした(笑)。
この曲は、イズミカワソラさんとのユニット「ヒトミソラ」としてリリースしたんですが、ユニットのことはレコーディングの時は知らなかったんです。収録後にプロデューサーの植村さんから「イズミカワソラさんという方とのユニットにします」って言われて「は、はい」って(笑)。
――ボーカルが吉田さんで、イズミカワソラさんがコーラスですか?
吉田 はい。レコーディングの時は、私は主旋律を歌っただけで帰ったんですけど、それがああいう風に仕上がったのは植村さんとイズミカワさんのお力ですね。
――「ヒトミソラ」としては、もう1曲「奇跡~I believe in you~」が収録されています。
吉田 これはイズミカワさんが作詞・作曲した楽曲なんですが、この曲がたぶん初めて歌ったバラードというものだったんです。それまではミディアムバラードみたいなのを歌ったことはあったんですが、やっぱり子ども向け番組の歌ということで、もうちょっとリズムが入っていたり元気な感じの曲が多かったんです。ほぼ初めてのバラードでなかなか難しかったですね。「フェイクをアドリブで入れてください」って言われて、「フェイク? アドリブ? はて?」って思った印象や、あの時の緊張を忘れられません。
――子ども向けの歌って、楽譜通りに歌うのが正解なので、フェイクとか入れちゃいけないんですよね。
吉田 そうなんです。たまに「イェイ!」とか入れようものなら怒られちゃいますからね。だから、アドリブで、という感覚もなかったので、新鮮でした。「やってみて、はいどうぞ」ってすごいスピード感だなって緊張感もありましたけど、すでに「KI-ZU-NA ~遙かなる者へ」で1回レコーディングをしていただいていたので、リラックスはしていましたし、すごく楽しい収録でした。
今回タイアップ曲メインで選曲させていただいたこともあり、どれもテンションが高いうえに、バラード曲が3曲しかないので、ここぞというところに入れたいという思いがありまして、6曲目に入れさせていただきました。
デビューシングルに入っている思い出深い曲でもありますし、大事なところで使いたい曲ですね。
「ずっとアニソンで歌っていきたい」転機となった伝説のユニット「blue drops」
――今回のアルバムでは早見沙織さんとのボーカル&コーラスユニット「blue drops」の楽曲も多く収録されています。まずは「そらのおとしものf(フォルテ)」OP曲の「ハートの確率」からお願いします。
吉田 この曲は「そらのおとしもの」第2期のOP曲なんですが、1期の「Ring My Bell」がすごく印象に残る、「そらのおとしもの」という作品を代表する曲になったので、その次の主題歌であるこの曲はすごく難しい曲だったと思います。でも、「そらのおとしもの」らしさを残しつつさらに力強さのある仕上がりになっていて、私、かなり好きな曲なんです。
先日、久しぶりに「そらのおとしもの」のイベントに出させていただいてこの曲を歌ったんですけど、お客さんが沙織ちゃんの追っかけメロのところを歌ってくださったんです。「そらのおとしもの」といえば「Ring My Bell」という思いが私の中にもあったんですが、「ハートの確率」もこんなに大事にしていただけていたんだなというのがすごく嬉しかったです。
「SECOND」(映画「劇場版 そらのおとしもの 時計じかけの哀女神」主題歌)は、もしかしたら「そらのおとしもの」関連でもっとも二転三転した曲かもしれませんね。まずCM用に録らなきゃということで、先にサビだけ録ったんですが、その時はテンポが違っていて、フルサイズ版ではもうちょっと早くしたのかな? そのほうがblue dropsらしいって。その時に歌い方とかニュアンスも含めて二転三転し、レコーディング本番の時もああしよう、こうしようって試させていただいた楽曲だったという印象です。
――個人的に大好きな曲が「そらのおとしものf」EDテーマの「帰るから」です。
吉田 私もすごく好きな曲です。私、この曲をイベントとかライブで歌うたびに泣くんですよ。三浦誠司さんの作詞のセンスが素晴らしいんです。「ルパンレンジャーVSパトレンジャー」にも近いと思うんですけど、ユニット曲とはいえ2人が一緒に主旋律を歌ったりただハモっているだけじゃなく、それぞれの存在感がきちんと成立しているという楽曲なので、ものすごく難しかったと思うんですけど、すごくていねいに歌わせていただきました。
沙織ちゃんがイカロス役として歌っているのでイカロスとしての心情もきちんとていねいに歌い、私は第三者的な視点から歌っていて、その2人が歌うことによってきちんとストーリーが成立するというすごい曲なんです。第1期EDの「そばにいられるだけで」もそうなんですが、第2期になってよりキャラクター性が深まったなという印象があります。
――そういったお話を聞いてblue dropsの曲を聴くと、また新たな発見がありそうですね。
吉田 たぶん私と沙織ちゃんの歌に対する取り組み方というか、アタックの仕方がちょっと違うんですよね。そこもまた面白い要素だと思います。
――今回のアルバムには「そらおと」最新曲の「Utopia Blue」(「パチスロ そらのおとしものフォルテ」使用曲)も収録されています。
吉田 この曲は三浦さんからblue dropsに対してのご褒美曲だと思っています。要所要所に私の名前だったり沙織ちゃんをイメージする単語、今までblue dropsで歌ってきた曲のタイトルが織り交ぜられています。「青いしずくたち」っていう歌詞なんて、やっぱり第1期から見てくださっている三浦さんだからこそだなと思います。私たちの集大成的な曲ですね。
――吉田さんにとってblue dropsは大切な存在ですか?
吉田 そうですね。この10年歌ってこられたのは、blue dropsとしての時期があったからだと思っていますし、blue dropsというものを与えてくださった「そらのおとしもの」や、その作品をプロデュースしてくださった日本コロムビアの植村さんには感謝といいますか、拾っていただいたという感覚がすごくあります。沙織ちゃんと歌ってきたという思い出も含めて、すごく思い入れがありますね。
――クライマックスの15曲目にユニットの始まりの曲、「Ring My Bell」がくるのもその思い入れゆえでしょうか。
吉田 そうですね。私の代表曲ということもありますし、初めてアーティストとして歌えると思った楽曲が「Ring My Bell」でもあったので。
「KI-ZU-NA ~遙かなる者へ」の時はまだ右も左もわからなくて不安もあったし、歌は好きだけどアーティストとして歌っていけるのかな、アニソンってどんな世界なのかなってちょっとまだわかっていませんでした。そんな中、「Ring My Bell」を歌わせていただいた時に、「ずっとアニソンを歌っていきたい!」と強く思ったんです。なので、私自身にとって大事な楽曲です。
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