「パトレイバー」や石黒版「銀河英雄伝説」登場のメカを続々とプラモ化！　株式会社エイチエムエーって何者だ!?【ホビー業界インサイド第73回】

劇場アニメ「機動警察パトレイバー2 the Movie」に登場した戦闘機を覚えているだろうか？　横浜ベイブリッジを吹き飛ばした米軍機、幻の首都攻撃に翻弄された自衛隊機……そのどちらも架空の戦闘機なのだが、なんと1/144スケールでプラモデル化されている。企画・開発を行ったのは、株式会社エイチエムエー。模型ファンでも、その名を聞いたことのある人は少ないだろう。しかしながら同社は、石黒版「銀河英雄伝説」に登場した戦艦もプラモデルとして開発中。ほかにも既存のプラモデルの楽しみを広げるアイテムを企画・ 販売している。 いったい、なぜ「パトレイバー2」のマニアックな戦闘機をプラモデル化したのか？　どんなスタッフが、どんな意図で、どうやって開発したのだろう？企画担当の株式会社エイチエムエー・渡辺渉さん、同社CEOの渡邉大さんにお話をうかがった。

プラモ化を思い立ったことで、「パトレイバー2」登場機体のディテールが明らかに

──エイチエムエーさんのWebサイトを見ると、プラモデルよりマスコット商品やスマホケースのほうが多いようですが？

渡邉　弊社の主な業務は、OEMとしてメーカーさんから依頼されて雑貨やフィギュアをつくることです。中国の工場に発注して、生産管理を行います。 メーカーさんに「この場合は、工場にある金型を使えますよ」と提案する場合もあります。

渡辺　OEMとして弊社を知っている方からすれば、今までプラモデルというアプローチをしてこなかったので、驚いてらっしゃるかもしれませんが……。もともと私は、プラモデルも飛行機も大好きでした。エイチエムエーの代表とは私が社員になる前から知り合いで、「JAS39グリペン」という戦闘機を 1/144で完成品モデルとして発売したいという話をしました。ところが、同じ時期にエフトイズさんから同スケールの商品が出てしまったんです。弊社のグリペンは完成品ではなく、組み立てキットに仕様変更したのですが、金型はABS樹脂向けにつくっていました。ABS樹脂は塗装も加工も困難ですから、プラモデルとして見ると不評でした。その後、しばらく病気で仕事を休んでいたのですが、弊社代表から「何か企画を出さない？」と声をかけられました。そこで、真っ先に「あのグリペンをスチロール樹脂で成型したプラモデルとして再発売したい」と申し出ました。


──スチロール樹脂ならば、ほかのプラモデルと同じ材質ですね。

渡辺　そうです。そのグリペンのキットで仕切り直して、次に「機動警察パトレイバー2 the Movie」に登場する自衛隊の「F-15改イーグルプラス」を 1/144でキット化したいと考えました。版権を管理しているジェンコさんに問い合わせて「弊社はグリペンのキットも出しているし、絶対にいいものにします」と、熱心に訴えました。私の知り合いに小泉史人さんというデザイナーがいて、彼に3DCGでイーグルプラスをモデリングしてもらいました。そのデータをジェンコさんに提出したところ、イーグルプラスをデザインした河森正治さんに見ていただけることになりました。
小泉さんも一緒に河森さんにお会いしたので、その席で河森さんの引いてくださった線のとおりにモデリングできるのか、また私からは製品として金型で抜くことができるのか、お互いに検証しながら進めることができました。そして、実は河森さんの設定画と劇中とでは翼の形などがかなり異なることが判明しました。


──「パトレイバー2」は手描きアニメなので、アニメーターによって形が違ってしまうんですね？

渡辺　はい、河森さんに「どっちが本物なのでしょう？」とお聞きました。 答えは、「どちらも本物」。そこでキットでは、設定画版と劇中版を選べるよう、カナード翼と水平尾翼を2種類ずつ付属させました。また、イーグルプラスの打ち合わせを重ねるうち、「F-16改 ナイト・ファルコンもプラモデルにいいですね。」と言っていただけました。確かに「パトレイバー2」という映画には、欠かせない機体です。それでジェンコさんに許諾をいただき、小泉さんとナイト・ファルコンの形状を検討していきました。
映画の冒頭で横浜ベイブリッジを破壊するミサイルはハープーン級だろうか、しかし劇中では先端のビデオカメラで橋を狙っているから、マーベリック級ではないのか……。 河森さんに相談したところ、「おそらくマーベリック級でしょう。だけど、 それでは機体に対してサイズが小さすぎるので、奥にもう1発ずつ入れてください」とのご提案をいただき、このナイト・ファルコンのキットでは、ミサイル発射口の奥にもミサイルがモールドしてあります。河森さんとのやりとりは、ひとつの冊子にまとめられるぐらい膨大なものになりました。