雷雲さえも切り裂くRASの存在力──「BanG Dream! 8th☆LIVE」夏の野外3DAYS:DAY2 RAISE A SUILEN「THE DEPTHS」レポート

「BanG Dream! 8th☆LIVE」夏の野外3DAYS DAY2:RAISE A SUILEN「THE DEPTHS」が2020年8月22日、富士急ハイランド・コニファーフォレストにて開催された。

DAY1のRoseliaに続いてDAY2のメインアクトを務めるのはRAISE A SUILEN(Ba.&Vo.Raychell、Gt.小原莉子、Dr.夏芽、Key.倉知玲鳳、DJ.紡木吏佐)。オープニングアクトとして「D4DJ」よりDJユニット「Happy Around!」が登場した。

事前の天気予報では雷雨の予報が出ていたDAY2。当日は雷注意報が発令され、富士山周辺にはいくつもの雷雲が観測された。会場となるコニファーフォレストに向かうブリッジが閉鎖され、周辺には無情な雷鳴が轟く……しかし、山の天気は変わりやすいのひと言で片づけていいものだろうか。本来の開演時間を迎える頃には雨足はおさまり、沈む夕日さえも顔を出したのは魔法のようだった。そしてひとたびライブの幕さえ上がれば、RAISE A SUILENに敵はない。

DAY2の前説諸注意は、Raychellさんがみずから行なった。オープニングアクトとして登場したHappy Around!は、「恋愛レボリューション21」「ムーンライト伝説」などの誰もが知るカバー曲多めのセトリをメドレーでたっぷりと披露。キャラクターをまとってのDJならではのキラキラしたパフォーマンスで観客を魅了した。DJブースでは各務華梨さんがメドレーでのつなぎテクニックを見せつけ、フロントでは三村遙佳さんがキュートなダンスで魅せるなどまさに「ハッピー」があふれるステージだ。「バンドリ!」キャストでもある西尾夕香さん・志崎樺音さんもこの日は「ハピアラ」としてのステージで会場を沸かせており、キャラクターによる表現の違いも興味深かった。

RAISE A SUILENのステージは、花火の爆音とともに「Invincible Fighter」で燃え上がるように始まった。軽やかにダンスのステップを踏みながら片手だけは吸いつくようにキーボードを奏でる倉知さんや、膝で伸び上がるようにリズムを取りながら体幹はぶらさずにリズムキープする小原さんの躍動するパフォーマンスが印象的だ。Raychellさんのボーカルがパワーボイスからウィスパーに渡るタイミングでのコーラスの寄り添い方の息の合った感じは絶妙のひと言。

「RAISE YOUR HANDS, NOW!」のコールをRaychellさんがあおり立てると「A DECLARATION OF ×××」へ。イントロで楽しそうな笑顔を浮かべていた夏芽さんが、ドラムを叩き始める瞬間にガチンと戦闘モードに入る。「SOUL SOLDIER」では紡木さんのラップが荒れ狂う。スピーカーに片足をあげながら繊細なフレーズを弾きこなす小原さんは、エレガントな衣装と所作のギャップがアクセントになっていた。

ステージが虹色に輝くと、紡木さんが流れるようなMCでメンバーのソロプレイをあおる。小原さんの最高に気持ちよさそうな背面ギターを皮切りに、メンバーそれぞれの個性が爆発するようなパフォーマンスで見せつけた。Raychellさんがベーシストとしての圧倒的な力量を見せると、そのまま「UNSTOPPABLE」へ。倉知さんは羽ばたく翼のように両手を広げると、そのまま背面ダブル弾きをしながらのけぞる絶技を見せていた。

「HELL! or HELL?」では火柱の特効が噴き上がり、ステージ周辺はさながら火炎地獄。紡木さんの魂を込めたラップと、攻撃的なリリックの数々をグラフィック化したような映像演出が見事だった。

ライブ中盤戦は「Beautiful Birthday」からスタート。倉知さんの奏でる澄んだ高音を芯に、メロディアスな旋律とRaychellさんの力強いボーカルがせめぎあう。スクリーンにはアニメで武道館に立つRASの姿が映し出されていたのだが、画面のレイヤと六花の姿にシンクロするように、Raychellさんと小原さんが視線をからませていたのが印象に残った。

「Takin’ my Heart」で見えたのはメンバーそれぞれの感情で、コーラスや所作の細かい部分にも表現が込められている。エモーショナルな聴かせる曲にさえも圧倒的な力感を与えるRaychellさんのボーカルには引きこまれるばかり。印象的だったのが演奏中の夏芽さんの様子で、小さくかぶりをふりながらはかなげな表情を見せる姿は、音だけでなく全身で演じているようだ。RASのメンバーは舞台「We are RAISE A SUILEN~BanG Dream! The Stage~」にも立っているが、表現者として舞台経験を一番血肉にしたのは彼女かもしれない。「激動」のイントロはキーボードの壮大な旋律が際立つアレンジ。紡木さんの攻撃的なラップとRaychellさんの雄大に広がるボーカルが噛み合う感じが面白い。

「恋しさと せつなさと 心強さと」は初披露のカバー曲だ。Raychellさんののびやかでやさしい高音は、カバー曲だからこその引き出し。それでいてサビにはしっかり感情とパワーを乗せてくるメリハリがいい。続けて「DEPARTURES」が来ると、この時間だけ’90年代の風が吹いたようだ。少しハスキーに突き抜けるボーカルと、腹にズシンと来るドラム。印象的なラップパートはもちろん紡木さんが担当し、彼女オリジナルの表現へと昇華していたのが原曲世代には新鮮に感じられた。いつしか会場には夜の帳が落ち、大人の表現が似合う時間になっていた。

うつ向いていた紡木さんが間をとって顔を上げ観客を手招きするような仕草を見せると、しばしのVJタイムへ。ここで彼女のワンアクションを挟むことで、スクリーンで繰り広げられる映像表現はチュチュが手がけたものなんだよ、というパフォーマンスが見て取れる。純粋にかっこよくて気持ちいい音と視覚体験で曲間をつなげられるのはRAISE A SUILENの強みのひとつかもしれない。

ラストスパートは圧巻の個による“シンガロング”から

映像明けに再び5人が登場。倉知さんはショルダーキーボードを装備して機動力を上げている。倉知さんと小原さんが早弾き勝負するようなシーンもあり、この2人のド派手なパフォーマンスの間にラインが生まれているような気がした。それぞれの演奏パフォーマンスを交えながら「DRIVE US CRAZY」イントロ部のシンガロングを行なったのだが、今回のライブは会場の声出しはできない。その分の想いもたったひとりで背負うかのような、Raychellさんの圧倒的な独唱が広大な会場を隅々まで満たすと、そこにメンバーたちの分厚いコーラスが重なっていった。Raychellさんがアンコールなしを告げ、「全力でかかってこい!」と号令すると、「DRIVE US CRAZY」本編へなだれこんだ。

メンバー紹介パートでは、台にギターを直置きして琴のようにつま弾く小原さんの超絶プレイが印象的だった。

「!NVADE SHOW!」はサビ前の間奏でRaychellさんが「チュチュ、よろしくね!」と預けると、しばし紡木さんのリードでステージの演奏をコントロール。Raychellさんはボーカリストとして、落ちサビの歌唱に全ての想いを込めているようだった。

新曲「Sacred world」は10月スタートのTVアニメ「アサルトリリィ BOUQUET」のオープニングテーマ。千変万化の攻めのボーカルと紡木さんの多彩なラップ、流麗なコーラスが絡みあっていく様子が、うるわしく激しい作品世界を巧みに表現しているように感じた。

告知コーナーでは、10月21日に発売されるRAISE A SUILEN 5th Single「Sacred world」のジャケットデザインが初公開された。同CDのBlu-ray付生産限定盤には、7月に行なわれた舞台「We are RAISE A SUILEN~BanG Dream! The Stage~」の千秋楽公演の映像が収録される。

ラストブロックは同舞台のために書き下ろされた楽曲「REIGNING」から。「REIGNING」から「EXPOSE ‘Burn out!!!’」へのつなぎでは、紡木さんが磨き上げたDJスキルが十全に発揮されていた。Raychellさんが次の曲がラストであることを告げると、会場は熱狂さえ感じさせる万雷の拍手に包まれた。「全力で暴れなさい!」の言葉から奏でられたのは「R・I・O・T」。

気がつけばライブ終わりまで雨や雷の気配はほとんどなし。圧倒的なパフォーマンスとライブの熱量に、雷雲さえも道を譲ったかのようだった。

(取材・文/中里キリ、Photo/畑 聡

◆セットリスト

M01:Invincible Fighter

M02:A DECLARATION OF ×××

M03:SOUL SOLDIER

M04:UNSTOPPABLE

M05:HELL! or HELL? 

M06:Beautiful Birthday 

M07:Takin‘ my Heart

M08:激動

M09:恋しさと せつなさと 心強さと

M10:DEPARTURES

M11:DRIVE US CRAZY

M12:!NVADE SHOW!

M13:Sacred world

M14:REIGNING

M15:EXPOSE ‘Burn out!!!’

M16:R・I・O・T

【商品情報】
■RAISE A SUILEN 5th Single「Sacred world」
・2020年10月21日(水)発売
・Blu-ray付生産限定盤:6,300(本体)+税
 通常盤:1,300(本体)+税
・詳細:#


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