なぜ今、「ブロッカー軍団IVマシーンブラスター」をデジタルアーカイブ化する必要があるのか? アニメを“文化遺産”として保管する寺田倉庫に聞いてみた!【アニメ業界ウォッチング第74回】
1976年放送のテレビアニメ「ブロッカー軍団IVマシーンブラスター」をリアルタイムで視聴していた人は、いまアラフィフではないだろうか。制作は、「世界名作劇場シリーズ」や「未来少年コナン」などで知られる日本アニメーション株式会社。「マシーンブラスター」は同社のフィルモグラフィーの中でも異色の男児向けロボット物で、かつてDVD-BOXが発売されたきりである。
今、その「マシーンブラスター」をデジタルアーカイブ化するべく、クラウドファンディングで資金が集められている。日本アニメーションに協力しているのは、昨年夏に「チャージマン研!」のデジタル化に成功した寺田倉庫である。フィルムの保管業務だけでなく、自社でミュージアムなどを運営して文化事業に意欲的な寺田倉庫は、どのような動機からアニメ作品のデジタル化を推進しているのだろう? その現状と今後について、寺田倉庫アーカイブ事業グループ執行役員の緒方靖弘さん、同グループの野口敦史さん、勝又大介さんにお話をうかがった。
DVD化されたとき、なぜ16mmフィルムの原版を破棄しなかったのか?
──寺田倉庫さんは映像機器もたくさん保有していますが、あくまで物を預かって保管する会社ですよね?
勝又 はい、基幹事業はあらゆる物の保存と保管です。メディア保管に関しては、それだけでなく、お預かりしている映像作品をその時代にもっとも適した形で提供したいので、補修作業するための設備も整えています。せっかく映像フィルムをお預かりしているのに、フィルムを再生する機材がなくなって見られなくなってしまっては意味がありません。物理的にフィルムを保管するだけでなく、将来にわたって作品を本来の形で見られる状態にしたい――それが、弊社アーカイブ事業の基本理念です。アニメ・実写問わず、映像作品は1200万点お預かりしています。
野口 映画フィルムだけでなくビデオテープ、音フィルムやLPレコードなどのアナログ音源もお預かりしています。
──今回は、どういう経緯で「ブロッカー軍団IVマシーンブラスター」をデジタル化して保存しようという話になったのでしょう?
勝又 昨年、「チャージマン研!」のクラウドファンディング(以下、CF)が成立したことが映像業界の中で話題になり、16mmフィルムで撮られたアニメ作品をデジタルアーカイブ化するひとつの先例をつくることができました。
昨年5月、弊社は日本動画協会の準会員となりました。日本アニメーションさんも日本動画協会に所属しており、そうしたご縁もあり、過去のアニメ作品のデジタルアーカイブ化に取り組めないだろうかと、弊社からご相談したことから今回のCFがスタートしました。
──日本アニメーションさんは、世界名作劇場シリーズで知られた制作会社ですよね。なぜ、「マシーンブラスター」なのでしょう?
野口 世界名作劇場シリーズのように広く名の知られたコンテンツは、CFで資金調達をしなくても、マネタイズしやすいのではないかと考えております。
緒方 異端の作品だからこそ、ファンの方たちのご支援がないと、デジタルアーカイブ化の機会を得られないとも言えるでしょう。70年代のロボット物はコアなファンの方が多く、作品保存のための援助を惜しまない点は大きなメリットだと思います。
──CFの告知ページを見ると、メカデザインを担当した大河原邦男さんのコメントが掲載されていますね。
勝又 「マシーンブラスター」はタツノコプロさんから分岐した葦プロダクションが実制作を行い、その関係で、タツノコプロさんに在籍していらした大河原さんがロボットのデザインを担当しました。他社の作品なのでペンネームでの参加でしたが、Wikipediaに書かれている“七戸洋之助”ではなくて“松田豪”名義だと、ご本人から指摘していただけました
──CFの特典として、既存のソフビ人形や玩具、缶バッジなどのアイテムがもらえるようですが、「折り畳み傘ポーチ」は新しく作ったと聞きました。
野口 日常に入り込むアイテムは何だろう?と考えたとき、「折り畳み傘ポーチ」はどうだろうかと日本アニメーションさんからご提案いただきました。黒地に白の、大人っぽいデザインです。
「マシーンブラスター」は、今の40~50代の方が見ていらした作品です。「チャージマン研!」の場合は2000年代になってから地上波のテレビ番組で取り上げられたり、ネットでバズっていたこともあって、幅広い年齢層から男女問わず支援をいただけました。「マシーンブラスター」は40代後半から50代の限られた世代が対象ですので、どのようにして価値を伝えていくかが我々にとっては課題です。
──しかし、「マシーンブラスター」はDVD-BOXが過去に発売されています。それで見られるのだから、もう十分ではないかと思ってしまうのですが?
勝又 テレビアニメ作品がDVD化される際は、放送当時のままの4:3のアスペクト比の場合が多いと思います。しかし、70~90年代のテレビアニメは16mmフィルムで撮影されていて、テレビ画面に合わせるために、ネガの左右の画像を切られて放送される場合がほとんどだったわけです。今回の「マシーンブラスター」のデジタルアーカイブ化では、放送時に切られていた左右も残さずスキャンして、16mmのオリジナルネガの持っている情報を2K画質で保存します。16mmフィルムには2K以上のポテンシャルがありますが、弊社なら最高の品質でデジタル化できます。
緒方 「DVDより、それ以前の時代の16mmフィルムは圧倒的な高画質で映像を記録している」という認識を、まず持っていただきたいと思います。なぜDVDが発売された際に、16mmのフィルム原版が破棄されなかったのか。DVDは、データを圧縮した低い画質でしか記録できていないからです。フィルムよりDVDのほうが後から出てきた媒体なので、ついDVDのほうが高画質と思ってしまいがちなのですが、フィルムの解像度のほうが段違いにすぐれています。その情報量を余すところなくデジタルで記録できたとき、はじめて原本としてのフィルムが存在意義を果たすのだと思います。DVDが開発されたころの技術では、そこまで完璧にデジタル化することはできませんでした。近年、フィルムスキャナーなどの機材が進歩して安価になったおかげで、ようやく可能になったんです。
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