【インタビュー】麻倉ももがニューシングル「僕だけに見える星」をリリース。「いつもより大人っぽい雰囲気になりました」

麻倉ももが、8枚目のシングル「僕だけに見える星」をリリースする。コロナ禍によって、いろいろなことが制限されてしまった2020年。そんな状況だからこそ、リスナーに寄り添う1枚にしたい。そんな思いから制作された表題曲「僕だけに見える星」は、やさしくてどこか懐かしい楽曲になった。曲の雰囲気に合わせて、ボーカルもいつものキュートな感じから、包みこむような大人っぽい感じへ。まったりとやさしいカップリング曲「あしあと」も合わせて、麻倉ももの新たな魅力を感じさせる1枚だ。

みんなに寄り添うような曲を作りたいと思いました


──シングル「僕だけに見える星」は、今年2020年4月8日に出た2ndアルバム「Agapanthus(アガパンサス)」以来、約半年ぶりのCDです。制作するにあたって、どのようなことを考えましたか?

麻倉 やっぱり今年はコロナ禍があったので、こういう状況だからこそ伝えたいことを曲にしたいという思いがありました。私だけでなくスタッフさんも同じ気持ちで、今回のシングルの方向性はパッと決まって。世の中ではみんな、人と会えなくなったり、元気がなくなったりしているから、それにやさしく寄り添えるような曲を作ろうね、ということになりました。

──制作が動き出したのはいつ頃だったんですか?

麻倉 8月くらいだったと思います。リモート会議でシングルの方向性について、みんなで話し合って、世の中には便利なアプリがあるんだなって学びました(笑)。そのコンセプトに沿って楽曲を集めていただいて、最終的に私がいくつかの曲を聴かせていただきました。その中でも、「僕だけに見える星」のもとになった楽曲は本当に疾走感があって、明るくさわやかで、それでいて切なさもあるという、私の大好きなタイプのメロディでした。

──作曲されたのは、重永亮介さんです。

麻倉 選ばせていただくときはいつも、どなたが作ったのか知らない状態で、楽曲が決まってから重永さんの作品だと初めて知りました。ご一緒させていただけてうれしいです。

──メロディが決まると、次は歌詞ですね。

麻倉 歌詞も何人かの方に書いていただいて、その中からスタッフさんと一緒に選んで、Kaoli Inatomeさんに決めさせていただきました。誰しも経験があるようなことが書かれている中に、胸がきゅっとなるようなノスタルジックな雰囲気がある歌詞で、私が一番いいなと思ったのは、主人公について具体的になりすぎてなくて、いろいろな解釈ができる歌詞だったということです。歌がみんなに届いてほしい、歌でみんなの心に寄り添いたいというコンセプトなので、性別に関係なく、主人公に自分の姿を投影できる歌詞のほうがふさわしいと思いました。

──一人称は「僕」なんですけど、幅広くとらえることができる歌詞ですよね。

麻倉 そうですね。今まで私が歌ってきた曲はどれも女性視点だったので、今回初めて女性だけではない視点というか、性別があいまいな視点で歌った曲になりました。私の曲をずっと聴いてくださった方は、新鮮に感じていただけるんじゃないかと思います。一人称が「僕」ということ自体、初めてなので、自分でも歌っていて不思議な感じがしました。いつもなら主人公像を想像して、歌詞の物語の中に入り込んで歌うんですけど、今回は女性が聴いたら女性視点、男性が聴いたら男性視点だと感じてほしいという思いがあって、物語を読み聞かせるような第三者の立場で歌うことを意識しました。

──歌詞も心情描写よりも情景描写が多くて、主人公たちをロングショットでとらえているような感じがありました。特にお気に入りのフレーズをあげるとしたら、どこになりますか?

麻倉 サビの「真昼に見える星」というのは、曲をいただいたときから印象に残っていました。1番のサビにしか出てこないんですけど、どういうことなんだろう?と考えさせる、歌詞のフックになる言葉でお気に入りです。

──タイトルの「僕だけに見える星」も、歌詞の中に織り込まれていて、そことも繋がりますよね。

麻倉 主人公たちが見上げている星は何を象徴しているんだろうと考えさせられますし、いろいろなとらえ方ができる言葉だと思います。

──曲を最後まで聴くと、大人になって青春を振り返っている歌、という解釈もできると思いました。

麻倉 そうですね。今まさに青春の時期を過ごしている方もいらっしゃると思うんですけど、私の年代だと、学生だったころに友だちと、この歌詞に書かれているようなことをやったなと懐かしい気持ちになって、大人の視線で歌いました。

──ボーカルには、たしかに大人の雰囲気を感じました。レコーディングはいかがでしたか?

麻倉 低い音から高い音までレンジが広くて、言葉が詰まっているので、「もしかしたら思っていたよりもこの曲、難しいぞ」とスタジオで感じました(笑)。そのため、どこでブレスを取るのか、どこからどこまでをファルセットで歌うのかといったことを、あらかじめ細かく決めて歌っていきました。

──ミュージックビデオ(MV)も、ノルタルジックな映像になっていましたね。

麻倉 ノスタルジックな雰囲気を感じていただきたくて、学校で撮影したいです、と私から提案させていただきました。監督さんが、学校の中だけでなく、登校の道のりも撮影してくださって、懐かしい風景が散りばめられた作品になりました。田舎道を走るバスとか、学校の近くの駄菓子屋さんとか、そこで飲むラムネとか、誰もが懐かしさを感じるシーンがたくさん入っています。


──女子高生の後ろ姿が出てきたりして、それを麻倉さんが過去の自分を見るかのように振り返っているシーンもありました。

麻倉 イメージ的な映像が多くて、これってこういうことなのかな?と想像の余地がたくさんあるのが特徴です。今おっしゃっていただけた通り、あの子は過去の私かもしれないし、今の高校生の姿を微笑ましく見つめているのかもしれないし、いろいろなとらえ方ができると思います。見てくださったみなさんの想像力で完成するMVなので、ぜひ感想をお聞きしたいです。

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