70年代っぽい合体ロボット「宇宙戦士バルディオス」を組み立てて、1981年暮のバンダイ模型の技術力を学ぼうぜ!【80年代B級アニメプラモ博物誌】第9回

「機動戦士Zガンダム」、「超時空要塞マクロス」とメジャータイトルが続いてきたんだから、そろそろいいでしょう? 今月は、「宇宙戦士バルディオス」(1980年)です! キットはバンダイ製。1981年12月に、この300円のメカコレクション(1/800)と1/550スケール(700円)の2種類が出たみたい。
「バルディオス」って今月、他社から新しいプラモデルが出るんだよね? 「スーパーロボット大戦」に出てから認知度が上がったんだろうけど、放送当時は「伝説巨神イデオン」ブームだったので、アニメ雑誌で「テレビは打ち切りになったけど、劇場版で完結」とのニュースを聞いて、「そんなに人気あるの!?」と驚愕したものです。「ガンダム」終了から半年後の作品なのに、「バルディオス」って70年代ロボット物みたいな雰囲気だもんね……。

▲ 「ベストメカコレクション」シリーズとしては、第33弾。サーベルとシールドを持ってはいるけど、「ガンダム」より前に放送された「宇宙魔神ダイケンゴー」に近いよね。「なぜ、今こんな合体ロボを?」という当惑があったよなあ……

これからのアニメは「ガンダム」「イデオン」の路線を追っていけばOKと油断していたら、かなり唐突に未放映だったラストシーンの絵コンテが、アニメ雑誌にカラーで掲載された。普通、絵コンテをカラーで描かないだろう? このアニメって、そんな熱気でつくっていたのか! その衝撃を刻みつけるように、このプラモの箱絵にもラストシーンが描かれている! 敵の女司令官であるアフロディアを、主人公のマリンが抱いて立っているんですよ!!

▲ このプラモデルを開発していた時点で、映画は未公開のはず。ということは、この箱絵はアニメ雑誌に掲載された絵コンテを見ながら作ったの? だとしたら、かなりドラマチックなプラモ開発だぞ!!

今回、あらためてテレビ版の「バルディオス」を見てみたけど、主役ロボの登場は第4話。敵軍(S-1星)からの逃亡者であるマリン、マリンに憎しみをつのらせていくアフロディアのドラマ描写に力点が置かれている。その間に、地球側はS-1星からマリンが乗ってきたメカを改造、地球製メカ2機と合体させることでバルディオスが完成……って、かなり無茶を感じる設定だけど、たまにバルディオス自体が、すごくカッコよく描いてある。
というのも、作画を葦プロの田中保さん、本橋秀之さん、亀垣一さんら、スタジオZ5系のアニメーターが手がけることがあり、その回だけ「ロボットのパースが広角気味で、止め絵で立っているだけ、飛んでいるだけでポージングがカッコいい」のだ。あのポーズを重視してキット化していたら、その後のキャラクター模型史が変わっていただろうね。

▲ 同時期のガンプラは1/60ドム、ゲルググなどが発売されていて、形状・ギミックともに高密度なキットが開発されていた。このバルディオスも、各部の面や細部の“さばき方”が手馴れている

▲ もう1枚のランナーを見ると、本当にガンプラですね、300円の。どんなロボットでも、ガンプラのフォーマットに落とし込めば可動プラモ化できるぐらいバンダイさんの発想と技術が熟してきたんでしょうね、81年暮ともなると

サンライズというか、大河原邦男さんのロボだけをガンプラっぽく模型化していたら、それはそれでつまらなかったと思う。80年代前半のバンダイは「えっ、今度はそっち行くの? なんで?」とビビってしまうほど挙動不審なラインアップが見られ、その時期のキットをこうして掘り返すと面白いわけだ。バンダイの金型力がスパークしていく……静岡の一角で! この1/800バルディオスも、その閃光のまたたきと言ってよいでしょう。

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