神風動画が単独で自社制作したアニメ映画「COCOLORS」は、アニメ業界に咲いた“小さな花”【アニメ業界ウォッチング第73回】
「ドラゴンクエスト」シリーズなどゲームのオープニングムービーのほか、「ポプテピピック」や「ニンジャバットマン」など話題のアニメーション作品を制作してきた神風動画。創業からほぼ20年を経た2017年、神風動画が創作の原点に立ち返って自社で制作した中編アニメ映画が「COCOLORS(コカラス)」だ。
地上に住めなくなった人々は、地下の世界で宇宙服のようなヘルメットをかぶって暮らしている。言葉を話せないフユのため、アキは地上から色のかけらを持ち帰ってくるが、2人はいまだ見たことのない空の色を自分たちの目で見るために旅立つ。3DCGならではの繊細な動きや計算された色彩に目を奪われるが、決して派手な作品ではない。勢いのあるクールな映像を売りにしてきた神風動画が、なぜ「COCOLORS」のような滋味深い落ち着いたアニメ作品をつくる必要があったのだろう? 監督の横嶋俊久さん、神風動画代表の水﨑淳平さんに意図をうかがった。
危機ともチャンスとも言えない状況下で、僕たちに何ができるだろう?
──「COCOLORS」は神風動画の完全自社制作だそうですが、どのように企画が始まったのでしょう?
横嶋 ぶっちゃけて言うと、僕が「もう神風動画を辞めたい」と話していた時期があったんです。
水﨑 そのとき、僕から「辞めるのなら、何か作品をつくってからにしない?」と声をかけました。
横嶋 「じゃあ、何かやろうか」と水﨑さんと話してはじめたのが、制作のキッカケですね。神風動画の創成期のころ、「ガソリンマスク」(1999年)という3DCG作品があったんです。「COCOLORS」のようにマスクをかぶったキャラクターが出てくるのですが、そのスタイルにそった作品が、神風動画でつくるオリジナルには一番ふさわしいんじゃないかと思いました。その「ガソリンマスク」の路線から大きく逸脱しなければ、特に水﨑さんから注文もありませんでした。
──会社の持ち出しでつくるわけですから、予算は厳しかったのではありませんか?
横嶋 予算は特に決まっていませんでした。いつスタートしていつ終わらせるのかも明確に決めず、ほかの仕事と並行しながら、少しずつ絵コンテや背景などを進めていきました。少人数でスタートしたのですが、制作期間自体はそこそこ長かったように思います。一応、「COCOLORS」のために小さなスタジオをつくって、新人スタッフを中心に少しずつ人を集めていきました。これなら行けそうだ、というタイミングで一気に制作ラインを走らせた感じです。
──ということは、作品づくりを通じて新人アニメーターを育成する意図もあったのですか?
横嶋 会社としては新人育成の意図があったのかもしれませんが、僕はあまり意識していませんでした。とにかく、この作品をつくり切るにはどうしたらいいかで、いっぱいいっぱいだったので。やはり、新人スタッフ中心でやれることは限られてくる。その中で、どこまでやれるのか。「COCOLORS」の作品の登場キャラクターたちはみんなマスクをかぶっていて、顔が見えないわけです。3DCGで表情をつけるのは、とてもテクニカルで高度な技術を要求されます。だけど、マスクをかぶっているなら工数の削減になるうえ、表情で見せられない足かせが、かえって別の表現力につながると考えました。新人アニメーターと一緒にトライ&エラーしながら、ある程度の水準を満たした作品がつくれるんじゃないか。そういう算段はありました。
──マスクで表情が見えないけど、セリフを言うときに体の筋肉が伸びたり、腕に力を入れるとき、服のシワがちょっと入るだけで力加減を表現している。そういうリアルな動きは、すべてモーションキャプチャーではないかと思ったのですが……。
横嶋 いいえ、モーションキャプチャーは一切使っていません。完全に手づけ(アニメーターが1フレームごとに芝居をつける)です。顔が見えない分、身体的表現でキャラクターの感情を伝えねばならないと、アニメーションディレクターとも話していました。神風動画が「ガソリンマスク」をつくった1998年ごろは、まだ3DCGでキャラクターの表情をつくるのは難しかった。今はそんなことはありませんが、あえて当時のように「顔を見せない」という条件下でつくったらどんなアニメになるんだろう? そういう制約があったほうが、作品をつくるうえでは面白いと僕は感じます。ですから、動きに注力してもらうために、一部のアニメーションではフルコマ(各フレームごとに絵をすべて変えて、緻密な動きをつくる)にしました。小さなスタジオでしたから、いつもスタッフみんなと一緒にいて、各担当アニメーターのところへ行って「ああでもない、こうでもない」と直接話すことができました。
水﨑 まだ神風動画が小さかった2007年ごろ、ゲーム会社のアトラスさんとお付き合いがありました。アトラスさんといえば「女神転生」シリーズが有名ですが、「女神転生」シリーズの主力スタッフが抜けてしまって新人クリエイターたちだけが残されたというお話を、当時のプロデューサーさんやデザイナーさんから聞きました。その残された新人たちが「女神転生」シリーズのスピリッツを受け継いで、「ペルソナ」シリーズをつくったそうです。その危機ともチャンスともいえない状況下で、新人たちが会社の上の人からの指示を待つのではなく、自発的に新しい作品を生み出したそうです。はたして、神風動画に同じことができるのだろうか? 明確な狙いとかプランがあったわけではなく、若い人たちにチャンスを与えたとき、もちろん作品が成り立たない可能性もあるけれど、ポンと何かが生まれるかもしれない。横嶋くんが「COCOLORS」をつくり始めた当初は、各セクションごとの成果物を見せてもらって、ダメそうなら制作を止めるつもりでいました。だけど、コンテもビジュアルもすごくいい感じででき上がってきている。会社としては無理をしながらも、何とか完成まで応援したい、僕個人としては「制作を止めない」というルールを自分に課しました。
横嶋 「もう(制作を)止めてくれ」と、いつでも肩を叩けたはずでしたよね。お金にならない企画であることは誰の目にも明らかだし、こんな企画は他社ならどこも通さない。普通なら、会社として作品をつくるメリットを第一に考えますよね。僕と水﨑さんは、ふだんの仕事では意見の相違でもめたりするんだけど(笑)、「COCOLORS」に関してだけは、本当に何も言われなかった。こんな地味な企画に何も口出ししない水﨑さんは変わっていると思うし、とてもありがたかったです。放置してもらえる状況だったから、完成まで走り抜けられたんです。
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