アニメライターによる2021年冬アニメ中間レビュー【アニメコラム】
2021年冬にスタートしたアニメの中から注目タイトルをピックアップ! 異世界転生もののパイオニア「無職転生 ~異世界行ったら本気だす」、人気シリーズのスピンオフ「はたらく細胞BLACK」、メディアミックスプロジェクト「ゲキドル」、押井守が久々にアニメに帰ってきた「ぶらどらぶ」、爆発的人気のストップモーションアニメ「PUI PUI モルカー」の5作品を紹介します。
無職の主人公が下級貴族の少年・ルーデウスに生まれ変わり、新たな人生をやり直す異世界ファンタジー。異世界に転生したキャラクターは、わりとすんなり新生活になじむものだが、本作の主人公は過去のトラウマをばっちり引きずっている。それを象徴しているのがモノローグで、地の声のルーデウスではなく、前世の男を演じた杉田智和が心の声も担当。屈託まで伝わってくるモノローグは、まるで前世の呪縛のような響きで視聴者を作品世界に引き込んでいく。
アニメでは2話分かけて、かつて引きこもりだった彼が魔法使いの師匠のおかげで外に出られるようになるまでをていねいに描いた。たどり着いた広大な草原で嵐を巻き起こし、全身濡れたまま魔法を放つルーデウスの姿は、トラウマを洗い流す場面にふさわしい。師匠の力を超えたことで別れの日が来ることを悟り、「もっといろいろ話しておきたかった」と漏らす心の声は忘れられない音色を残す。
これで忌まわしき前世の記憶から解き放たれ、モノローグも消えてしまうのだろう。そう思いきや、家に戻った途端に杉田智和の声が復活するのだから驚愕してしまう。前世の男のトラウマはそれほどまでに根深いのだろうか。はたして地の声と心の声が一致する日が来るのか要注目だ。
人間の細胞を擬人化した「はたらく細胞」のスピンオフコミックをアニメ化。体内は現実世界を模しているが、その中でも見逃せないのは、肝臓が接待を伴う飲食店として表現されたことだ。アルコールや毒素を分解する肝細胞は美しい女性として表われ、ハードな現場で働く赤血球にひとときの安らぎを与えてくれる。
だが物語が進んで体内環境が悪化すると、肝細胞は激務でやつれ、肝臓のある歓楽街はシャッター通りに様変わりする。その寂れた光景は2021年現在の街並みと重なるだろう。不要不急と切り捨てられたものが、実はかけがえのないものだったことを痛感させられる。
「はたらく細胞BLACK」はそんな顧みられない物事への視線が行き届いた作品だ。アニメでは活躍する機会が少ない中高年のキャラクターに焦点を当てているのも特徴で、過酷な環境に慣れすぎて感情を失った先輩赤血球、最期の仕事を前に穏やかな笑みを浮かべる皮脂腺細胞、新米赤血球を叱りながらも見守る一般細胞のおばちゃんと、固有名を持たない登場人物がたしかな存在感を持って浮かびあがってくる。そんな彼ら彼女らの住む体内が迎える結末を見届けたい。
3Dホログラムを駆使した演劇に魅せられた少女・守野せりあが、アリスインシアターの劇団員としてステージに立つオリジナルタイトル。ごく普通のアイドルものに思えるが全編を通じて不穏な空気に包まれており、一部分が消失した池袋、人間そっくりだが感情のない舞台装置のアクトドール、ホログラムを生成するための薄暗いサーバールーム、窃視を思わせるレイアウト、実写の背景写真を使ったOPアニメーションと枚挙にいとまがない。
とくに5話では剣呑さがエスカレート。せりあがドールを「アリス」と名付けて、その手を勢いよく握ろうとする瞬間、輪郭線がブレるという冒頭のカットから、今回のエピソードが特別な話数であることが感じられる。ラストシーンの口だけが異様に動くリップシンクロも不気味さを強調しており、目が離せなくなるほどだ。本作の劇中劇「アリスインデッドリースクール」のアニメ化も決まっており、そちらも気になるところ。
押井守が数十年ぶりにアニメシリーズに復帰。献血マニアの女子高生・絆播貢(ばんばみつぐ)が、吸血鬼を名乗る少女・マイと出会い、ひとつ屋根の下で暮らすドタバタコメディだ。まるで思うがままに作っているかのように見える破天荒な展開が魅力で、「機動警察パトレイバー2 the Movie」の幻の爆撃シーンをセルフパロディしたり、かつて対談した演出家をネタにしたり、戦略爆撃機の解説が意味もなく挟まったりと自由自在。メインキャラクター7名のうち5名がショートカットという極端なバランスも許せてしまうし、押井守のコンテの絵がそのまま残っているようなデフォルメ顔も気持ちいい。
キャストは貢役の佐倉綾音を筆頭に第一線で活躍する声優陣が集結。「そうはイカの金隠し」など、どうしようもない昭和ギャグを人気キャストがしゃべるというだけで感極まってしまう。出資したいちご株式会社に感謝の念を送りながら、後半の配信を待ちたい。
モルモットが車になったモルカーが街を駆けるコマ撮りアニメ。モルカーは車でありながら意思を持ち、仕事中なのに野菜を食べて動かなくなったり、お腹を下してフンをしたり、渋滞に困って泣いてしまったりと、己の欲望に忠実なまま生きる姿が愛らしい。動物が乗り物になるという発想は「となりのトトロ」のねこバスを彷彿とさせるが、モルカーは外と中が完全に分けられているのがポイント。車内の人間はストップモーションで撮られており、そのチグハグとした動きが笑いを誘う。
コミカルな作品であるいっぽう、モルカーが目を閉じると体内に目が現われて、内部を見ることができるなど、ちょっとホラーな描写がファンの憶測を呼んでいる。見里朝希監督が学生時代に手がけた「マイリトルゴート」でも狼の体内がリアルに描かれており、ふと漏れ出る作家性も魅力となっている。
(文・高橋克則)
(C) 理不尽な孫の手/MFブックス/「無職転生」製作委員会
(C) 原田重光・初嘉屋一生・清水茜/講談社・CODE BLACK PROJECT
(C) ゲキドル製作委員会
(C) 2020押井守/いちごアニメーション All rights reserved.
(C) 見里朝希JGH・シンエイ動画/モルカーズ
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