再会に流した涙──「BanG Dream! 8th☆LIVE」夏の野外3DAYS:DAY1 Roselia「Einheit」レポート

「BanG Dream! 8th☆LIVE」夏の野外3DAYS DAY1:Roselia「Einheit」が2020年8月21日、富士急ハイランド・コニファーフォレストにて開催された。

初日DAY1はRoselia(Vo.相羽あいな、Gt.工藤晴香、Ba.中島由貴、Dr.櫻川めぐ、Key.志崎樺音)がメインアクト。DAY2はRAISE A SUILEN、DAY3はPoppin'Party、前島亜美(Pastel*Palettes 丸山彩役) with RAISE A SUILEN、Morfonicaらが出演する。

会場となるコニファーフォレストは山梨県の遊園地、富士急ハイランドに隣接した広大な屋外スペース。DAY1に出演するRoseliaにとっては、ちょうど1年前に初の野外ライブ「Flamme」/「Wasser」を行なった思い出の会場でもある。日中は酷暑といってもいい灼熱の暑さに包まれていたが、開演時刻が近づき、日がかげると空気が一変する。客席後方の富士山方面から吹き下ろす高原の風はさわやかで、涼しい、と言っても差し支えない体感温度だ。

ライブ当日の富士急ハイランドは、コラボイベント「バンドリ! ガールズバンドパーティ! in 富士急ハイランド」(2020年7月23日~9月6日)を実施していた。ライブ前に園内を通り抜けてみたが、場内のアトラクションアナウンスからおなじみのキャラクターたちの声が聞こえてきて、それだけでライブへのテンションが高まってくる。

この半年間は新型コロナウィルスの影響により、ジャンルを問わず多くの大型ライブが延期・中止に追いこまれた。「バンドリ!」もまた、5月のメットライフドームでのライブをはじめとしたライブやイベントが延期・中止となっている。再開の第一歩となる今回の野外ライブでは、入口での検温、マスクの着用確認、来場者のスマホへの接触確認アプリ「COCOA」のインストール、1席ごとに空席を作って密対策を行なった座席、声援は控えて手拍子で応援、そして何より風吹き渡る屋外という地の利と、可能な限りの対策を行なっての開催となった。

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野外に特設されたステージの両サイドにはメンバーカラーの5色の薔薇をあしらった巨大な飾り布があしらわれ、屋根にはドイツ語で“団結”を意味するライブタイトル「Einheit」のロゴを記したフラッグがたなびく。掲げる旗印でライブの主を示すさまは西洋の城郭のようでもある。

「D4DJ」よりMerm4idがオープニングアクトとして登場。この会場にぴったりなカバー曲「フジヤマディスコ」をはじめとした全4曲を披露し場を温めると、ステージにRoseliaの5人が登場。「これまでの感謝を込めて。Avant-garde HISTORY」と、アニメ第3期最終話を思わせる言葉とともに「Avant-garde HISTORY」でライブは幕を開けた。ややゆったりしたテンポの技巧的な楽曲をトップに持ってきたのには、彼女たちの演奏に対する自信を感じる。スクリーンには、武道館に立つアニメ映像のRoseliaが映し出された。

今回のライブでは会場の声援やコールは我慢して、応援の気持ちは手拍子や拍手に託すのがルール。オープニングMCで相羽さんから来場への感謝の言葉が届けられると、そのひとつひとつに拍手が返されるのは新鮮な感覚だ。相羽さんがすぐに会場とのやりとりのテンポを飲みこんで通常のライブMCに近い間合いに持って行く。締めの今井リサ役中島さんが観客の拍手のギアを一段上げることを要求して会場がこれに応えたことで、感情やテンションを拍手の強弱に込めるこのライブの作法がお互いに呑みこめてきた感じだ。


「BLACK SHOUT」を奏でるメンバーたちの笑顔は本当にキラキラしていて、声援はなくとも想いは届いていることが伝わってくる。工藤さんには、テクニカルなギターソロを奏でながらあんなにもきれいに笑えるものなのかと驚かされたほどだ。曲中、客席に噴水のように水の特効が噴霧されたのは真夏のライブならではであった。

「Ringing Bloom」では、客席に背を向けて視線と想いを志崎さんに注ぐ相羽さんの姿が印象的だ。観客が見ているのがボーカルだけでなく、Roselia5人の関係性であるからこそ成立する表現だろう。歓声を拍手で表現するライブだったが、志崎さんのキーボードソロに送られる観客の拍手からは、技術に対する純粋な賞賛のニュアンスが感じられた。

「Ringing Bloom」の余韻が残る中「BRAVE JEWEL」へ。ライブのたびに大きな変化を感じさせる楽曲のひとつで、今が一番いい演奏なのはもちろん、もっともいい笑顔を見せている。ステージ上の5人が笑顔でコミュニケーションを取り、客席とも想いをつなぎながら演奏するという姿は、Roseliaの大きな魅力になっているように思う(初期のストーリーで描かれたRoseliaを思えば驚くべき変化だ!)。

「ララララを心の中で歌ってほしい」と前振りしての楽曲といえば、Roseliaなら「Safe and Sound」だが、ここでメンバーが奏で始めたのは「ラララ」つながりのPoppin'Party楽曲「STAR BEAT!~ホシノコドウ~」。1年前の同地でのライブでもやったネタの天丼(繰り返し)だが、今回は相羽さんもロックテイストの歌唱でがっつり乗っていった。しかし中島さんたちのどこか気の抜けたコーラスに相羽さんがつんのめると、寸劇はここまで。相羽さんが「いつか同じステージで(ポピパと)一緒に立ちたいと思っている」という嬉しいひと言を残すと、今度こそ「Safe and Sound」へ。強くやさしい歌声と妙なる調べは、「やはりRoseliaはこうでないと!」と感じる。青と紫の宝石のような方形のライトは、昨年のライブを思い出す演出だった。

「約束」でフォーカスされたのは友希那とリサの関係性で、相羽さんと中島さんが手を差し伸べ合いながら視線を交錯させる。中島さんの「信じていて最後まで」の歌声の語尾が消えていくような、ささやくような歌唱から、「約束だよ」のひと言で2人の声が力強く溶け合った。

Roseliaは独自の世界観を持ったパフォーマンスの間に、爆笑のバラエティ映像を挟むことでギャップが双方の魅力を際立たせる構成が定番となっている。

ここではおなじみの「キャラくず」こと「キャラ設定を崩しちゃいけない!! 5人で一緒」前半戦の映像が公開された。キャラクターを演じながら5人で課題に挑戦し、一番多くキャラクター設定を崩してしまったメンバーは罰ゲームという趣向だ。

制限時間内に魚を釣るチャレンジの中で志崎さんが次々と魚を釣り上げる→相羽さんが志崎さんと場所の交代を提案→場所を変えても釣れるのは志崎さん、という流れには笑いの神が降りていた。

後半戦は、「第3回ガールズバンド総選挙~一緒にライブをしてみたいバンドは?~」でRoseliaが1位に輝いた記念曲「Break your desire」からスタート。疾走感にあふれた楽曲に合わせて、スクリーンにはドローンからのスピード感あふれる空撮映像が映し出される。今回のライブは密集対策のため、約18,000のキャパに対し約5,000人の集客で実施。ハイテンポな楽曲を、気迫をこめて演奏しきった櫻川さんは「一番テンポが速い曲」と苦笑いしながらも嬉しそうだった。

「Neo-Aspect」では、ステージ前に巨大な炎の特効が吹き上がった。その熱量は観客席にいてもチリチリと熱気を感じるほどで、ステージ上に吹く熱風のすさまじさも想像に難くない。しかしスクリーンに映る、陽炎(かげろう)たつ炎越しに見える相羽さんの歌声と眼差しはただただ力強くまっすぐだ。ここで立て続けに「PASSIONATE ANTHEM」。切り札を立て続けに繰り出しても尽きないエネルギーと説得力。相羽さんが大地に拳を打ち付けるように姿勢を低くすると、この日最強の火柱がステージを覆った。

“世界で一番幸せ”な瞬間


「しばらくライブができなかったけれど、こうしてみんなに会えて嬉しいわ」と相羽さんが感謝を伝えると楽しいトークが続く。

そのトークを受けて、“団結=Einheit”を示す楽曲のひとつとして歌われたのが「ONENESS」だ。屋外会場の空気がわずかに湿りはじめる中、ステージの5人は夕闇の中、激しく躍動した。

「Sanctuary」は、背後に霊峰富士を背負った幻想的な空撮映像をバックにパフォーマンス。青い光に染めあげられた聖域で、Roseliaが親愛なるものたちへ捧げる歌声が響く。このタイミングのMCで、途中でチェンジした新衣装について紹介。燐子によれば、深緑色のダークなイメージとゴシックな黒いクラウンがポイントとのことだ。

ここでライブがラストに向かうことが告げられたのだが、本来「えーっ!」と大きな声で返したいところだが、今回は発声ができないため拍手で反応が起きたことはちょっとした発見だった。5人がキャラクターとしてあいさつを行なうと、氷川紗夜役工藤さんが「久しぶりにライブができて、こうしてファンのみんなに会えて、私は嬉しいです」と、涙とともに言葉を詰まらせた。すぐにあこ役の櫻川さんがキラキラした明るい笑顔と言葉で空気を塗りかえていくのが、とてもいいチームだと改めて感じた。

「いまこの瞬間、世界で一番幸せにしてあげる」との相羽さんの自信に、いや確信に満ちた言葉とともに「R」へ。ライブ開始時と比べると驚くほど深くなった夜の闇を、「WE ARE」の最高音が切り裂いていくようだ。その姿と、志崎さんや工藤さんが歌う「纏う姿は毅然とし 飛び交う闇を跳ねのける」のフレーズが重なってニヤッとしてしまった。

本編ラストの「FIRE BIRD」では、スクリーンにアニメのRoseliaのライブ風景が映し出される。画面と会場の違いは、ラストソングを待ち受ける現実の会場が一面の深紅に染め上げられていることだ。今日集まったバンドリーマーたちの激情と感謝の全てが、その紅い光のひとつひとつにこめられているようだった。

アンコール中に流された「キャラくず」後半戦フィナーレは、5人がけん玉で「とめけん」(棒状の剣先に球を刺して止める)を同時に成功させるという超難度のチャレンジ。チャレンジは数時間に及び、なかなかうまくできない志崎さんを仲間たちが支える。ついに5人が揃って成功した時は、誰もが「キャラくず」を忘れて感動するほどだった。

手拍子でのアンコールに応えて登場した5人のアンサーソングは「Song I am.」。歌声で自身の存在を証明するような相羽さんの気迫の歌声に、4人のコーラスと会場の言葉なき熱量が寄り添っていった。

ここで、新規発表としてRoseliaとRAISE A SUILENの合同ライブが告知された。まずは前哨戦としてオンラインライブ「Rausch und/and Craziness -interlude-」を2020年12月に開催。2021年初頭にはリアルライブ「Rausch und/and Craziness II」が開催される。それに先がけて、2020年11月18日にRoselia×RAISE A SUILEN「Rausch und/and Craziness」ライブBlu-rayの発売が合わせて告知された。「合同ライブに来てくれる人」の呼びかけには、全力で振られる満場の光がYESと応えていた。

ラストナンバーは「熱色スターマイン」。スクリーンに引きのショットが映し出されると、まばゆいライトが夜闇に放たれる黄金の光の洪水のようだ。コニファーでは屋外ゆえに、サイドからのカメラ映像の奥行きと抜けのよさが印象的なのだが、ここで相羽さんがひるがえした黒髪が光を受けてきらめく残像を残す様子がとても鮮烈だった。

「頂点へ狂い咲け!」の言葉とともに、無数の花火が地から天を貫く。ラストナンバーとその光景は去年と同じ。しかしその光景が変わらずに今ここにあること。そして相羽さんの「去年、今年、そしてこれからもみんなで素敵な思い出を作れると信じて」という言葉がどれほど特別であるかを、この会場にいた誰もが知っていた。

(取材・文/中里キリ、Photo /畑 聡

◆セットリスト

M01:Avant-garde HISTORY

M02:BLACK SHOUT

M03:Ringing Bloom

M04:BRAVE JEWEL

M05:Safe and Sound

M06:約束

M07:Break your desire

M08:Neo-Aspect

M09:PASSIONATE ANTHEM

M10:ONENESS

M11:Sanctuary

M12:R

M13:FIRE BIRD

-encore-

EC1:Song I am.

EC2:熱色スターマイン

【最新情報】
2019年に開催したRoselia×RAISE A SUILEN合同ライブのBlu-rayリリースが決定。
更に、同公演に続くオンラインライブ、リアルライブの開催がそれぞれ決定。詳細は後日発表。

◆Roselia×RAISE A SUILEN「Rausch und/and Craziness」
【商品情報】
2020年11月18日(水)発売
商品形態:Blu-ray
15,000(本体)+税
詳細:#


◆「Rausch und/and Craziness -interlude-」
配信日:2020年12月 予定
形式:オンラインライブ
出演:Roselia×RAISE A SUILEN
公式HP:#


◆「Rausch und/and Craziness Ⅱ」
開催日:2021年初頭 予定
出演:Roselia×RAISE A SUILEN
チケット申込:下記対象タイトルに封入される「最速抽選申込券」で応募可能
[対象タイトル]
・Roselia 2nd Album「Wahl」
・RAISE A SUILEN 1st Album「ERA」
公式HP:#


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