「信長の忍び~姉川・石山篇~」第63~64話感想:おそるべし! いろいろと光り輝く、本願寺宗主・本願寺顕如

「信長の忍び」は、ヤングアニマル(白泉社)にて連載中の同名4コママンガ(作:重野なおき)を原作としたショートアニメなのだが、とにかく、戦国ギャグアニメとしての出来が秀逸で、隠れファンも多いはず。2016年10月にスタートし今期が3期ということになる。3期は、いよいよ、信長の天下統一への道の中でも重要となる「姉川の戦い」そして「石山合戦」が描かれる。歴史ファンなら、もう絶対にマストで見とかないとダメ!なヤツなのだ。


浅井・朝倉陣営との死闘「姉川の戦い」もひとまず終わり、地元・岐阜にてわずかばかりの休息を取っていた信長たちだったが、その頃、京の西側、現在の大阪府あたりでなにやら不穏な動きが起こっていた。その中心となっているのは、この地域に支配力を及ぼす阿波の「三好三人衆」と、かつて美濃を支配していた斎藤龍興。この勢力が、その当時多くの門徒を集め、絶大な影響力を持っていた一向宗(浄土真宗)の総本山「石山本願寺」を巻き込んで、仇敵・織田信長に対する謀略を図っていたのだった。まさに、織田信長のこの後の人生に大きな影を落とす「石山合戦」の火ぶたが切って落とされようとしていた。

第63話「さわらぬ仏にたたり無し」

石山本願寺の影響をなるべく排除したいと思っていた信長は、家臣の森可成(もりよしなり)の元を尋ねる。その目的は、一向宗の宗徒でもある可成の妻・えいから、本願寺の宗主・本願寺顕如についての情報を聞き出すことにあった。そこで、顕如の持つ莫大な資金力と絶大な影響力を知った信長は、千鳥を本願寺へ偵察に向かわせる。


いっぽうの顕如だが、本作では、やたらと頭が光り輝くキャラクターとして設定されており、誰もまともにその顔を拝めない(眩しいので・・・)という、ちょっとした面白キャラとして描かれている。しかし、その本心は、とても面白いキャラとは思えないようなものであった。一向宗の教えとして「王法為本(おうぼういほん)」というものがあるが、これは「統治者を助けることが仏法の道である」というもの。つまり、顕如は、その時々の権力者には逆らわず、むしろ積極的に協力していくことで、本願寺勢力の権勢を維持したいという考えの持ち主なのである。


ということは、裏を返せば、時の権力者(足利将軍家)に最も近い存在である織田信長に対して、顕如は弓を引くことはない、と思われたのだが、とある信長からの書状が、顕如の怒りに火をつけてしまう。すなわち「石山本願寺を明け渡せ」という要求であった。


そんなこととはつゆ知らぬえいは、信長にこう言う。


「本願寺を怒らせてはなりません。もし顕如様が門徒を一斉に挙兵させたなら…織田家は確実に滅びます」


もう確実にフラグである。わー、どうするんだよ、信長~!!


・第63話「さわらぬ仏にたたり無し」あらすじ
一向宗の宗主・本願寺顕如の情報を集める信長。顕如は他大名と交渉事を行っており、その資金力から敵に回ってはやっかいだと懸念を抱いていた。信長は今の本願寺の動きを知る為、千鳥を偵察に向かわせる。

第64話「光の射す方へ」

信長からの石山本願寺明け渡し要求に怒りをあらわにする、本願寺宗主・顕如。妻の如春尼(にょしゅんに)とともに「信長許さじ」との思いで一致するが、この如春尼と顕如のやり取りが、まるで夫婦漫才のようで面白いのが、本作ならではの楽しいところ。かなりの権力を誇る顕如の頭をバシーンと叩いたりする、他の人ではできない鋭いツッコミが如春尼の本領だが、顕如は如春尼が大好きなので、怒らず常にニコニコ。それどころか、時たま「おまえほどかわいい人はいない」的な返しをするので、如春尼は照れて黙り込んでしまうという、ツンデレ展開がクセになる(実際に2人はラブラブだったらしい)。


さて、そんな本願寺の門前までやってきた千鳥と助蔵。まずは顕如の光り輝くオーラ、もとい頭の輝きに目をやられるが(笑)、顕如の説教を聞いて、千鳥ははからずとも心を打たれてしまう。顕如は言う。

「厳しい修行も悟りも開眼も不要です。ただ仏を信じ南無阿弥陀仏と唱えるだけでいいのです。さすれば仏は誰でも救済します。たとえ悪事を働いていようが、戦でたくさん人を殺めていようが」


この言葉に千鳥は反応する。

「本当にたくさん殺していてもですか…? 私はたくさんたくさん殺してしまいましたよ?」


これに先立つ「姉川の戦い」での激戦で、多くの敵を切り払ってきた千鳥。最後には、恩人である遠藤直経まで討ち取り、そのショックからは立ち直ったかに見えていたのだが、やはり心の奥底には、人知れぬ葛藤があったのだ。


そんな千鳥の心を見据えたように顕如は言う。


「そんな『悪人』は、仏は真っ先に救ってくれるのです。それが一向宗の教え『悪人正機(あくにんしょうき)』。この世は皆罪深き悪人ばかり。そういう人を救済するために本願寺はあるのですよ」


いいこと言うではないか、顕如! と思っていたら、その教えに衝撃を受けてしまった千鳥。気がつけば、周りの門徒と一緒に「南無阿弥陀仏」を唱えているではないか! さあどうする、助蔵!?


・第64話「光の射す方へ」あらすじ
これまで信長の様々な要求に応じてきた顕如であったが、「石山本願寺を明け渡せ」との要求には憤りを感じていた。一方、石山本願寺へ偵察に来た千鳥と助蔵。顕如のカリスマ性を目の当たりにした千鳥に異変が!?

(編集部・鎌田)

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