声優として10年経て、また新たな一歩を 渕上 舞、初のアニメエンディング主題歌「Rainbow Planet」インタビュー
アーティストデビューをフルアルバムで飾り、1stライブも成功させた渕上 舞が、初のシングルをリリース。これはTVアニメ「プラネット・ウィズ」のエンディング主題歌で疾走感あふれる楽曲。「妥協できない」クオリティを突き詰め歌い上げた楽曲の魅力と作品への取り組み方を語っていただいた。
作品を背負う主題歌の重みを感じた1stシングル
──渕上さんは2018年1月にフルアルバムでソロデビューを飾り、5月には1stライブの追加公演として舞浜アンフィシアターでライブを開催されました。まずはその感想からお聞かせいただけますか?
渕上 過ぎてみれば、あっという間の時間でした。あんなに大きなステージにひとりで立てるという感動はありつつも、そこに至るまでは不安も多く、当日まではドキドキでした。でも、始まってしまえば、あっという間に衣装チェンジのタイミングで、「ということはもう終わってしまうの?」っていうくらい、体感としては30分くらいに感じられました。広い会場でしたけれども、お客さんとの距離は近くて、後ろのほうの席まで意外としっかり見えて、皆さんもツアーの中で一番と言っていいほど盛り上がってくれたのが何よりうれしかったです。もちろん、自分の中に反省すべき点というものはありますが、ひとまずは大成功と言っていい時間を過ごすことができたので、本当に満足しています。
──そのステージ上で、今回の1stシングル「Rainbow Planet」が「プラネット・ウィズ」のエンディング主題歌に決まったこと、そして熊代晴海役として出演することを発表されました。
渕上 今回は主題歌タイアップという点が自分としては大きかったです。作品を背負うひとりになるんだなという重さを強く感じて、自分の曲だけれども自分だけの曲ではないなと思いました。今までは声優として、キャラクターのひとりとして作品に携わる機会がほとんどだったのですが、渕上 舞個人として関わることで見え方が変わりました。声優として10年活動してきて、さまざまなことに慣れてきたところで、また新たな感覚を与えていただけたことに深く感謝しています。
──「作品を背負う責任」という言葉は、主題歌を歌う皆さんを取材すると異口同音におっしゃるのですが、渕上さんの場合、それはどのような点で感じられるのでしょうか?
渕上 まだアーティスト活動を始めて間もないので、うまく言い表せないのですが、アニメの主題歌になるということは、私のことを知らない方でもこの作品を好きになってくれるような、さまざまな方の目や耳に触れることになるわけです。だから、私だけが満足するのではダメなんだという責任。たとえばすごく昔の作品でも曲を聞いたときに記憶が蘇るみたいに、作品と紐付いて繋がるところでの責任の重大さを感じますね。
──「プラネット・ウィズ」には熊代晴海役として出演されていますが、作品の中身についてはどのような形で知っていきましたか?
渕上 この作品についてはほかのキャストの皆さんと同様に、触れていきました。あらすじや概要をうかがい、第3話目くらいまでの展開について、原作の水上(悟志)先生のネームを読ませていただいて、オリジナル作品なのでその後は毎回の台本をいただいて知っていくという流れでした。連載マンガを読み進めるかのように、毎回新鮮な驚きと感動をしながらアフレコを進めていきました。
──演者として、熊代晴海の役はどのように作られていきましたか?
渕上 私はビジュアルから入ることが多いのですが、晴海は意外なキャラクターでしたね。見た感じは気弱そうでおしとやかなおっとりさんなのかなと思いきや、実はすごく柔道が強いキャラクターでキレると暴走してしまうという予想外の動きを見せるので、ビックリしたんですけど(笑)。私はこれまで比較的冷静なキャラクターを演じさせていただくことが多かったのですが、今回それだけ振り幅があるキャラクターを演じるのはすごく楽しかったです。役者をやっていなければ、大人になってから叫ぶことなんてありませんからね(笑)。それで自分の新たな一面を見ることもありますから、楽しい経験ができる仕事だと思っています。
──収録はすべて終わってますか?
渕上 はい。この作品はとても早かったのでアフレコも毎週進んでいきました。オンエアも自分が出ていない回は初めて見るという楽しみがありますし、出ていた回もアフレコのときとはずいぶんと印象が変わるんです。ストーリー的な内容は知っているのですが、特にこの作品は主題歌で関わっているせいもあって、音の力を強く感じます。ロボットの迫力は効果音が入ると全然違いますし、劇伴も盛り上がりや不気味さをすごくわかりやすく伝えてくれますので、知らない作品を見ているかのようにドキドキして見続けてしまうんです。アフレコのときは100%理解が追いつかないところも、オンエアを見ると、「こういう演出意図だったのか」とわかったりして、視聴者として楽しみつつ、勉強しながら見ているところがあります。オリジナル作品は先が見えない分、より楽しいですね。
──「Rainbow Planet」の楽曲は渕上さんの元に届いたときにはどのような形だったのでしょうか?
渕上 この作品は水上先生のこだわりがすべてにおいて詰まっていて、お話やキャラクターのデザインはもちろん、オープニングやエンディングを含めてすべてでひとつという形なんです。エンディング曲の候補も、当初はバラード曲もあったのですが、水上先生が、どちらもオープニング曲になるくらいの勢いや印象の強さという点にこだわられたそうで、結果このような疾走感あふれる楽曲になったそうです。歌詞もメロディもこだわって作られ、磨き上げられた楽曲ですね。
──渕上さんご自身もこういうタイプの楽曲が好きそうですね。
渕上 そうですね。歌っていて気持ちいいです。より世界観に浸れる曲ですし、気持ちよく歌える曲ですね。サビのところはファルセット(裏声)になるのですが、そこがうまくいくとすごく気持ちよいんです。急に音を変えるのはまだ私の中でうまくいかないこともあるのですが、もっと歌いこなしていつか披露する機会が来たときには完璧に歌いたいですね。
──レコーディングもそういうところは何回も。
渕上 はい。何回も。もうちょっとできるはずって。私の今までの曲の中でもかなり時間をかけて録りました。自分になじませるのに時間がかかったし、作品を背負うひとつのパーツという責任感もあり、全部録ったあと、自主的に 「もう1回よいですか?」と、よりクオリティの高いものをという気持ちが強く出て、時間をいっぱいまで使ってレコーディングをしていきました。ふだんの私って、どちらかというと頑張らない人なんですけれど(笑)、この曲はすごく好きなメロディだし、疾走感があるし力強い曲だったりするので、まだ歌い慣れていないなか、自分として妥協できないクオリティがあって、あと1回歌えばそこにたどり着けるんじゃないかという思いが自然と出てきちゃったんです。自分自身の歌という部分が強いせいかもしれないですね。
──歌詞についてはどのように受け止められましたか?
渕上 すごく難しかったです。正解がないんですよね。作品の中でも「自分が味方したいと思った人に味方するんだ」というニュアンスのセリフが出てくるんですけれども、正義と悪を分ける必要があるのか、悪の側も自分のことを正義だと思っているし、逆もまたというところで苦悩して問いかけてはいるのですが、結局どちらが正義か悪かは決められない。でも「みんな違ってみんなよい」みたいな軽いものでもない収めどころが、歌のニュアンスとしても非常に難しさを覚えたところでした。私の中での答えというのも、いまだに見つけられてはいないのですが、そういう歌を歌えるのも作品の歌だからこそだなと思っています。自分のアルバムの曲なら、私の思っている正解の歌詞とか、こういう歌を歌いたいというふうに進められるのですが、今回は作品に寄り添った曲で、自分なりの答えを見つけて歌うというところで、新しい経験だったなと思っています。
──ミュージックビデオの撮影はいかがでした?
渕上 これは合成で撮られていて、私の周りはすべてブルーバックだったのですが、何もない空間で曲に合わせて歌いながらお芝居をするというのが不思議でしたね。監督から演技の指示があっても、シチュエーションが何もないから不安もありましたが、でき上がった映像はとても素晴らしいものになっていて、最近の映像技術のすごさに改めて驚かされました。
──MVとジャケットでは新たに真っ白な衣装を披露されました。
渕上 歌詞が「正義でも悪でもない」というところだったので、何かひとつの色に染めたくなくて、いろいろなアイデアを出す中で、何でも染まれる色というところで、白になりました。形も衣装さんと相談して、もっとお姫様っぽいという案もあったのですが、もっと強い感じで、なんなら裾が破れてもよいくらいの戦う感じにしてもいいくらい、強くきらびやかな衣装にしていただけました。
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