“わずか5000人”の声なき観客と創り上げた世界最高の熱量! 「Animelo Summer Live 2021 -COLORS-」DAY1レポート

世界最大級のアニメソングの祭典「Animelo Summer Live 2021 -COLORS-」が2021年8月27日~29日、さいたまスーパーアリーナで開催された。ここでは27日に開催されたDAY1の様子をレポートする。

DAY1には、THE IDOLM@STER 765プロオールスターズ、i☆Ris、藍井エイル、ASCA、石原夏織、大橋彩香、岡崎体育、岸田教団&THE明星ロケッツ、スキマスイッチ、スピラ・スピカ、高橋洋子、DIALOGUE+、富田美憂、西川貴教、Happy Around!、Peaky P-key、Photon Maidenらが出演した。

昨年は今般の状況により、開催延期となったアニサマ。今年はテーマソングを「Animelo Summer Live 2020-21 -COLORS- テーマソング『なんてカラフルな世界!』」とし、昨年のライブテーマである“COLORS”を継承。昨年予定されていた出演者の多くが出演することになった。埼玉県ではライブ期間中も緊急事態措置に基づく協力要請がされており、会場収容人数5,000人以下、収容率50%以内というルールにのっとっての開催。観客全員がマスクを着用して手拍子で応援する、史上もっともコンパクトで静かに盛り上がるアニサマとなった。だがこの環境でのライブを実現するために、どれだけの人が奔走したかは想像に難くない。

「アニサマこそM@STERPIECE」再確認したDAY1

ライブオープニングには、スクリーンに「会いたかったぜ!」という2年越しのテキストメッセージが。出演アーティスト紹介では、紹介されるアーティスト自身が「なんてカラフルな世界!」のワンフレーズである「オマエナニサマ!? オレアニサマ!」を歌い継いでいく演出があった。

2年ぶりのアニサマのトップバッターは、超ビッグネーム・高橋洋子さんが務めた。白いドレスのインナーのピッタリとした衣装は、「新世紀エヴァンゲリオン」のプラグスーツをイメージしたものだろう。

オープニングナンバーの「魂のルフラン」は劇場アニメ「新世紀エヴァンゲリオン 劇場版 DEATH & REBIRTH シト新生」の主題歌ということもあって、スクリーンに映し出される映像は同作(いわゆる旧劇場版)中心。「エヴァ」シリーズ全体が完結した2021年という年に、あえて旧劇のアスカ中心に見せる映像構成にこだわりを感じる。真紅のライトの中、高橋さんは白い二股の槍(作中に登場する“ロンギヌスの槍”がモチーフ)を手に携えながら歌唱する場面もあった。歌い終えた高橋さんは思いを込めて「みなさん、大変お待たせしました」。

2曲目の「残酷な天使のテーゼ」は、TVアニメ「新世紀エヴァンゲリオン」OPテーマであり、エヴァのすべてはこの曲から始まったと言ってもいい楽曲だ。エヴァンゲリオン初号機をイメージした色のレーザー光が会場を満たし、TVシリーズのOP映像をベースにしたスペシャル映像とともに歌唱。1コーラス目の映像にはTVアニメのオープニングの素材も多く使われていたが、楽曲のリズムに合わせた映像の切り替えやテンポ感は今の目で見ても気持ちいい。2021年、「シン・エヴァンゲリオン劇場版」終映で「エヴァンゲリオン」という偉大な作品が完結したそのタイミングで、エヴァ主題歌の原点にふれることができたのは不思議なタイミングだった。

「D4DJ」からは、Photon Maiden、Peaky P-key、Happy Around!の3ユニットが登場。まずはPhoton Maidenがステージにせり上がって「Photon Melodies」を披露。特設DJブースに陣取った紡木吏佐さんのあおりが冴え渡る。優美なダンスと統制の取れた動きが作り出す幻想的な世界はPhotonならではだ。

紡木さんから高木美佑さんがDJブースを引き継ぎ、続いて登場はPeaky P-key。ステージの主が変わると、客席の光のうねりが一気に縦ノリに。歓声はなくとも、生きた観客がそこで呼吸していて、全身で音楽を楽しもうとしていることが伝わってくる。Peaky P-keyのステージにはPhoton Maidenがそのまま残り、「電乱★カウントダウン」のダンサーとして参加。「Peaky!」の声に合わせて飛ぶ岩田陽葵さんのジャンプが高くきれいで、Photon Maidenの身体能力の高さを感じさせた。

最後に登場したのはHappy Around!。TVアニメ「D4DJ First Mix」OPテーマ「ぐるぐるDJ TURN!!」のイントロとともに、各務華梨さんがメインステージのDJブースに、西尾夕香さん、三村遙佳さん、志崎樺音さんの3人は後方のセンターステージに現れる変則的な登場だ。


「ぐるぐるDJ TURN!!」はHappy Around!が中心になって歌う楽曲だが、曲中に楽曲のテイストが変わってPeaky P-keyの愛美さん、Photon Maidenの紡木吏佐さんが歌うパートがある。今回のライブでは、そのパートではメインステージにいる愛美さんと紡木さんに歌唱を実際にスイッチ。この3ユニットの組み合わせは、この演出のためだったのかと感心させられた。

ラストの「CYBER CYBER」は、紡木さん、高木さん、各務さんのトリプルDJ! さらにスペシャルゲストとしてmotsuさんが登場。motsuさんは「CYBER CYBER」を歌唱したALTIMAのオリジナルメンバーだ。motsuさんのステージを転がりまわってアピールする姿や、倉知玲鳳さんのかけ合い。はたまた愛美さんの美しいファルセットなど、この曲このコラボならではの光景が見えた。ラストはDJブースと、motsuさんを含めたボーカル陣がふたつのがALTIMAマーク(トライアングル)を作り出して締めくくった。

TVアニメ「無能なナナ」の映像から、登場した富田美憂さんが「Broken Sky」を披露。客席から手拍子が巻き起こる。サビ前にはニヤッと不敵な笑みが唇をかすめたようで、表情を含めた表現力に引きこまれるものがあった。はじめてアニサマのメインステージにソロで立った富田さんは、真っ赤なライトの海に感激した様子。地元・埼玉出身ということもあり、さいたまスーパーアリーナ出演を父母に報告したことを嬉しそうに語る富田さんだった。

この富田さんのステージに、大橋彩香さんが登場。大橋さんも埼玉生まれで、「アイドルマスター シンデレラガールズ」や「アイカツ!」シリーズで富田さんと共演しているという縁がある。アニサマ名物のコラボで披露したのは「コードギアス 反逆のルルーシュ」OPテーマ「COLORS」。どうやら今回のコラボソングには、ライブテーマであるCOLORSをモチーフとしてからめていくようだ。2人の歌声の高らかさと力強さにぴったりの楽曲で、間奏では2人並んでステージ上段に移動。アウトロの大橋さんの独唱は、この曲を自分のもののように歌いこなしている感じがあった。

ステージにホイッスルが鳴り響き、ドラム主体の行進曲に乗って登場したのはDIALOGUE+だ。「革命、はじめます!」の力強い声とともに、彼女たちの名刺代わりとも言うべき「はじめてのかくめい!」からきらびやかなステージがスタート。メドレーで歌い継いだ「人生イージー?」ではゲーム画面風なスクリーンレイアウトが楽しい。

「おもいでしりとり」は、TVアニメ「ひげを剃る。そして女子高生を拾う。」OPテーマ。さまざまな組み合わせの歌声の響きの違いが楽しい楽曲で、それらがひとつに重なったサビに強い意志を感じる。散りばめられたソロもエモーショナルだったりささやくようだったりと色彩豊か。きびきびとしたダンスも小気味いい。かつてさまざまなユニットが駆け抜けてきたアニサマのステージで、今年は彼女たちが挑戦者だ。「以上、私たち、DIALOGUE+でした。ありがとうございました!」のひと言で、潔くステージを締めくくった。

続いて登場したのは石原夏織さんで、披露した「Plastic Smile」は前曲の「おもいでしりとり」からTVアニメ「ひげを剃る。そして女子高生を拾う。」のOP/EDつながりだ。印象的なピアノは編曲を手がけたfhanaの佐藤純一さん自身が担当している。純白のアイドリッシュな衣装で登場した石原さんは、大きく手を振って観客の想いに応える。後ろ手にマイクを持って振り返った彼女の、はにかむような笑顔がまぶしい。「みんなと会えてとってもとっても嬉しいです!」と語った石原さんは、fhanaの佐藤さんとの共演が念願だったことを嬉しそうに報告していた。続く「Against.」では、ダンサーを従えたアグレッシブなステージで、強くしなやかな一面を見せた。

スピラ・スピカは「リライズ」の歌いだしをアカペラアレンジでたっぷり響かせた。無歓声の会場に歌声だけが朗々と響く様子には、どこか荘厳な雰囲気があって、この環境ならではの見せ方だ。バンドが音を奏で始めると、ぱっと花が咲いたようにスピラ・スピカ本来の陽性のエネルギーがステージを満たした。

スピラ・スピカといえば2019年のアニサマで、次こそはメインステージに立ちたい、と語っていたことが印象的だ。今回念願のメインステージに立ったボーカルの幹葉さんは「立ち心地がちゃうね!」と上機嫌。「ピラミッド大逆転」ではMCで振付指導を行なって、観客と一緒に動きでも盛り上げた。ステージ上では幹葉さんがステージ上を全力疾走し、ギターの寺西さんとベースのますださんも楽器を持ったままその後ろをダッシュで追いかける。躍動感と一体感あふれる楽しいステージだった。

「アニサマ~!」の呼びかけとともにASCAさんが登場して「RESISTER」を歌い始めると、客席がたちまち真紅とオレンジに染まる。燃える客席の中でASCAさんの漆黒の衣装が浮かび上がるようだ。ハスキーな歌唱にさらに気迫がこもって楽曲の世界に没頭していくと、続く楽曲は「Howling」。「叫び続けろ──」から始まるフレーズをアカペラで祈るように響かせると、アニサマバンドの調べとともに本編になだれこんでいく。歌い終えたASCAさんは「すべては歌声に込めた」と言うように「ありがとうございました、ASCAでした」とシンプルで潔い挨拶でステージを締めくくった。

スキマスイッチは、まずTVアニメ「鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST」より「ゴールデンタイムラバー」を披露。スタイリッシュなピアノとブラスがからみ合うパフォーマンスからは、常田真太郎さんとアニサマバンドのセッション感がうかがえる。歌い終えた大橋卓弥さんは「どうもスキマスイッチです。アニサマやっと出れました、ありがとうございます!」とまずはひと言。トークと拍手の応酬で客席とコミュニケーションしていった。

スキマスイッチのアニソンの代表格と言えば、劇場アニメ「ドラえもん のび太の恐竜2006」だ。「ボクノート」では、官能的で美しいピアノにバンドサウンドが重なりあっていくと、スクリーンに広大な銀河が描き出され、会場を青い光の海が満たした。曲が終わり、ドラムのリズムに乗せて観衆がクラップを合わせると、大橋さんも「すごい…! みなさんのパワーが伝わってきます」と感動した面持ち。しばしのクラップアンドレスポンスで観客との交流を楽しんだ。心が通いあったところで、ラストナンバーはスキマスイッチの代表曲である「全力少年」。サビで大橋さんが心のなかでの合唱をリクエストすると、観客の中で歌声と音楽が鳴っていることがたしかに伝わってきた。

前半戦のラストを飾るのはTHE IDOLM@STER 765プロオールスターズ。アニメ「アイドルマスター」から切り出された名場面、名台詞の断片が、舞台をアニメ「アイドルマスター」クライマックスのライブへと導いていく。ここでステージにひとり立つのは如月千早役の今井麻美さん、ピアノを奏でるのは2年前の「Animelo Summer Live 2019 -STORY-」でも共演したピアニート公爵だ。楽曲は「約束」。その曲名が明らかになった時点で、会場は万感の拍手に包まれた。「約束」を歌う今井さんからは全てを投げうつような情感がほとばしる。落ちサビでステージにあらわれた765プロの仲間たちは、歌唱する今井さんを囲んで、見守る。しかしこれはソロではない。「約束」は全てを賭けて歌う歌姫と、それを見つめて背中を支える仲間たちの関係性の歌にほかならないからだ。歌う今井さんの姿を見つめていた長谷川さんが、何度も何度もうんうんとうなずく姿がとても印象的だった。

歌い終えた今井さんが「アニサマと『アイドルマスター』の約束をかなえるために仲間とやってきました」と語ると、中村繪里子さんが「アイドルマスター、765プロオールスターズでーす!」の声を高らかに響かせた。

続く楽曲で仁後真耶子さんが「『キラメキラリ』いっくよ~!」と叫ぶと、会場全体が息を呑む気配が伝わってきた。会場いっぱいがまばゆいオレンジに染まるこの曲は、声なきライブの時代に客席の想いと熱量を光で再現するのにこれ以上ない楽曲だからだ。しかし、この日ばかりは会場がウルトラオレンジ1色に染まることはなかった。765プロの有観客ライブ出演という本当に久しぶりの機会に、会場に集まったプロデューサーはオレンジだけでなく、出演するアイドルのカラーのサイリウムを一緒に振り続けることを選んだからだ。とてもカラフルな光に照らされたアイドルたちは、トロッコに分乗して後方を目指す。仁後さんが「ギターソロカモン!」とリクエストするとアニサマバンドが鮮やかなギタープレイで応え、受け取った仁後さんが「ありがとう!」を返す。「ギュッと!」の力強いフレーズで平田宏美さんのパワフルな歌声が会場を貫いていった。

メインステージに戻ったアイドルたちが勢いよくハイタッチを交わす。釘宮理恵さんが「次はとってもカラフルな曲を聴いてください!」と予告して歌うのは「Colorful Days」! ある意味、今回一番のサプライズな選曲だったかもしれない。何せ2008年のリリースであり、大型のライブで歌われたのは2010年の「THE IDOLM@STER 5th ANNIVERSARY The world is all one !!」以来という楽曲だ。同発の「オーバーマスター」が頻繁に歌われるのとは対照的で、ライブで見たい、でもタイミングがない……と10年間言われ続けてきた楽曲を、まさかライブテーマにひっかけて歌ってくれるとは思わなかった。発売時のバージョンではなく、我那覇響、四条貴音が仲間に加わった「12 Colors」バージョンだったのも心にくい選択だ。曲中では色とりどりのボーカルの間でヒロムーチョさんのサックスが鳴り渡っていて、華やかな色合いを添えてくれた。

765プロオールスターズのラストナンバーは「M@STER PIECE」。4つの巨大な思い出ボムを点で撃ちこんでくるような構成だ。同曲は劇場版「THE IDOLM@STER MOVIE 輝きの向こう側へ!」の主題歌で、スクリーンには同作の映像が投影される。その中には「アイドルマスター ミリオンライブ!」からカメオ出演しているアイドルたちの姿も踊る。「アイドルマスター」にとって特別なステージに「ミリオンライブ!」の気配を連れてきてくれたことが嬉しくもあった。そしてコロナ下という厳しい状況下において、その輝かしい言霊たちは、新しい、強い力を持って響いたように感じた。“新しい幕を開けよう NEVER END IDOLM@STER”。

歌い終えた中村さんは「みんな最高! アニサマが『M@STER PIECE』だー!!」と叫んだ。マスターピースとは、磨き上げられた最高傑作を意味する言葉だ。

おすすめ記事