「TCGはまだまだ伸びるジャンル!」ブシロード 木谷高明会長vs晴れる屋 齋藤友晴社長──TCG業界新旧風雲児対談ロングインタビュー

トレーディングカードゲーム(以下、TCG)は対面で遊ぶことが多い性質上、昨今の新型コロナウイルスによる自粛状況の影響を大きく受けているホビーのひとつだ。

そんな状況下で、全国100店舗、四十七都道府県への「マジック・ザ・ギャザリング」専門店出店というビッグな方針をぶちあげたのが、TCGショップチェーン「晴れる屋」だ。晴れる屋は「マジック・ザ・ギャザリング」に商材を絞り、東京と大阪に座席数300(!)のトーナメントセンターを出店している今もっとも勢いのあるTCGショップだ。

晴れる屋社長・齋藤友晴さんはもともと「マジック・ザ・ギャザリング」のトッププレイヤーで、オールドTCGゲーマーには1999年にマジックを始めて数か月で「The Finals」に優勝した天才高校生プレイヤーと言えば伝わるかもしれない。齋藤さんは2009年に晴れる屋を創業、2019年に競技プレイヤー引退後は、晴れる屋経営と「トモハッピー」名義のYouTuber活動を精力的に行なっている。

そんな齋藤社長に、ブシロードの木谷高明会長が興味を持っているらしいという話を小耳に挟み、急遽対談の場をセッティングしてもらった。木谷会長といえば、ブロッコリーとブシロードという2つの上場企業を作り上げ、「ヴァイスシュヴァルツ」「ヴァンガード」などの国産TCGを立ち上げてきた立志伝中の人物だ。

トレーディングカードゲーム業界における気鋭の若手経営者とレジェンド経営者が交わした言葉の数々を、ロングインタビューでお届けする。

TCGは先行者利益が大きいジャンル!?

──齋藤さんは2019年末に「マジック・ザ・ギャザリング」の競技プレイヤーを引退されて以降、さらにビジネスと情報発信に力を入れている印象があります。トレーディングカードゲーム業界の経営者として、木谷会長にはどういうイメージを持っていますか?

齋藤 木谷さんがいてくださったから今の日本のTCG産業があると思っています。今日はお話させていただけて光栄ですし、業界の大先輩として尊敬しています。僕個人として印象的なのは、昔「ディメンション・ゼロ」というTCGをプレイヤーとして遊んでいた頃に、当時その作品のトップだった木谷さんが表彰式にいらっしゃって、「うぉぉ! 木谷さん来た!」とみんな興奮したことです。それぐらい国産TCGの黎明期から業界を盛り上げてくれた人ですし、今の自分から見ても、よくもあんなに早くTCGの可能性を見抜いてベット(賭ける)されてきたと思います。

木谷 TCG関係者は「マジック・ザ・ギャザリング」を入口にしている人がほとんどだと思うんですが、僕の場合は違ったんです。最初はコレクション目的のトレーディングカードの商機にぶつかって、版権取るぞ!となったんです。そこから始まって、まだ日本にない美少女カードゲームの企画提案を受けて、そこからはじまったのが「アクエリアンエイジ」でした。

──先程名前が出た「ディメンション・ゼロ」も、国産で最初の賞金制カードゲームという意味で非常に大きなエポックだったと思います。

木谷 賞金制のタイトルをやってみようということになって、弁護士さんにも相談しながら、運営システムとしては「マジック・ザ・ギャザリング」を参考にさせてもらいました。ゲームシステムは全く別ですが。

齋藤 日本で大会に賞金を出すのって大変ですもんね。(※主に賭博罪との兼ね合いにより、プロ契約等が必要)

木谷 そうなんです。ただ「ディメンション・ゼロ」の頃は、まだ僕は日本のカードゲームプレイヤーの気質をよくわかっていなかったんですよ。多くのプレイヤーは強さ、対戦を求めていると思っていたんですが、実際はコミュニティ、コミュニケーションを求めている人が多かった。本当の意味で競技レベルの強さを求めている人は10%もいなかったんです。だから「ディメンション・ゼロ」も最初は盛り上がったんですが、自分がそこまで強くないと気づいたプレイヤーは競技大会からは離れてしまった。

齋藤 賞金制は本当に画期的だったので、当時さまざまなTCGの競技プレイヤーが「ディメンション・ゼロ」に集まってきたんですよ。それこそ僕の周りの「マジック・ザ・ギャザリング」のプレイヤーも参加していましたし、さまざまなTCGのトッププレイヤーがしのぎを削った結果、ライトなプレイヤーさんが競技から去ってしまう現象はあったと思います。

──インターネットが発展していない時代でしたから、強豪プレイヤーのコミュニティに情報(その環境でどういうカードや構築、戦略が有利か)が独占されてしまった面もあったと思います。

齋藤 本当にその通りで、デッキ構築はもちろん、プレイングでもかなり差が出るゲームだったんです。もちろん運の要素もあるんですが、ほかのTCGタイトルに比べるとかなり低い割合でした。

木谷 インターネットが発達していない時代は、思いもよらないデッキで勝ち上がってくる人もいたんですよね。今の弊社のカードゲームの世界大会などを見ていると、日本のプレイヤーは右へならえで同じようなデッキを使っている傾向があります。世界大会だと海外プレイヤーの方がオリジナリティがあって、なかなか日本のプレイヤーは優勝できない状況があります。

──既知のデッキは対策もされやすいですよね。齋藤さんは強豪プレイヤーのコミュニティに情報が独占されがちだった時代に、積極的にデッキレシピなどを公開していたイメージがあります。

齋藤 そうですね。情報があまりまとまってない時代に、いいデッキができた時は個人のブログに載せて共有していました。TCGの対戦が盛り上がればいいな、勝ちたい人の手助けになればいいなと思っていました。さまざまなデッキレシピが公開される時代になって、面白いデッキや魅力的なデッキが目に入るようになるのは、(カードの購買意欲をかきたてるので)カードショップとしてはありがたいことなんです。ただ、情報がまとまりすぎると、デッキを自分で考えて構築するというカードゲームの楽しさが削がれてしまう面もあるので、そこは一長一短ですね。

木谷 これはデッキ構築に限った話でなく、情報が手軽に手に入りすぎることで、自分で考える習慣が薄れてしまっている気がします。本当はカードゲームのデッキを作るのもプレイングも、自分で考えて技を磨いていくのが楽しいし、その結果を競うから対戦は楽しい面があると思うんですね。ただ調べたら出てくるし、場合によっては調べなくてもおすすめで出てくるんだから、これは仕方ないですよね。

齋藤 そうですよね。そのことによって、遊びやすくなっている面もあると思います。

──カジュアルに楽しめる新しいTCGといっても、「ヴァイスシュヴァルツ」「ヴァンガード」も最初のリリースから10年以上たっています。

木谷 先日、(齋藤社長が出演する)YouTubeのトモハッピーチャンネルで、新しいトレーディングカード(ゲーム)がなかなか出てこないという動画を出されていましたね。

齋藤 チェックしてくださってありがとうございます!

木谷 TCG業界というのは、先行者利益が大きすぎるんですよ。

齋藤 それは本当にそう思います。

木谷 そうなってしまう理由には、2つの資産が関わってくると思うんです。ひとつはユーザーそれぞれが持っているカード資産。もうひとつはそのゲームを遊んできた期間の思い出という資産です。いろんな大会に行ったな、こういう友達と遊んだなという記憶は金額に換算できない資産だと思うんですね。一度手にした資産は簡単には捨てられないし、新規のタイトルで資産0からまた始めるというのは、遊んできた時間が長い人ほど難しくなると思います。たとえばアメリカでは「マジック・ザ・ギャザリング」「ポケモンカードゲーム」「遊戯王」というトップスリーはこの20年間ほぼ変わっていません。日本では若干入れ替わりがありながらも、現在の月間売上では「遊戯王」「ポケモンカードゲーム」「デュエル・マスターズ」が上位です。特定のタイトルが20年も強いようなジャンルはほかにないと思います。

──晴れる屋さんのような業態では新しいTCGファンを求めているし、同時にオールドカードを必要とするベテランプレイヤーも重要な顧客だと思います。

齋藤 「マジック・ザ・ギャザリング」は毎年新しいカードパックがリリースされていますが、最新のカードで遊ぶレギュレーションだけでなく、幅広い年代の(各時代の強力な)カードを使えるレギュレーションもあって、プレイ歴が長いプレイヤーのことも大事にしているゲームだと思います。だから古いカードの物流も込みで成り立っている業界なのは間違いないです。

──先程、「ディメンション・ゼロ」は強豪プレイヤーとライトプレイヤーの情報格差などもあり、やや長期的な広がりを欠いたかもしれないという話がありました。その後にブシロードを作られてから世に出したTCGについてもうかがいたいです。

木谷 僕が前の会社(ブロッコリー)を13年目にやめた時、カードゲームにはまだまだ可能性があるなと思ったんです。カードゲームがなかったら僕はエンタメの業界にいなかったと思いますね。

齋藤 そこまでですか!

木谷 2007年に独立した時に、TCGの歴史って、世界で見ても14年ぐらいしかなかったんですよ。まだまだ新しい業界だから可能性はつきつめられていないと思って、2008年3月に「ヴァイスシュヴァルツ」を発売しました。「ディメンション・ゼロ」の経験がなければ「ヴァイスシュヴァルツ」もなかったと思っています。

──「ディメンション・ゼロ」での経験が生かされた点はありますか?

木谷 遊宝洞の中村聡さんにゲームシステムを作ってもらうにあたって、とにかく「初心者でもたまには勝てるようにしてほしい、勝てないまでも惜しかったと思えるようにしてほしい」とお願いしたんです。だから「ヴァイスシュヴァルツ」ならダメージがたまってレベルが上がると強いカードが出せる。

齋藤 ナイスゲームになりやすいゲーム構築なんですね。

木谷 なるべく接戦になってほしい。惜しかったらまたやろうと思うじゃないですか。だから総合格闘技よりはプロレス、ゲームで言えば麻雀のようなバランスにしたかったんです。逆転の余地がほしい。

──競技志向強めの「マジック・ザ・ギャザリング」とはちょっと違うスタンスですね。

齋藤 そうですね、TCG黎明期に出た「マジック・ザ・ギャザリング」のシステムの根本は変わることはないので、万人に楽しめる間口の広さというのはマジックのひとつの弱点であるかもしれません。長年楽しめる深みの面は素晴らしいんですが、よく言えばテクニカル、悪く言えばこまごましているかもしれません。少しずつ差をつけていくゲームで、大逆転とかは起こりにくいです。

木谷 「ヴァイスシュヴァルツ」や「ヴァンガード」と「マジック・ザ・ギャザリング」のゲーム性の違いは麻雀と囲碁将棋の関係に似ているんじゃないかと思います。

──なるほど、そのたとえはとてもしっくり来ます。

木谷 麻雀ってとても素晴らしいゲームバランスだと思うんです。

齋藤 僕もそう思います!

木谷 「ヴァイスシュヴァルツ」を立ち上げた時に「運ゲーです」と言ったんです、どうせ言われるなら自分で言ってしまえと思って。それで「なんだ、運ゲーかよ」と思う人もいるだろうけど、それなら自分も勝てるかもしれないと思う人もいたと思うんですね。

あえて今だからこそ出店! 晴れる屋の目指すもの

──今回、せっかくメーカーとショップのトップの方にお話いただいているので、ショップの話もしていきたいと思います。晴れる屋さんは、東京と大阪に300席のプレイエリアを備えたトーナメントセンターを出店しています。ちょっとほかでは考えられない規模感ですね。

木谷 そうですね。ただ晴れる屋さんが成功されてから、ほかのチェーンもちょっと真似しようという動きは感じますね。店舗の話で言うと、最初は個人のTCG好きな人が初めた店が多くて、次にイエサブさん(イエローサブマリン)のようなホビーショップが出てきた。最近強いのはドラゴンスターさんのようなもともと(コンシューマー)ゲームを扱っていたショップです。POSシステムや単品管理のシステムをすでに持っている店が強いんですね。そういうチェーンに既存店舗が押され気味の中、カラーの違う店が2つあるんです。ひとつはカードラボで、こちらはアニメショップ系だからキャラクターものが強いんです。もうひとつが齋藤さんの晴れる屋です。

齋藤 ありがとうございます。

木谷 「マジック・ザ・ギャザリング」一点集中の専門店なのに大店舗のメリットがあるんですよ。普通、専門店って小ぢんまりと始めがちなんですが(笑)。


齋藤 うちも最初は自宅で、通販から小さく始めたんですよ。

木谷 でも店舗出店の際は、大規模店舗のメリットを見抜かれて始めたんですよね?

齋藤 そうですね、高田馬場にトーナメントセンターとして出店したのが8年前になります。今カードショップの大型化という流れはたしかに存在していて、一般の方が来ても楽しめる、ときめけるような店舗も増えているのではないかと思います。8年前の時点では「300席、嘘でしょ?」という反応が多かったのですが、自分の中では勝率9割ぐらいはあると思っていました。

木谷 世間一般の流れは逆だったと思うんです。対戦スペースを持っているのって商売としては効率悪くしてるんじゃないの、という見方もあった。

──他のホビーや趣味の店の基準で考えると、TCGのプレイスペースや大会参加費は信じられないほどリーズナブルですよね。

齋藤 そうですね、基本無料開放のお店が多くて、大会参加費をいただいても場所代、ジャッジ代、諸々の申請の手間を考えると、基本はどこもプレイスペース単体では赤字で運営していると思います。僕も、カードを売り買いするだけの店舗というのは考えたことはあるんです。たとえば秋葉原や池袋の真ん中で、マジックに特化した店舗で売り買いだけすれば儲かりそうだとは思ったんです。でもそれは儲かりそうなだけで、わくわくしなかった。中長期的に見て、全体が調子よくないと成立しない商売だし、ただ安いから来る店になってしまう。やっぱりショップを始めた原点は、カードゲーム愛なので……。

──楽しんでもらう場所としてのプレイスペースは必要だった。

齋藤 店舗では特別な体験をしてほしいんです。それで最初は300席の店舗を作って、次はできれば1800席ぐらい作りたかったんです。ただ、なかなかそんなテナントはないので(笑)、今は店舗の全国展開を加速させています。

木谷 ドラゴンスターさんも最初大阪でカード販売のみから始めて、途中から大規模なプレイスペースを用意する方に切り替えたんです。気づいたんだと思います。

齋藤 (ドラゴンスターの)1号店と2号店でまったく路線が違いますよね。

──新型コロナウイルスの影響が大きく、実店舗には一般的には逆風と思われる時期に、晴れる屋は新規出店を積極的に行なっていますね。

齋藤 大阪のトーナメントセンターについては、もともと出店が決まっていて、結果としてぶつかってしまった感じです(笑)。それ以後の出店は意識してやっています。理由としては人やテナントが今までよりも(市場に)出てくるので、今動くことがカードゲーム業界の力になるんじゃないかなと思いました。店舗の集客はもちろん厳しいんですが、その分通信販売の調子がいいので耐えられている状態です。この業界には力があるな、これからまだ伸びていくだろうなと実感していて、だからこそ今が勝負だと考えています。

──少し驚いたんですが、コロナを含む状況の中で店舗取得などのコストが下がっているから今こそ勝負すべき、という考え方です。日頃木谷さんが広告宣伝などについておっしゃっている考え方にかなり近いように思うのですがどうでしょう。

木谷 (齋藤さんの考え方は)非常に正しいと思います。みんなが勉強してる時に勉強しても、みんな点数が上がるから効果が上がらないんですよ。周りがなかなか動けない時に動くのは、勝った時に非常にリターンが大きいんです。テナントだっていい物件が出るでしょう?

齋藤 そうですね、いい物件が取得しやすくなっているのはすごく感じます。店舗を増やすことでそのカードゲームが盛り上がって、商売にいい影響があることは、今の12店舗の時点でも実感してるんです。なので、マジック専門店の多店舗展開を積み上げながら、今まで貢献できなかった他のTCGタイトルにも晴れる屋2(秋葉原のポケモンカード専門店)、晴れる屋3、4と展開していければと考えています。どれぐらいほかのタイトルに展開できるかは、晴れる屋2がうまくいくか次第だと思っていますが。

木谷 うまくいくんじゃない?

齋藤 はい、うまくいくと思ってます(笑)。

──カードゲームを楽しむ場所としては、晴れる屋さんは最近「飲める屋」という新しい飲食業態の店舗も出店しました。

齋藤 「MTG BAR 飲める屋」という店を高田馬場に出しました。カードゲームって昔の感覚ではかなりディープな趣味だったと思うんです。でも今は友達と遊ぶツールとしてライトに楽しめるものになって、いろんなシーンに溶け込める遊びになっていると思うんです。そういう流れを加速させて、いろんな人にいろんな形で楽しんでもらえるようになれば、もっとたくさんの人に遊んでもらえるポテンシャルがカードゲームにはあると思います。

木谷 すごく面白い試みだと思いますね。「ヴァンガード」のイベントのヴァンガ祭でもキッチンカーを出したりしてるんですよ。カードゲームの大会というよりフェスっぽくしたいんです。会場に来たらとにかく楽しい、それは対戦をして楽しい人もいれば、コレクション目的で買い物して、お昼になったから何か食べようという人もいていいと思うんです。楽しみ方は広いほうがいい。TCG自体、こんなに多様な遊び方ができるものってないと思うんですよ。

齋藤 すごく身近で、手元におけるアートという側面もありますよね。

木谷 今スマホのゲームの市場がこれほど大きくなったのって、もともとTCGで絵を所有するのにお金を払う概念があったからだと思います。

「ディメンション・ゼロ」でTCG業界を盛り上げたい!

木谷 今、(晴れる屋グループの)売上ってどれぐらいなんですか。

齋藤 暫定の数字ですが、前期が年間で40億円ぐらいです。

木谷 すごいですね。カードゲームショップチェーンではトップクラスなんじゃないですか。素晴らしい数字だと思います。50億円の壁を突き抜けたら100億まで一気に行くんじゃないですか。

齋藤 がんばりたいですね。カードゲームに関わるメーカー、ショップ、問屋さん、ユーザー、あらゆる人のがんばりでまだまだ伸びていくジャンルだと思っているんです。

木谷 TCGに新規のタイトルが生まれるにはどうすればいいかというと、本当にパイが大きくなれば新規参入の余地も生まれるんです。今TCGのマーケットが1000億円ぐらいなんですが、これが2000億円になれば1/100でも20億円ですから、随分新しいタイトルが成立しやすくなると思います。TCGはだいたい年間売上で2~3億円ぐらいあればギリギリ成立して、5億円あればビジネスとして回って、やっていてよかった感じがしてくると思います。10億円売り上げれば会社を支えます。(市場が成熟してくれば)話に出てる「ディメンション・ゼロ」をもう1回やってもいいじゃないですか。

齋藤 (身を乗り出しながら)それを熱望してるんですよ! こういう場で言うべきか迷ったんですが、今でも「ディメンション・ゼロ」が一番語ることの多いTCGタイトルなんです。「マジック・ザ・ギャザリング」が好きだった自分が、“カードゲームが好き”に変わったのは「ディメンション・ゼロ」があったからなんです。面白かったけど一度うまくいかなかった理由もよくわかっているので、そこをアレンジしながら復活したらすごく熱いと思いますね。

木谷 あの当時ってマーケットが300億~400億ぐらいだったと思うんですよ。今はマーケットが3倍になっているので、ちゃんとやれば年間5億ぐらいの売上は成立するんじゃないかと思いますね。オリジナルのTCGをそこから先にどう育てるかは、ちょっと知恵が必要かなと思います。

齋藤 ぜひ「ディメンション・ゼロ」についてはしっかりお話する機会をいただきたいです(笑)。

木谷 今の時代に合わせるにはどうすればいいのか考えたいですね。でもインタビューの締めが「ディメンション・ゼロ」の話でいいの?(笑)

──もし今後「ディメンション・ゼロ」に何らかの動きが生まれたら歴史的なお話ですし、いいのではないかと思います! 最後に今日の感想と、トレーディングカードゲーム業界の今後についてひと言お願いします。

齋藤 いろいろお話しさせていただいたというか、素晴らしいお話をたくさん聞かせていただけました。偉大な先輩の言葉とオーラにふれて、自分もますますやる気が上がってしまいました。さっそく明日から、トレーディングカードゲーム業界を盛り上げる力になれるようがんばりたいと思います、ありがとうございました!

木谷 創業11年、チェーン店としては最後発の晴れる屋さんがこの規模、この特色の展開をしているのは本当に素晴らしいと思っています。プレイヤー出身のお店でここまでうまくいってるのは珍しくて、カードゲーム愛と、ビジネスをビジネスとして見る目がバランスよくあるのだと思います。海外のカードショップは単店が多いので、本当に世界一のカードショップチェーンになっていくんじゃないでしょうか。今後、カードゲームをリリースする側に回るのであれば、第一歩として「ディメンション・ゼロ」やってみませんか(笑)? TCGメーカーとしてのブシロードは、なかなか3強に割って入るのは難しい状況です。でも8年前には「ヴァンガード」が1位になった月間もあるのでね。可能性を信じてカードゲームメーカーとしてもがんばるし、カードゲームをより多くの人に楽しんでもらえるマーケットに育てるためにもがんばっていきたいと思います。

──ありがとうございました。

(取材・文/中里キリ)

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