「ひそねとまそたん」第12話感想:有無を言わせぬハッピーエンドをありがとう!
“ミタツ様”を臥所(ふしど)へ誘導し、無事に“お寝返り”させるというミッション。だがそれには生贄(いけにえ)が必要だという。生贄を捧げるのは、飯干いわく「至極当然」のこととのこと。その当然のことに対して、本当にそうなのかという気持ちをぶつけてきたのがひそねだった。
貞から明かされる八重ちゃんとの過去。一緒にパリに逃げようとしていたけど、結局それはできず八重ちゃんを残して生きて帰ってしまった。それを聞いたDパイ一同。ひとりの犠牲で大勢が助かるのならばとか、決まっていることには従わなければならないとか、もしくは他人の命だからとか、誰もが少しはそう思ってしまうところを、やっぱりひそねには何の迷いもなく「絶対に阻止します!」と言う。
会社や学校で、理不尽なこととか、おかしいな?と思っていることがあっても、周りがそうしているならと受け入れてきた経験は誰にでもあると思う。そういうことに対して、ひそねは自分の心に嘘をつかずにぶつかっていく。だからこそ主人公であるし、見ているほうも気持ちがいいし応援したくなる。
そして、棗(なつめ)のもとに乱入したひそねとまそたん。日本がどうにかなっちゃうような一大事が起こりそうな中、小此木くんを取り合うという小さなケンカを始める2人。これはアニメではよくある王道展開だが、やはり清々しい! ちなみにほかの巫女たちも楔女(くさびめ)に選ばれたら死ぬ覚悟だったっぽいことをさり気なく言っていたのだが、どんな教育を受けてきたのだと、少し思った。
棗がいくら口が悪く突っかかってきても、まったくひるまないひそね。そして最後の「だったら生きてください!」というひそねのセリフ。これを言いたいがための小此木くん争奪口喧嘩だったわけだが、そのセリフの真に迫る感じも、2人の言い合いも本当にいいクライマックスだった。
物語のクライマックスがそこであれば、眠らせないままミタツ様を“お寝返り”させるのがアクション面でのクライマックス。ここでのミタツ様とOTFたちの描写は、テレビで見るのはもったいないくらいの大迫力だった。ここは細かくは書かないが、素晴らしい作画だった。
そして棗から「死にたくないっ!」という言葉が聞けたところで、飯干から衝撃の事実が語られる。
「楔目を、鈴をミタツ様の心臓に突き刺すのです。回転軸に楔を打ち込むことで“お寝返り”が止まる!」(飯干)
「ただし軸を塞ぐことになるので、こちら側には戻れなくなる」(貞)
いやいや、それ巫女じゃなくてもできるじゃん!と、誰もが思ったツッコミをDパイそれぞれがしてくれるという展開。でも巫女はミタツ様を眠らせる役目もあるから、だから巫女が楔女になっていたんだと思うけど、まさか眠らせる必要もなかった的な結末になろうとは、何事もやってみたいとわからないものです……。
さて、途中で鈴をちらっと見ていたひそねはやっぱり鈴を回収しており、みずからが犠牲になることに。そしてミタツ様の中に残されてしまったひそねとまそたん。ここでひそねは、まそたんのことを特別大切に思っていたのは自分だけではなく、まそたんもひそねのことを特別大切だと思ってくれていたことを知り、渾身の「大好きだぁぁ、レロレロレロ」を繰り出す。最後まで舐め回しネタを使ってくるところは本当に面白かった。しかもここは前回の予告でも使われており、実際それだけでも泣けたのだが、物語が加わるとさらに泣けるものになっていた。
オープニングテーマが最後に流れる作品はだいたい素晴らしい。エピローグで流れたオープニングは、(途中から分岐OP「少女はあの空に惑う」になっていたので)実は久しぶりとなる「少女はあの空を渡る」。作曲の岩崎太整さんは「祝福の歌にしたい」と語っていたが、本当にみんなを祝福する歌だなぁと思った。ちなみにクレジットには、雅楽監修と巫女舞振付に日本伝統舞台芸術の方の名前があったので、雅楽も本格的にこだわって作っていたということは書いておきたい。実はインタビュー時にもその話をしていたのだが掲載時期の関係でカットしていたので、発売されたオリジナルサウンドトラックで確認してみてほしい。
で、日本のために犠牲になったひそねとまそたんというところで話が終わると思いきや、それなら“祝福の歌”が流れるわけないよね!ということで、Dパイ含め誰もが(前澤以外)ひそねの帰還を疑っていなかった。Cパートでは、3か月が過ぎて、ミタツ様の山に迎えに行った小此木さんの前にひそねとまそたんが突然表れてハッピーエンドで終わる。どうやって帰ってこれたのかなどの説明をまったくしてないところもすごくよかったと思う。おそらく理由はどうとでもなるんだけど、有無を言わせずハッピーで終わらせるというのがこの作品らしいエンディングだった。
全12話。かなり駆け足だったが12話にまとめられたのだから2時間にもできるでしょう!ということで、ぜひ劇場でも見たいと思ってしまうくらい名作だった。きっと見た人誰もが願っていることでしょう。数々の名シーン、名セリフの数々をありがとうと言いたい。個人的には、絵瑠と財投の「じゃあ何にしたいんですか?」「大事にしたい」は最高に萌えた。誰か使えるチャンスがあったら使ってください。
さて、劇場版を願う前に、まずはBD&DVD BOXの接触篇と発動篇という、すごく「イデオンかっ!」的なボックスが出るので、それを楽しみに待ちたい。本当に「ひそねとまそたん」面白かった!
(文/塚越淳一)
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