放送が終わったから、全エピソードを振り返るんじゃ~い! 2021年春アニメ「ゾンビランドサガ リベンジ」全12話レビュー!【アキバ総研ライターが選ぶ、アニメ三昧セレクション 番外編】

誰もどんなアニメが始まるのかよくわからない中でスタートした「ゾンビランドサガ」第1期の第1話。爽やかなアニメが始まったのかと思ったら、開始1分でヒロイン・源さくらがトラックにハネられるという衝撃! 


とんでもなくぶっ飛んだアニメが始まったと、誰もがそこで悟ったことだろう。その源さくらはゾンビとしてよみがえり、同じく若くして命を落とした少女7人でフランシュシュというアイドルグループを結成。巽幸太郎(CV.宮野真守)という謎のプロデューサーとともに、死んでいるけど必死にもがき生きようとする姿は、多くの人に感動を与えた。

そんなフランシュシュのメンバーを演じていたのは、本渡楓(源さくら役)、田野アサミ(二階堂サキ役)、種田梨沙(水野愛役)、河瀬茉希(紺野純子役)、衣川里佳(ゆうぎり役)、田中美海(星川リリィ役)、三石琴乃(山田たえ役)の各声優。三石以外の6人はリアルライブもしていて、実際に多くの人に歌で希望と感動を届けていた。だが、2020年3月8日に幕張イベントホールで予定していたライブは、新型コロナウイルスの影響で開催自粛。だが、〈過酷な運命乗り越えて 脈がなくても突き進む それが私たちのサガだから〉という第1期OPテーマ「徒花ネクロマンシー」の口上通り、そんな運命や逆境も乗り越え、今年2月にリベンジライブを大成功させた。そして4月から満を持してスタートしたのが、TVアニメ「ゾンビランドサガ リベンジ」である。

フランシュシュがアイドルをする理由は、佐賀を救うという「ゾンビィランドサガ・プロジェクト」のためで、第1期はそれが何なのかよくわからなかったのだが、第2期では、そのプロジェクトの全貌が何となく見えるものになっていた。「ゾンビランドサガ」シリーズらしい、楽曲のよさと、30代後半の人が特に喜びそうなギャグをそのまま若い世代にも投げ続けるというスタイルで、全速力で駆け抜けた全12話を見届けた今、その1話ずつ振り返っていきたい。ネタバレありでのレビューになるので、ここからは最終話を見届けた人のみ読んでいただきたい。

 

■ 第1話 グッドモーニングリターンズ SAGA

第2期はフランシュシュがアルバイトをしているところから始まる。特殊OPテーマ「イカの魂無駄にはしない~小島食品工場株式会社社歌~」をバックに、フランシュシュのメンバーがバイトをしている光景が流れる。

第1期から第2期にかけてのわずかな時間で何があったのかはわからないが、フランシュシュは駅前不動産スタジアム(略してEFS)でワンマンライブを決行し、3万人キャパで500人……集客率1.66%という最悪の状況で爆死していた。それによって背負った莫大な借金のためバイトをしていることが、さくらの軽~いノリのナレーションで説明される。このすべてを置き去りにする展開が、第1期を経験していると「帰ってきた!」感があり、むしろ心地いい。何が起きても受け入れる体制&耐性ができてしまっているのだ。

落ち込んで飲んだくれる巽幸太郎。第1期第11話で生前の記憶が戻り、何をやってもうまくいかない自分に自暴自棄になっていたさくらを「お前を絶対に見捨ててやらん!」と幸太郎が必死に引き戻した構成と真逆で、今度はさくらが幸太郎の目を覚まさせようとする。そこからは、さくらのアイドルとしての自覚と成長が感じられた。

第1期第1話で舞台に立ったライブハウス「GEILS」で、フランシュシュが再スタートを切るのも胸アツな展開だった。完全アウェイの状況とスタジアムライブのトラウマから、思うようにライブができないフランシュシュに勇気を与えたのは、やはり幸太郎。「アイドルなら歌え! 叫べ!」という絶叫を受け、フランシュシュは新曲「REVENGE」を熱唱する。



■ 第2話 ぶっ壊れかけのレディオ SAGA

この話から新OPテーマ「大河よ共に泣いてくれ」が流れるが、楽曲の素晴らしさはもちろんのこと、Kamata氏が手がけたOPアニメーションもアーティスティックでハイセンスだった。

借金を返済すべく幸太郎が持ってきた仕事は、佐賀が生んだ伝説のロックスター・ホワイト竜(CV.白竜)と共演するTV番組のレポーター。30年間ラジオで若者にメッセージを送り続けているホワイト竜は、サキにとって憧れの存在なのである。

TV番組の収録中、ホワイト竜に、ラジオからいなくなることを告げられたサキは、荒れていた中学時代に、ふとラジオから聞こえてくる竜の言葉に心を打たれたことを思い出す。そのときの「時が経てば、お前は俺を忘れるだろう。だが俺はお前に会えたこと、今日こうしてわかり合えたことを決して忘れない」という言葉。これはほぼそのまま、サキの第1期のソロ曲「特攻DANCE ~DAWN OF THE BAD~」の口上になっているので、いかにサキが竜に影響を受けていたのかがわかる。物語を知ることで、キャラクターソングの歌詞の深みが増すという仕掛けを施しているところはさすがだった。

その後、サキとさくらはホワイト竜がいるラジオに押しかけ、彼から番組を託され、その意志を継ぐという怒涛の展開。帰り際にサキは勢い余って「竜さんが好きっす!」と告白するのだが、「お前たちがもう少し大人になって、いい女になったら、また会おうぜ」と返されてしまう。これまでも時間が経過しない(歳を取らない)ゾンビの切なさは描いてきたが、ここでもサキはそれを痛感し、「いくら時間が経っても大人には……いい女にはなれんな、ワタシらゾンビやし」と落涙するシーンは、こちらも涙なしには見られなかった。

■ 第3話 愛と青春のアコースティック SAGA

■ 第4話 純情エレクトリック SAGA

2000年代のアイドル戦国時代を生き抜いてきた平成のアイドル水野愛と、1980年代アイドルブームの火付け役のひとり昭和のアイドル紺野純子。第1期でも2人のエピソードがあったが、今回も2人のエピソードとなる。タイトルに2人の名前が入っているのはニクい演出だ。ちなみにこれは全話に言えることだが、ドラマの裏での山田たえの動きが面白いし細かい。3話から4話にかけて、ドラムの才能を徐々に開花させていく山田たえを追って見るのも面白いだろう。

実力が抜けている水野愛に頼り切っていたフランシュシュを見ていた幸太郎は、SAGAアリーナのこけら落としライブに来るトップアイドル・アイアンフリルの前座にフランシュシュをねじ込み、元アイアンフリルの伝説のセンターである水野愛はそのライブには出さないとソロ活動に専念させる。だが、愛からフランシュシュを任された純子は、グループをまとめられずに焦っていた。

元気になりたいときに歌うという「50と4つの忘れ物」を、純子がアコギ弾き語りで歌うシーンは印象的だった。純子がヒットチャートで初めてトップになった大事な曲なのだが、情感たっぷりのボーカルが素晴らしい。

その後、悩む純子は愛ともすれ違い、うまく気持ちが通じ合えずふさぎ込んでしまう。そんな彼女の目を覚まさせたのは、やはり幸太郎だった。堂々と正論をぶっ放し、「ゾンビィだろうと何だろうと、お前自身が輝けば、周りのすべてはついてくる」と喝を入れられて吹っ切れた純子は、「SAGAアリーナで私たちがなすべきことが、わかりました」とほかのメンバーを引っ張り、本番で「激昂サバイブ」を披露する。


たえの超絶ドラムソロから始まり、アコギをエレキに持ち替え熱唱する純子のパフォーマンスは相当カッコよかった。そして愛をステージに呼び込み、フランシュシュ全員で「目覚めRETURNER(Electric Returner Type “R”)」を歌って締めくくる。ここでアイアンフリルに認められたことで、テレビ放送でフランシュシュが最大のライバルだと宣戦布告されるのだが、前回のラジオレギュラー決定から今回のライブで、追い風がフランシュシュに吹いているのを感じた。

 

■ 第5話 リトルパラッポ SAGA

リリィはフランシュシュの名前を全国区にするべく、全国ネットのオーディション番組の地方予選に出演することを決意する。

第1期のリリィ回はパピーとの感動エピソードだったが、今回スポットを当てたのは天才子役としてのリリィ。「全チャンネルのゴールデンタイムで主演を務めるという快挙を成し遂げた」とんでもない才能を表現するには、最高のライバルをぶつけるしかない! と登場したのが、現代の天才子役・大空ライト(CV.高山みなみ)だった。

ライトは表裏があって、裏ではマネージャーに乱暴な言葉づかいで命令をしたりしている。それを目撃したさくらがリリィにそれを伝えるのだが、リリィは全く動じない。おそらくそれは、リリィも過去、マネージャーをしていたパピーとギクシャクしていた時期があったからだろう。ライトにはライトの事情があるとわかっていたのだと思う。

最後の直接対決で、自分が歌うはずだった歌を先に歌われてしまったリリィが、とっさの判断で曲をスキャットアレンジにして「リトルパラッポ」を披露。その天才っぷりを発揮したのだが、惜しくもライトに敗れてしまう。

リリィのステージを見て、表現者としての敗北を認めたライトとリリィのやり取りも感動的だった。子役の先を見据えブロードウェイに出るという夢を持つライトと、もう年を取ることがないし、そもそも生前から(男なので)大人になりたくなかったリリィとの対比。そこで「ライトくんは、6号(リリィのこと)には絶対にないものを持ってる。だから……、かなえて見せてよ、その夢を」と託す感じで言うところは感慨深かったし、それを男子トイレでするというアイデア! 

この少しのやり取りにどれだけの情報量を詰め込んでいるんだという意味で、やはりただのゾンビィアニメではないと感じた。



■ 第6話 ウォーキング・ベット SAGA

フランシュシュは上昇気流に乗ってきたけど、EFSライブでの借金は残っている……という根本的な問題と、知名度が上がれば上がるほど、死んでいる人にそっくりではないか?という別の問題が浮上するよね、というネタを同時進行させた第6話。

「はじ〇てのおつかい!」的な感じで、山田たえがおつかいに出て、それを見かけた、フランシュシュがすでに死んでいる人たちなのではないかと疑う「サガジン」編集部・大古場が尾行をする。

たえが途中でお墓にあるお供え物を食べたときに映し出されたお墓が「源家之墓」と「山田家代々之墓」だったことには驚いた。こんなところでも新たな謎を出してくるあたり、やはり油断ならない。

このエピソードでは、たえがひょんなことから飛び入り参加したダンスバトルで賞金をゲットし、なぜかオートレース場でその賞金を使い、約7000倍の舟券を当て、2000万円をゲットし借金を全額返済するという結末だったのだが、途中で第1期に登場したキャラクターが続々出てきたのが面白かった。

2号(サキのこと)を見て、ツッパるところはひとつじゃないとダンスを始めた天吹万梨阿はすっかり更生していてほのぼのしたし、ガタリンピックの司会のお姉さん、久中製薬、コッコくん、「殺女(ころすけ)」の総長であるミサなどなど、懐かしい顔が揃っていた。

ラストで、尾行していた大古場が撮った写真に、首が取れたたえが写っていたというオチ。いよいよゾンビバレしてしまうのか!?というところで、次回へ続く。

■ 第7話 マイマイレボリューション SAGA

ここが1話になる可能性もあったという第7話。新キャラクター楪舞々(CV.花澤香菜)が登場するのだが、女湯と間違えて男湯に入り、幸太郎の石鹸で足を滑らせ、頭からすっ転ぶシーンの構図が、第1期第1話冒頭のさくらとまったく同じだったので、確かに第1話でもおかしくはなかったのかもしれない。

舞々が死んだと思って連れ帰った幸太郎だったが、実は全然生きていて、フランシュシュがゾンビであることがバレてしまう。ちなみに舞々は第8話からライブに来ているフランシュシュの大ファンで、「ライブに絶対にいる眼鏡の女の子」として、視聴者からも認知されていた。

バレてしまったこともあって、舞々が新メンバー・7号としてフランシュシュに加入。そして彼女の学校の文化祭にフランシュシュが出演することになるのだが、その前日、教室でのさくらと舞々の会話シーンは感動的だった。アイアンフリルの愛に憧れて、教室でダンスの練習をしていたさくらの回想。そこに挟まれる誰もいない教室を眺める幸太郎のカット。きっとそんな風に影からダンスの練習をするさくらを見ていたのだろう。ここでの幸太郎の表情が何とも切なかった。そして舞々は、死んでいるけど必死に生きているさくらの言葉に、フランシュシュと自分の違いに気がつく。

文化祭で「ぶっちゃけてフォーユー」を8人で披露したあと、サキは舞々が加入したことを発表する。だが、その直後の挨拶で、舞々はフランシュシュを卒業することを宣言、最後の曲「光ヘ(with7号ver.)」を歌って本当に卒業する。

最後に、なぜ卒業を決意したのか、そしてなぜフランシュシュは輝いているのか、というところにはっきりと言及していたところはとても印象的だった。

また第7話はキャストが豪華で、舞々の友達の藤子(漫画部)と駒子(将棋部)の2人を、田村ゆかりと堀江由衣が、委員長役を下野紘が演じていた。



第8話 佐賀事変 其ノ壱

■ 第9話 佐賀事変 其ノ弐

フランシュシュはゾンビなのかどうなのか、という謎を残したまま、舞台は明治14年に。第1期でも謎のままであった伝説の花魁ゆうぎりの過去が明らかになる回となる。タイトルから、すでにリリースされている名曲「佐賀事変」に繋がることはわかっていたし、ゆうぎりは首に傷跡があるので、斬首という結末も知ったうえで見るエピソードでもあった。

ゆうぎりが身請けをされて佐賀にやってきた明治15年。明治7年の佐賀戦争、その懲罰として明治9年に佐賀は三潴と長崎の2県に分割・統治され地図から消滅していた(史実通り)。佐賀を復活させようと奮闘する喜一(CV.宮野真守)と、それをさり気なく見守る友人・伊東(CV.内山昂輝)。その2人とゆうぎりが出会ったことで運命は動き出す。

ゆうぎりのサポートもあり、戯言程度で収まっていた喜一の運動が本格的になり、話し合いで佐賀を復活させようとしていた喜一の思いとは裏腹に、気性の荒い志士たちが行動を起こしてしまう。

逆賊があれば監視し、一線を越えた場合始末するのが伊東の本当の仕事。伊東は命令に従い喜一を切ろうとする仕草をした瞬間、ゆうぎりが彼を救い、自分のコネクションを使って喜一を逃がす。ゆうぎりは追っ手となった伊東を切り(伊東はあえて切られた)、最後は捕まり斬首されてしまうのだが、明治16年に県内有志による嘆願で佐賀県は長崎県より独立する。

そして現代に戻り、ゆうぎりは喜一にもらった櫛を置き、フランシュシュとして舞台に上がり「佐賀事変」を歌って終わる。「佐賀事変」が流れる中で、挟まってくる喜一と伊東のカットは、本当に涙なしには見られないもので、かなり心を揺さぶられる2話だった。

また、「佐賀事変」の〈三瀬峠 俵坂(越えて)地獄だって会いに来て〉という歌詞の意味の深さも知ることとなる。ゆうぎりが示した逃走ルートは三瀬峠から長崎へ行くというもの。そこから俵坂を越えてまた会いに来てくれたときは、私はいないかもしれないという意味にも取れて、曲の印象がガラリと変わった。

そして、この時代から生きていた徐福とロメロ。「俺はサガ。いや、サガこそが俺」という徐福の謎の言葉はとても気になるところだった。



■ 第10話 ゾンビたちはどう復讐するのか SAGA

2019年1月18日。第1話のEFSライブ前に時間はさかのぼる。ここでは、なぜ幸太郎がEFSライブを決行しようとしたのかが描かれていく。そして第1話の爆死は、前売りチケットも販売せずに当日券のみだったという新事実が明かされる。ライブ直後の荒れた幸太郎、そしてこれまで幸太郎に頼り切っていたことに気づき、自分たちで動こうとアルバイトを始めたフランシュシュ。その中心にさくらがいたことも忘れてはならない。

そして時代は今に戻り、幸太郎が再びEFSライブをすることを宣言する。自分の過ちを認め、今度はやれることは全部やると力強く伝える。第2期では、第1期を経ての幸太郎とさくらのシーンがよく描かれるのだが、幸太郎を見るさくらの表情がいつもいいので、そのときのさくらの気持ちを想像しながら見てみてほしい。

さらに「サガジン」の記者・大古場は幸太郎に会い、フランシュシュの秘密を握っていることを明かし、「死者ば晒し物にするのはもうやめろ!」と忠告する。ここで幸太郎のいた場所にマスコットが落ちてくるのだが、これはまだ幸太郎が「持っている男」であるということなのだろうか。

その後の徐福と幸太郎の会話で、さくらが死んで沈んでいたときに、徐福と出会い、死者をよみがえらせる術を知ったこと、そして令和の始まりに起こる佐賀滅亡の危機を阻止するために、人々の記憶に永遠に刻まれる存在=フランシュシュを育て上げるというのが「ゾンビィランドサガ・プロジェクト」であることが語られる。幸太郎が焦って第1話でEFSライブを決行したのは、佐賀滅亡の危機が近づいていたからなのだろう。そのほかにも「呪いによって死を迎えた、サガに繁栄をもたらすはずだった少女たち。そのコらを集めアイドルグループを結成する」という徐福の言葉など、ここではかなり重要な会話が交わされていた。

そしてその会話のさなか、佐賀は大雨による大災害に見舞われる。街は停電となり、フランシュシュが住む屋敷も海に流されてしまった。

■ 第11話 たとえば君がいるだけで SAGA

EFSでのリベンジライブまで1か月を切った2月18日。フランシュシュが目を覚ますと屋敷は土台ごと海に流されていた。屋敷は再び佐賀に流れ着いたものの崩壊。フランシュシュは大きな避難所に辿り着く。そこでフランシュシュはみんなのために働きながら、アイドルとして、アカペラで歌を歌い、被災者を元気づける行動を取っていた。それを見た大古場は、幸太郎が私利私欲で死者を操っていたのではないのかもしれないと思うようになる。

被災時、徐福のバーにいた幸太郎は命が助かったのち、フランシュシュを探し街中を走り回るのだが、そのバックで流れていたのが、幸太郎が歌う「Never ending saga」。“よかよかよか♪”と曲を作っていた幸太郎が本気で歌ったら、歌がうますぎて逆に面白い、という謎の感動シーンになっていた。

幸太郎不在の中、フランシュシュはゾンビバレの危機などもありながら、必死に被災者を勇気づけ続けていた。そしてやっと駆けつけた幸太郎は、大古場に頼み事をし、3月8日のリベンジライブへの準備を進めていく。

幸太郎がフランシュシュひとりずつに特殊メイクをしていくシーン。ここでのフランシュシュの信頼し切った表情がとてもよかった。そしてラストの階段でのさくらと幸太郎の会話。「幸太郎さん……私を、アイドルにしてくれて……ありがとうございました」という一番聞きたかったかもしれない言葉を聞き、一瞬、幸太郎はさくらの同級生だった乾の気持ちに戻り、どんな気持ちでさくらをゾンビィにしたのかがよぎるのだが、あくまで幸太郎として「お前の、お前らの夢は、世界一の、永遠のアイドルになることじゃい!」と返す。その幸太郎の姿に、さくらが乾くんを思い出したかどうかはさだかではないが、ここはかなり感動的なシーンだった。



■ 第12話 史上最大のSAGA

CMを流さず27分ぶっ通しで放送された最終話。

第12話は、3月8日のリベンジ(チャリティー)ライブ実施まで、やれることは全部やると言った幸太郎の動きが描かれていく。知事とかけ合い、大古場に宣伝をお願いする。フランシュシュもラジオで、3月8月のライブに来てほしいと呼びかける。それを聞いている、これまでフランシュシュと関わった人たちの表情も美しかったが、エンタメが必要な理由を熱く語るサキには共感しかなかった。

そしてライブ当日。幸太郎との約束どおりにEFSに向かうフランシュシュ。甚大な被害の佐賀県でスタジアムには誰も来ないかに思われたが、そんな中でも、さくらは諦めず、「たとえ神様だろうと悪魔だろうと、私たちをじゃまするものすべてが根をあげるまで、リベンジし続けてやる」と叫ぶのだった。これは11話であった、さくらをよみがえらせるときの幸太郎の決意「たとえ誰に恨まれようと たとえ神や悪魔が相手になろうと 俺はやる!」と同じで、2人の心がすでに通じ合っていることがわかる。

そしてスタジアムに集まってくるたくさんの人。1年前に500人しかいなかった観客は、スタジアムを埋めつくすまでにふくれ上がっていた。

その中でスタートしたライブでは「REVENGE」を3分間たっぷりと歌う。回想シーンなどをまったく挟まず、ただただひたすらにライブシーンを見せる演出がすさまじい。たえのコール&レスポンスは、まさに「LIVE AID」におけるQueenのそれだ。

続いてさくらのアカペラから始まる「輝いて」。「REVENGE」でCGによるダンスの迫力を見せつけたが、この曲では繊細なフランシュシュの表情が神がかっていた。CGの表情で歌を表現するすごさは鳥肌ものだったし、途中で挟まれる手描きとの差もほとんどない。ステージにフランシュシュが“生きている”ことを実感する名ライブシーンであった。

アンコール前の幸太郎の泣きじゃくる姿も感動的だったが、いつものように「GOGOGOGOGO」と送り出したあと、幸太郎が吐血している?という少し不穏な空気を挟みつつ、フランシュシュは最高のアイドルソング「追い風トラベラーズ」を披露。最後にさくらが最高にカッコいいフェイクを決め、最高に最高だったリベンジライブを締めくくった……だが、佐賀滅亡の危機は、この災害ではなかった!!?

大爆死したスタジアムライブから始まり、最後に同じ会場で見事にリベンジを果たしたフランシュシュ。もう死んでいるけど、死んでいるからこそキラキラと輝く彼女たちの生き様は本当に感動的だった。


そして、最大の感動で終わると見せかけて、最大の「?」で終わったことも「ゾンビランドサガ」らしい。物語の余韻はまだ残っているが、今は、幕張メッセで10月16日(土)、17(日)に開催されるフランシュシュの単独ライブを楽しみに待ちたい。

(文/塚越淳一)

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