高垣彩陽インタビュー「ここまでの人生の答え合わせをさせてもらった」 オーチャードホールクラシカルコンサートCDリリース

クラシック音楽や声楽にルーツを持つ声優アーティストの高垣彩陽(たかがきあやひ)が、2016年にこれらの音楽の殿堂である渋谷Bunkamura オーチャードホールでライブコンサートを行なうと決まったとき、ファンの間ではよろこびとともに納得の声が上がったに違いない。それほどまでに彼女の歌声は信頼と評価を得ている。しかも本格のオーケストラ編成で、クラシックからミュージカル、スペシャルなアレンジやデュエットなど、この日にしか披露できなかったセットがついに音源化された。ファン待望のこのCDについて、開催までの経緯や思いを聞いた。

──2016年の11月13日に開催されて以来、このたびのコンサート音源のリリースを待ち望んでいたファンも多かったと思います。

高垣 実はこのコンサートは当初は収録する予定がなかったそうなんですよ。でも「リリースは決まっていなくても、記録を残しておいたほうがよいのでは?」というプロデューサーさんの鶴のひと声で、エンジニアさんたちが駆り出され、急遽収録状況を整えたという形です。そうしたやり取りを経ての収録だったのですが1年半経ってからの発売ですからね。ここまで音沙汰がなかったものですから、私自身ももう出ないのかと思っていました(笑)。この日のコンサートはオーケストラの編成ですべての曲をアレンジし直して、ゲストにも来ていただいて、その日にしか聴けないものばかりだったので、当日いらしてくれた方はもちろん、そうでない方にもぜひ聴いていただきたいと思っていたので、私にとっても今回のリリースはとてもうれしいサプライズでした。

──高垣さんにとってオーチャードホールという場所はどんな存在で、どんなお気持ちでこの日を迎えましたか?

高垣 立てるとは思っていなかった、立ちたいと思うことさえなかった……そのくらい遠い存在でした。坂本真綾さんやKOKIAさんのライブには行かせていただいて、素敵な場所だとは思っていたのですが、まさか自分が、しかもクラシカルコンサートをさせてもらえるということは夢にも思わなかった、という言葉がぴったりです。プロデューサーさんから「オーチャード、決まったよ」って割とサラっと言われて、聞き返してしまいましたもん。「……あの? えっ、渋谷の?」って(笑)。クラシカルコンサートやバレエの公演が行なわれてきたところですから、高垣彩陽としてクラシカルコンサート然としたものにしたいという思いがあり、オーケストラアレンジで2部構成という、ふだんのライブやコンサートとはまったく違うステージになったと思います。
私は高校のときから声優になりたくて、その際に母が「声楽を本格的に勉強することは声優として武器になる」と言ったことと、高校の音楽の先生の勧めで音大に入学したんです。在学中はそのことを、夢から遠ざかったり遠回りだと思ったことがあったのですが、そういう風に悩んだ日々でさえ、正しかったんだなと。ここまでの人生の答え合わせをさせてもらったような、本当に大きなご褒美だったなと感じています。この日に歌った「Quel GuardoIlCavaliere」は卒業試験でも歌った曲でもあるので、自分のルーツを改めてたどってチャレンジして歌う機会になりました。クラシカルアレンジもディズニーのカバーも、男性とのデュエットもすべて、いつかやりたいと思って温めていたことだったので、それらの夢がすべてかなったステージ。まだまだ未熟者ではありますが、ひとつの大事な通過点として最高のステージだったなと思っています。

──このコンサートで指揮をされた後藤望友さん、コンサートマスター・バイオリンの地行美穂さんについてご紹介ください。

高垣 地行さんはファーストコンサートのときからバイオリンに入ってもらっていて、私のソロコンサートには欠かせない存在です。後藤さんは私の最初のクラシックカバーアルバムの「melodia」からのお付き合いで、ピアノと指揮とすべての曲の編曲と音楽監督をしてもらっています。2人とは同い年なので、リハーサルでかっこよく指示出しをしているのを見て、改めて長い月日を重ねてきたんだなという感慨深さを感じました。


──選曲やアレンジについては後藤さんと主にやり取りを?

高垣 セットリスト自体は基本的に私が決めたのですが、その後に後藤さんに渡したら本当にあっという間にアレンジして譜面に起こしてくれて。本当に仕事ができる人なので素晴らしいなと思いましたし、私もボーッとしていられないなと(笑)。なかでも「melodia」の1枚目に入れた「Quel GuardoIlCavaliere」はレコーディング以来、初めて歌唱を披露したんです。CDに収録したときも後藤さんがアレンジをしてくれて、自然な“ゆらぎ”がすごく多くて、後から私の歌に合わせて変えてくれたところもあったんです。そんな曲だから、これまでバンドと一緒にクリックでやることも不可能だったし、カラオケを流して歌うということも無理で、今まで歌う機会がなかったんです。でもこの機会であればできる、このときしかできないという思いもあって、後藤さんが指揮をしてオーケストラの皆さんも私の呼吸に合わせてくれて、満を持して披露できたという感じです。
学生時代より上達していたいし、最近は声優としてキャラクターの声だったり、ミックスボイスだったりと、クラシカルな歌唱法とは少し離れていたので、これを歌えるような声に戻さねばというところで、先ほどの音大を勧めてくれた先生のところにまた通ってレッスンしてもらってから臨みました。そうそう、この先生って私を応援してくださっているファンの間ではちょっと有名人だったみたいで(笑)。2011年12月の東京国際フォーラムでのコンサートの際に、私の歌が終わったときに「ブラボー!」と言ってくれたんです。それにほかのお客さんは、ビックリしたみたいで、ファンの中では”ブラボーさん”と呼ばれていたらしいです(笑)。すみません、どちらかと言うと身内の者です(笑)。オーチャードにも来てくださって、「よいコンサートだった」ととてもよろこんでくださってました。

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