「僕だけが楽しいものにはしたくない」庵野秀明監督、メインキャスト登壇の「シン・仮面ライダー対庵野秀明展」記者会見レポート
2021年9月29日、東京六本木の国立新美術館にて、「シン・仮面ライダー対庵野秀明展」と題した合同記者会見が開催された。
今回は「シン・仮面ライダー」の記者会見についての模様をお伝えしたいと思う。なお、会見タイトルは映画「仮面ライダー対ショッカー」(1972年)、「仮面ライダー対じごく大使」(1972年)をオマージュしたとのことで、□で囲った「対」に注目。
庵野秀明監督といえば、「シン・エヴァンゲリオン劇場版」の興行収入が、100億円に到達したことでも記憶に新しいが、本作は「シン・ゴジラ」(2016年)以来となる実写作品で、「仮面ライダー」(1971年)をベースに現代にふさわしい作品が生み出されるという。
会見では、まずは「仮面ライダー」第1話のオープニング映像を基に今回「シン・仮面ライダー」版として撮影・制作されたという「プロモーション映像 A」が上映。アングルや撮影、編集、さらにはかつての宅地造型地風のロケ地や回転塔(回転バック)まで再現するなど、その見事なまでの完コピぶりが、SNSでも話題となっているが、現在、YouTubeで公開されているのでぜひ観てもらいたい。
続いて、主人公・本郷猛、ヒロイン・緑川ルリ子をそれぞれ演じる池松壮亮さん、浜辺美波さんのメインキャスト2名が発表された。それぞれ登壇する際には劇中衣裳に包まれたスチール写真も発表され、とりわけ、池松演じるマスクオフ姿の本郷猛は注目を集めた。一方で、登壇した池松さんはなんと松葉杖姿。実は撮影前のアクション練習で負傷したとのことだが、「主人公が改造手術にちょっと失敗しただけで、撮影自体には支障はありません!」と語り、会場を沸かせた。
池松さん&浜辺さんの両名は、出演が決まった際の気持ちについて、「驚きました。ちょうど1年前にお話をいただき、庵野さんが『仮面ライダー』を準備しているという事に、ワクワクしました。決して軽々しく引き受けられるものではないですが、これだけの素晴らしい挑戦をさせていただける機会に感謝しつつ、自分もなんとか力を見せられればなと思いました」(池松)、「小さい頃から『仮面ライダー』が好きで、私にとっては希望のような存在でした。その作品にヒロインとして関われること、そして(第一作の『仮面ライダー』は)庵野さんの原点の一部形を作った作品でもあり、それが今回新しくどういう物語になるのか。とにかく驚きでしかありませんでした」(浜辺)と述べた。
庵野監督は両名のキャスティングについて言及し、「池松くんはオーディションです。僕としては藤岡さんがものすごく強いけど、これを踏襲しても自分でも消化できない。50年前の仮面ライダーと違うものやる際に、彼が演じるなら違う本郷猛になってくれるだろうと思いました。浜辺さんはヒロインをどうしようかと思ったとき、会社の壁に貼ってあったその月の東宝のカレンダーが浜辺さんで、“この子、いいな”と。カレンダーで決めたんですが(笑)、その後『映画 賭ケグルイ』を観てみたら、すごくよかったので、自分の勘は正しかったなと思いました」と語った。 それを受けて浜辺は「ヒロインに決まった経緯は全く聞いてなくて、まさかカレンダーだとは思いませんでした。自分が思ってないところで出会いがあるものなんですね。よかった8月で!(笑)」と満面の笑顔で返した。
最初の「仮面ライダー」の魅力を「強さとカッコよさ」と語る庵野監督は、「第2話のマンションの屋上で蝙蝠男と戦う場面は、当時のテレビは受信状態がよくないこともあって、ほとんど真っ黒。その中に仮面ライダーやショッカーの戦闘員が戦っていて、何が起きているか分からない。だけどカッコイイ」と、リアタイでの視聴体験を振り返った。さらに話題は平成仮面ライダーシリーズにも及び、中でもお気に入りの作品として「555」と「カブト」をあげ、「最近は忙しくてあまり観られないけど、TTFC(東映特撮ファンクラブ)で観ます。ちゃんと宣伝してますよ!(笑)」とトークも絶好調で、「話し続けるとどんどんマニアックになるから、この辺りにしたいですけど、1時間、何なら1日でも話し続けられます」としつつ、「仮面ライダーの一番の魅力は効果音と音楽とアクション」と総括した。
また仮面ライダー、サイクロン、クモの怪人とビジュアル関係もこの日、解禁されたが、デザイン面に関して庵野監督の発言を全文紹介しておく。
「今回、デザイナーが3人いて、一人は特撮ジャンルでは大ベテランの出渕裕さん、もうひとりが『エヴァ』で主にメカをやってくれたら山下いくと。残る一人がうちの会社にいる前田真宏。彼はウルトラマン(『ウルトラマンパワード』)、ガメラ(平成ガメラ三部作)、ゴジラ(『シン・ゴジラ』)、そして今回、仮面ライダーを手掛けるという、非常に稀有な存在です。彼ら3人で手分けしてやっています。サイクロンはほとんど山下くんで、プロモーション映像に映っている“常用サイクロン”も彼がやってくれています。デザインで前のイメージから離れられなかったのですが、そのラインを踏襲しつつ、現代風にできないかと思った時に、うまくまとめてくれたので非常によかったですね。仮面ライダーに関しては前田と出渕さんで、二転三転したのですが、最終的には50年前のイメージに戻りました」。
一方、内容面に関しては、多くは明かされなかったが、マスコミ各媒体との質疑応答を通じ、池松さんから「今の社会に蔓延るあらゆる問題がビッシリと詰まっていますし、何よりとてもタイムリーな内容になると思います」と語られ、浜辺の発言から作品は第1~4幕に分かれていることが判明した他、気になる登場怪人については、庵野監督が「クモと、それからバッタは出ます(笑)」と記者の質問を巧みにかわした。
「エヴァ」をはじめ、作品が国内外で高く評価を受けている庵野監督だが、本作については「まずは日本の仮面ライダーファンに向けて作りたい。最終的に日本語を理解されない言語圏で面白いとおもってもらえる作品を目指したいけど、まずは近場からです」と強調した。
最後、登壇した池松、浜辺、庵野監督、それぞれが作品にかける意気込みを語った。
「撮影はこれからですが、多くの方々に注目していただけるよう頑張りたいと思います。この国の夢を引き継ぐつもりで、50年ぶりに何かを生み出せればと思います」(池松)
「私自身、『シン・仮面ライダー』でヒロインを務めさせていただけること自体が驚きですが、きっと過去の自分に言ったらもっともっと驚くでしょうね。今、そういう立場にいられることに感謝しつつ、庵野監督と仮面ライダーにしがみついて、これからの撮影を頑張りたいと思います!」(浜辺)
「僕の夢をうんぬんよりは、同じ頃に育っていた、今、60~61歳の世代が”あ、こういう仮面ライダーもいいな”と今観て思ってもらえたら嬉しいし、あるいは2号が好きだった僕らよりちょっと下の世代、さらには平成、令和と、仮面ライダーはもう50年も続いている長いシリーズですが、そういった幅広いファン層に可能な限り、面白いと思ってもらえる作品にしたいと思います。僕だけが楽しいものにはしたくない。公開も先だけど、がんばりますから、からよろしくお願いします」(庵野)
(取材・文/トヨタトモヒサ)
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