姫の「睡眠に対する情熱」を感じてほしい! 2020年秋アニメ「魔王城でおやすみ」スヤリス姫役・水瀬いのりインタビュー&撮りおろしグラビア!

「週刊少年サンデー」(小学館)で好評連載中の、熊之股鍵次さんによる人気睡眠ファンタジーコメディ「魔王城でおやすみ」が、2020年10月5日よりTVアニメ放送をスタートする。

「すやぁ・・・」とどこでも眠ってしまうカイミーン国の姫君スヤリス姫を演じるのは、「バスや電車でもすぐに寝てしまう」と話す「声優界のスヤリス姫(?)」こと水瀬いのりさん。原作の魅力やアニメの魅力をたっぷり話してもらった。撮りおろし写真とあわせてお楽しみください!

こだわりのリテイクから生まれた「すやぁ・・・」は必聴!

水瀬 「魔王城でおやすみ」というタイトルから、どんなお話なんだろうという期待感がありました。スヤリス姫が毎巻、コミックスの表紙に登場しているんですけど、魔王城にとらわれているのにどこか余裕のある表情、SOS感を感じない表紙だなぁと思いながら手に取りました。予想通り、普通なら一刻も早く抜け出したい魔王城で、スヤリス姫は牢屋を自分が快適に安眠できるスペースにするべく行動していて、それに翻弄される魔物たちのギャップがかわいらしく、とても面白い作品だなと思いました。

ーー想像以上にコメディでしたね。

水瀬 全編通してコメディで、時折来るシリアスな展開を見て、「そうだ! この人たちはモンスターで、姫はとらわれの身だったんだ」って思い出すという。そのコントラストがいい塩梅なんですよね(笑)。

ーー自分も、随分ぶっ飛んだ姫だなと思いました(笑)。

水瀬 周りのモンスターたちも、実は逆に姫に制圧されているんじゃないか?って思うくらい、パワーバランスが変な感じがしますよね(笑)。


ーースヤリス姫の役はオーディションで決まったそうですが、どんなオーディションでしたか?

水瀬 姫でありながら、睡眠をする。ある意味、惰性というか堕落しているので、力を抜くお芝居ということも考えました。でも、スヤリス姫は自分の安眠という欲望のために突き進んでいく女の子だったので、意外と活発な女の子でもあるんです。だから、オーディションのときも「あまりダウナーになり過ぎないように」ということは言われました。ただ、それプラス、お姫様の気品がある声も聞かせてくださいというディレクションがあったんです。

そこでもう私としては迷子ですよね。わからない!と(笑)。完全に頭の中でスヤリスがわからなくなってしまって、不安のまま終えたんです。そして後日、スヤリス姫が受かったとマネージャーさんに言われたとき、「どれで??」と。

ーー自分がやったどのスヤリス姫がよかったのか、わからなかったんですね(笑)。

水瀬 そうなんです! 私はいったいどのスヤリス姫で「これで!」と言われたんだろうと思いながら1話のアフレコを待ちました。すごくうれしいはずなのに、ちょっとキリキリする合格の報を受けての第1話だったので「よっしゃ、やるぜ!」というよりは「やばいどうしよう、今すぐ監督に会いたい!」という気持ちでした(笑)。

ーーオーディションからアフレコまで、けっこう時間が空きますからね。

水瀬 だからすごく緊張して、「みんなの足を引っ張ったらどうしよう」と思いながらスタジオに行ったことを覚えています。でも、最終的には時間をかけていろんなパターンを演ってみて、入念にキャラクターを作っていき、最終的にこれくらいのテンションだねというところに落ち着くことができました。

ーー結局、どんなスヤリス姫になったのですか?

水瀬 私が最初にやっていた演技が中性的で、力むとところどころ男の子に聞こえるかもしれない感じだったので、そこはちゃんとかわいく可憐なほうに転ぶようにしました。どんなに暴走したとしても「強さのある品」に落ち着くように、気をつけながら演じています。

ーースヤリス姫は眠りに対して、尋常じゃないこだわりがありますが、水瀬さんは睡眠に対してのこだわりはありますか?

水瀬 自分でオーダーメイドした枕を使って寝ているというこだわりはあるんですけど、そうですね……眠気に逆らわない睡眠が一番気持ちいいんじゃないかと思うようになりました。眠いときに寝る睡眠って最高じゃないですか?

おうち時間が増えた時期は夕方におうちに帰るとか、夕方までお休みで夜だけ用事があるみたいな感じだったんですけど、そこでお昼寝、お夕寝の気持ちよさを知ってしまい、これは抜け出せないかもしれないと思いました。ちゃんとパジャマに着替えてお布団で寝るというのもいいんですけど、ソファでエアコンの風を浴びつつ、外から夕方を知らせるチャイムが聞こえてくるくらいの時間に、お母さんが夕飯を作っている音をBGMにしながらうたた寝!みたいなのが最高だなと思いました。

ーーちょっと背徳感がある中で寝ちゃうのが気持ちいいんですよね。

水瀬 ダメだとわかっているんですよ。ちゃんとやるべきこともあるんですけど、それは一回置いて、身をゆだねるというのが気持ちよくて(笑)。ソファで寝るときは大きめのバスタオルをかけてるんですけど、それもまたいいんです!! かけぶとんじゃないのがいい! 新しい喜びを見つけてしまいました……。

ーーそう考えると、ピッタリの役ですね。

水瀬 そうですね。だからあの「すやぁ・・・」は、演じてて気持ちいいです。私も一緒に眠りに入れた気持ちになれるし、癒やされるので。

ーー寝息や、その「すやぁ・・・」について何かディレクションはありましたか?

水瀬 ありました。「すやぁ・・・」は1話の収録時に何度もリテイクをしていただいて。最初は、あまりテンションを上げずに「すやぁ・・・」と言っていたんですけど、「語尾を上げるような感じでやってみて」と、山﨑みつえ監督からディレクションがあり、その通りにやってみたら「それがいい!」となって。「次からもこれも忘れずにいてね」という言葉をいただきました。だからそれがオチというか、安眠した合図になります。

ーーそういえば、山﨑みつえ監督作品には、一度「多田くんは恋をしない」で出演されていましたね。

水瀬 はい。今回も前回も、山﨑監督と動画工房さんという安定の布陣ですよね。山﨑監督は音響監督も兼ねていて、監督みずからお芝居についてリテイクをしてくださるので安心感がありました。監督がやりたいものに近づけることができるようにお芝居をしていくという環境なので、やっていて楽しいですし手応えも感じています。

今回は新型コロナウイルスの影響もあって、後半にはプレスコで録った話数もあったので、のびのびとやっていました。山﨑監督は、私たちにある程度任せてくれつつも、大事なシーンやこだわりの場所ではしっかり粘ってくれるし、ご本人はすごくやわらかくてかわいらしい方なので、私が毎週癒やされていました(笑)。



共演者たちの濃い演技にも注目


ーー監督は、コメディの演出も素晴らしいので楽しみです。「魔王城でおやすみ」はキャラクターも個性的なので、その紹介もしていただければと思います。

水瀬 本当に姫のモノローグの多さをカバーするかのように、みんながしゃべったりリアクションしたり叫んだりしていますからね。スヤリス姫の自由さに振り回される愉快な仲間たちという感じです。

ーーまず魔王タソガレですが、演じている松岡禎丞さんのコメントには「意外と純情で面白いです。」と書かれていました。

水瀬 そう! 魔王はピュアなんですよ。

これは誰に対してもなんですけど、スヤリス姫は結構距離を詰め気味で、思わせぶりなんです。だから「あっ、きゅん!」みたいな感じになるので、姫に落とされていく、みたいなところも注目するところだと思います。また本人が無自覚なところもかわいいんですよね。

ーー松岡さんのお芝居はいかがでした?

水瀬 もう大暴れしていますよ(笑)。「ちょっとやりすぎ」って言われたりもしていたので、らしいなと思いながら見ていました。

ーー石川界人さんが演じる、「あくましゅうどうし」は、スヤリス姫にとっても、いないと大変なことになる人ですね。

水瀬 石川さんの、こういうたしなめるようなやさしい役って、共演したときはあまりなかった気がするので新鮮でした。おっしゃる通り、関係性的にはスヤリス姫にとってすごく大事な役柄だし、2人のからみは見る側も癖になると思います。

ーー「魔王城で出た死者は、彼が魔法で蘇らせている。」というプロフィール文が面白いですよね。

水瀬 そうなんです! 彼がいないと死者は蘇らせてもらえないんですよ。

ーー下野紘さんが演じる勇者アカツキはいかがですか?

水瀬 姫の中の勇者って、結構おぼろげな記憶というか(笑)。そこがまた不憫なんですけど、彼は彼で勇者として魔王を倒す、ある意味国を背負って戦っているので真剣なんです。なので勇者と魔王、そしてその間に挟まれる姫の三角関係は注目です。そして、ここまで熱血な下野さんも新鮮でした。

あと、人間の王国側のくしゃみにも注目してほしいです。「ぷにゅん」みたいな、少し違うくしゃみをするんですよ。私は先に録っていた下野さんをまねて録ったので、めちゃくちゃかわいいくしゃみに期待してください!

ーー「はりとげマジロ」は小山力也さんが演じています。

水瀬 力也さん節が爆発して、魔王城チームのキャラの濃さをさらに濃くしてくれています。「いいおやっさん」感が癖になるキャラクターですね。テンパり方とか見ても、この人はすごくいい人なんだろうな感がにじみ出ていると思います。

ーー今日の撮影でも手にしていた、「でびあくま」は誰が演じているのですか?

水瀬 これはクレジットされないかもしれないんですけど、私と早見沙織さんの2人でやっています。何体も出てくるときは何回も違う音で重ねているので、意外と大変なんですよ。

ーー他に注目してほしいキャラクターはいますか?

水瀬 今、レッドシベリアン・改が、めちゃめちゃ来ています(笑)。あれだけ図体がでかいのに、小回りがきく性格というギャップにやられてしまいまして……。ちゃんと細いところに目が向くし、めちゃめちゃ真面目で、すぐに信じてしまうという忠誠心あふれるキャラです。これが忠犬というものなのかな?と思ったので、一緒にお散歩したいですね。

ほかにも魔王城にはいろいろなキャラクターがいて、それを演じるそうそうたるゲストの方がまだまだ控えていますので、そちらもぜひとも注目してほしいです。

ーーそして、OPテーマの「快眠!安眠!スヤリスト生活」をスヤリス姫が歌っているそうですね。

水瀬 よりよい眠りを求めて城を練り歩く、そして城ごと寝具にするみたいな、彼女の膨大な夢と希望と幸せが詰まった歌になっています。なので、聴いている人に何かを届けるというよりは、彼女がこの歌の中で、安眠を求めていくというだけの歌になってます。とにかく彼女の眠りに掛ける思いや情熱を感じてもらって、一緒に安眠しましょう。

ーー歌も期待しています。最後にファンの皆さんへメッセージをお願いします。

水瀬 姫は睡眠に情熱を燃やしていますけど、皆さんには姫を通じて何かに対する情熱や貪欲さというものを感じていただけたらと思います。きっと皆さんの中にも譲れない何かがあると思うんですけど、そのためにどれだけ奮闘できるのかというのを、姫が生き生きと伝えてくれているので、もうちょっと自分のやりたいことをがんばってみようかなとか思ってくれたらうれしいんですが……。結局、この姫だからできることなのでは? という感じになってしまうかもしれません(笑)。

ただ、そんな目的のために手段を選ばない感じが非常に癖になる作品だと思いますので、魔物たちと一緒に姫に振り回されたいなという方は、ぜひ見ていただきたいです。そして、姫の被害に遭った魔物たちにたくさんの同情と愛を持って、「この子たち本当にかわいそう」と思いながら楽しんでいただければと思います。

そして見終わったあとは一緒に「すやぁ・・・」と眠りに入りましょう。よろしくお願いします!



(取材・文・撮影/塚越淳一)

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