この夏イチオシのアニメソングはこの10曲! DJ・出口博之の「いいから黙ってアニソン聴け! in 2018夏」
全国1千万人のアニメファンの皆様こんにちは。流浪のベーシスト、およびアニメソング・特撮楽曲中心のDJを生業としている男、出口博之です。新クールのアニメ作品が出揃う頃に、音もなく背後からやってくる不定期連載コラム「いいから黙ってアニソン聴け!」。今回は2018年夏の回となります。
暑いのは夏らしくて当然なのですが、各地で記録的な猛暑となっている今夏、皆様におかれましてはいかがお過ごしでしょうか? 連日呼びかけがある通り、やはり水分補給などの暑さ対策は必須となっているので、油断せずこの夏を過ごしましょう!
例年よりも「夏らしい」と言えるのは現実だけではありません。今年の夏アニメも非常に夏らしい作品、夏らしい楽曲が多く揃った印象を受けます。昨年の夏を感じさせる楽曲は「アホガール」のOP「全力☆Summer!」、「クリオネの灯り」のOP「クリオネの灯り」など音楽ジャンルが幅広く、「お祭り的なにぎわいを感じる夏」といった印象でしたが、今年は全体的に勢いよりもアニメ作品の世界観を補強するような楽曲が多い印象。いつもよりおとなしい、とか、例年に比べて目立たない、と言うことではなく、夏の情景をしっかり想起させる強い楽曲が揃ったということです。
さて、非常に夏らしい作品、楽曲が揃った今期すべての作品から「これは!」というアニメソングを選出します!
今期の10曲はこちら!
・ぐらんぶる
OP「Grand Blue/湘南乃風」
・ゾイドワイルド
OP「Starting Over/DISH//」
・ちおちゃんの通学路
OP「Danger in my 通学路/三谷裳ちお(CV.大空直美)野々村真奈菜(CV.小見川千明)細川雪(CV.本渡楓)」
・ハイスコアガール
OP「New Stranger/sora tob sakana」
・はねバド!
OP「ふたりの羽根/YURiKA」
・Back Street Girls-ゴクドルズ-
OP「ゴクドルミュージック/ゴクドルズ虹組」
・ムヒョとロージーの魔法律相談事務所
ED「ホトハシル/ORESAMA」
・ヤマノススメ サードシーズン
OP「地平線ストライド/あおい(CV.井口裕香)ひなた(CV.阿澄佳奈)かえで(CV.日笠陽子)ここな(CV.小倉唯)」
・闇芝居(第6期)
ED「まやかし横丁/奥村愛子」
・ゆらぎ荘の幽奈さん
OP「桃色タイフーン/春奈るな」
毎回選出するたびに、極限まで悩んで悩んで悩むのですが、今回はそこまで悩まず選出できました。楽曲の良し悪しではなく、個人的な趣味嗜好に合致しやすい楽曲が多かったということです。一聴して「あ、これ好きだわ!」と細胞が瞬間的に判断する感じがありました。やはり、ベースがかっこいい楽曲、リズムがかっこいい楽曲は大好物。
前回の春アニメソング選出時に、「春は落ち着いた楽曲が多かったので、夏は季節柄開放的な(解放しすぎな)楽曲が聞けるかもしれない」と書きましたが、そういった方向の楽曲は少なく、春クールに続いて温度感のある楽曲が多くなっているのが非常に興味深いです。もしかすると、今後のトレンドは派手すぎない楽曲、なのかもしれません。
今期一番夏らしい作品、楽曲は「ぐらんぶる」のOP「Grand Blue」です。
まさに夏、当たり前ですが夏以外には絶対に放送できないくらい夏! 湘南乃風が担当している楽曲もこれ以上ない夏です。アニメソングと湘南乃風という組み合わせは一見想像もつかない印象がありましたが、ここまで作品と楽曲が強固につながるとは恐れ入りました。めちゃくちゃカッコいい。
音楽としてはマニアックなジャンルとして分類されるレゲエをベースにしながら、大衆性を極限まで高めたメロディと歌詞をビートに乗せることによって、唯一無二の世界観を生み出しています。マニアックさと大衆性、相反する要素を絶妙なバランスで構築できるのが湘南乃風の強さの秘密だと思います。
これからも夏を代表するアニメソングの1曲として記憶に残り続けるでしょう。
夏を感じる作品、楽曲といえばこちらも忘れてはいけません。「はねバド!」のOP「ふたりの羽根」
楽曲はドライブ感が強くなる傾向にありますが、この楽曲は競技の激しさや試合の熾烈さではなく、あくまで部活動にかける想いを明るく、爽やかに、健康的に描き出しているのが清々しい。特にサビではメロディが楽器よりも一拍早いタイミングで展開していることによって前のめりなリズムが生まれて曲を先に先に推し進める。この、足並みがどんどん早くなるような爽快な青春感が本当に素晴らしい。サウンドも透明感があり立体的で、ブレイクやキメが小気味よく決まっているのも聴きどころです。泣ける曲じゃないのに爽やかにがんばる姿を見るたび、毎回涙腺が刺激されてしまいます。
「ゾイドワイルド」のOP「Starting Over」も、爽やかな夏らしい楽曲です。
これぞ正しいアニメソング!と声を大にして言いたいくらい、真っ直ぐな力強さが心地よい。歌詞のメッセージや、ストリングスが華やかに響くサウンドに「男子らしさ」というか、いい意味で青臭さが感じられ、それがアニメ作品の世界観とリンクしています。
ゲームやプラモデルなど数多くの男子向けホビーがありますが、ゾイドは男子ホビーの中でもかなり硬派な部類に入ります。男子たるもの生涯必ずひとつはゾイドを組み立てなければいけない、というのは言い過ぎですが、完全に男子だけが喜ぶプロダクトです。ゾイドを組み立てる時のワクワク感、できあがった時の達成感は何ものにも代え難いもの。そういった男子のワクワク感を、胸の奥から思い起こさせる楽曲です。
「ゆらぎ荘の幽奈さん」のOP「桃色タイフーン」も夏を感じる1曲です。
爽やかさであるとか、サウンドの透明感という部分ではなくメロディが完全に祭囃子、いわゆる「ペンタトニックスケール」になっているので、非常に日本的な趣が感じられます。特にサビ後半でメロが下降するあたりがわかりやすいかと。「桃色タイフーン」以外にも「つくもがみ貸します」のED「今宵は夢を見させて」、「京都寺町三条のホームズ」のOP「恋に咲く謎、はらはらと」など、日本的なペンタトニックスケールを用いた楽曲が多いのも今期の特徴としてあげられます。
今期における「ネタ曲なのに異常なクオリティの楽曲」は、「Back Street Girls-ゴクドルズ-」のOP「ゴクドルミュージック」です。
ネタ曲というのもアレですので、別の言い方にすると「遊び心のある楽曲」ともいえます。
作品自体からして、性転換手術を受けた極道がアイドルになる、という正気の沙汰とは思えない破天荒なストーリーなので、これくらい突き抜けた楽曲じゃないと釣り合わないと思います。ド頭の聞き覚えのある「仁義なき戦い」的な導入から、細かいオマージュがこれでもかと詰め込まれているので、それを見つけるのも面白い聴き方ですね。ネタ部分に耳がいきがちですが、楽曲を手がけるのは今や作家としてもアーティストとしてもシーンのトップを独走する大石昌良さん。遊び心の中にも細かい半音進行やメロディの抜け方など、随所に大石昌良さんらしい技が光ります。面白いけどちょっと切ない、楽しいけど少し寂しい、そんな不思議な聴き心地が魅力となっています。
アニメソングが次のステージに進んだことを感じさせるのが「ハイスコアガール」のOP「New Stranger」です。
もう、とにかくにカッコいいのひと言! アバンギャルドなプログレ、マスロックだけど、どこまでもキャッチーでポップネス。破綻ギリギリのバランスで成り立っています。エッジの塊のようなサウンドと幼さが残る(いい意味で上手過ぎない)ボーカルの組み合わせは、発明と言っても過言ではないかもしれません。究極にアニメソングらしくないですが、はみ出し過ぎた部分が逆にアニメソングとしての説得力になっているのが非常に興味深いです。アニメ作品との親和性も高いので、今後プログレやマスロックはアニメソングの定番ジャンルとなっていくかもしれません。
ベーシストとして今期「これは!」と思ったのは、「ちおちゃんの通学路」のOP「Danger in my 通学路」です。
世のベーシスト、およびベース大好きっ子は絶対に聴きましょう。ベース以外の楽器も主張の強いサウンドでそれぞれ目立っていますが、その中においてもベースの存在感は抜きん出ています。ローポジションからハイポジションの高速駆け上がりや、高速ランニングフレーズなど、基本スキルを極限まで高めた超絶テクが目白押し。私もスキルアップのため課題曲として練習しようと思っています。
ベーシストとしてもう1曲「うまい!」と思ったのは「ヤマノススメ サードシーズン」のOP「地平線ストライド」。
ブラックミュージックのダンサブルなノリが気持ちよく、楽しくてかわいらしい楽曲ですが、ベースはかわいさとは真逆のいぶし銀の職人技が光りまくっています。16分のグルーヴが楽曲のノリをコントロールしつつ、おいしいところでハイポジションのフレーズがバシッと差し込まれたりと、表情が豊かで何度聴いても気持ちがよく、ベーシストならお手本として覚えるべきフレーズが満載。
「細かい仕組みはわからないけど、体が動くよね」という時は、ほとんどの場合ベースがノリを作っています。そういった「ブラックミュージックの仕組み」がわかりやすく体感できると思うので、体を動かしながら聴いてみましょう。
ブラックミュージックの踊れる要素を取り入れながら、独自の個性が光るのは「ムヒョとロージーの魔法律相談事務所」のED「ホトハシル」。
ファンクを下敷きにしていながらも楽曲のノリが横ではなく縦ノリになっているのが面白い。打ち込みによってリズムが構築されているため、アナログな揺らぎみたいなものが整理されているのでグルーヴが非常に直線的です。従って、微妙なタメやツッコみがないのですが、逆に言えば「寸分の狂いもなく同じグルーヴが繰り返される」ということでもあります。この狂いのなさは相対的にボーカルの生のグルーヴを引き立て、直線的な縦ノリでありながらも複雑に揺れるノリが感じられるのです。
それでは最後に今期イチオシ楽曲を選出します。「闇芝居」のED「まやかし横丁」です!
「闇芝居」は毎回抜群にカッコいい楽曲がエンディングに選ばれますが、今回も抜群によかった! いやー、カッコいい! モダンジャズや大正ロマンなどのレトロな雰囲気がありつつも、音像や間合い、質感がきちんと現代にアップデートされ、ある種独特の白昼夢感がクセになります。変幻自在なギターが楽曲の彩りを豊かにしている通り、ボーカルと並んで楽曲の主役の位置にギターがいます。で、ほかの楽器がおとなしいかといえば全くそんなことはなく、どのパートもアクもキャラも強くて自己主張の塊みたいな音なのにバンドのグルーヴがものすごく気持ちいい。この楽曲を今期イチオシとさせていただきます!
いかがだったでしょうか?
今期も僭越ながら10曲を選曲させていただきました。お気に入りの作品、楽曲はありましたか?
昨年の夏クールに比べて楽曲のジャンルが多様化している印象を受けました。王道のアニメソングからプログレまで、とんでもない振り幅になっています。次のクールではどんな楽曲、作品が登場するのか、今から楽しみで仕方ありません。
それでは、次回は秋にお会いしましょう!
(文/出口博之)
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