【2011夏アニメ】「アイマス」も「うたプリ」も「ゆるゆり」も「ピンドラ」も、ぜ~んぶ10周年! 豊作の2011年夏アニメを振り返ろう!
よく「十年ひと昔」と言いますが、アニメの世界で10年間は大昔のように感じることもあれば、今でもバリバリ現役の作品が放送されていたりという、微妙かつちょうどいい間合いの時間です。今回はそんな10年前の7月クール、TVアニメの世界でどんな作品が放送されていたのかを見ていきたいと思います。
2011年7月期の記念碑的作品といえば、まずは「THE IDOLM@STER(アイドルマスター)」をあげたいです。「アイドルマスター」、通称アイマスはバンダイナムコゲームスの同名ゲームが原作で、今年(2021年)16周年(!)イヤーを迎えても、新作のリリースが続いています。今の時代は派生作品の「アイドルマスター シンデレラガールズ」や「アイドルマスター ミリオンライブ!」などなどがなじみ深い人も多いかもしれません。そんなアイマスがより広く大きな世界でブレイクするきっかけのひとつがこのTVアニメ版「アイドルマスター」でした。
アニメーション制作はA-1 Picturesで、錦織敦史監督をはじめとした、本当に「アイドルマスター」が大好きなスタッフが結集したことで生まれた作品でした。作画カロリーが高いアイドルアニメにおいて、昨今はライブシーンの作画に3DCGが用いられることも多くなっています。2011年という時期はそのちょっと手前の時期で、今の目線で見ると手描きライブ作画の技術の粋を集めた文化遺産のようにも感じられます。
そしておそろしいことに、A-1 Picturesは同クールに女性向け作品でも歴史に残るアイドル作品を手がけています。それが「うたの☆プリンスさまっ♪マジLOVE1000%」(通称、うたプリ)です。本作はブロッコリーから発売されたPSP専用女性向け恋愛アドベンチャーゲームが原作。女性主人公を置いた乙女ゲームにアイドル要素や学園要素を加えた王道の構成は多くのフォロワーを生みました。
「うたプリ」制作のキーマンとなったのが音楽クリエイター集団「Elements Garden」の代表でもある上松範康氏で、同作の原案と音楽プロデューサーを務めました。上松氏が作詞作曲を手がけ、メインキャラクターたちによるユニット「ST☆RISH(スターリッシュ)」に託したアニメのメインテーマ「マジLOVE1000%」は、同作がブレイクの花道を駆け上がる原動力となりました。音楽における本気の作り込みと、アイドルに対する女性目線に寄り添ったこだわりを感じる作品でした。
そして2011年7月期といえば、日常系百合アニメからの刺客「ゆるゆり」が放送スタートします。「ごらく部」という謎の部活に所属する女子中学生4人と、彼女たちを取り巻く人々がゆる~くまったりと過ごす作品です。一迅社の「コミック百合姫S」→「コミック百合姫」という百合専門誌の掲載作品が原作でありながら、いわゆる百合要素は控えめ。のんびりゆったりした心地よい空気感が魅力でした。
当時のアニメソング界隈を席巻したのが、「ゆるゆり」第1期のオープニングテーマである「ゆりゆららららゆるゆり大事件」です。一度聞いたら耳から離れないキャッチーさは圧倒的! 当時幕張メッセで開催された、とある大型アニメイベントで、彼方のホールから「ゆりゆららららゆるゆり大事件」とともに地鳴りのように響いてきた大歓声が忘れられません。
「美少女戦士セーラームーン」で、そして「少女革命ウテナ」で90年代を鮮烈に彩ったカリスマクリエイター・幾原邦彦監督の待望の最新作「輪(まわ)るピングドラム」が登場したのもこのクールでした。病弱な妹・陽毬(ひまり)と、陽毬を愛する兄の冠葉と晶馬は貧乏ですが幸せに暮らしていました。しかしある日、大好きな水族館で倒れた陽毬は、病院で息を引き取ってしまいます。ですが悲嘆に暮れる兄弟の前に、陽毬はペンギンの帽子を被った“プリンセス・オブ・ザ・クリスタル”として復活。「生存戦略!」と声高く叫んだプリンセス・オブ・ザ・クリスタルは、陽毬を助けたければ“ピングドラム”を手に入れろと兄弟に命じるのでした。
冒頭のあらすじを説明しても、意味がわかりませんよね。実際に見てもすぐにはわからないと思います。でもその謎めいた世界を追いかけながら、おしゃれでスタイリッシュなイクニワールドに頭まで浸るのがとっても快感なのです。1990年代のアニメが好きな人には「セーラームーン」を思わせる変身バンクや、「ウテナ」の独創的な世界観に通じる何かを楽しめると思います。その後の「ユリ熊嵐」や「さらざんまい」といった幾原邦彦監督作品につながる大きな流れの源流であり、また幾原監督の直弟子である古川知宏監督が手がける「少女☆歌劇レヴュースタァライト」などにもその影響を見て取ることができると思います。
このクールは「バカとテストと召喚獣にっ!」や「ロウきゅーぶ!」、「まよチキ!」など2000年代の残り香がする正調ライトノベルアニメも多数放送されていて、過渡期とも言える時期だったのではないでしょうか。そこに2010年代を象徴するジャンルのひとつである“アイドル”が足音高らかに駆け込んできたように感じられた2011年7月クールでした。
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(文/中里キリ)
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