押井守 新作「ぶらどらぶ」製作 いちごアニメーション社長中西穣氏が語る 不動産会社がアニメ製作をする意味とは?
2019年に押井守が総監督を務める新作「ぶらどらぶ」の製作が発表されると世界に衝撃が走った。この巨匠による久々のシリーズアニメの製作に名を連ねたのは、従来のアニメの製作では見慣れない、いちごアニメーション株式会社。同社の親会社は、サッカーJリーグのトップパートナーや、秋葉原の「AKIBAカルチャーズZONE」のオーナーとしても知られる不動産会社、いちご株式会社だ。不動産会社という“異業種”が参入しアニメ製作を行なう理由とは何か? いちごアニメーション・代表取締役社長中西穣氏に話を聞くと、従来のアニメ製作の常識を覆すビジネス的な考えを披露してくれた。
作品に口出しせず「作りたいものを作ってください」と言える理由
──まずは、押井守総監督を迎えた「ぶらどらぶ」製作スタートまでの経緯を教えていただけますか?
中西穣(以下、中西) この企画については、2017年頃に知りました。当時、私は前職で大型ショッピングモールへの投資をしていたのですが、アニメというコンテンツの集客力に高い関心を持っていました。ただ、企画を聞いた時点では、制作会社も決まっておらず、アニメというのは企画から完成まで3年くらいかかると聞き、ちょっと時間のタームが我々のビジネスと合わず、当時はそれきりだったんです。その後、私がいちご株式会社(以下、いちご)に入り、AKIBAカルチャーズZONEに投資ができたので、あのアニメの企画がどうなったのかを確認したところ、制作会社が決まりそうだと聞いたので、押井(守・総監督)さんとのご面談を経て、単独で出資することにいたしました。
──AKIBAカルチャーズZONEのお話が出たのでうかがいたいのですが、不動産事業の会社から見て、近年の秋葉原の勢いはいかがでしょうか?
中西 アキバ総研さんとしては気になりますよね(笑)。コロナ禍以前で申しますと、AKIBAカルチャーズZONE自体はインバウンド比率が高く、全体的にはテナントの退居もない状態で好調でした。街の印象で言うと、アイドルの色は徐々に勢いが落ちていっているという印象でしたね。しかしながら、各社においてコンテンツの作り方、種類、「個性」を変化させながら努力をされていらっしゃったなと思っています。コロナ禍においては、様々な制限がある中、よりコアな対象に絞ってイベントや公演を行うとチケットが完売している様です。メイドカフェブームと言われた時期もありましたが、何かが盛り上がれば必ず下り坂もある。その意味で、ここからの秋葉原は何を目指していくか、またビルドアップしていくことを考えるべきフェーズだと思っています。
──ラジオパーツのお店の時代から変わり続けてきたのが秋葉原ですからね。
中西 それでも、秋葉原は不動産の会社から見て非常に魅力的な街ですよ。色がついている街、色を付けていく力がある街、というのは大家業として、投資シナリオを作りやすく、うまくいきやすいんです。逆に言えば、大差のないよくある普通の街は、何か新しい取り組みをやろうと思っても、うまくいかない。秋葉原は渋谷、新宿、銀座などと同様に、街に色が付いていて、その意味でブレない街です。それを伸ばしていくのが不動産事業会社の役割だと思っています。
──不動産事業を本業とされてる会社が、アニメのような文化事業を行なう意味はどこにありますか?
中西 従来の不動産ビジネスというのは、極端に短く言えば、安く買って、高く売る仕事なんです。しかし、中長期的にこの事業を続けていくうえでは、この買って売るビジネスから卒業する必要があります。売って儲けるのではなく、持ち続けて価値を高め、賃料収入を安定的に得る形に構築する方向を我々は考えています。賃料収入を上げるためにはより多くの集客が必要で、その基盤になるのは街づくりです。これは最初に話したショッピングモールも同じ話で、それが売上にも比例します。そこでまず賃料は置いておいて、先に人を呼べるものを作って、後から賃料に付いてきてもらおうという考え方です。
──他社の例でいえば、お台場の実物大ガンダムとガンプラのフラッグシップショップなどがありますね。
中西 そう。とはいえ、いちごがあのような超大手デベロッパーの手法をとるかというと、とてもそうはいかない。でも、壊して建てるのではない街作りもあると考えたときに、先行例になったのがアニメによる地域の活性化でした。私が使ってる言葉でいうと「コンテンツ×不動産」ですね。「ガールズ&パンツァー」の大洗や、「ラブライブ!サンシャイン!!」の沼津が大成功した例は、アニメに詳しくない我々でも把握しました。いっぽうでこれを狙ってやってうまくいかなかった例も存じています。あくまで、狙うよりも結果的に街に紐づくほうがいい。とはいえコンテンツというものは作ってみないことには当たるかどうかわからないので、まず自分たちからやってみようということで始めたわけです。
──そして「ぶらどらぶ」のプロジェクトが実際に始動してからはどのように進められていきましたか?
中西 いちごアニメーションの考え方のひとつは「楽しく真剣にやろうね」です。また、エンターテインメントというものは作り手が面白いと思わなければ決してよいものはできないという考えも持っています。そこで、作品に対して口出しをすることはせず、こちら側はビジネスに徹するという線引きをしました。押井さんには、「作りたいもの、面白いと思うものを作ってください」とだけ伝えました。彼もそこを評価してくれたのかもしれません。
──それはまた割り切ったスタンスですね。それができたのは何故でしょう?
中西 それは私が映像づくりの素人だからです。押井さんに作品の概要を聞いても、ほかの作品をたとえにあげてくるので、それもよくわからなくて(笑)。あるときのミーティングなんて1時間半もらって、そのうち1時間25分くらい押井さんがしゃべりっぱなしでしたから。あのおなじみのトーンで(笑)。そうしたコミュニケーションを取っていく中で、なんとなく押井さんの世界や、イメージがなんとなくつかめてきた段階で、主題歌を決めていきました。
──主題歌が意外と早いんですね。
中西 押井さんが話す内容と脚本を突き合わせて考えても、どうにも理解が追いつかない。そこでわかったのは、押井さんが伝えたいものは、このアニメの中だけでは収まらないのだなと。であれば、それを複数の視点から、主題歌も使って伝えていこうと考えました。これはビジネス的な考えで、原作がないオリジナル作品を広報する手段でもあります。
──一般的なオープニング/エンディング曲以外にも、海外版があったりしますし、歌われる面々も非常に豊かです。
中西 まず、BlooDye(ブラッディー)が歌うオープニングテーマの「Where you are」は、この作品の中の「儚(はかな)い絆」をテーマにしています。これは押井さん流に言うと、「友情や愛情という絆はいっときの満足である」と。たとえば、中学高校の友だちで毎日会っていたのに卒業後はパッタリ、というのは誰しも経験があると思います。歌詞はもちろん、オープニングの映像もそうしたテーマを何処か感じられるはず!?(笑)もう1曲、 “マイVersion” の主題歌を歌うLOVEBITESの「Winds Of Transylvania」は、「共存」をイメージしています。押井さんの世界観では、吸血鬼という存在は人間社会における異物であり、媒体であるといいます。それぞれのヒロインたちはまったく別の世界で生きているのですが、マイが入ることで「共存」できる。バンドという存在がいろいろな楽器や要素が合わさってひとつの世界観を作り上げる「共存」の象徴ですし、音楽性からして吸血鬼と相性がいいので彼女たちにお願いしたというわけです。
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