「デカダンス」放送終了記念、立川譲監督&角木卓哉プロデューサーが語る世界の真実!! デカダンスキャノンが物理攻撃である理由、カブラギとミナトの関係が明らかに!
サイボーグと人間による斬新な世界観、それぞれの想いがからみ合うドラマ、巨大な移動要塞の迫力、秀逸なアクションなど魅力満載で人気を博したオリジナルTVアニメーション「デカダンス」。先日、最終話となる第12話が放送され、ラストの激アツな展開に胸踊らせた方も多いのではないだろうか。
そこで、アキバ総研では、作品の生みの親である立川譲監督と角木卓哉プロデューサーを直撃。全話終えた今だからこそ語れる、数々の謎や裏話、見ていて気になった細かなポイントの真実など、たっぷりお話をうかがった。(写真左より角木卓哉プロデューサー、立川譲監督)
サイボーグは“嘘をつく”ことで格好よさを演出
――オリジナル作品ということで、どんな展開になるか毎週楽しませていただいたのですが、ラストは激アツでしたね。これは最初から考えていたのでしょうか?
立川 今作は「王道のエンターテインメント」を作ろうという共通認識があったので、メイン数人でプロットを最後まで作った時点で今に近い形にはなっていました。制作過程においては、パイプが超巨大なガドルになって「犠牲の象徴」として襲ってくる話とか、最後に心をえぐるようなアイデアもちょいちょい出たりしたのですが、視聴者の心にモヤモヤが残るラストではなくしっかりと結末を迎えられる展開にしようと。デカダンスにカブラギが接続するのも、「最後はカブラギが動かしたいよね」という気持ちが当初からありましたね。
――みんなが結集したり、デカダンスにカブラギが接続するのは大興奮の展開でした。そこも含めて、視聴者の反応はご覧になっていましたか?
立川 そうですね。意図した通りに受け取られているのか、なるべく確認していました。
――個人的には第1話の前半を見て「こういう世界観の作品か」と思っていたところに、終盤で「なにこれ?」となり、第2話でさらに「えっ??」と頭が混乱する感じでした。
角木 第1話はまだ冒険ものの雰囲気で楽しんでもらえるだろうと思っていたので、プロデューサーとして一番ドキドキしたのは、第2話の世界観が本当に受け入れられるかどうかでした。どのくらいの人をふるいにかけちゃうんだろうと。とはいえ、監督が「王道エンタメをやるにしても、ちょっと複雑な世界観にしたい」と話していたのを、自分は了承したわけで……。
だから、第1話が終わって面白いと言ってくれた人をTwitterなどで見かけても、安心できない気持ちだったというか。「これ、2話でああなっちゃうからなぁ」みたいな気持ちでいましたね(笑)。
立川 そうですね。第1話の時点だと、結構アニメで使い古された設定じゃないですか。怪物が襲ってきて、人々が(デカダンスの)内側に閉じこもるって。なので、逆に「どこかで見たような設定だよね」とネガティブなことを言っていた人たちが、第2話を見たらどういう反応をするのかも気になりましたね。その逆転の部分をどのぐらい受け入れてもらえるのか不安はありましたが、今まであまり体験したことのない感覚でもありました。
――そこで明らかになった世界観は、サイボーグ側がデフォルメされているというか、色合いも含めて対比的ですよね。そのようにした意図をお聞かせください。
立川 ひとつのアニメで世界観も絵柄もキャラクターの造形も全く違うものを一緒にやりたいというのが、自分の中にありました。その上で、一番ベースとしてあったのは、怪物(ガドル)が襲ってきているからといって「悲壮感漂う、どんよりした気持ちになる作品にはしたくない」ことです。
もし、タンクの人間たちを商品として扱っているサイボーグたちが人間たちと同じデザインだったら、受け入れられないだろうなという意見もあって。ポップでキュートなキャラクターが世界を支配している立ち位置にしたかったんです。作品の必要性と自分がやりたかったことを融合させて、このような世界観にチャレンジしてみました。
角木 素体側の世界はアクションも多いので、そことサイボーグ側とで労力やコスト面の調整を考えられるかも?と思っていたもののそんなことなかったですね。サイボーグのデザインの特徴ははっきりしていますが、シンプルなデザインがゆえに立体として見せる技術は必要なので、スタッフの作業は決して簡単ではなかったと思います。また2つの世界観があるため設定も倍ですからね。準備に時間もかかりました。
――矯正施設でのカブラギとドナテロの決闘シーンなど、サイボーグたちを格好よく見せるための工夫やこだわりはあったのでしょうか?
立川 サイボーグの場合は格好よさを出すために顔のアップを入れたとしても、素体の顔で圧力をかけるよりはやっぱり迫力が落ちてしまうと思うんです。でも、サイボーグって相当デフォルメされていて“嘘をつきやすい”デザインなので、たとえばドナテロの手が手前にあったらめちゃくちゃでかく描いているんですね。そういう嘘がつけるのはアニメのいいところですし、嘘をつくことでハッタリを効かせています。
――そこはギアとガドルとの戦闘での浮遊感を駆使した格好よさ、見せ方とはまた違う方向性なのですね。
立川 一般的な意見ではないかもしれないけど、サイボーグ側のアクションを格好よく見せるほうがセンスは必要だと思います。人間の戦いなら、今までの蓄積があるので想像もしやすいですし、描ける人も多いと思うんです。でも、たとえば「ドラえもん」のデザインで超絶格好いいアクションを描ける人って、そんなに多くないと思います。そこにはある種のセンスが必要なんだろうなと。
ナツメは“アホな子”であり“象徴的な存在”
――視聴者は話数が進むにつれて世界の全容を理解していったわけですが、見ていて気になったことを聞いていきたいと思います。まず前提として、この世界の地球ではデカダンスの中以外に人間は存在していないのですよね?
立川 そうですね。もしかしたら巨大な地下シェルターみたいなところに共同体として生きている人たちがいるかもしれないですけど、設定上は存在していないことになっています。
――ということは、もし本当にデカダンスをクローズして空間ごと消し去ってしまったら、人間は誰もいなくなると?
角木 絶滅することになりますね。
立川 基本的な設定としては、絶滅危惧種の人類がすべてあの中に集まっている状態です。
角木 ただ、絶滅危惧種だったけど、今は割と人数がいる感じですね。なので、本当に絶滅寸前かと言われると、そうでもないと思います。
――確かに、「増えたから間引きたい」といった描写もありました。そして、その人間たちはチップの有無で判別されていましたが、チップはいつどのタイミングで埋め込まれるのでしょうか? どこかで養殖されているわけではないと思いますし。
角木 普通に母親の体から産まれます。
立川 医者が全員ソリッドクエイク社側なんですよ。タンカーのふりをしていますけど、中身はサイボーグであるギアの素体で、その医者として子供を取り出しているんですね。
角木 それに関しては制作途中にも言われていたことがあって、あんな荒廃した世界なので医者を介さずに産まれる子もいると思うんですよ。その子はどうなっているんだろうと。設定としてフォローはそんなにしていないですけど、そういう意味ではナツメに近いバグはナツメだけじゃないかもしれない、という余白は残しているつもりです。
――そのような世界観といえば、現実世界がゲームの舞台となっている「逆転の発想」のようなところも驚きました。これはどのような着想から生まれたのでしょうか? なにか参考にしたものがあればお聞かせください。
角木 参考にしたわけではないですが、設定を作った後にすごく似ているなと思ったのは「ウエストワールド」ですね。
(※編注:「ウエストワールド」……2016年よりスタートしたSFドラマ。アンドロイドが生活するさまざまな時代の街を再現したテーマパークを舞台に、反乱を起こしたアンドロイド、ゲストとして来場した人間たちの物語が描かれる)
立川 見た目の話になりますけど、巨大な街が街を食っていく「移動都市/モータル・エンジン」に似ている! と制作中になったこともあります。
(※編注:「移動都市/モータル・エンジン」……2018年公開の映画。戦争で荒廃した世界で、資源を求めてさまよう移動都市同士の争う姿を描いたポスト・アポカリプス作品)
角木 なりましたね。(ネットなどで)参考にしたのかもと推測している人もいましたが、「移動都市/モータル・エンジン」が発表される前から「デカダンス」を作っていたので、正直参考にはしていないんですよ(笑)。でも、海外でもこういう風に考えて作品が作られたのは、それはそれで面白いなって。
立川 あと、よく名前があがっていたのは「シュガー・ラッシュ」ですね。僕自身、あの映画が好きで。ゲームの裏側が現実の世界のようになっていて、そこにゲームのキャラクターたちが一堂に会してドラマが生まれていくじゃないですか。雰囲気は全然違いますけど、あの感じはすごく参考にさせてもらっています。それと、中学生ぐらいで見た「マトリックス」は衝撃だったので、その時の印象はたぶん影響を受けているんじゃないかなと思いますね。
――全体の設定というよりも、細かな部分や演出方法などに影響を与えているのかもしれないですね。
立川 そうですね。たとえば、タンクの街の中での生活とかの細かな設定も、作品がもう1本あったとしたら精密に描けると思っています。チップを植えられて、チップが入っていないがゆえに無残な死に方をするとか。制御されているから突然死みたいなことも多くて、「なんでこんな簡単に人が死ぬんだ」とタンクの住人は思っているだろうし。でも、それだと悲壮感が漂いますけどね(笑)。
――やろうと思えば、悲壮感漂わせてシリアスにもできたわけで。そこが先ほど話していた「悲壮感漂う作品にしたくない」に繋がるわけですね。そういう意味では、ナツメというキャラクターはかなりコミカルな表情も見せますし、バランスが取れているなと感じました。
立川 ナツメは、言い方を変えると“アホな子”というか、ちょっと現実離れしているところがあるんですよ。すごく突き進んでいく感じとか、物事をすぐ受け入れられるところとか。かといって、ただのアホでもなくて、弱い一面のある等身大の女の子なところもあります。かなり幅の広いキャラクターなんですね。
ナツメはすごく象徴的になればいいなと思っていて。バグと呼ばれても突き進んで、思いついたら行動する。表情もコロコロ変わる。もし、ナツメがあそこまで突き進む意思をもっていなくて立ち止まったりしたら、もうちょっとリアル寄りにタンクの街のネガティブな部分を描いていたと思うんです。そうならないように、ナツメは吹き飛ばして進む感じにしました。
角木 もともとは「カブラギが主人公」の話だったんですよ。カブラギの独白で作品が始まる案があったぐらい、カブラギ要素が多くて。制作途中からどんどんナツメ要素が増えていき、今は「W主人公」っぽい雰囲気になっていますが、最初は「カブラギ:主人公、ナツメ:ヒロイン」という扱いでした。そいうこともあり、作品の要素として自然な感じでナツメの気持ちの変化は描いていますが、細かい心情の葛藤部分などはそんなには入れていない気がします。
カブラギとミナトの関係とは……?
――中盤ではカブラギが矯正施設送りとなり、また違う世界観というか、キャラクターの雰囲気も含めてガラリと印象が変わりました。このあたりを作る際に特に意識した点はありますか?
立川 ここは当初から楽しみなところでした。というのも、そこまでの話数では素体側というか、タンカー側にカメラを置いて描くことが多かったんですね。サイボーグ側だとしてもソリッドクエイク内のシーンが多くて。第6話はようやくそうじゃない場所、イメージとしてはヤバい奴らがいる地下刑務所というか。ここなら突飛な動きをしたり、デザイン的に変な奴がいても許容してもらえるので、制作側としては「遊べるところにきた」という感覚で作っていました。
――メインのサイボーグたちは性格を反映したようなデザインをしていますが、それ以外にも個性的なデザインのサイボーグがいっぱいいます。その中で個人的に気になっているのはいますか?
立川 いろいろいますね。たとえば、壁に体をぶつけて同じような行動をしていたり、終盤にはいきなりライトが灯りだして周囲を照らすのがいたり。面白いデザインで動かしやすそうな奴は、活躍できる隙があればちょいちょいちょいちょい画面上に入れています。
角木 たぶん誰も気づいている人は少ないと思いますけど、押山さんが描いてくれたデザインの中で、一体すごいのがいるんですよ。ゲームのラスボスみたいな奴が(笑)。一瞬出てきた以降は出てこなかったんですけど、かわいいデザインが多い中でひとりだけ禍々(まがまが)しさを放っていて、妙にデザイン感がほかと違っているんですよ。
押山さんの最初のデザインを見返すと、本編中にもうちょっと生かせたらよかったなと思えるところもあって。何かしら設定資料集等で見せられたらいいなと思っています。デザインの変遷を見ると、カブラギって最初はこんなデザインだっけ? とかあって結構面白いです。
立川 初めはバナナみたいだったからね。頭が超長くて、真っ黄色で。
角木 正確に言うと本当の最初は今よりボディが長い感じのカブラギなんですけど、その次に黄色いやつを挟んで、今のカブラギになったんですよ。
立川 南国のフルーツみたいでした。
角木 ミナトも最初の頃は腕の形がもうちょっと流線的で未来的でした。そうやって今のバージョンに少しずつ変わっていったのは結構ありましたね。
――ミナトといえば、気になっている人も多いと思いますのでストレートにお聞きします。ミナトとカブラギ、あの2人は実際どういう関係なのでしょうか?
角木 監督がTwitterに「カブラギの角をミナトが毎日握ってきて、ちょっとずつ短くなっている気がする」とギャグのような漫画を描いていましたけど、制作サイド的に2人の関係には“特別な何か”はないんですよね。
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――ダメになった素体をこっそり取っておくほどなのに?
角木 あれはちょっと行き過ぎていましたけど(笑)。
立川 単純に「カブラギは戦場に出て、ミナトは司令官」、その信頼関係が長年をかけて生まれてきたんだろうなと。具体的に、「かつてミナトの危機をカブラギが救った」といったエピソードがあるわけではないんです。ただ、ミナトはすごくカブラギに入れ込んでいて、普通なら「お前にはもうついていけない」と関わるのをやめればいいんですけど、そうできない何かを感じている。でも、カブラギはそれをほとんど実感していない、といった感じですね。
――ほかのサイボーグたちにはバレバレでしたけどね。「ミナトさんだったらやりかねない」みたいに言われていましたし。
角木 はしばしにミナトのカブラギに対する思いが若干行き過ぎているな〜ってみんな感じてはいるものの、あえて突っ込んだりはしない感じですね(笑)。ただ、デカダンスはサービス開始から何百年経っていて、下手をするとカブラギたちの前身の世代からなら千何百年続いているかもしれないゲームなんです。すごく長い間を過ごしてきたので、限られた時間で生きている人間の感情とは違うものなのかもしれないですね。
立川 200年前とか300年前だと江戸時代ですからね。
角木 もしかしたら、今はバージョン2のデカダンスかもしれないですし、サイボーグたちも、最初のサイボーグがどうやって生まれたのかはたぶん知らないと思うんですよ。人間たちが語り継いでいる中にも、嘘が紛れていたりしますから。
立川 タンカーたちは嘘の歴史を教えられていて、1話でそれを読むじゃないですか。
――思いっきり騙されました……。
立川 あれとかは何百年も継承されていて、そういう風に信じ込まれているんですね。
今までパンチだったので、尖ったもので刺したかった!
――後半はナツメも世界の真実、ガドルの正体を知ることになります。そして、人間に寄生するような形で、新たなガドル(ガドルオメガ)が誕生します。このガドルはチップがなかったから消滅しなかったわけですよね?
角木 そうですね。チップが入っていなかったからです。
――パイプも攻撃対象の問題などでバグのような言われ方をしていたのに消滅してしまったということは、結局はチップがあるかないかの違いなのですね。
角木 パイプには一応チップが入っていたんですよ。第3話の最後のほうでパイプがいなくなって、動きを追跡するシーンがありましたよね。あれはチップが入っているということなんです。
立川 先ほどの話とも繋がるんですが、人間の場合は気づかれずに勝手に子供を産むことができると思うんですけど、ガドルは生殖機能がないから工場で生み出されるほかないんですね。なので、チップがないことはあり得なくて、全てのガドルにチップがあるという認識になっています。
――そのラスボスとも言うべきガドルオメガ。デザイン自体は松浦聖さんがされているわけですが、どのようなイメージにしてほしいと発注されたのでしょうか?
立川 基本的に全てのガドルは、ポップなサイボーグたちがデザインして作り出したものなので、サイボーグたちが考えそうなかわいい形をした怪物にしてもらっています。ベースはどこかキュートで、サイボーグと似通っている部分もある感じで。でも、特にガドルオメガはそこからちょっと外れて、悪意のある形、凶暴そうに見える感じにしてもらいました。
角木 よく見てもらうと、腕のところに建物が入っていたりもしていて。本編だとオメガは素体を摂取して栄養にしている描写しかありませんが、実際は素体以外も吸収しているんですね。もしかしたら岩とかですら吸収して分解して自分の細胞にしているのかなと。
――確かに、腕にビルがあったのは印象的でした。そして、それに対抗するために最後は「デカダンス」ならぬカブラギがログインした「カブダンス」が登場します。この流れも本当に熱かったです。
立川 (デカダンスとカブラギが)くっつくんだよねって(笑)。
――トドメはもちろん「デカダンスキャノン」。通常のパンチはガドルオメガに効かなかったわけですが、そもそもパンチで攻撃することはどのように生まれたのでしょうか?
角木 あれ、最初は1個のグーだったんですよ。イメージボードではグーでハンマーみたいに攻撃している絵があるんですけど、デザインはシュウさん(デカダンスデザインのシュウ浩嵩氏)が考え出したんですよね。そして、何稿か重ねたうえで最終的に今のデザインになりました。
立川 デカダンスって変形する前に結構引きで見ることも多いので、シルエットが立つようにしてほしいと発注していて。それで、はじめは手が冠のようになっていて、殴る時に変形することを思いついたんです。パンチで殴りたいという話はしていたので、「よし、それなら手を合わせよう!」みたいになったんじゃないですかね(笑)。
――両手を握って突進するかのように打ち出すのを見て、某勇者王が頭をよぎったりもしましたが……。
角木 監督はロボットものを見ないので知らないと思いますけどね(笑)。
――そうだったんですね! てっきり熱い展開はロボットもの好きの血が流れているんじゃないかと勝手に想像していました。
角木 実はそうなんですよ。僕は割とロボットもの好きなので、第12話の絵コンテを見た時も、これはあれだよなっていうシーンがあって。
――「ガンダム」好きならきっと思ったであろう、あのシーンですね。
角木 それを監督に言ったら、「なにそれ?」って。わかる人が見たらそう思うだろうけど、僕は監督が「ガンダム」を見ていないのを知っているので、見ていないでここに至ったのならば……と。
立川 もともと、最後の巨大ガドルとデカダンスの戦いで、ナツメは一体何をすればいいんだ? という話があって。やることがなさすぎて難しかったんですよ。それでデカダンスが集めているパーツを一緒に集めるという、ナツメっぽい行動を起こさせることにしたんです。
――最後はドリルのようになりますし、キタキタキタ!と盛り上がる感がすごかったです。
角木 そう思ってもらえたら嬉しいですね。
立川 一応、“槍”なんですよね。単純に今までパンチだったので、尖ったもので刺したいなっていう(笑)。
角木 単純な思考(笑)。
――もうひとつ気になったことがあって、小型ガドルはオキソンを抜き取って失血死させるじゃないですか。でも、デカダンスキャノンは超物理攻撃ですよね? そこには何か理由があるのでしょうか?
立川 自分があの世界のプレイヤーだとしたら、失血死よりも“すごい衝撃のパンチ”で肉体が吹き飛んでいくのを間近で見たほうが、ショーとしていいかなと思ったんです。なので、「いや、パンチ打つんかい!」とか「レーザー光線でも出るのかと思った」といった意見を見て、そういうものなのかと思いました(笑)。これは本当に、ただただパンチのエネルギーです。パワーで吹き飛ばす、みたいな。
角木 物理演算的にいったら、おかしいっちゃおかしいんでしょうけどね(笑)。
立川 あと、制作当初に出た話なんですけど、ガドルは食肉として人間たちが食べているという設定があるので、もし大型ガドルが失血死で倒れて残っていたら、それで何年生きていけるんだよって(笑)。
――ガドルを倒す必要がなくなるわけですね。
立川 という話もありました。まぁ僕としては、ハナっからバーン!!と弾き飛ばしたかったんですけどね(笑)。
角木 いま言ったみたいに、明確に説明はしていないんですけど、ガドルがいないと彼らは生活できないし、デカダンスも動けないんです。結局はガドルと共生しているんですね。
立川 設計された世界で片側が欠けると(もう片側も)成立しないというか。
角木 ガドル以外の食料はそんなに多くなくて、それに対して「もっと自然に生きるべきなんだ」と主張する人が出てくる、という話も最初の頃はあったんです。でも、カブラギとナツメのドラマの中には入れにくかったですし、世界の設定がこうだからではなく2人の気持ちで世界を変えていく物語にしたかったので、そのあたりは全部削ってしまいましたね。
――気になることは尽きないわけですが、最後に今後はなにか展開を考えていますでしょうか?
立川 とりあえずは、入れたかったけど入れる隙がなかったものとかを漫画にして、ネット(Twitter)にあげていきます。
角木 あれはもうギャグ漫画ですよね(笑)。
立川 やっぱり1ページだとオチが欲しくなって(笑)。
角木 それ以外にも、人気が出たら続きもあるでしょうし、小説とかコミカライズとかいろんな形で出せたらなと。アニメは決まった尺の中で説明しなきゃいけないし、話数を成立させなきゃいけない縛りがありますので、逆にアニメではできない部分も媒体次第ではいろいろありますからね。そうやっていろんな媒体で広がっていったらいいなと思っています。
――楽しみにしています。ありがとうございました!
(取材・文・写真/千葉研一)
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