パトレイバー誕生秘話から生々し~い制作費の裏話までぶっちゃけ! 「機動警察パトレイバー トークイベント言いたいことが山ほどある!『暴走トークショー』」レポート

汎用人間型作業機械レイバーが普及した近未来の東京で、レイバー犯罪と呼ばれる新たな社会的脅威に立ち向かう「ロボットのお巡りさん」――特車二課の日常と活躍を描くメディアミックスプロジェクトが「機動警察パトレイバー」だ。

全国各地を巡回してきた、OVA~劇場版1作目をフィーチャーした「機動警察パトレイバー」30周年記念展が2020年11月14日まで開催された新潟展示をもって終了。これに際して、11月13日(金)、東京・eplus LIVING ROOM CAFÉ & DININGにて「機動警察パトレイバー トークイベント言いたいことが山ほどある!『暴走トークショー』」と題されたイベントが開催された。

登壇したのは原作チーム「ヘッドギア」の一員にして、シリーズ構成・脚本を手がけた伊藤和典さん、バンダイビジュアルのプロデューサーとして「パトレイバー」シリーズに携わってきた鵜ノ澤伸さん。そして体調不良のため欠席となった「機動警察パトレイバーthe movie」プロデューサーにして、現在ジェンコ代表取締役を務める真木太郎さんに代わって、ピンチヒッターとして参加したメカニックデザイナー・出渕裕さんのスタッフ3名。

司会はパトレイバー広報室の鈴木咲さんが担当した。(なお客席には、キャラクターデザインの高田明美さんのお姿も!)

イベントはまずは今年上映された「機動警察パトレイバー the movie」4DX版の感想からスタートした。

4DX化を聞いた時から、劇場版第1作は向いていると思った、という出渕さんは、臨場感を高めるべくお台場の映画館で見てきたそうだが、その感想は「大正解でした」とのこと。

そこからトークは10月25日に開催された「機動警察パトレイバー30周年突破記念『OVA-劇パト1展』@新潟 開催記念トークショー」の思い出に。伊藤さん、真木さん、広報部の喜屋武ちあきさんが登壇したこのステージでは、OVA版の予算など「それはYouTubeで言っちゃダメなんじゃない?」という話が飛び出してしまい、楽屋で青ざめていたと鵜ノ澤さん。

すると、伊藤さんは「初期OVAの脚本料、印税はもらってない」と爆弾発言。そのほか、のっけからヤバげなトークが続出するものの、「いろいろあったけど、いい作品ができあがってよかったですね」という鈴木さんの力技なまとめで、トークテーマは「パトレイバーとの出会い」に移っていった。

パトレイバー誕生


今ではさまざまな場所、メディアで語られている「パトレイバー」誕生のエピソードだが、ここでは企画起ち上げからかかわっていた出渕さんより、その話が語られた。

80年代前半頃、漫画家・ゆうきまさみさんが書いていた、「こういうキャラで、こういうシーンが見たい」という企画ごっこ的なネタ帳の中に、「警察の使うロボット」のイメージが描かれており、これは何かに使えるのではないかと出渕さんとゆうきさんが話していたところから全ては始まったそうだ。

出渕裕さん

当時出渕さんは、作家・脚本家の豊田有恒さんが代表を務めていた創作集団パラレルクリエーションに所属していた。そこで映像系コンテンツを担当していたことから、縁のあったサンライズより企画書を出してみないか、という誘いを受けて提出したのが「パトレイバー」の原型となるものだったそうだ(セットで提出した企画書が、後に火浦功さんによって小説化される「ガルディーン」だった)。しかしその後、企画が通らなかったため企画書は差し戻されたという。

時を同じくして、出渕さんはアニメ雑誌「アニメック」(ラポート)のラジオ番組共演を通じて伊藤さん、高田さんと知己を得ることになった。

その後「ヘッドギア」というチームを結成し、トークイベントでも出渕さんと共演している伊藤さんだが、出会った当初は「あなたを敵だと思っていた」と告白。というのも、パラレルクリエーションは若手SF集団として新聞に掲載されるなど、当時は脚光を浴びる存在だったいっぽうで、伊藤さんは制作進行にもなっていないということで嫉妬していたのだという。

「それが解消されたのは、つい数年前」と語る伊藤さんに、出渕さんは「あんまり気にしていなかった」と返答。そのいっぽうで、出渕さんは「(当時は)いろんな人に敵だと思われていたとわかった」とも語る。

出渕さんいわく、自身と伊藤さんは、「パトレイバー」初期OVAシリーズと同時期に展開していたOVA「トップをねらえ!」を手がけていた庵野秀明監督や樋口真嗣監督から嫌われていると聞いたことがあるそうで、その理由のひとつに「『パトレイバー』と『トップ』のどちらがいけるか、会社(バンダイビジュアル)から値踏みされた」結果、「パトレイバー」優先になったとガイナックス側に話が伝わったからでは、と鵜ノ澤さんは回顧した。

伊藤和典さん



伊藤さん、鵜ノ澤さんとパトレイバーの出会い


続いて、伊藤さんと「パトレイバー」の出会いが語られた。最初に出渕さんに会った時に、「こういう企画があるんだけど」と紹介されたのが「パトレイバー」のベースとなる企画だったそうだが、「(出渕さんの)プレゼンが下手すぎて、何が面白いのかわからなかった」と伊藤さん。「伊藤さんはロボットにあまり興味がなかった」と出渕さんは語るが、その後、ゆうきさんにも会うこととなり、「(ネタ帳に描かれた)下町に立つロボットを見て、あれ面白いんじゃない?と思った」と伊藤さんは語る。しかし、どうやったら物語に落とし込めるかわからなかったところで、映画「ポリスアカデミー」と合体させたらどうだろうという話になり、徐々に「パトレイバー」に近づいていったそうだ。

次に鵜ノ澤さんと「パトレイバー」の出会いだ。

当時、よく出渕さんはパーティーを開催していたそうで、あるときクリスマスパーティーが催されることになったという。そこに招かれた鵜ノ澤さんは、クリスマスプレゼントとして伊藤さんがまとめた企画をプレゼンされたのだ。

ちなみにこの時の企画書に記されていた印象的なフレーズが「焼き魚定食志向のアニメ」という作品の方向性である。伊藤さんによると、「こういう方向性なら書ける」ということで書き込んだそうだ。この「焼き魚定食志向」というワードが持つ庶民感覚こそが、「パトレイバー」シリーズの世界観をズバリ体現していると言える。

いざプレゼンを受けた鵜ノ澤さんは、「ロボットものというとSFで戦争かなと思ったら、殺し合わない、敵と味方で戦わない」という本企画を聞いて、「ガンダムとかぶらないからいいかな」と思ったそうだ。当時はガンダムのインパクトが強すぎて、軒並み「戦争」「兵器としてのロボット」「人間同士の殺し合い」というロボットアニメが雨後の筍のごとく生み出されていた時代である。そんな中で、「パトレイバー」的なアプローチのロボットアニメは非常に尖って見えたのだろう。

当初、出渕さんはテレビシリーズを念頭に置いていたそうだが、結局、玩具展開はしてもらえずせいぜいプラモデルが発売されたくらい。鵜ノ澤さんによると「僕らは玩具を売るのではなく、映像先品そのものを売ることが目的だった」とメーカーサイドの思惑を語る。

OVA版「パトレイバー」を販売していたのは、当時は玩具メーカーとして知られていたバンダイの映像ブランド「EMOTION」だった。同ブランドが起ち上げられたのは、「バンダイはスポンサーで玩具屋だから、アニメ業界から嫌われていると思っていたから」と鵜ノ澤さん。それで「我々はクリエイターの味方ということで」EMOTIONを設立したと、意外な裏話もあわせて明かされた。

それに対し、出渕さんは「いい話にまとめようとする、その姑息さが嫌い!(笑)」と突っ込みつつも、「クリエイターは金管理ができない。作品を作ることができる土壌、場を作ってくれる人がいるなら、それが剛腕だろうとあきんどだろうと助かる」と愛憎半ばする思いを冗談交じりに語った。

鵜ノ澤伸さん

なお、出渕さんによると、全6話の初期OVAシリーズは「テレビシリーズの異色回だけを集めた」というイメージでシリーズ構成されているという。

また、当初は全13話という案もあったそうだが、最終的に6話に落ち着いた。これはシリーズ構成を担当した伊藤さんにとっては助かったそうで、「読み切りの連続物というシリーズなので、これくらいでやれてよかった」「13話だと持たなかったと思う」と振り返る。

とはいえ、各エピソードとも非常に個性的な内容となっている。これについては、「あの頃はいろいろなアプローチを試していた時期だった」(出渕)、「若かったから失敗が怖くなかった」(伊藤)からだそうだ。

ここから生々しい制作費のお話に突入していく。

「パトレイバー」初期OVAシリーズは、なんと各話とも当時の一般的なOVAの予算の半分以下で制作されていたという。

また漫画版の「パトレイバー」も、最初はゆうきまさみさんが描く予定ではなかったらしく、さらにタイアップのために10回だけの集中連載を、それもアニメからのロイヤリティはなしでお願いしたいという話だったそうだ。

しかし結果的に「パトレイバー」のメディア展開の中で、もっとも長いシリーズとなったことはご存じの通り。

また、最初は「週刊少年サンデー」(小学館)ではなく、「月刊ニュータイプ」(KADOKAWA)に漫画が掲載されていたというエピソードも語られ、多くの来場者を驚かせた(OVA準拠の短編だったそうで、香貫花・クランシーが最初から登場していたという)。

鈴木咲さん



初期OVA、劇場版第1作の裏話!

10分の休憩時間を挟んで、再開した第2部では、初期OVAシリーズ、および劇場版第1作を深堀りしつつ、「パトレイバー」の世界がどのように構築されていったのかが語られた。

・第1話 第2小隊出動せよ!

まずは後藤隊長が入谷出身という設定が生まれた経緯だが、伊藤さんによると「上野の国立博物館を第1話の最終決戦の場所にしようとして、そこから逆算して“入谷は俺の出身地だからそっちに行かせるな”と言わせたかっただけ。しいて言えば、“恐れ入り谷の鬼子母神”という語呂合わせが好きで、入谷が頭にあったのでは」と分析。

また鈴木さんは、「ロケットパンチのシーンが好き」。イングラムがパンチを放つところで画面は街の風景に切り替わり、「ゴーン」と音だけが鳴る、という演出が「オシャレ」と語ると、「予算がなかったから(アクションシーンが省略された)」と登壇者は口をそろえる。

鵜ノ澤さんが「押井さんは、貧乏アニメの作り方がうまいんですよ」とコメントすると、伊藤さんは「(押井アニメの演出は)わりと実写的かもしれない」とコメント。出渕さんは「アニメを作る時は実写の演出。実写を作る時はアニメの演出」と押井監督の作劇についての意見を交わした。

そのほか、伊藤さんが第1話で気をつけたことが「各キャラクターを見せること」「下町でレイバーを動かすこと」だったという。

また、押井監督のとのやりとりの中で、「隊長は先生で、隊員が生徒ということで部屋は分けよう」というアイデアが監督から出されたことや、押井監督は「あとは勝手に俺がやるから」と、伊藤さんには初稿しかシナリオを書かせなかったことも明かされた。

そして出渕さんは、第1話に登場するレイバー「ぴっけるくん」のデザインについてのエピソードを尋ねられると、押井監督からは「かっこよくないもの」というオーダーをもらっていたと振り返る。

ちなみに「ぴっけるくん」はシナリオ段階では歩行メカだったが、脚にローラーを付けたのは出渕さんのアイデアだそうだ。なぜかというと「歩かせると作画が大変だから」。これも低予算アニメゆえに、スライドさせることで動いているように見せることができるから、作画枚数を減らせる! という苦肉の策から生まれた設定だったのだ。

しかし、このフラストレーションが、後の劇場版で「皆がやりたかったこと」に結実したのだから、結果的にはよかったと出渕さんは語った。

・第2話 ロングショット

第2話で香貫花・クランシーが初登場するのだが、漫画版ではかなり後半にならないと登場しない。その理由について、伊藤さんは「ゆうきさんが、香貫花をあんまり好きじゃなかったのでは」と語ると、観客席にいた高田さんより「ゆうきさんは、香貫花を理解できなかったからと言っていました。その代わりに出てきたのが、熊耳武緒だった」と補足説明が入る。

伊藤さんは「俺は野明がわからなかった」とカミングアウトし会場は騒然となるも、出渕さんは「みんな解釈が違うから、(作品の)広がりがある」と語り、「パトレイバー」という作品の懐の深さを再確認しあった。

なお、アニメで東京都の新都庁を始めて描いたのが、この第2話だそうで、当時公開されていた資料をもとに描くことで未来感を演出していたことが明かされた。

・3話 4億5千万年の罠

本エピソードは謎の海中生物と特車二課の戦いを描く、某国民的怪獣映画を思わせる内容。「後に『ガメラ』をやるとは思わなかったので……」と苦笑いする伊藤さんは、「当初『廃棄物13号』(映画「WXIII 機動警察パトレイバー」のベースとなった漫画版エピソード)に近い話を考えていた」と語る。

とりわけパロディ、オマージュが多めな本エピソードについて出渕さんは、「あの頃はコンプライアンスとかもゆるかったから。『うる星やつら』を引きずっていたかな」と振り返る。

ちなに伊藤さんによると、イラストレーター・開田裕治さんからは「アニメで見たいのはこういうのじゃない!」と怒られたそうだ。

・4話 Lの悲劇

幽霊話から始まる、これまた変化球エピソード。「『怪奇大作戦』にしたかった」とは伊藤さんの弁。しかしどうしても「怪奇大作戦」にはならず、初期OVAの中で、最後に書きあがった難産エピソードになったという。

執筆に難航していた伊藤さんだが、押井さんのアドバイスで完成までこぎつけたそうだ。

・第5話 二課の一番長い日(前編)

今もファンの間では高い評価を得ている前後編の本エピソードだが、出渕さんによると当初から「自衛隊ものをやろうという話をしていた」という。また、この2本のベースには、「けんかえれじい」「皇帝のいない八月」といった実写映画のオマージュがいろいろと盛り込まれているそうだ

また、立ち食いそば屋でのやりとりが印象的に描かれていることもファンの間ではよく知られており、本作が初めて押井監督の立ち食い愛が露見したエピソードでは?と盛り上がる一同(伊藤さんによると『うる星やつら』の頃から、その萌芽はあったそうだ)。

・6話 二課の一番長い日(後編)

後編は、「カミソリ後藤らしさがまだ出ていない」ということで、後藤さんが活躍する話になったという。

また、印象的な南雲隊長の長台詞だが、伊藤さんによると「俺が5行の台詞を書くと、監督が10行にする。負けじと10行にすると、今度は20行になる」といった押井監督とのキャッチボールの結果、ボリュームが増していったのだという。

ちなみにこのエピソードの演出は板野一郎さん。板野さんというと、「板野サーカス」で知られているように、ダイナミックな動きのアニメーションに定評のあるアニメーターである。そんな板野さんの味を最大限に生かすため、ほかのエピソードで少しずつ予算をプールしていき、最後の第6話に節約した余力をすべてぶつけたのだという。

なお伊藤さんによると「第5話の反響はよかったけど、第6話は物足りない。もっと知的な展開を期待していたと言われた」と当時の思い出を語る。

それを受けて、出渕さんは「期待感をあおる演出は楽。でもたたむのが難しくなる。それがうまくいったのが劇場版」と初期OVAから劇場版へ至る流れがあったと語った。

・第7話 特車隊、北へ!

初期OVAシリーズ全6話の好評を受け、劇場版第1作の前哨戦として発表された本作は、押井監督からTVシリーズの監督を務めた吉永尚之さんへとバトンタッチ。「TVシリーズの正統な1本として書いた」と伊藤さんは振り返る。

ここまで一気に初期OVAシリーズを振り返った一同。

伊藤さんは「最初に悪役をどうする?という話をした時、警察だしテロリストというところに落ち着いたのかな。でも毎回事件が起こるわけじゃないから、焼き魚志向の生活アニメになった。職業ものアニメの先駆けになったかなと思う」と総括。

また第7話が発表された頃より漫画版「パトレイバー」が独自の展開をし始めたことについて、出渕さんは「野明が入隊する話からして、TVアニメと漫画とOVAで3バージョンある。多様性というかいろんな解釈があって、大きく外れてなければ刺激になる。それで魅力が増すなら違っててもいいのかな」と複雑な各シリーズの関係について語った。

・機動警察パトレイバー the Movie

そして話題は劇場版第1作「機動警察パトレイバー the Movie」に及ぶ。

当時としては非常に先進的だった「OS」が暴走するという描写について、本職のプログラマーに絵コンテをチェックしてもらっていた……という裏話から始まった本作のトークでは、数々の特徴的な設定、描写のイメージソースが明かされていく。

「OVAのフラストレーションがたまっていた。もっとガッチリしたものを見たいという思いがあった」と語る伊藤さんは、「レイバーで『大殺陣 雄呂血』(1966年公開の映画)をしたかった。『大殺陣 雄呂血』のクライマックスでは、主演の市川雷蔵が100人斬りをするんだけど、これがまあカッコいい。だからイングラムがレイバー100人斬りをする映画を作りたかった」と語ると、出渕さんは「零式の顔が開くのは、文楽人形。それをロボットにも応用したいと思っていた」と語る。「玉梓(たまずさ)怨霊」のように、きれいな顔立ちの人形が目を見開くことで、女の情念や怒りを表現するギミックをやりたかったのだそうだ。だからこそ、零式は細面のきれいな顔になったのだという。

なお零式の腕部伸縮ギミックは、イングラムが拳銃を抜く際に腕が伸びるのと同じ機構だが、それをアレンジして貫手のように使った結果だそうだ。



魅力の源は?


トークイベント終盤は、「パトレイバー」という作品の魅力の源について改めて語られた。

出渕さんは「真似しにくい作品だったのかな? 『ガンダム』が当たると、みんな『ガンダム』っぽいのを作ったけど、『パトレイバー』のように現代で働く類似作品があまりない」と語る。

「ひそねとまそたん」や「ウルトラマンZ」などが似ているとは言われるそうで、さまざまな作品に遺伝子レベルの影響を与えているかもしれないが、完全な類次作というのは今のところは存在しないというのが伊藤さんと出渕さんの見解であり、それが「パトレイバー」シリーズが長く愛されている秘訣なのかな、と語り合う。

また、伊藤さんは「いろんな理由があると思うけど、キャラクターのバランスがいい。無茶苦茶な話もあるけど、おおむねお話がちゃんとしているというところなのかな。キャラがしっかりしているから、何をやっても大丈夫、多少のことでは壊れない」とキャラクターの魅力をプッシュ。

その流れから、「パトレイバー」の新作の可能性はあるのか?という、ファンなら誰もが気になる話題に流れていく。

かつては「WXIII」のように、スピンオフ作品を発表して世界観を広げることができないか、と探っていた時期もあるそうだが、予定以上に制作期間が長引いたためにその計画はついえてしまったそうだ。とはいえ、「まだ諦めてはいない」「『怪奇大作戦』のように、レイバーのいる世界を舞台にした短編シリーズをやるのもいいかな」と出渕さんが語ると、会場からは熱烈な拍手が巻き起こる。

すると伊藤さんは「俺はやりたくない。書くより見るほうが好き」と前置きしつつも、「その後の“後藤喜一”」を描いてみたいと語る。「後藤は定年前に(警察を)辞めてると思うけど、どうなっているか。それはアニメじゃなくてもいい」とのこと。ちなみに気になる南雲隊長とのその後だが、「そこは触れないほうがいい」とお茶を濁した。

最後に、ファンから「真木さんに話したかったことは?」という質問が投げられた鵜ノ澤さんには「『WXIII』をやろうというところから(自分は)映像作品の現場から外れたから、触れなくなった。でも真木さんはジェンコにいるから触れる。そこはうらやましい。自分はもうリタイアしたから、ヘッドギアに混ぜてもらいたいな。フリーとしてお手伝いしたい」と「パトレイバー」愛をアピールした。

出渕さんは最後に「知らない世代にも見てもらえるような機会を増やしていきたい」と語っていたが、関係者の誰もが「パトレイバー」を愛し、チャンスさえあれば新たな展開をさせたいことがうかがえるトークが繰り広げられた。

すでに作品を知っている人は改めてシリーズを見直したくなる。そして知らない人も、きっと興味をそそられるようなエピソードが満載のトークイベントは大盛況の中で終幕となった。

今後も、引き続きTVシリーズ、OVAシリーズ、劇場版「2」……と裏話を語っていただく機会を期待したいところだ。

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