「少女☆歌劇 レヴュースタァライト」第2話をレビュー、しちゃいます!:夢見るメガネ、壊れるメガネ

「レヴュースタァライト」第2話は、オーバートレーニングで前回の敗北の記憶を忘れようとする純那と、ひかりの「一緒に住むから」の押しかけ幼なじみ宣言で幕を開けました。


朝のシーンではまひるちゃんは変なぬいぐるみ、ばななはバナナの枕を抱いて寝ていますが、ひかりもさりげなく白いくまのぬいぐるみを大事そうに持っていますね。

2話ではいよいよオープニングが本来の位置で流されましたが、真っ赤な幕が上がって黄金のライトの中から現れるのは「8人」で、ひかりの姿はありません。オープニングではソロでドヤ!という顔をしている華恋(かれん)ですが、去年の戯曲「スタァライト」ではどんな経緯でどんな役をやっていたのか、ふと気になりました。華恋の手の中にはひかりがつけているきらめきの髪留めと桜の花びらが、後のカットで舞台に横たわるひかりの手の中には華恋の王冠の髪留めと花びらが握られています。2人がスタァになる約束をしたのは桜の季節なのかもしれませんね。

さて、押しかけ幼なじみ同居宣言を受けての通学シーンですが、つれないひかりを追いかける華恋、その後ろで泣きそうな顔をしているまひるちゃんという構図はいつも通り。華恋が地下劇場の話を隠すために「こっちの話」と“ひかりと華恋”をこっち側として線を引いた時のまひるちゃんの「えっ!」と息をのんだ演技、すごくよかったです。2人で歩くひかりと華恋の奥でとぼとぼと歩く小さなまひるちゃんの姿。カメラワークと遠近感で関係性を示すのは「スタァライト」の特徴的な演出ですね。まひるちゃんは最後は後ろから抱きついて、実力行使で華恋をひきとめようとしました。

通学シーンでは双葉と香子のバイク通学が目立っていましたが、さりげなく純那とばななのルームメイトコンビも一緒に通学してるんですね。この流れで行くと、天堂真矢とクロディーヌも同室でしょうか? もしそうならなかなか緊張感がありそうですが、真矢とクロディーヌも寮では一緒にお茶を飲みながら注目舞台の話をしたりくつろいだ姿を見せていましたしね。こういう何気ない日常が垣間見えるのは、舞台版にはないアニメ版ならではのよさだと思います。

レッスンシーンでは別格の真矢に両脇のクロディーヌと純那が食らいつこうとしている様子、華恋が技術的にはまだまだな様子が描かれます。細かく見ると、座って伸ばした両足を浮かせたまま、姿勢を維持するレッスンでは真矢たちに負けないぐらい安定しているまひるちゃんが、音程を取る歌のレッスンでは華恋と同じように口元を震わせていて、得意不得意が描写されているのが面白いです。

さて、ここで注目したいのが神楽ひかりと大場ななという新しい組み合わせの浮上です。キリンにコンタクトしようと、夜は地下劇場につながるエレベーターホールに向かったひかりを見つけたのは、華恋ではなくばななでした(ひかりが華恋から隠れた結果ですが)。さらに後のレッスンシーンでばななとひかりはペアになります。これだけ2人組を強調して大事にする作品ですから、この組み合わせにも何か意味がありそうです。

ペアダンスのレッスンでは、観客気分のクラスメートたちを純那が一喝します。この一喝は、スタァを目指す当事者になりきってはいない華恋にも響いたかもしれません。純那のこの叫びにより、ペア決めの時に周りの生徒が純那と違う方向に歩み去る足元を見せて、純那がちょっと浮いてしまった感じを出しているのがうまいですね。

純那はどこか弱々しくばななに、華恋はひかりにペアを申しこもうとしますが、ばなながいち早くひかりにペアを申しこんだために、純那と華恋は浮いてしまいます。すぐに華恋の元に行かないまひるちゃん、何してんねん! チャンスですよ! と思って探したところ、まひるは双葉と香子の間に座っていました。華恋ガチ勢のまひるとしては、華恋が踊る姿を見ていたいのかもしれません。ダンスを終えた華恋にタオルを持って駆け寄る様子はマネージャーみたいです。

さて、純那はダンスレッスン後にオーバーレッスンと感情の高まりで倒れてしまいます。ギリギリまで張り詰めて、余裕のない様子でしたからね。純那が運ばれた保健室には、さりげなく次の第100回聖翔祭で上演される戯曲「スタァライト」のオーディションの知らせが張り出されています。メインキャストの中で「クレール」と「フローラ」の名前が赤字になっているので、おそらく去年は天堂真矢とクロディーヌがこの役を演じたのでしょう。純那の部屋にもあったチラシを見ると、他の配役には「激昂の女神」「逃避の女神」「傲慢の女神」「呪縛の女神」「嫉妬の女神」「絶望の女神」の文字が見えます。配役は8名分です。

夕暮れ時、華恋は運動場でようやくひかりをつかまえます。画面には日没前の太陽のゴースト・フレア(レンズに反射した光が画面に写り込んでいる)が出ていて、これが「カメラ」を通した視点であることを強調しています。夕暮れの中のやり取りでは、華恋が純那の言葉にどきっとして、考え方が変わったことが明かされます。持たざる者の側であってもあきらめない、星に手を伸ばし続ける純那の言葉だからこそ、華恋に届いたのかもしれません。

そして保健室の純那が「どんなに努力しても追いつけない距離、だからってあきらめられない」と語る時、ひとりでひたむきに自主練を続けるクロディーヌの姿をオーバーラップさせることで、追いつきたい背中であるクロディーヌたち天才もまた、常に全力で努力を続けている……という(純那の)絶望感もまた表現しています。それでもあきらめられない夢なんですね。

華恋がオーディションに参加することをかたくなに反対していたひかりですが、華恋が目指すのはトップスタァというより、あくまで自分と一緒にステージに立つことであると気づいて心動かされている様子。そして純那の渇望と情熱に心動かされた華恋が「ひかりちゃんとスタァライトしたい」と決意とともに叫んだ瞬間、2日目のオーディションを告げるキリンメールが届きます。さりげなく、同時にひかりにもメールが届いていることに注目です。

ここから「校舎に走っていく」「エレベーターで地下に降りる」といった描写を全てすっ飛ばして変身バンクに入るダイナミックな展開がこの作品の異様なテンポ感を生んでいます。変身バンクでは衣装作成のパーツの打ち出しから縫製工程をいちから描きます。書きながら気づきましたが、これ、変身バンクというより衣装作成バンクですね。バンクシーン自体は舞台、オーディションという異世界に視聴者を飛ばすための装置だと思いますが、当たり前のように着ている衣装にも数限りない工程と手間がかけられていて、そこには裏方の存在があることを示しているのかもしれません。

美少女のきらびやかな変身とは対極にある工業的で男性的なイメージを与える衣装作成シーンを見て思い出すのは、やはり「輪るピングドラム」や「ユリ熊嵐」を手がけた「イクニ」こと幾原邦彦監督の演出です。それもそのはず、本作を手がける古川知宏監督は「ユリ熊嵐」で副監督を務め、数多くの幾原作品に参加している直弟子であり右腕的存在なのです。バンクシーンの空気感はイクニ的ですが、この工業的なテイストは古川監督のオリジナルだと感じます。最後の赤いビロードに包まれて「メイクアップ!」する感じはもう、完全に幾原監督初のシリーズディレクター作品「美少女戦士セーラームーンR」へのオマージュですよね。

2話のメインレヴューシーンは愛城華恋vs星見純那。テーマは「渇望」です。今回は「つかんでみせます自分星!」の純那の口上も入りました。レヴューの舞台のモチーフは純那の心象風景で、「眼鏡」と「個性のないマネキン」が多数登場します。かつて「勉強ができる」「優等生である」という属性しかなかった自信のない純那が、オリジナルな何かになれるかもしれない、という夢が「スタァになる」ということなのでしょう。舞台の客席には眼鏡が置かれていましたが、かつては純那も観客として舞台を見つめる側の人間だったのです。

ただひとつ付け加えるなら、純那はかつての自分の象徴である舞台上のレンズを破壊しながらも、同時に「マネキン」と「レンズ(で作った鏡)」を舞台で戦うための武器にも使っていました。舞台版「レヴュースタァライト」では、純那が歴史や舞台の知識をそらんじるシーンがありましたが、勉強が取り柄の優等生だった時代に学んだことも、今の彼女の血肉になっているのでしょう。

第2話のレヴュー曲は「The Star Knows」。間奏がかなり長く壮大なんですが、純那と華恋、キリンの台詞がぴったり収まる長さになっているところに作り込みを感じます。そして戦いのバックで劇伴っぽくレヴュー曲が流れていたのが、最後の華恋の独唱では音量を上げてアカペラっぽく、絵にも口の動きをつけて“その場で華恋が歌っている”形にすることで、オーディションの勝者が華恋であることを印象づけていたのにはシビれました。

オーディションを通して純那と華恋が認めあって、少し仲良くなれたのがよかったですね。そんなさわやかな空気を反映するように、セットの眼鏡を通してキラキラした光が2人に降り注いでいたのが印象的でした。そして、純那と華恋の戦いの前後に挿入されていたのが、天堂真矢と西條クロディーヌの戦いのシーン。勝利して「夢は見るものではなく見せるもの」と語る真矢の姿はまさに王者でした。

ラストはひかりとまひるのシーンで引きましたが、いろいろな想いをひたすら溜めこみ続けている2人が今後のレヴューでどんな表情を見せるのかにも大注目です。

(文/中里キリ)

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