【Steam】お月見気分で楽しもう! 「月」がテーマのPCゲーム特集
アキバ総研をご覧のみなさま、いかがお過ごしでしょうか。ゲーム買いすぎちゃう系ライターの百壁ネロでございます。暑かった夏も終わり、すっかり気候も秋めいてきました。秋といえばサンマや松茸、もみじ狩りなどさまざまな風物詩がありますが、忘れてはならないのは「お月見」。今年の中秋の名月は9月21日でしたが、それを逃してもなお、秋の月はきれいで癒やされるものです。そんなわけで今回は、「月」がテーマのSteamのゲームを特集していきます。
「月」がテーマのPCゲーム特集
なぜ老人は「月へ行きたい」と願うのか……?1.泣けるミステリーアドベンチャー「To the Moon」
- 「To the Moon」(Manic Hyena)
- ジャンル:アドベンチャー
- 2011年11月1日発売
- 価格:980円(2021年9月17日時点)
- コピーライト:(C) 2011 Freebird Games
1969年、かの有名なアポロ計画によって、人類は初めて月に足を踏み入れました。それから50年以上がたった今、まだまだ「月へ行く」ということは夢物語のような話ですが、ご紹介する「To the Moon」は「月へ行く」ことがキーワードとなっている作品です。
本作は、近未来の世界を舞台にした、2D見下ろし型タイプのアドベンチャーゲームです。 「RPG Maker XP」こと、海外版の「RPGツクール」で製作されており、スーパーファミコン風のレトロゲームをほうふつとさせる味わい深いドット絵が特徴的。ちなみにRPGツクール製ではありますが、敵とのバトルや装備といったRPG要素はありません。 そんな本作、「To the Moon」の主人公は、エヴァ・ロザリーンとニール・ワッツという、白衣を身にまとった2人のドクター。と言っても病気やケガの治療をするわけではなく、特殊な仕事を行っている、どちらかと言えば「博士」という意味でのドクターです。
「ジークムント・ライフジェネレーション・エージェンシー」という会社に務めるエヴァとニールの仕事は、クライアントの人生の最後の瞬間に立ち会い、悔いなく死を迎えられるように、思い残した夢をかなえてあげること。そのために彼らは、人の記憶にアクセスできる特殊な機械を使って過去へとさかのぼり、クライアントの記憶の奥深くに眠る思い残した願いを見つけて、仮想の人生を再生し、その中で思い残した夢をかなえていきます。簡単に言えば「死の淵にある依頼人の記憶に入り込んで介入し、バーチャルの中で『かなえられなかった夢』をかなえて満足させてあげる」という仕事をしているわけです。
そんなエヴァとニールが訪れたのは、今回のクライアントであるジョニーという名の老齢の男性。妻を亡くし、崖の近くの邸宅で暮らす彼からの依頼は「月へ行きたい」という願いをかなえることでした。エヴァとジョニーは、死の瀬戸際で昏睡状態となっているジョニーの記憶へアクセスします。なぜ「月へ行きたい」という突拍子もない願いを抱いているのか、記憶の中のジョニー自身にその理由を尋ねてみるのですが、意外にも彼から返ってきたのは「なぜ自分が『月へ行きたい』と思っているのか、理由がわからない」という答えだったのです。
エヴァとニールの2人は、ジョニーが「月へ行きたい」という願いを抱くにいたった原因を探るべく、機械を用いてジョニーの記憶を少しずつさかのぼっていきます。その記憶の中で2人は、ジョニーの人生において重要な鍵を握る人物、ジョニーの妻「リヴァー」に注目します。口数が少なく言動が謎めいている、やや風変わりな人物のリヴァーは、誰にも真意を明かさないまま、ジョニーのそばでいつも謎の行動をしていました。 たとえば「折り紙のウサギ」を部屋の床を覆い尽くすほど大量に折り続けたり、「灯台に近いから」という理由で崖の上に家を建てることを望んだり、ある日突然長かった髪をバッサリと切ってみせたり……。はたして、その理由とはなんなのか? プレイヤーは、ジョニーの記憶を少しずつさかのぼっていく中で、次第に物語の真相へと近づいていきます。
本作は、エヴァとニールの2人を操作しながらジョニーの記憶をたどり、物語を読み進めていく作りのアドベンチャーゲームです。エヴァとニールはジョニーの記憶の中を歩き回って「メモリーリンク」というものを集め、それらを用いて「メメント」と呼ばれるキーアイテムを起動し、記憶を少しずつさかのぼっていくのですが、このパートでパズルゲームが挿入されるというのが本作の特徴のひとつ。「メメント」を構成する裏返しのパネルをすべて表向きにすればクリアというルールの、オセロのようなプレイ感のパズルになっています。分岐のない一本道のシナリオを読んでいくというスタイルの本作において、唯一ゲーム性のあるパートとして、このパズルがほどよいアクセントを加えてくれます。
「To the Moon」の大きな魅力は、「記憶をさかのぼっていく」という巧みな構成にあります。初めに「なぜジョニーは『月へ行きたい』と望むようになったのか?」という大きな謎が用意されています。そこに「妻であるリヴァーの不思議な行動の真意はなんだったのか?」というさらなる謎が加わることで、プレイヤーを強く物語へ引き込んでいく本作のストーリーは、SFやラブストーリーの要素もあるものの、筆者は“ミステリー”がメインであると考えます。「謎」の存在がプレイヤーの興味とモチベーションを引っ張っていくという、このミステリー的な構成を支えているのが、ジョニーの記憶を『幼少期から老齢期へ時系列順に体験する』のではなく、『老齢期からスタートしてゆっくり過去に戻っていく』という仕掛けです。 ネタバレを避けるために具体的な内容を書くことはできませんが、エヴァとニールとともにジョニーの記憶をさかのぼっていく中で、プレイヤーは謎の真相に気づき、そして思わず心がキュッとなるような「切なさ」を感じることになるはずです。この「切ない」体験はぜひ、実際にプレイして味わっていただきたいと筆者は強く思います。
「月へ行きたい」という老人の願いから始まるロマンティックで切ないミステリーアドベンチャー「To the Moon」。細やかなドットで描かれた幻想的なビジュアルや、ピアノを中心に据えた美しい音楽も魅力的な作品です。アドベンチャーゲームやミステリーが好きな方、泣けるゲームで遊びたい方はぜひ、チェックしてみてください。
※なお、本記事執筆時点では、日本語テキストが正しく表示されない現象が発生しています。ゲームをスタートする前に、ゲームデータがダウンロードされているフォルダ内の「Fonts」フォルダを開き、「MotoyaLMaru 」と 「MS Gothic」という2つのデータを起動してインストールする必要がありますので、プレイの際にはご注意ください。
月が失われた世界で「伝説」を作り出せ!2.世にも珍しい“性格診断”RPG「Moon Hunters」
- 「Moon Hunters」(Kitfox Games)
- ジャンル:RPG
- 2016年3月11日発売
- 価格:1,520円(2021年9月17日時点)
- コピーライト:(C) 2016 Kitfox Games
夜空に浮かぶ姿を見ているだけで、なんとなく神秘的な気持ちになってくる“月”。特に、灯りや電気が普及していない古代においては、月は神聖なものとして世界各地で信仰の対象になっていました。ここでご紹介する「Moon Hunters」は、そんな月の神秘性を感じられるような作品です。
本作は、神話で彩られた古代の世界を舞台に繰り広げられるアクションRPGです。ドットで描かれた淡い色合いのグラフィックが、神秘的な世界観を盛り上げてくれます。そんな本作、公式情報では「性格診断RPG」という聞き慣れないジャンル名が掲げられているのですが、これに関してはのちほどじっくりご紹介していきたいと思います。
ゲームを開始すると、プレイヤーは、宇宙のような不思議な空間で、巫女長ロアという人物と出会います。彼女が言うには、「ここは月にまつわる物語のかけらたちが眠る場所」とのこと。
プレイヤーはこの不思議な空間で、自分の分身となるキャラクターを作るべく職業と出身部族を選び、「月にまつわる物語」を体験するために、月が失われた世界・イッサリアへと旅立ちます。「魔剣士」「魔道士」「魔術師」など、選んだ職業によって攻撃方法やステータスが異なる仕組みになっており、アクションRPGとしては比較的オーソドックスな作りと言えるでしょう。
プレイヤーの目的は、月が失われた世界・イッサリアで、太陽を信仰するマルドゥク王の太陽教団が部族を襲うまでの5日間を体験することです。
ワールドマップからエリアを選んで、襲い来る敵の群れを倒しながらエリア内を探索し、ゴール地点にある野営地で1泊すると1日が終了。これを繰り返して、5日目に現れるマルドゥク王と戦うという流れになっています。
操作は3種類のスキルに対応した3つのボタンを使うだけというシンプルな設計であり、普段あまりアクションゲームで遊ばないような人でも気軽にプレイできる作りになっています。また、RPGではありつつも経験値やレベルアップ、スキルツリーのような概念はなく、敵からドロップしたお金を使って商人からスキル強化を購入するという、わかりやすいシステムになっています。
総じてゲームとしてはかなりシンプルかつオーソドックスな作りですが、最大の特徴は、冒頭でもご紹介した「性格診断RPG」であるという点にあります。
本作でプレイヤーは、探索の道中にさまざまなNPCと出会い、しばしば選択を迫られる場面に遭遇します。じゃれあう2頭のイノシシの子供に対して「観察する」のか、それとも「子イノシシを盗む」のか。神殿の侍者がいなくなったとあわてる人に対して「一緒に探す」のか、それとも「落ち着かせる」のか。はたまた、どちらがよりイケメンかということで口論する2人の男性に対して「答える」のか、それとも「ほめる」のか。ささいな選択からシリアスな選択までその種類はさまざまですが、いずれの場合もプレイヤーは選ぶことを放棄できず、必ずどちらかを選ばなければなりません。
本作ではこれらの選択によって、腕力や知力などキャラクターのステータスが上昇することで、「名声」と呼ばれる評価を獲得するシステムになっています。
名声とは言いつつも、「ずる賢い」や「愚か」などのマイナスの評価も存在するのですが、何を隠そう、この「名声」こそが「性格診断RPG」最大のカギ。5日間の旅を終えたあと、プレイヤーが作ったキャラクターは、獲得した「名声」とともに、人々に語り継がれる伝説となって夜空に輝く星座として刻まれていくのです。ゲームとしての目的は、5日目の最後に現れるラスボス・マルドゥク王を倒すことですが、本作の真の目的はこの「伝説」を作り上げることと言っても過言ではありません。
ゲーム中に配置されるイベントはランダムに出現するので、クリア後にどういった伝説を残せるかは、自分の選択次第でプレイをするたびに毎回変化します。「自分ならどう選ぶか」をひたすら真剣に実行して、名前のとおり性格診断として遊ぶもよし、「カッコいい伝説」や「最悪な伝説」を作るという目標を立ててプレイしてみるもよしと、何度も周回してさまざまな楽しみ方ができる点は、本作最大の魅力と言えるでしょう。1プレイが1時間弱程度で終わるというサクサク感も、ストレスなく周回できるポイントです。
遊びやすくて爽快なアクション要素と、ランダムイベントによる性格診断要素が組み合わることで、何度も繰り返し楽しめる作品となっている「Moon Hunters」。最大4人での協力プレイにも対応しているので、気の合う友人と一緒に、夜空に輝く「伝説」を作ってみるというのも面白いかもしれません。
“月”になって消えた太陽を探せ!3.浮遊感&パズル性がクセになるジャンプアクション「6180 the moon」
- 「6180 the moon」(Turtle Cream, PokPoong Games)
- ジャンル:アクション
- 2014年9月19日発売
- 価格:398円(2021年9月17日時点)
- コピーライト:(C) 2014 Turtle Cream, PokPoong Games
月と太陽。私たちの生活に最も身近な天体と言えるこれら2つの星は、世界各地の神話や物語でも取り上げられることが多いモチーフです。ここでご紹介する「6180 the moon」は、そんな月と太陽の物語を描いた作品です。
本作は、“月”そのものが主人公という、一風変わったアクションゲームです。モノトーンカラーとシンプルな図形で描かれたグラフィックが特徴的で、美しく神秘的な音楽とともに、独特の空気感をかもし出しています。
そんな本作の舞台は、太陽が突然消えてしまった宇宙。主人公である“月”は、消えた太陽を探すために地球や金星など、太陽系の各惑星を巡る旅へと出発します。もしも現実世界で太陽が消えてしまったらすさまじく深刻な事態ですが、本作の世界観はシリアスなものではなく、童話のようなやわらかい雰囲気で作られており、ゲーム中に挿入される月がいろいろな星と会話を繰り広げるイベントは、絵本を読むような気持ちで楽しめます。
本作は、ステージクリア型の2D横スクロールアクションゲームです。
プレイヤーの目的は、“月”を操作してゴールを目指し、全100ステージを突破すること。基本操作は左右移動とジャンプのみという、とてもシンプルなものになっていますが、特筆すべきはステージの構成と独特なジャンプの挙動です。
「スーパーマリオ」シリーズを始めとする横スクロールアクションゲームでは、ほとんどの場合、画面外へ落下してしまうとミスになってしまうものですが、本作においてはミスになりません。では、画面外に落下したらどうなるのかというと……なんと、画面の上から降ってくるのです。
本作は、「画面の上と下がつながっている」という、なかなかほかの作品では類を見ないユニークなシステムで作られています。そのため、下に落ちると上から降ってきて、無限に落下するループが発生します。もちろんその逆、画面の上と下も連動しているので、ピョンとジャンプして画面上部に“月”が消えると、そのまま画面の下からピョンと飛び出してきます。一見、行けそうにないような場所も、この「上と下がつながっている」システムを活用することで突破できるという、ジャンプアクションでありながら、頭をひねるパズル的な思考を求められる作りになっています。
本作のポイントは、多彩なギミックの存在です。最初は月が乗れるブロックと触れるとミスになるトゲしか種類がありませんが、ステージを進めていくと新しいギミックが次々にプレイヤーの前に立ちはだかります。
そのひとつが、半透明のブロック。これは月が触れると壊れてしまうのですが、同時に月のスピードを加速させる働きを持っています。この半透明ブロックが多数配置されている場所を通るときは、月が加速しながら上へ下へとバンバン反射を繰り返すため、まるでピンボールのような状態に! トゲに刺さってしまう危険性がアップしてしまうので要注意のギミックです。
ほかにも、「時間経過とともに出現と消滅を繰り返すブロック」や「スイッチを押すと消えるブロック」、「一度だけ月の加速をストップさせられるアイテム“光のしずく”」などなど、アクション性とパズル性にプラスアルファを加えるギミックが多数登場します。ともすれば単調になってしまう可能性のあるジャンプアクションゲームというジャンルですが、本作はバラエティ豊かなギミックによって、プレイヤーに適度な刺激と難易度を常に与えてくれます。
ちなみに本作、ミスをしてからのリトライが快適でスピーディーという点も魅力のひとつ。ギミックの種類が増えるとその分ミスも増えてしまいますが、ステージ内に点在する中間ポイントに触れていればミスをしてもそこから即リトライ可能なうえに、残機やゲームオーバーといった概念もないので、思う存分チャレンジすることができます。
浮遊感あふれる独特のジャンプアクション、画面の上下が連動している斬新なシステム、美しいアートと音楽、そして童話のような物語と、さまざまな魅力がギュッと詰まった「6180 the moon」。歯ごたえのあるアクションゲームを探している方はぜひ、チャレンジしてみてください。
夜空の月に想いをはせながらゲームを遊ぶ、新しい「お月見」の形!
というわけで、おすすめの3作をご紹介しました。
あるときは「月へ行く」という人類の夢の対象として、あるときは神秘的な信仰の対象として、そしてまたあるときは夜空に浮かぶひとつの星として、常に圧倒的な存在感を放つ“月”。この秋は、夜空の月に想いをはせながら、“月”が登場するゲームでゆっくりと遊んでみるという、新しいお月見の形を楽しむのもよいかもしれません。
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