「自分にも相手にも正義がある」ドラマから30年の時を経てアニメで伝えたいこと──アニメ「NIGHT HEAD 2041」飯田譲治(原作・構成・脚本)インタビュー

フジテレビ「+Ultra」枠で放送中のTVアニメ「NIGHT HEAD 2041」。物語は佳境に入り、いよいよ最終回を迎える。

1992年から半年にわたり深夜枠で放送され、カルト的な人気を誇ったTVドラマ「NIGHT HEAD」が30年の時を経て、アニメ「NIGHT HEAD 2041」として復活。新たな物語が紡がれた。

脚本は、ドラマ「NIGHT HEAD」の原作者・飯田譲治氏。アニメ化の構想はいつからあったのか、なぜ舞台を2041年に設定し未来を描いたのか。そして、今も根強い人気を誇る「NIGHT HEAD」はどのようにして生まれたのか……。ドラマ放送時の懐かしいエピソードもあり! 

アニメもドラマも、さらには実写映画も、もう一度観たくなる「NIGHT HEAD」の魅力、見どころを伺った。

── 「NIGHT HEAD 2041」構想はいつ頃からあったのでしょうか? ドラマ「NIGHT HEAD」のアニメ化ではなく、舞台を2041年にして未来を描いた理由を教えてください。

飯田 話が出たのは5、6年前だったと思います。舞台を2041年にするというアイデアは誰が言い出したのかな? 制作サイドから“近未来”の話にしたいというリクエストはあったと思います。でもハッキリ覚えてない(笑)。けれど直人と直也、霧原兄弟をそのまま現代にもってくるのは違う気がして。脚本を書きはじめたら、自然に近未来になっていました。

── 自然な流れだったのですね。今回は霧原兄弟だけでなく黒木兄弟も登場します。

飯田 このアイデアは最初からありました。物語が進む中で、どんな関係性なのか、勘のいい方は想像がつくかと思います。でも、アニメの中でこの2組の兄弟の関係性がハッキリわかるのは最終話(第12話)です。アニメは好きなキャラクターを見つけて追いかける楽しさもあるから、黒木兄弟を登場させたのは、お気に入りを探す選択肢を増やすため、という理由もあります。

── ドラマ「NIGHT HEAD」は気付けば何度も観ていました。理解したように思えたけれど、本当にそうだろうか、と確認するために観たり、なんだかよくわからないぞと思ってリピートしたり。あとは当時、“カルト的人気”と言われていたので、自分は本当のおもしろさを見抜けているのかなどと、とにかく理由はいろいろあるのですが、何度も観ちゃう中毒性がありました。ビデオテープ、本当に擦り切れるんじゃないかと(笑)。

飯田 そうやってハマってくれる人がたくさんいました。テレビでオンエアされたドラマのビデオが売れたのは「NIGHT HEAD」が始まりでした。関東ローカルの番組が全国に広がっていくみたいな流れも、「NIGHT HEAD」あたりからのはず。自分で言うのもなんだけど、「NIGHT HEAD」って、いろんな意味で先駆者のような存在なんです。ドラマのサントラが売れたのも、ドラマのノベライズが発売されたり、今では当たり前になっていることが「NIGHT HEAD」から始まったんですよね。そして、それから30年経ち、今度はアニメという形で「NIGHT HEAD」を届けることができるなんて。「絶対、今の人におもしろいと思ってもらえる!」と言ってくれた制作陣の言葉は本当にうれしかったです。

── さまざまな先駆けとなった「NIGHT HEAD」のストーリーが生まれたきっかけを教えてください。

飯田 子どもの頃、多分10歳くらいだったかな。TV番組で超能力スペシャルをすごく楽しみにしていて。仕掛けがあるとか、怪しいとか思う人もいるだろうけど、僕はテレビの中だけど、目の前で起きていることに衝撃を受けたけれど、信じるタイプだった。そういう現象に抵抗がないまますくすくと育って……。大学生の頃、地元の友達と飲み会をやったときに超能力の話が出て、意外とみんなが信じていないことに気づいたんです。「目の前でスプーンが折れても信じないだろうな」というアイデアが浮かんで、東京に戻って15分の短編を書いたんです。それが「世にも奇妙な物語」で放送された「常識酒場」です。

── そこから「NIGHT HEAD」に繋がっていくわけですね。

飯田 僕が目の前で起きる現象を疑っていたら、生まれてなかったかもしれないです。「常識酒場」で霧原直人を演じた今井(雅之)さんが、知っている予知能力のある家元がいてね。2人で会いに行ったことがあるんです。家元は僕に関する予言をいろいろとしてくれて。それがその後、ほとんど言う通りになっているんです。「NIGHT HEAD」のドラマ化から始まって……。ことあるごとに、これってあのとき予言されていたことだと、ピースがハマっていく感じ、今も続いているんです。今回のアニメ化もそのひとつです。

── それは信じちゃいます。そもそも信じていなかったら、家元の予言も忘れてしまっていたかもしれませんね。

飯田 信じたい気持ちはあっても、未来を予言されてしまったら、人間はがんじがらめになってしまうから、信じたくない気持ちもわかります。でも、こういう現象があると“受け入れること”も大切だと思っています。

── アニメ「NIGHT HEAD 2041」の実写版も観たくなりました。

飯田 チャンスがあれば、やってみたい気持ちはあります。今なら、実写でも近未来をうまく描けると思うしね。でも、「NIGHT HEAD」以外のまったく新しい物語を描くことにも興味があるので、今回のアニメ化同様、タイミングが合ったら何か形にできるかな? という希望はありますね。

── アニメ最終話を見届けたら、ドラマに戻り、またアニメをリピートとなっていく予感です(笑)。

飯田 先ほどお話しした予言の中に「飯田さんは10年早い」と言われたことがあるんです。かっこよくいえば、時代を先取りしちゃっている感じかな(笑)。「NIGHT HEAD」もカルト的人気にはなったけれど、作るのがちょっと早すぎた気がします。もし、今の時代に作っていたら、もっといろんな映像表現ができたと思うし。なので、僕の思い描いている「NIGHT HEAD」の世界を表現するには、30年経った今、近未来を舞台にアニメという形で描くのがちょうどいいと感じています。

── 最終回に向けて、飯田さんのおすすめポイントを教えてください。

飯田 霧原兄弟、黒木兄弟、2組の兄弟を通して、置かれている環境の中で、相手のことを理解することが大切だと気づいていただけるとうれしいです。子どもの頃からずっと刷り込まれている価値観を組み替えることは、人間にとってとても難しいことです。自分に正義があるように、相手にも正義があることを理解できる“瞬間”ってあるんですよね。その瞬間をどう受け止められるか、それが人間にとって大切なことだと思っています。本当にそれが良いものなのか、正しいことなのか、正義なのか、疑う感性を持ちながら、最終回まで見届けてほしいです。

── 30年経っても、舞台を近未来にうつしても、「NIGHT HEAD」の魅力は変わらないですね。いつの時代にも通じる永遠のテーマが描かれている気がします。

飯田 実写ではできないこと、アニメだからできる表現で新しい「NIGHT HEAD」を描きました。アニメに関しては映像的アイデアにおまかせして、素晴らしいものに仕上げてもらいました。新たな「NIGHT HEAD」で僕のやりたかったことを、ドラマファンにも、アニメファンにも幅広く受け入れてもらえたらうれしいです。

(取材・文/タナカシノブ)

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