第2クールは、さらにキャラクターが好きになれる物語に! TVアニメ「僕のヒーローアカデミア」山下大輝(緑谷出久役)×佐倉綾音(麗日お茶子役)インタビュー

毎週土曜夕方5:30に読売テレビ・日本テレビ系全国29局ネットにて放送中のTVアニメ「僕のヒーローアカデミア」。

現在放送されているのが第5期という長期シリーズとなっている本作だが、まだまだヒーローたちの活躍は終わらない。

そこでアキバ総研では、主人公・緑谷出久役の山下大輝さんと、麗日お茶子役の佐倉綾音さんにインタビューを実施。第5期1クール目を振り返っての感想と、7月から放送される2クール目の見どころをうかがった。



「黒鞭」の発現シーンで見えたヒーローとしての成長

──第5期1クール目ではA組とB組の対抗戦が描かれましたが、特に印象的だったシーンやキャラクターを教えてください。

山下 1クール目ではB組メンバーの成長が特に印象的でした。かつて登場したライバルたちが見えないところで努力を重ね、それと相対したとき「こんなふうに戦うのか!」という驚きがある。そこが少年漫画の醍醐味でもあり、ワクワクする部分だなと。また、デク目線では「黒鞭」の発現によってワン・フォー・オールの謎が明かされていきながらも、それによりさらに気になることも増えてきて、今後も注目ポイントになっていくのではないかと思います。

佐倉 ワン・フォー・オールの中に歴代継承者がいて、しかもコミュニケーションができるなんて、第1話から考えると想像もつかない展開ですよね。これまでに登場した心に語りかけてくるようなキャラクターにはどこか物々しい雰囲気がありましたが、「黒鞭」を“個性”として持っていた継承者は意外とラフな感じで(笑)。

山下 「ヘイブラザー!」みたいなフランクさがありましたね(笑)。これから登場する歴代継承者もデクにどんなふうに語りかけてくるのか楽しみです。

佐倉 お茶子としても「黒鞭」が発現するシーンは今までとは違う異常事態で、しっかりとデクを抱きかかえなければ止められないと咄嗟に行動し、そこから自分ひとりの力では抑えきれないという即座の判断から心操くんに「デクくんを止めてあげて!」と助けを求めました。「誰の力が今のデクを助けられるか」というその判断も含めてお茶子の成長を感じられるシーンでした。

山下 あのシーンの麗日さんは本当にカッコよくて、デクにとってのヒーローでした。

佐倉 “暴走したヒロインを助ける主人公”のようでしたね。あと個人的には、飯田くんが激痛をともないながらも、成長のために自分のエンジンのマフラーを抜くシーンや、物間くんがしっかりと周りのことを考えながら動いているシーン、心操くんと相澤先生の関わりがわかるシーンなどが印象に残りました。

山下 B組メンバーも頭角を現してきたことで、それぞれのキャラクターのことをしゃべり出すと止まらなくなっちゃいますね。

佐倉 希乃子ちゃんとかもかわいくて……。でも“個性”のキノコが、肺にまで生えてくるのは怖かったです(笑)。

山下 ちょっと能力が敵(ヴィラン)っぽくて怖いんですよね(笑)。

佐倉 こうして振り返ると、今回の対抗戦は生徒同士なのに命がけでしたね。あとは常闇くんとホークスの“鳥仲間”エピソードもありましたね(笑)。

山下 常闇くんもワードチョイスが独特で己が道を行くタイプだから、あの2人の会話が成り立っているのが不思議なんですけど(笑)、ホークスが相手のことをわかったうえで接していて、やはり頭がいいんだろうなと思いました。

佐倉 ただホークスも全部を語るタイプではないから、相手も不安になってしまうのかも。

山下 たしかに、そこはホークスの性格が出ているかもしれませんね。



互いに向かいあう関係ではなく、“同じ方向を見ている関係”であってほしい

──これまでのシリーズを通じた、デクとお茶子の成長についてはどのようにとらえていますか?

山下 デクはメンタル面がすごく成長していると思います。これまでワン・フォー・オールに対して「どうにかしないと!」という思いでがむしゃらにやってきたところから、広い視野を持って事柄に向きあえるようになってきていて、もともと性質として持っていた分析力がさらに研ぎ澄まされていっているなと。デクは意外と頑固で暴走してしまう瞬間があって、それが自分の体に傷として残っているんですけど「それを続けていたら身を滅ぼしてしまい、ヒーローにはなれない」ということを自覚したうえで行動できるようになったのは成長だなと感じます。

佐倉 どんどん先に行ってしまうから、たまにデクが分析しているときに出てくる「ブツブツブツ……」があると、まだ第1話からのオタク部分が残っているんだとホッとします(笑)。お茶子目線から見てもデクの成長や変化というのは、もはや“進化”に近いと感じていて、いつか原形をとどめなくなってしまうのではないかと……。お茶子はワン・フォー・オールのことを知っているわけではないけれど、デクがほかの人とは違う重たいものを背負っていることには感覚的に気づいていると思うんです。

山下 「黒鞭」が発現したシーンでのとっさの行動力は、そんなところからもきているのかもしれませんね。そばから見ていたらデクの成長はとてつもないものだと思うんですけど、彼自身は自分に対しての評価が本当に低いんですよ。「周りの人たちは自分よりも先を行っていて、新しい発見をさせてくれる」という思いが常にあるんです。麗日さんに対しても「みんなをポジティブな気持ちにさせたり、場をなごませる天性の才能があって、僕にはできないことができるすごい人なんだ」と思っています。そんな気持ちがあるからこそ、“みんなを頼ることへの自信”にもつながって、デク自身もすごい力を発揮できる。またさらに、これまで一緒に戦いを乗り越えてきた麗日さんにしか頼めないことがあるという信頼関係が、今回の対抗戦でも見えて熱くなりました。

佐倉 お茶子のモノローグで「ヒーローが辛いとき、誰がヒーローを守ってあげられるだろう」「ヒーローを助けられるヒーローになりたい」というセリフがあって、そこで私自身も知らなかったお茶子の内面を知ることができたのですが、そのシーンのディレクションで「今そのモノローグを考えているお茶子はどこにいる?」と聞かれたんです。私は「第三者的な目線や過去のお茶子だと思って演じていました」と答えたのですが、それに対して「お茶子が成長した“今”をモノローグで表現してほしい」と言われて。画面の平和な回想シーンには似つかわしくないシリアスで緊迫感のある演出になったのですが、きっとこのセリフもお茶子が成長していく中でみずからつかみとった感覚であり、今回のデクの成長に感化されたことでお茶子も成長したのだと感じます。

──シリーズを経るごとに相棒感が強くなっていくとともに、お茶子のデクに対する気持ちが育っている部分もありますよね。

佐倉 私は彼らに恋愛方向にはあまり進んでほしくないんです。以前女子メンバーだけの取材の際にも「どうなのよ、デクとは?」という話題になったのですが(笑)、「僕の“ヒーロー”アカデミア」であるうちは、まず自分たちが目指すべきは“ヒーロー”であり、互いに向かいあう関係ではなく、“同じ方向を見ている関係”であってほしいなと思っていて。

山下 うん、わかる。“隣りあって進んでいく関係”というか。

佐倉 もちろん自分の人生をさらに高めてくれるものとして捉える恋愛であればいいと思う気持ちもあるのですが、第3期でお茶子のセリフにも「この気持ちはしまっておこう」という言葉があったように、今見据えるべきは困っている人たちや世界であり、自分の恋心ではない。世界が平和になるそのときまでは、この関係が揺るがないでほしいなと思っています。

山下 “ヒーロー”という同じ目的を目指す仲間でもあり、ライバルでもある。この関係性は大事にしたいですよね。もちろん恋愛感情がゼロではないので、堀越先生が今後どう動かしてくださるのか……(笑)。

佐倉 そんな思いもありつつ、お茶子は先を行くデクに対して感じているギャップも含めてポジティブな原動力にしてがんばろうとしているので、今は“尊敬”という気持ちが強いと思います。

山下 麗日さんは本当に気持ちの転換がうまいんですよね。

佐倉 根っからヒーローの素質を持っている子なんだと思います。こんなにも「麗日」という名前がぴったりなキャラクターになるとは当初予想していなかったです(笑)。ヒロアカの登場人物は本当に名前に人生が現れているというか。

山下 たしかに。そんなみんなが足りない部分を補いあうからこそ、ひとりではできないことを成し遂げられる。デクも全部をひとりで背負うと辛くなってしまうから、オールマイトのような“平和の象徴”としての姿を追いかけつつも、今後は“デクとしてのヒーロー像”を形成していくのではないかと思っていて。麗日さんやほかのみんながいるからこそ、“最高のヒーロー”になるという形もあるのかもしれません。

──TVシリーズ第1期が始まってからは約5年が経過しますが、役者としてお互いどのような印象を持たれていますか?

佐倉 大輝くんは最初から本当にデクくんのイメージそのままで、そばから見ていて1ミリも変化を感じないんですよ。初めて会ったときから少年のようで、人懐っこくて、いつ会っても手を振って「おはようございます!」と満面の笑顔で挨拶をしてくれるんです。いっぽうで、マイク前でしか見られないデクの放つ緊張感もどこかに持ちあわせていて。対抗戦で物間くんに「よけて……!」と言った3文字のセリフもすごい音だなと思いました。

山下 佐倉さんは肝が据わっていて度胸の塊だなと思っているのですが、それは麗日さんも持っているもので、安心感のあるブレない強さというか。たとえば、僕はマイペースなほうなのでゆっくり噛み砕いて発言することが多いのですが、佐倉さんは頭の回転が速くて受け答えの瞬発力がすごいんです。そこが今成長している麗日さんの速度感ともリンクしていて、かつ、己の時間軸もしっかり持っているからこそ麗日さんのゆるやかさもあって。この現場は役者とキャラクターにどこかしら似た部分があるんですよね、かっちゃん以外(笑)。

佐倉 かっちゃんだけは“規格外”ですからね(笑)。

2クール目は、温度差が感じられる敵(ヴィラン)側の物語も

──雄英生の成長が描かれた1クール目から一転、2クール目からは敵(ヴィラン)中心の物語も展開されていきます。お2人はどのような部分に注目されていますか?

山下 現在はそれぞれグループ分けした状態で収録を行なっているので、敵(ヴィラン)側の物語も描かれる2クール目は僕たちもどんな仕上がりになっているのかまったくわからないんです。でも彼らの悲しいバックボーンを知ってしまうと影響されてしまいそうだから、逆に知らないほうがいいと思っていて。

佐倉 知ってしまったら倒せなくなってしまいますからね(笑)。

山下 本当にそうなんです(笑)。僕らも視聴者のみなさんと一緒にオンエアを楽しみにしたいと思っていて、きっとアニメならではの心をえぐられるような演出も入ってくるはずなので、敵(ヴィラン)連合推しの方も増えてきそうだなと。

佐倉 トゥワイスとか本当にかわいいんですよね。ヒロアカのように“正義 VS 悪”の構図が、いつのまにか“正義 VS 正義”になるような作品を見ると興奮するんですよ。きっと堀越先生は敵(ヴィラン)側にも何か考えを用意していて、それも解き明かされていく2クール目になるのではないかと思っています。

山下 お互いに自分の信じる道を進んでいるだけですからね。「ヒーローとはきれいごとを実践するお仕事だ」というセリフもありましたが、相手の考えを知ったうえでどうにかしなければいけないのもヒーローの役割だと思いますし、それを実践しなければいけない日がくるんだろうなと……。あと物語としては、デクとかっちゃんが轟くんの家に行きます(笑)。

佐倉 轟ファン必見のお話ですね。1クール目でもメッセージを既読スルーされるエンデヴァーが面白くて(笑)。

山下 そんな不器用なエンデヴァーもまた見られますし(笑)、家族のほっこりするようなエピソードが描かれていて見どころになっていると思います。

──最後に視聴者のみなさんへメッセージをお願いします。

山下 1クール目は「僕のヒーローアカデミア」の“プルスウルトラ”バージョンのような感じで生徒たちの成長がメインとなっていましたが、2クール目はデクたちのエンデヴァー事務所でのインターンから始まり、さらに「僕らの敵(ヴィラン)連合」のストーリーも待っていて、だいぶ温度差が感じられるのではないかと思います。各キャラクターが深掘りされ、さらに好きになれるような物語になっているので、温度差にやられないように心の準備をして受けとめていただき、一緒に盛り上げてもらえたら嬉しいです。どうぞよろしくお願いします!

佐倉 生徒たち同士の個性の応用やアレンジによる戦いが繰り広げられ、その中で得た学びや芽生えた友情が見どころとなっていた1クール目から、2クール目ではエンデヴァー事務所インターン編、それと敵<ヴィラン>同士の関わりが描かれ、今までベールに包まれていた部分が明らかになっていきます。私たちも敵(ヴィラン)キャストと収録ができていない分、みなさんと一緒にオンエアを楽しみたいと思います。

(取材・文・撮影/吉野庫之介)

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