「少女☆歌劇 レヴュースタァライト」第1話をレビュー、しちゃいます!:ひかりのスマホに着信アリ!!
TVアニメ「少女☆歌劇 レヴュースタァライト」、衝撃の第1話はご覧になったでしょうか? 音楽学園でスタァを目指す美少女たちの物語と思いきや、武器をとってのバトルあり、変身バンクあり、散りばめられた伏線の予感ありと「これでもか!」と要素を詰めこんだ第1話でした。この作品は絶対に面白くなる……! との予感に従って、まずは第1話のレビューを書かせていただきました! なお、これはライター個人の感想であり、ネタバレには一切配慮していませんので、まずはアニメ本編を隅々までご覧になってくださいね。
さて、本編の話に入る前に「少女☆歌劇 レヴュースタァライト」の公式サイトを見ると、“ミュージカル×アニメーションで紡ぐ、二層展開式少女歌劇”とあります。元々はブシロードの木谷高明会長が「2.5次元ミュージカルとアニメで声のイメージが違うのに違和感がある」と感じたのが作品誕生のきっかけだそうです。アニメファンなら一度は思う感想ですが、そこから「アニメとミュージカルで同じ人に演じてもらおう!」と発想して、本当に舞台もアニメも実現してしまうのがすごいですよね。
なので、「レヴュースタァライト」では声優さんが殺陣満載のミュージカルに挑戦したり、逆にミュージカルで経験豊富な人がアニメのアフレコに初挑戦したりしています。9人のキャストさんは、2017年9月と2018年1月(再演)に2度のミュージカルを、そして先月には初の単独ライブを経験済みです。ですからアフレコの経験値はそれぞれですが、キャラクターを演じることと歌うこと、そしてユニット「スタァライト九九組」としてのチームワークはすでにばっちりなのです。
第1話の入り方として完璧すぎませんか(あとテンポよすぎ)
第1話は主人公・愛城華恋がルームメイトの露崎まひるに起こされるところからスタート。寝ぼけまなこの華恋をかいがいしく起こすまひるですが、全編通じてまひるちゃん、けなげです! 朝のレッスンで、華恋のストレッチをサポートしながらやさしく見つめるまひるちゃんには母性すら感じます(いちゃいちゃしやがって)。彼女たちはスタァを目指す「聖翔音楽学園 俳優育成科99期生」の生徒なので、「レッスン場に入る時は生徒番号と名前を言って、挨拶をしてから入室する」というルールを用意することで、自然に視聴者への自己紹介を済ませてしまうのはうまいですね。
レッスン場での顔見せでおっと思ったのは、天堂真矢の登場シーンです。かなり広角のレンズで彼女が世界の中心であるように映し、続いて真矢がポジションゼロ(舞台のセンター)の位置を示すバミリ(立ち位置の目印)に当然のように向かう様子を足元アップのカメラで映します。最後は手前にどーんと麻矢をアップで置いて、華恋を含むほかの生徒たちを画面奥に豆粒のように配置することで、この空間の今の時点での“主役”が誰であるかをはっきりさせているんですね。そのあとにはピンとした緊張感の中、西條クロディーヌ、星見純那らの名乗りが続きます。
華恋と一緒にいられれば幸せなまひる、そんな2人の様子をにこにこと見守る大場ななの“日常”グループ。強烈な実力と存在感を示す天堂真矢に、ライバルとしての意識を燃やす西條クロディーヌと星見純那の“バチバチ”グループ。そして石動双葉と花柳香子はどちらにも属さず、この2人がのんびりお姫様と凛々しい騎士のような特別な関係性であることを見せています。
ついついモブ生徒の「天堂真矢様よ!」「ポジションゼロはあの方しかいないわ!」みたいな会話で説明してしまいがちなところですが、それをメインキャラクターたちのナチュラルな毎朝の会話だけでなんとなく伝えているのがうまいですよね。ここまでを演出力で乗り切っているからこそ、聖翔音楽学園は100年の歴史を持つ演劇の女学校で……といった、会話ではフォローしにくい設定の外枠を華恋がナレーションで語っても説明っぽくなりすぎないんですね。
そしてここからは、しばらく学園の日常の情景の中で、主要なカップリングがこれでもかとアピールされます。まひるが華恋に好き好きオーラを出し続けているのは見たままですね、まひるはピアノを弾いている時ですら華恋ちゃん(とばなな)を見てます。香子が嫌いなネギを双葉の皿にしれっと移しても、こいつは……という顔をするだけの双葉、ダダ甘ですね。クロディーヌは、食堂でわざわざ真矢の前に座って対抗心むき出しです。なぜか早食い勝負を仕掛けようとするクロディーヌに対して、自然に「いただきます」と手を合わせる真矢が間を外して、戦うまでもなく格付けが済んでいる感じもいいですね。クロディーヌもすぐに真似をするあたり、彼女が(日本的な感覚での)育ちのよさで負けたような気持ちになっているのが見えます。クロディーヌからの一方的なライバル視を真矢は相手にはしていないけれど、こばんでもいない……ぐらいの距離感だと思います。
「9人目」の登場と共に反転する世界
そんなある意味調和した、ラブラブ&仲良くけんかしな的空間は、ひとりの転校生──英国帰りの舞台少女・神楽ひかりの登場によって一転します。文字通り、純白の世界で回っていた運命の歯車が、漆黒の世界で逆回転を始める“運命の反転”が描かれているのです。そのあとの、塔から落下する華恋のイメージシーンの意味については、これからゆっくり考えていきたいと思います。「東京タワーを思わせる真っ赤な鉄塔は、華恋の心象風景で重大な意味を持つ」「華恋が大事にしている王冠の髪留めと、ひかりがつけているきらめきの髪留めは、この塔で買った思い出の品であること」「華恋とひかりと思われる誰かは、何か約束をしたこと」という、明示されている事実を覚えておきたいですね。
そして、ここからいよいよ「少女☆歌劇 レヴュースタァライト」の運命が反転したもうひとつの世界が、視聴者に牙を向きます! ここからの演出がもう、細かい細かい。さりげない絵の表現と、SEによる音の表現で怒涛のごとく攻め立ててきます。
並べると「アイキャッチ風に挿入されるキリンのマークと、スマホの着信音」→「教室でたわいない会話をする華恋たち」→「その日常に背を向けた純那の手元のスマホには、先ほどのキリンのマークと“オーディション1日目”の文字」→「チャイムのSEによる“休み時間”の終わり」→「転入生として教室に出現したひかりと、華恋が2人だけの白い世界に入る」と続くのですが、ある日転入生がやってくるという日常の光景の中に、非日常の予感だけをゴリゴリと織りこんできます。
華恋とまひるが、ひかりを学園から寮に案内する場面に関しては、まひると大好きな華恋ちゃんの世界に、突然昔の女が現れ、あまつさえ運命の関係感すら醸し出していて、疎外感すら感じてしまったまひるの警戒レーダーがマックス反応中! という感じでしょうか。そっけなく見えるひかりの言葉や表情にはいろいろな感情が見え隠れするので、このシーンは後日、その感情が表出するような展開があった頃に絶対見返したくなる予感がします。
ここで、ひかりがすごい才能と実力の持ち主であることが示されるのですが、感嘆する舞台少女たちの中で、普段ははんなりのんびりしている香子が強敵を見定めるような険しい表情をしているのは注目したいです。双葉は「ひょえー、すっげぇな」みたいな顔をしているのとは対称的ですね。また、真矢だけはひかりの表面的には素晴らしい演技の奥に、心が見えないと感じていたようです。
その後はシャワーシーンでの語らい(あと、香子の髪を乾かす双葉!)に注目しがちですが、個人的には同時進行していた自室でのひかりの様子が気になります。スーツケースを荷解きしたあとに部屋中に散らかされた衣類は、千々に乱れたひかりの心象風景を示しているようにも見えます……が、個人的には抑えていた華恋への想いがあふれ出して、無我夢中でスーツケースの奥にしまってあった華恋とひかりが昔撮った写真(宝物)を探し出した痕跡なのではないか、に一票を投じたいです。
そして! 視聴2周目でようやく気づいたのが、ひかりのスーツケースの中のスマホの描写です。一眼カメラを扱う人ならよくわかると思いますが、背景(あるいは手前にあるもの)をぼかす被写界深度の浅い撮影には、ピントが当たってくっきり映っている部分を主題として引き立たせる効果があります。ひかりの自室のシーンでは、ベッドに寝ているひかりから、手前のスーツケースへとレンズのフォーカスが移動する演出がありました。では、演出者はスーツケースの何を見せたかったのかと注目すると、それはスマホです。音の出ないモードになっているスマホのランプが3度、赤く明滅しているのです。ここまでのお話で、スマホが意味のあるアイテムとして描写されていたシーンが一度だけありましたね? そう、ひかりが転入してくる直前、純那に届いた「オーディション1日目」と記されたキリンメール(仮称)の着信です。後の、純那とひかりの決闘(オーディション)場面を見た後なら、ひかりもまたキリンメールの呼び出しを受けたであろうことがわかります。こういうあとで意味がわかる演出、大好きです。
学園に走るひかりの後ろ姿を追った華恋は、学院地下に秘匿された劇場で繰り広げられる純那とひかりの決闘=激昂をテーマにしたレヴューの観客となります。それぞれの武器と舞台少女としての誇りで武装した少女たちが、歌いながらの“戦い”でオーディションを表現する……という演出には、「これが歌劇ってものなのだ」と思いましょう! アニメでは戦いの開幕前にお互いに触れ合いながら間近まで顔を近づけたり、ひかりが純那の額に口づけたりする演出が入っていましたが、これはオーディションとは戦うだけでなく、お互いの心の芯に触れ合い、深く相手を知る行為でもある、ということでしょうか。2人が演じているのは、華恋たちが毎年演じている戯曲「スタァライト」の一幕であるらしい、というのも重要な情報ですね。
オーディションの調停者として登場したのはキリンさん。リアル等身のキリンです。アフリカにいるやつです。「わかります」の意味深な台詞と共にちっともわからない言葉を並べるキリンですが、そんな理不尽を(文字通り)踏み越えていくのが、我らが主人公・愛城華恋です。「!?」となるしかない変身バンクで舞台少女の正装に着替えた華恋は、ひかりと純那の戦いに乱入。レヴューのテーマを「情熱」に塗り替えると、光り輝く花道を疾駆して瞬く間に純那を倒します。バトルの時間だけを切り出せば30秒……しかしこれはあくまでも「オーディション」です。レヴュー曲「世界を灰にするまで」を歌いながら花道を駆け抜け、激しく舞い、迫りくる矢を斬り開く華恋の姿に誰もが魅せられ、情熱を感じたのならそれは華恋の勝利なのです。華恋の剣が純那のマント留めの飾りボタンを切って落として、オーディション第1日は乱入者・華恋の勝利に終わります。
オーディションに身を投じる華恋を止めようとするひかりの悲痛な叫び、そして勝利した華恋に投げつけた「ばっかれん!」の言葉は、ひかりが初めて本当の心を解き放った熱い生きた言葉で、演者である三森すずこさんの技量に感嘆するしかありませんでした。
そしてラストは、オープニングテーマ「星のダイアローグ」をここに持ってくる変則構成! 89秒の中にさまざまな要素を詰めこんだ楽曲ですが、最後にちょっと不穏な余韻を残す感じは、この1話のエンディングとしてもぴったりでした。
さて今回、華恋の変身バンクについてはあえてあまり触れませんでした。エンディングロールに「BANK」として担当スタッフがクレジットされている以上、変身バンクなのだと思いますが、それがこの作品の中でどういう位置づけなのか、2話以降を見極めてから、また書きたいと思います。
(中里キリ)
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