バイクから人型へ! 変形の面白さを突き詰めたオリジナルロボ「サイクリオン<TYPE ラベンダ>」は、いかに生まれたのか? 声優・泰勇気×田中ヒロ(グッドスマイルカンパニー)スペシャル対談!

グッドスマイルカンパニー初の、オリジナル変形ロボットフィギュア「サイクリオン<TYPE ラベンダ>」が現在好評発売中だ。

本商品は、バイク型二輪走行形態から女性型ロボット形態に、差し替えなしで完全変形するオリジナルフィギュアだ。グッドスマイルカンパニー「メカスマ」総合プロデューサー・田中ヒロさんのもと、原案となったバジルの造形魂さんによるガレージキットをベースに、野中剛さんがメカデザインを担当。

計算された変形ギミックと、各形態ともに破綻のないプロポーションを実現した、かなりすごいアイテムとなっている。

アキバ総研では、すでにロボット&ホビー大好き声優・泰勇気さんによるレビューが公開されているが、今度は総合プロデューサーの田中ヒロさんにインタビュー! 開発に至った経緯や、変形ロボへの熱い思いを泰勇気さんに引き出していただいた。

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10年越しの夢だった商品化

 グッドスマイルカンパニーさんとしては、ほぼ初のオリジナルのロボットキャラクターのアイテムになりますよね。バイクの変形ロボって昔からあるんですが、どちらかというとゴツくなりがちな印象があるところ、「サイクリオン」は細身のバイクから細身の人型に変形します。しかも一見してどう変形しているのかわからないほど、シンプルな見た目ですね。

田中 そうですね。正面から見るとちょうどタイヤのシルエットが見えない。これは本当にバイクになるのかな、と思われるのではないでしょうか。

 しかも差し替えなしで、可動の制約も受けていないという……。このアイテムの開発に至る経緯を教えていただけますか?

田中 10年くらい前に「バジルの造形魂」さんの「レディローゼス」というガレージキットと出会ったんですが、初めて写真を見た時「これ、本当に変形するの?」っていうほど衝撃を受けたんです。実際に手に取ってみたら、変形や可動についてすごくよく考えられていることがわかりました。ただやっぱりガレージキットなので、扱いが繊細なところもあったので、いつかガシガシ遊べるものをいつか作りたいという思いがありまして。だから10年越しの商品化です。

 ガレージキットだと扱える人がどうしても限られるので、何らかの形でこのアイテムを幅広い層に届けたいという思いがあったんですね。

田中 そうですね。これを玩具として遊べたらどれだけ楽しいだろうとか、マスプロの成型物ができたらとか、それをこの目で確かめてみたいという長年の思いがありました。それが機会を得て、実際に商品化させていただけないでしょうかとバジルさんに相談させていただき、野中剛さんの力を借りて、より玩具的なプロダクトとしてまとまりを持たせる形でデザインしていただきました。

 バイクロボというと女性型が多い印象ですが、その中でもサイクリオンは頭身高めでお姉さんらしさがひときわ出ているような気がします。この頭身に収めたのは、もとのデザインを踏襲しているのでしょうか。

田中 もともとレディローゼスの頭身が高かったというのがありますが、最近の流行りだと頭身は低めのほうがかわいくていいんじゃない?って何回かトライしてはみたんです。ただ、どうにもチグハグなものになって、うまくいきませんでしたね。最終的にレディローゼスはこの頭身だからこそ成り立っているんだ、というところにたどり着きまして、試行錯誤の末、そのままの等身でいくことになりました。

 僕の中でバイクと女性と言うと、「ルパン三世」の峰不二子というイメージがあります。

田中 あははは。確かにそういうバイクと言うと、大人の女性というイメージがあるということはバジルさんともお話させていただきました。空山基さんや寺沢武一さんのイラストのような女性型ロボのイメージがもとになっているとうかがいました。野中さんとは、過去「マジンガーエンジェル」という合金のレディロボ商品を一緒に企画したこともあり、元のキットのよさを生かしたトイデザインに仕立ててくれるのはこの方しかいない!ということで依頼しています。

ガレージキットからマスプロ商品へ

 さっそくなんですが、変形を見せていただいてもよいですか?

(田中さんが変形させる)


 うおおお! すごい! 変形過程を見ると、変形ギミックのおかげで可動範囲が広がっていることがわかります。

田中 そういう部分もありますね。最後はマグネットで固定します。

 ピンじゃないんですね! 美しい!

田中 腿がエグゾーストになって、その内部フレームがシャフトになるところに機能美があります。……このようにシンプルな変形でバイクになります。

 一切パーツを差し替えることはありませんでしたね。ロボット時の関節も無駄なく使ってますよ。

──女性的なボディラインを、そのままバイクの曲線に取り込んでいるところが見事ですね。腰のくびれがそのままシート部分になってるのもすごいです。

田中 まったく無駄のないデザインで、「変形するとこれがここに収まるんだ」という気持ちよさがあります。ロボット形態だとこれが本当にバイクになるのかと思いますよね。

 変形すると、ペイントされたロゴがきちんと正位置にくるんですね。変形前からは全然イメージがわかないのですが、実際に変形パターンを見ると全然難しくないですね。頭部がまるっきり隠れているわけではないのに、どこに移動したのかがわからない形で成立しているのが、変形ロボとしての完成度を物語っています。

田中 そこはもうさすがの変形のセンスです。小難しくせず、シンプルで美しい。変形ロボというと、直線と直線があわさっていくことが多いんですけど、これは曲線が合わさっていく点がワンダーだと思います。ガワ変形じゃないです。

 髪の毛部分をうまく利用してタンクになるのが素晴らしいですね。

──レディローゼスから商品化する際にこだわった点、追加した点を教えてください。

田中 まず素材感の演出です。オリジナルキャラクターなので、物体として魅力的であってほしいということでクリアパーツやメッキパーツにこだわりました。シャフトはステンレス製で削り出しです。あとは、あえてレディローゼスよりも可動域を狭めているところがあります。

 これで、ですか!?

田中 はい。足の横回転のオミットがそれです。この機構を入れるとパーツが外れやすくなるので、あえてなくして、気持ちよく変形できる方向に特化させています。

あとレディローゼスはもともと1/18スケールのフィギュアが乗るサイズだったところを、ホイールベースを長く取って1/12スケールのフィギュアが乗るようにしています。やっぱり1/12のフィギュアが乗るのがいいんじゃないか、という野中さんからのデザインアレンジが施されています。レディローゼスはもうちょっとハンドルが後ろの位置にあって、小さめのフィギュアが乗るようになっているんです。僕自身はそこまで気にしていなかったんですが、ここは野中さんのマスプロへのこだわりですね。ロボ形態の大きさは変わっていません。

泰 塗装済みパーツやクリアパーツを多用していて、かなり豪華な作りになっていますよね。オリジナルの1号アイテムということで気合が入っているのかな、とは思うんですが、そのいっぽうでお値段は控えめじゃないですか。これはやはり企業努力の結果ですか?

田中 はははは(笑)。この仕様で大丈夫かというと、たくさん売らなきゃいけないというのが実際あるんですが(苦笑)、企業努力という点については僕らだけじゃなく、一緒に作ってくれる工場の方もがんばってくださいました。

──最初に見た時は、数万円はするのかなという印象を受けたので、まずは価格設定に驚きました。

田中 本来はそれくらいの価値があるものだと思うのですが、オリジナルキャラクターじゃないですか。元の作品があれば、その思い入れである程度の価格でもいけると思うのですが、今回はオリジナルなので、まずは買っていただいて商品のよさを知ってもらわないと、本当の魅力が伝わらない。そう思いましたので、1万円を切る価格でご購入いただけるようにしたところはあります。

せっかくマスプロになって多くの人に手に取っていただきたいと考えると、やはりいたずらに価格を高くしすぎるわけにもいきませんからね。そうなると、限られた人しか楽しめないと思うので。

 世界観の設定はあるんでしょうか?

田中 多くを見せてはおりませんが、シナリオライターの保坂歩さんにけっこう作りこんだ世界観を考えていただいています。説明書には全体の数割程度の情報を載せております。ただ、それも世界観の一例であって、遊ぶ人にいろんな想像をしてもらいたいと思っています。

いずれそれをお見せすることもあるかもしれないのですが、自由度を残すという感じでこれくらいにしておこうという感じです。

 自分は、「サイクリオン」の世界には同タイプのマシンがほかにもあったりして、バリエーションも複数あったりするのかなと想像しています。

田中 それは自分も前提として考えています。企画段階で今回のラベンダとは違うタイプもデザインされています。「TYPE ラベンダ」はどちらかというと、近接戦闘と隠密行動に特化したタイプなんですけど、もしかしたら重火器を持っているキャラなんかもいるのかなと、そういう想像をしてデザインしてもらいました。

 カラーリングはパープルのほかにも、アイデアはあったんでしょうか?

田中 はい、ありました。元がレディローゼスなので赤かなと思ってましたが、野中さんからまず上がってきたのがこのカラーリングでした。ほかの候補カラーも作っていただきましたが、第1弾としてしっくりくるのはこの色でした。ラベンダという名前もこの色にちなんでつけています。





新しいメカで変形・合体ロボシーンを盛り上げたい!

──田中さんご自身は、バイク変形ロボに思い入れはあったのでしょうか?

田中 自分の、バイクがロボになるというキャラクターのルーツをたどると、やはり「電人ザボーガー」までいっちゃうのかな。バジルさんもガレージキットでザボーガーを作ってらっしゃいますので、やっぱり原点はそこにあるんだと思います。

──サイクリオンの腰の部分がシートになるっていう要素も、ザボーガー感がありますよね。今後、田中さんとしてはグッドスマイルカンパニー発のオリジナルメカを充実させていきたいところでしょうか?

田中 オリジナルを増やしたいというよりは新しいメカトイを増やしていきたいと思っています。新しいメカはオリジナルでもいいし、アニメやゲームなどの原作があってもいい。今はメカものの絶対数が少ないので、変形ロボにしても合体ロボにしてもラインアップがたくさんあったほうが「何か生まれている感」というか「この領域は盛り上がってる」感が出るじゃないですか。メディアに掲載される形でもいいし、プロダクトから入る形でもいいですし、いろいろな形があっていいと思っています。

 最近はいろんな模型メーカーさんが、オリジナルのメカをがんばって出してらっしゃるじゃないですか。僕もそれを応援したいですし、「こんなロボットがいたらいいな」と妄想したり、合体ギミックを考えたりしてるんです。泰勇気が考えたから「ダイタイタン」って名前なんですけどね(笑)。そんな風にいろんな人が同じようなことを考えている中で、また彼女も生まれてきたんだと思います。

だから「サイクリオン」の世界が、これからも広がっていったらいいなと思います。

──まずはユーザーの皆さんに手に取っていただいて、バイク型ロボの魅力を感じてもらいたいですね。

田中 そうですね。もともと変形ロボって、つじつまがあうところが気持ちいいじゃないですか。特に1980年代ロボに多いんですけど、こことここがこう合わさるんだっていう、パズル的、知的な快感があると思います。ポピーの「ゴッドシグマ」とか、タカトクの「VF-1バルキリー」とか、幾何学的な気持ちよさがあるじゃないですか。頭がここに収まる!とか太ももが開いてこう変わるのか!というような、変形ロボのプリミティブな気持ちよさが詰まっているのがこのサイクリオンです。

──ユーザーの方からの反響はいかがですか?

田中 じわじわとファンが増えている感じがありますね。もともとメジャーなキャラじゃないから、あのキャラのあれがすごい!という受け入れられ方じゃなくて、あの変形がすごい!という風に、クチコミで受け入れられている感じです。

 長いスパンで浸透させていく感じですね。まずはこれを知ってほしいと。

田中 さっきもお話させていただきましたが、「サイクリオン」には変形ロボットの基本的な面白さがあると思います。手に取った時の手触り、素材、重みにもこだわっています。手触りって大事じゃないですか。そして幾何学的な面白さ。ビフォーとアフターで気持ちよくつじつまがあうということが変形ロボットの基本だけど、そこを改めて突き詰めています。

2020年代ならではの新しさとしては、それを曲面でやっているところでしょうね。無機質なメカではなく、曲面を持つ女性型ということで感情移入したり、ストーリーを想像しやすいというところで、オリジナルアイテムならではの楽しさがあるというのが「サイクリオン」を通じて伝えたいところですね。

【商品情報】

■サイクリオン <TYPE ラベンダ>

・発売中

・価格:8,900円(税込)

・仕様:亜鉛合金&ABS塗装済み変形フィギュア

・全高:約165mm

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