アニメライターが選ぶ、2020年秋アニメ総括レビュー!「D4DJ First Mix」「アクダマドライブ」など、5作品を紹介!!【アニメコラム】

2021年冬の新作アニメが続々とスタートする中、2020年秋アニメの動向も忘れてはなるまい。そこで今回は20年12月から21年1月にかけて最終回を迎えるタイトルを総括レビュー。ブシロードの最新プロジェクト「D4DJ First Mix」、studioぴえろのオリジナルタイトル「アクダマドライブ」、スポーツクライミングアニメ「いわかける! - Sport Climbing Girls -」、人気シリーズ最新作「ストライクウィッチーズ ROAD to BERLIN」、井口昇監督が手がけた「それだけがネック」の5作品をピックアップしました。

D4DJ First Mix


アフリカ帰りの女子高生・愛本りんくが友だちと一緒にDJユニット・Happy Around!を結成。転校先の陽葉学園でだんだん人気になっていくDJアニメ。サンジゲン制作の3DCG作品で、「BanG Dream! (バンドリ!)」シリーズなどで培った圧巻のライブパフォーマンスは本作も健在。意欲的な演出も盛り込まれており、食事シーンがやけに多かったり、キャラの頭頂部をわざわざ映したり、画面を10秒も止めてみたりと、視聴者を飽きさせない。とりわけりんくがスパゲッティをやけ食いするカットは、その怒涛の勢いで話題になった。
りんくに後押しされて活動を始めたDJ担当・明石真秀(あかしまほ)も見逃せない。真秀がひとりでDJをする姿を1カットで収めたEDはシンプルながらも力強く、りんくと出会
う前はこんな風に人目を忍んで練習している日もあったのではないかと感じられるほど。メッシュにピアスというオタクに避けられがちな要素も次第に愛おしくなってくる。新年を迎えて物語は終盤に突入。伝説的なDJ役として出演が決まっている竹中直人にも注目したい。



アクダマドライブ


凶悪犯罪者=アクダマをめぐるトラブルに巻き込まれた一般人の女性がとっさに詐欺師を名乗り、アクダマの一員として謎の依頼を請け負う羽目になるクライムアクション。2020年の秋アニメは治安が異常に悪化した架空の日本を描いたタイトルが多かったが、本作の無秩序っぷりは群を抜いている。アクダマの推定懲役を合わせると7人で3000年を超えるというケレン味たっぷりな設定はもちろん、アクダマに対抗する警察組織もタガが外れており、警察署の地下がなぜか処刑場だったり、処刑課と呼ばれる特殊部隊がいきなり殺しにきたりと、行政と司法の区別もあったものではない。
物語の舞台となるカンサイは極端に戯画化され、膨大な数の宣伝ネオンがまぶしいドウトンボリの光景は、サイバーパンクSFの様相を呈している。なぜ日本がこんな風になってしまったのかは、ウサギとサメの紙人形が掛け合う教育番組風の映像で毎回説明されるが、そちらもプロパガンダ映像っぽい剣呑な雰囲気だ。ウサギ役に間宮くるみ、サメ役にチョーという、幼児番組「いないいないばあっ!」のコンビを用いたキャスティングの妙も光る。



いわかける! - Sport Climbing Girls –


パズルゲームの天才・笠原好(かさはらこのみ)が高校入学を機にスポーツクライミングと出会い、部活の仲間たちと全国1位を目指す青春ストーリー。“世界初のスポーツクライミングアニメ”と銘打っており、基本的なルールをはじめ、テクニックやシューズの違いなども楽しく学ぶことができる。
「壁を登るだけのスポーツは、映像としては単調なのでは」という視聴前の懸念も、競技者を上下左右のあらゆるアングルから映すことで払拭。物理的な壁を無視してカメラを置けるアニメ向きのスポーツではないかと思ってしまう。普段は見られないような角度で描かれたクライマーたちを拝んでいると、スポーツが競技であると同時に興行でもあることに気付かされる。各話の最終カットは「ラストカット原画」としてエピソードごとに異なるアニメーターが担当。まるでエンドカードを本編に組み込んだような試みがユニークで、本編とは一風変わった世界観を味わえる。



ストライクウィッチーズ ROAD to BERLIN


「ストライクウィッチーズ」シリーズの最新作。人類の敵・ネウロイに対抗するために結成された魔力を持つ少女たちの部隊・第501統合戦闘航空団の活躍を描く。2008年のTVアニメ第1期から干支がひと回りしたが、それでも変わらないチャーミングなキャラクターと熱いストーリーを楽しめる。
長期シリーズの魅力は何といっても声優陣。多くの作品でメインキャラを務めてきた面々が揃っており、新規タイトルでこのメンバーを集めるのはまず不可能だ。そんなキャストたちが、第7話「ポヨンポヨンするの」のような、サブタイトルから想像した期待を裏切らないエピソードを全力で演じている事実に感動してしまう。1月からはスピンオフコミックをアニメ化した「ワールドウィッチーズ発進しますっ!」を放送中。制作会社が違っても違和感がないのはキャストの力も大きいだろう。



それだけがネック


個人経営のローカルコンビニ・ホットホットマートを舞台にしたショートアニメ。ホットホットマートは今どき珍しい手作り総菜を売りにしているが、店長やバイトは相手の顔をまともに見ず、他人に無関心な人たちだらけ。そんな中、黙々と総菜を作り続ける店員・武藤の様子がどうもおかしく……。
物語前半は決して顔が映らない武藤の謎を追ったホラーテイストの仕上がりだ。暗い部屋の中でおにぎりを握ったり、煮物を煮込んだりする音も不気味さを加速させるが、中盤になると急展開。シュール、ミステリアス、ハートウォーミングなど、さまざまな感情が去来する唯一無二の一作となっている。EDテーマは打首獄門同好会が担当。アニメーター応援歌「サクガサク」も話題になったスリーピースバンドが、アニメタイトルと同名のオリジナルソングを書き下ろした。本編を見ると、なぜ打首獄門同好会に主題歌を依頼したのかが、何となく推測できるのも興味深い。



(文・高橋克則)

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(C) ぴえろ・TooKyoGames/アクダマドライブ製作委員会
(C) 石坂リューダイ・サイコミ / 花宮女子クライミング部応援団
(C) 2020 島田フミカネ・KADOKAWA/第501統合戦闘航空団
(C)「それだけがネック」製作委員会

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