「少女☆歌劇 レヴュースタァライト」第5話をレビュー、しちゃいます!:舞台袖が立ち位置のおいもちゃん
第5話「キラめきのありか」は、待望の露崎まひる回です。突然現れたひかりに、大好きな華恋(かれん)を取られてしまうのではないか……という不安と負荷がこれまでたっぷり描かれてきただけに、まひるちゃんのレヴュー回を心待ちにしていました。
さて、第5話ではまひるの実家が北海道の「つゆざきファーム」という農場であることが明かされます。実家から送られる荷物は大量のじゃがいも、カボチャ、とうもろこしといった野菜の山。なかでもじゃがいもの存在が特に強調されているのは、北海道で育ったまひるの、素朴で周りに比べると地味だけど、味は最高で周りのみんなを笑顔にする感じと重ねているのかもしれません。実家の生産物をふるまっていた昨年の思い出の中では、華恋の存在がやたら大きいのが目立ちました。おばあちゃんからの手紙に「華恋ちゃんたちと一緒に食べてください」とあることからも、普段まひるが手紙や電話で華恋のことばかり伝えていることが感じられます。
アニメ「レヴュースタァライト」の構成がうまいなと思うのは、第3話「トップスタァ」で華恋が天堂真矢に負けて頂の高さを知ったこと、そして第4話で華恋がひかりとの絆・約束を再確認したことによる人間関係の変化が、第5話の前段として機能していることです。華恋とひかりの朝帰りにもやもやしながらレッスン場に向かってみれば、普段自分がしている華恋のレッスンパートナー役をひかりがしています。それだけでなく、真矢と華恋の間にまで何か通じ合った空気が流れているのです。頂点であるがゆえに孤高である真矢にとって、敗れてなお挑んでくる存在が好ましいことは第4話のクロディーヌ戦を通して描かれていましたが、まひるちゃんにとっては知らない間に起こった変化です。なんでも知っていると思っていた女の子が、自分の知らないところで変わっていくのは大きなストレスだと思います。
追い詰められていくまひるの華恋への想いがあふれだす、一番みっともない場面の数々を恋敵であるひかりに見られてしまうという経験を重ねて、ついにまひるの心のダムは決壊。その先にあるレヴューシーンに至ります。ですがここで驚いたのは、オーディション第4日「嫉妬のレヴュー」の対戦カードが「愛城華恋vs露崎まひる」だったことです。
ここで説明しておくと、アニメと対になる舞台版「少女☆歌劇 レヴュースタァライト -The LIVE- #1」における「嫉妬のレヴュー」での対戦カードは、「露崎まひるvs神楽ひかり」だったのです。物語のキーになる対戦を舞台とアニメで変えてきたのはとても興味深いですね。舞台版における「自分から華恋を奪おうとするひかりに嫉妬をぶつける展開」に比べると、まひるの中にあるきれいなだけではない、華恋への強い想いをそのまま本人にぶつけるアニメ版のレヴューはより生々しく、まひるちゃんの本質に迫る感じがしました。
レヴューを通して、まひるの華恋への依存といってもいい恋慕の情は、自身に対する自信のなさ、仲間の舞台少女たちが持つきらめきに対する憧れと裏表であることが見えてきます。まひるの愛情の「重さ」を、鈍器で舞台を打ち砕く攻撃の「重さ」で表現したのは笑ってしまいましたが、彼女の「やべーやつ」な一面が強調されているからこそ、そんな歪みも含めて親友の一部として受け止める華恋の懐の深さが際立ちます。
興味深かったのは、レヴューの中でまひると華恋がほかの舞台少女たちのレヴューに乱入……ではなく、次々と横を通り過ぎていったこと。このレヴューがまひるの心象風景だとすると、「まひるは舞台の脇役だと自認しているから、ほかの主役たちと共存できる」「ほかの人たちの戦いなんてどうでもいい、華恋ちゃんと一緒ならいい」「こんなに仲良く潰しあってきらめいている自分と華恋ちゃんをほかの舞台少女たちに見せつけたい」みたいな気持ちを表現しているのかもしれません。そんな2人に主に反応しているのは、真矢、純那、ひかりと、華恋と関係を深めてまひるをもやもやさせてきた舞台少女たちでした。
演じるのはほかの人の舞台の脇で。関係性を確かめ合うのは舞台裏で。まひるが自信を持って演じられるのは、華恋と一緒の手作りの舞台だけなのです。しかし、レヴューで表面的に表現されたまひるの想いの重さや表現の激しさではなく、その根っこにあるまひるの「自信のなさ」にまっすぐ斬りこんでいくのが華恋のすごさだと思います。否定するのではなく、まひるの舞台への想い、家族や仲間への想い、輝きたいという願いを見つけて、肯定していくのは華恋にしかできない戦い方でした。華恋の想いがまひるに届いたところでレヴュー曲の「夜が明けてまひるになるよ」のフレーズが来たのにのはしびれました。
結果としてまひるちゃんの華恋に対する思慕の強さは、本人にあんまり届いていないようですが、ここまでの彼女に対する負荷で一番大きかったのは自分だけが蚊帳の外で、華恋が変わっていくことへの恐怖感だったように思います。だから、1対 1で思いのたけをぶつけたこと、そして華恋が自分以上に自分のことを理解してくれていたことは、まひるにとってレヴューの勝利以上に価値があることだったのではないでしょうか。
ラストのお芋パーティー、おいしい芋を食べればみんな幸せという空気感には、どこか「ミルキィホームズ」感がありますね。「This is お芋」で真矢様のくいしんぼ属性が出てきたのもほほえましかったです。
そして、まひるちゃんの「大切な人を笑顔にしたいと思えば、何度でもきらめける」というワードには、作品全体を表す「アタシ再生産」というキーワードに通じるものを感じました。
(文/中里キリ)
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